2009/12/29

Olympus CV-260SL x SONY LMD-2030w

今日、勢いに乗ってSonyStyleから取り寄せたLMD-2030wをつないでみました。

CV-260SLからHDTVのアウトプットはBNCですから、直接つながります。RGBでもYPbPr(コンポーネントとLMD-2030wでは表示される)でも接続可能です。アスペクト比は4:3の方が16:9よりも見易いです。

純正の19インチモニタよりも若干表示が小さめですが、色の再現性が大変良く、視野角による色調変化が全くないという点ですばらしいモニタだと思います。

ただし、6.6万円のHP 2470wも、BNCオス-RCAオス変換コネクタで難なくつながる上、画質もすばらしい事を考えると迷います。

ただし、私はHDTVをキャプチャするのが基本なので、アウトプットがない民生用の液晶モニタはやはり使わない。

民生用の液晶モニタを使いつつHDTVをキャプチャする方法は以下の3通り。

1) BlackMagic社のDeckLink Studioをスルーさせる。ただし、PCでプログラムを走らせないとスルー信号が出力されない。
2) HDTV信号(1080i)の分配機を使う。(XVI-2など)
3) CV-260SLのデジタル端子からHDTV信号を取り出す。

注意点は、

◆民生用液晶モニタではオーバースキャンになり、画面の上下が映らない可能性がある。

今回HP 2470wはDeckLink Studioを通したためアンダースキャンとなり、LMD-2030wは業務用なのでアンダースキャンが可能でしたので問題ありませんでした。しかし例えばDELLの2209WAはオーバースキャンらしいので、だめだという事になりそうです。

2009/12/28

Olympus内視鏡画像を、通常の液晶モニタで見る。

SONY製20インチトリニトロンモニタが昇天してしまい、Olympusから発売される新液晶モニタは欲しいものの現物がなく、また私のEndoDB2でHD画像をキャプチャするという宿題もあったため、急遽通常の液晶モニタを内視鏡プロセッサSV-260SLに接続することとしました。

[この間の数々の失敗、散財~については省いて成功例を示します]

[設定]画面に入り、HD画像を[RGB]から、[YPbPr]に変更、アスペクト比を[4:3]から[16:9]に変更します。インデックスはなんでも良いようです。これでHD用ケーブルの緑からY、青からPb、赤からPrが出力されます。解像度は1920x1080です。(1080i 60Hz)


これをBNCメス-RCAオス変換してHP LP2475wというIPS液晶採用で廉価なモニタに接続します。表示はDot by Dotとしておきますときれいです。

純正では80万円~100万円のモニタですが、10万円以下のモニタで代用できます。
画質はIPS液晶ですから、純正の前モデルよりはよほど良い。

それをさらにキャプチャする方法については、悩んだ私は色々散財しました。
どうして散財したかというと、HDコンポーネント信号(RGB)をキャプチャできるハードウェアは少ない上にSDKが高価なんです。だもので、何十万円も使ってしまいました。しかし開発環境がVS.NET 2003のみ、などという制限があり頓座。
結論としては趣味の領域としては使えるけれど汎用性がいま一つ。

そこで今日、BlackMagicのDeckLink Studio2を買ってみたところ、キャプチャは簡単で画質も良く、正直驚きました。

さて今後の展開について。

1) モニタについては、SONYの業務用液晶 LMD-2030wは直接つながりますし、1680x1080ですので、4:3とすべきか、16:9とすべきか、とりあえずどう映るのか試してみます。もうSONYに発注かけてしまいました。早ければ明日届きます。
2) BlackMagic はSDKがなんと無料!です。もともとWMVでキャプチャできそうな感じでEndoDB2でも認識はするので、マイナーチェンジでいけるかもしれません。HD画質でキャプチャしたかった先生方、お待たせしました。

ちょっとだけ燃えてきました。
まずは開発用に小さなPCを買わなければ。

2009/12/22

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)という病名を、診断名として患者さんに説明しなくなってから数年経ちました。多彩な症状、多彩な原因を十把一絡げにしてひとつの病名とし、患者さんを混乱させる事を恐れるからです。

第一、病態が明確でない病名を、ひとつの疾患概念として定義するのは間違いだと思います。

例:10年以上にわたり過敏性腸症候群と言われている男性

「症状は?」
「過敏性腸症候群です」
「下痢?」
「下痢ではありません」
「便秘?」
「まさか!」
「ではどうして過敏性腸症候群と?」
「トイレが心配だからです」

本人の言う、下痢や便秘の定義が不明確ですから、正確な症状は不明なのですけれどなんとなくわかります。

なるほど、症状は所謂過敏性腸症候群なのでしょう。
とにかくいつトイレに行きたくなるか予想がつかない。トイレに行きたくなると我慢するのが大変、という風に解釈しました。

しかし実際に大腸の粘膜を見てみると、等張電解質液で何度も洗浄したにもかかわらず頑固に粘液多糖質が付着して、絶対に水分が吸収できないような状態になっている。恐らく乳酸菌以外の細菌が異常発酵してそれらが分泌した粘液多糖質なのでしょう。ちょうど牛やヒツジの胃はこの状態に似ています。ものすごくメタンガスが発生する状態。大腸で水分が吸収できないので相当やわらかい便である事が想像されますが、それを何年間もずっと我慢していた事によって大腸はハウストラが消失し麻痺しているような状態になっている。そして直腸とS状結腸の一部に強く痙攣する部位があったりします。

確かにこれならば便が形にならず、しかも常に下痢というわけでもなく、いきなり我慢できないほどの便意に襲われるであろう事は想像できます。これが過敏性腸症候群と言えるのかどうか、私にはわかりません。その粘液多糖質が原因なのか結果なのかもわからないのですから。しかし私ならば、こういう症例では最初に大腸内視鏡、その後はガスコンと整腸剤を投与します。ガスコンは粘液多糖質を産生する細菌の繁殖を抑えるから併用します。(牛やヒツジにガスコンを投与するとメタン産生が劇的に低下するという特許があります)ただ、治療で細菌叢が変化したりすると今度は便秘になるかもしれません。抗生物質を使う先生もおられるでしょう。(残念ながらこういう症例の便培養をしても原因究明をすることは困難)

大腸内視鏡を行なわずに症状のみで過敏性腸症候群と診断する傾向があるように思いますが、大腸内視鏡は生理的な大腸の機能などを推し量る良い機会であって、本人の了解があれば行なった方が良いのではないかと考えます。むろん大腸内視鏡を使わなくてもそうした生理機能や病態を推し量る事は注意深い問診や、他の検査でも可能です。エコー所見やPETがヒントになることもあります。要は考えるかどうかです。大腸内視鏡はただ、問診で深く聞く事が出来なかった事を想起することが出来るほど情報量が多いために個人的には重宝している検査です。単純レントゲンであれ、エコーであれ、血液であれ、尿検査であれ、生理機能に注目しつつ検査を行なう医師がどれほどいるかは疑問で、まったく個人的な興味と仮説に基づいて診療しているのが実情です。


参考リンク: IBS(nih.gov)


IBSは過去1年以内に12週間以上腹痛や腹部症状で悩んでいる状態で、そしてその症状が排便や便の性状と関連性があるもの、とされる。その症状の中にはガスや、便中の粘液も含まれている。通常、便中の粘液は肛門から数センチ以内で産生される粘液であるけれど、中には上述のようにもっと口側から産生される粘液が含まれるかもしれない。いずれにせよこの漠然とした定義に流されて、病気が大量生産されている事実を憂いている。
このリンクで注目すべきは、カフェインやアルコールには触れられているもののタバコに関してまったく触れられていない事。IBSを訴える患者さんの多くはタバコを吸わないかミント入りのタバコを吸っているが、それは当然の選択であろう。今年の7月22日、バラク・オバマ大統領はタバコに関する法律に署名をしているけれど、この法律はキャンディーやフルーツ風味のタバコ、ならびに「低タール」「マイルド」「ライト」などの命名を禁じ、そして既知の健康被害に対する警告をもっと大きくタバコのパッケージに表示するよう定めるもの。本来タバコをtolerateできない母集団に大量にタバコを供給する魔法の秘薬がメンソールであって、危惧される問題だけれど残念ながら禁止されたフレーバーの中にはメンソールは含まれていない。AltriaやLorillardが同日発表した声明を見るに、彼らはメンソールを禁止する法案を阻止するためのロビー活動に成功したように思われる。

2009/12/18

タバコとリン酸代謝に興味

タバコに含まれている無視出来ない微量のポロニウムも気になるが、(タバコを吸うだけで被爆までするとは!)タバコを吸っている人の動脈石灰化はもっと気になる。

30歳代にしてエコーをしていると大体喫煙者かそうでないかわかるのだけれど、それは動脈の石灰化による印象の差だろうか。

動脈の石灰化と言えばリン酸なのだけれど、タバコの灰には豊富にリン酸が含まれていて、しかしそれは関係ないだろう。と思ったら、こういう事なのか。あるいは血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cells)が老化して骨芽細胞様に変化し、石灰化を生じているのか。スタチンとかRhoキナーゼ阻害薬と抱き合わせでタバコを売る事になるのか、興味はつきません。

2009/12/14

生活機能評価でわかること

伊勢原市では特定健診の他に、65歳以上の方では誕生月にアンケートが送付され、その結果一定の得点を満たした場合に「生活機能評価」受診券なるものが送られてきます。

「生活機能評価」は運動機能、口腔嚥下機能、認知能力、意欲などを評価して、介護認定が必要かどうかの洗い出しに必要な検査らしいのですが・・・。

やけにお元気な方が「生活機能評価」受診券をお持ちになるのでそのアンケートをチェックしてみると、わかりました。

歯の治療中で食べ物を噛んで飲み込みにくい方々・・・軒並みひっかかっていました。

もうひとつは骨折や捻挫で治療中のみなさんでした。

来年の「生活機能評価」候補者の選定には、もう一工夫必要なように思います。はい。

2009/12/12

一次除菌に関するまとめ

日本臨床第67巻12号(2009)が Helicobacter pylori 特集でしたので、その記事から要点をかいつまんで、また私の見方を加えてメモ書きとします。
2013/2/23追記しました。(青字)

一次除菌法の現状と問題点~杏林大学医学部第三内科徳永健吾先生~
1)現在一次除菌で認められているプロトンポンプ阻害薬(PPI)はオメプラゾール、ランソブラゾール、ラベプラゾール(、エソメプラゾール)の3種類である。このうち第三相二重盲検試験ではラベプラゾールの除菌率が最も高かったが、同等であるとの報告もある。エソメプラゾールはラベプラゾール同様に除菌成功率が高い。
2)クラリスロマイシン(CAM)の量は400mgと800mgが認可されているが、両群に差はなく400mgが推奨される。
3)出血性大腸炎以外に大きな副作用は報告されていない。
4)除菌後の逆流性食道炎は増加しない。
5)プロバイオティクスなどの補助療法も注目されている。

当院での工夫について
1)CYP2C19の多形に関して、homo EM(homozygous extensive metabolizer)群、hetero EM群ではオメプラゾール、ランソプラゾールの代謝がはやく効果はランソプラゾール40mg>ラベプラゾール20mgだが、PM(poor metabolizer)群では効果はランソプラゾール40mg<ラベプラゾール20mgである。したがって当院ではまずランサップ400での除菌、したがって当院では、コンプライアンスを優先させたい、あるいはPM群であると予想できる人々にはまずランサップ400での除菌、それ以外ではラベプラゾール(あるいはエソメプラゾール)+AMPC+CAM、一次除菌が失敗した場合には全員homoないしhetero EM群と仮定してラベプラゾール(あるいはエソメプラゾール)+AMPC+CAMで除菌というプロトコルを採用している。(保険適応です)CAMの役割は抗菌作用以外にもあると考えており、まずはAMPCが十分に作用する胃内環境(pH6以上)を作ることが最優先される。
2)CAM400mg/dayを基本とするが、若年者では失敗例が多く、CAM800mg/dayを経験的に使う場合もある。
3)禁煙はしたほうがよい。治験時に相当数の喫煙者が入りデータのノイズとなっているのが問題である。このようなレビュー記事に喫煙に関して触れられていないのが極めて不満である。喫煙者では恐らくCAMが胃内分泌されず、頑固な粘液カプセルに H. pylori が保護されてしまい除菌が高率に失敗する。強力に胃酸分泌を抑制した場合には、この差は出ない可能性がある。
4)出血性大腸炎ば耐性乳酸菌の投与で抑制できているかどうかはわからない。
5)LG21やその他の薬剤の併用は恐らく一定の効果があると考える。当院での除菌においてもLG21併用は推奨している。
6)除菌後にその影響で太っては何の意味もない。ガイドラインでA推奨とするのは良いが、除菌後の全身管理も含めて考えるべし。

食道は通常気管の左側にある

「うつ伏せ」により内視鏡挿入が劇的に容易になるという発表を以前行いました。
が、これは食道が通常気管の左側に存在するので、うつ伏せにして顔を左側に向ける事が内視鏡を楽に通過させるという仮説が前提でした。
事実、今まで何人甲状腺を見たか覚えていませんが、全員食道は気管の左側にあるのです。

ところが初めて気管の右側に食道が存在している例を観察しました。


赤い矢印が食道です。

この方は、「あなたには(私のこと)絶対に私ののどは通せまい」と豪語していらっしゃいまして、おもしろいなと最初は思ったのです。ずいぶん挑戦的なセリフですが、たまたま拝見したエコーで納得しまして、なるほどこれならば普通は内視鏡の挿入に難儀するに違いないと思ったのです。

普通、「他院では内視鏡挿入をあきらめた」というような症例はうつ伏せで挿入すれば簡単に入りますが、今回は右梨状窩から挿入しようと決めました。



非常にだらだらした動画で申し訳なく思います。私の挿入はウンでもなく、スンでもない、いつの間にか始まり、いつの間にか終わっている、起きているのに気付かせない、そういう内視鏡を上部でも下部でも理想としております。結果として非常に抑揚のない内視鏡となりますから若い先生には物足りないでしょう。結果としては拍子抜けするほど簡単で、なんの苦もなく通過していきました。ただ患者さんに試されただけのような気がします。通ったからって別に患者さんは感動した風でもありませんでしたし。

今回は偶然そうであったというだけで、あくまでも通常は左梨状窩からの挿入が正解です。ただ、こういう事もありますという報告でした。

2009/12/07

医者は気が早い

患者さんだって、ご自分の病気がなんであるか早く知りたいでしょう。でも安心してください。医者の方がもっと早く知りたいと思っていますから。

多くの医者は気が早く、PCで起こすエラーの多くが、「待てずに余計なクリックをするから」なのです。

PCには入力バッファというのがあって、「このキーを打ってここをクリックして」という命令がバッファの中にどんどん溜まっていきます。PCの処理速度が間に合わないときも、このバッファ内の動作は忠実に再現されてしまう。ですからプリンターから書類が3セットも出力されてくる場合だってあるのです。

ダイナミクスは他の電子カルテに比べて十分速いと思うのに、それでも厳しいユーザーは「もっとスピードを」「もっとスピードを」と要求します。滋賀の岡田先生が発見された方法ですが、ハードディスクのNCQ機能を使うとダイナミクスは速くなります。それはランダムリードがNCQでは非常に速くなるからで、データベースというのはランダムリードの集合体なのですから、当然パフォーマンスが上がるのです。(SSDではNCQ関係なく速いです)NCQを利用するにはサーバーをWindows VistaかWindows 7にするか、あるいはAHCIドライバをWindows XPに導入すれば良いのです。(むろんハードディスクはNCQをサポートした製品に限ります)

手前味噌ですが、私が作った内視鏡ファイリングのEndoDB2というソフトウェアがありますが、これはスピードが命です。だいたい他のファイリングに比べると5倍から10倍くらい速いのかなあと思っております。

機械ごときに待たされるというのは大変ストレスなもので、ましてや仕事中はなおさらです。したがって、通常のハードディスクを使う場合にはNCQを使う、あるいはSSDを使うというのはコツかなあと思っております。

たぶんGoogleの社員も気が早い人が多いんじゃないかと思います。頭が良いから成果もすばらしいですね。Microsoftも優秀な社員が多いんでしょうが、巨大になりすぎるとスピードが遅くなるというのは生物と同じなのでしょう。そういう意味ではウサイン・ボルトさんは大きくて、速いと言う非常識な男。Googleはウサイン・ボルトさんになれるのかどうか、注目しています。

むろん、ダイナミクスにもウサイン・ボルトさんを目標にして欲しいです。

ダイナミクスによる新規開業(3)

本日は【運用】編

電子カルテに求められるもの、それは
1)堅牢性
2)障害時の復旧が速い事
です。

他メーカーのウィークポイントは圧倒的に「障害時の復旧コストが高い」という事です。
コストは値段x時間で表されます。

医院というのは診療が止まってはいけません。したがって、1)堅牢性を上げて障害の可能性を押さえ込んだとしても、一回でも障害が起きますと大変なコストがかかる上、pricelessのダメージを負う事すらあります。
そしてどんなに堅牢性を上げてもやはり障害発生率はゼロにはなりません。
ダイナミクスの良い点は、「障害時の復旧コストを安くできる」という事です。
「安い」とは言っていません。「安くできる」と言っています。

例えば当院でサーバーが壊れたとしましょう。しかし1分後には診療再開が出来るでしょう。
それは障害時の復旧コストが安くなるような設定にしてあるからです。
そういう【運用】が出来るかどうかが決め手であって、それが出来るサポート業者さんであれば高いサポート料を払っても結局は安いと感じるに違いありません。
むろんスキルがあれば自分で設定も可能です。私はサポート業者さんにはお願いしていません。
そして障害時の復旧コストが非常に安ければ、実は堅牢性も犠牲に出来るのです。(そうはしていませんが)

紙カルテには2)障害時の復旧コストが安いという特徴がありますが、それをJETというデータベースを採用した事によって簡単に実現したのがダイナミクスです。
むろん他メーカーが採用するPostgresSQLや、SQLサーバーでも同様の運用は可能ですがサポート業者さん、あるいは開発者は1)堅牢性に向けられて2)復旧性には目が向いていませんから冗長性のある運用を見た事がありませんし、恐らくそれをすれば目の玉が飛び出る見積もり金額になるでしょう。(実際は大した事はありませんが)
したがって他社で痛い思いをすると結局「脆弱だ」と他社が揶揄するダイナミクスにユーザーが流れ、その流れがほとんど戻っては行きません。
覆水盆に返らずと言いますが、障害時に鮮やかに復旧させてこその電子カルテです。

「わが社の電子カルテは堅牢です」などと宣伝しても、壊れるのです。障害時にいかに早く復旧させられるかについてはダイナミクスの右に出る電子カルテはありません。

長くなりましたので次回に続きます。
他社のみなさんも、障害時には1-2分で復旧できる方法を考えてください。30分とか半日、とかいう時間の概念は医療にはありません。

2009/12/02

ダイナミクスによる新規開業(2)

今日はハードウェアの話です。

■最高に重要で、一番お金をかけるべき部分
スイッチングハブとケーブルです。当院ではアライドテレシスの製品(CentreCOM GS916L)を使っています。16ポートのGigabitのものでLayer2のノンインテリジェントハブなのですが、3万円ぐらいします。普通のメーカーの数倍しますが、壊れてはいけないものなので選びました。他にもう一台使っていますが、Broadcomのチップを使っているものを選択しました。PCIのFXG-16IMVです。これも3万円ぐらいするハブです。
必要なPC、あるいはネットワーク機器(プリンタなど)の合計よりも少し多いポート数のものを導入しておくと何かと便利です。
ハブはUPS(無停電電源装置)経由で必ず電源を供給してください。
ケーブルと言えば日立なのですが、自作するのはお勧めではありません。現在Gigabitの時代になってからはケーブルを買って自分で結線するのはあまり良くないそうです。したがってカテゴリー6とか6e、あるいは7のケーブルを買って使うのが吉です。個人的には癌研有明病院のLANケーブルが日立電線製で非常にしっかりしていたので、あれに準じたケーブルが市販されていれば良いのにと思っています。

■二番目:壊れてはいけないハードウェア
サーバーの役割をするPCはハブ、ケーブルの次に壊れてはいけないハードウェアです。
正弦波出力のUPSを用意して、質の良いPCを接続します。
質の良いPCというのは、ユーザーズサイドでオーダーするようなPCの事ですが、現在は考え方が少し変化してきているので「堅牢な」PCは少なくなっています。電源がしっかりしたものを買えばよいと思います。
自分で市販の部品で組んでも良いですし、メーカー製品でも良いのですが、オーディオと同じで、
1)初期不良を洗い出すために十分にテストをする
2)しっかりエージングする
3)質の悪い部品は取り替える(ハードディスクや電源、メモリなど)
と言った注意が必要です。
さらに安全を期する為に、RAIDが流行っていますが、ダイナミクスに関してはRAIDはなんの役にも立たないと思います。却ってトラブルの元なので、昼晩2回のバックアップをしっかりするのが重要です。
バックアップは市販のNASで十分で、万が一の場合十分にサーバーの役割を果たしてくれます。
あるいはサーバーPCに準じたPCをもう一台用意しておくのも良いでしょう。

■その他のクライアントPC
ダイナミクスはMicrosoft ACCESS上で動くプログラムですから、データはクライアント上で処理されます。したがってクライアントPCが壊れると、データが壊れる可能性が出てきます。ダイナミクスはそういう意味で脆弱だと言われがちです。しかし実際には高品質のハードウェアを使用する先生が多いので、ちゃんとやれば他のメーカーよりはるかにトラブルが少ないと思います。
そのためには当然受付や診察室で使うPCも結局壊れないようにした方が良いです。
前述の、
1)初期不良を洗い出すために十分にテストをする
2)しっかりエージングする
3)質の悪い部品は取り替える(ハードディスクや電源、メモリなど)
が重要なのですが、これをしてくれるサポート業者さんはなかなかおられないのが問題かもしれません。安いので余計目にPCを買っておきましょう。

DELLやHPの安いPC(しかし買うならばビジネスモデルかWorkstationが良いです)でも十分にエージングして、負荷をかけてテストをして、初期不良がないことを確認すればちゃんと使えます。もちろん温度が高くなる場所で使ったりしたら寿命が短くなりますから、そういうアドバイスまで出来ることがサポート業者さんの条件だと考えます。

■その他
キーボード、マウス、マウスパッド、モニタ、モニタアームなどが必要です。
キーボードは東プレなどが疲れません。マウスはLogicoolのハイエンドやゲーミングマウスが疲れません。マウスパッドはプロ仕様の製品がお勧めです。モニタはIPS液晶とかVA液晶でないとピボット機能(縦にする機能)が無駄になります。モニタアームは好き好きです。

■まとめ
多くのレセコン、あるいは電子カルテでは、「ど~しようもない低品質の」PCとか周辺機器が供給され、しかもそのアップグレードすら出来ません。一日中キーボードを使う医師、あるいは医療秘書のキーボードがメーカー製の1000円ぐらいのPS2キーボードという事実はナンセンスです。マウスもしかり。ダイナミクスはソフトウェアのみの供給ですが、せっかくソフトウェアが安いのですからハードウェアは自分好みのものを選ぶ、それが重要であると思います。

■おまけ
ダイナミクスユーザーにはPCが好きという御仁が多く、「非常にコストパフォーマンスが高い」システムを構築しておられる先生がいらっしゃいます。SNSに参加されますとそうしたノウハウを得ることが容易にできるだろうと思います。

2009/11/30

ダイナミクスによる新規開業(1)

ダイナミクスによる新規開業を応援するわけではありませんが、その王道についてメモしておこうと思います。

■まずは正規版ユーザーになる。

暴論と思われるかもしれませんが、正論です。

ダイナミクス製品情報を見ますと、初年度 : 294,000円 (消費税込み)2年目以降 : 136,500円 (消費税込み)信じられないぐらい安いと思った人はダイナミクスに適した人材です。例えば開業一年前に導入したとしても、かかるコストは14万円程度の差。そしてダイナミクスを将来使わなかったとしても、保険に関する知識だけでなくて、電子カルテに関するトレーニング効果、後述するメリットを考えればお釣りが来るほどの値段です。したがってまず正規版ユーザーになるのは良い方法です。

■正規版ユーザーになったらすべきこと。

自分ができないと思ったら、二人三脚の協力者にダイナミクスを預けて育ててもらいます。ダイナミクスはロールプレイイングゲームのようなもので、LEVELもありますし、いろいろなSKILLもあります。誰かが勝手に育ててくれたり、道具や武器をプレゼントしてくれるのが便利です。しかもほとんどが無料です。むろん感謝はPricelessなのでありまして、無礼は許されないと思いますが。

便利なのはダイナミクス研究会のサイトからアクセスできるPukiWikiと、ダイナミクスSNSでしょう。リンクはわざと伏せますから探してみてください。探せる方はダイナミクスが間違いなく使いこなせる人です。

■開業のノウハウを手に入れる。

ダイナミクスを使っている医師は2500名以上。開業のノウハウの蓄積は日本最強と言っても良いコミュニティです。一流の医療コンサルタントをはるかに凌駕する卓越した慧眼の持ち主が多く、そうした人の縁が得られるだけでユーザーになる価値があると言って過言ではないと思います。むろんそれには自分の魅力も重要で、それがダイナミクスの壁と言えば壁なのかもしれません。各地で行われるダイナミクス研究会例会ではそうした開業の体験談が語られることも多く非常に参考になるでしょう。

おおざっぱに書きましたが、ダイナミクスの入手から開業に関する情報収集については以上です。
次回はコンピューターのハードウェアについて書きます。

2009/11/19

Wilson病と片頭痛

2009年5月頃のMedscape Gastroenterologyより

内容は15歳の女の子が片頭痛を訴えて来院したときにたまたま肝機能障害が見いだされた。(GOT, GPT, r-GTPが正常の2-3倍程度)その場合鑑別診断は何か。普通は自己免疫性肝炎を疑うが、α1-アンチトリプシン欠損症とかヘモクロマトーシスとかWilson病もあり得るだろう。今回はWilson病であってATP7B遺伝子の変異が認められたのでキレートであるトリエンティン(Trientine)と亜鉛が奏功した。最近は古典的なWilson病(もっと進んでしまいカイザーフライシャー輪を認めるような)として見つかる前に診断のチャンスがあるという話。

この話自体は、「良い話だな〜」で良いのだけれど、あまり私には役に立たなかった。

何しろオフィスに来院した理由である「頭痛」は「片頭痛」として一瞬で片づけられてしまっているし。(Wilson病や、銅の避妊具を入れた女性で片頭痛を訴えることもあるという論文がある。なぜ銅がトリガーになるかは明らかにしていないが、血中のチラミンが上昇しており何らかの細胞傷害が起きていることを示唆している。それで血小板が消費されセロトニンが放出され欠乏状態に陥るとトリガーの可能性とはなる。銅は炎症に中心的に作用していることがわかっている金属のひとつで、これが炎症を起こしているとすれば細胞傷害のきっかけを作ったのが銅であると言う論理は成り立つかもしれない。キレートによる治療で女の子の片頭痛がどうなったのかは臨床医としてどうしても知っておきたい事のひとつで興味深いことなのに放置されたままである。そしてミステリー好きの人には「解決されなかった伏線」として大いに批判されるだろう。

医学における臨床試験問題は、「解決されない伏線、あるいは患者さんの主訴が多すぎる」のが医学生を悩ませる。そして実際の臨床では案外それらの「解決されないはずの問題点」が実は関係があって解決される実例を良く目にする。事実は小説より奇なりと言うが、実際の臨床の方が、臨床試験問題よりもよほど原因がシンプルですべての問題が一挙に解決できるという実例が多いことがわかれば医学はとても面白いのにと思う。

この症例、恐らくエコーでも肝臓に異常があったと思う。子供の肝臓は通常あまりにもきれいで、わずかの異常でも「おかしい」と思うはずだからだ。肝硬変になる前の、そうした症例の蓄積が非常に重要だ。胃癌になる前の胃はわかる。食道癌になる前の食道もわかる。エコーが玄人仕事で実際の観察と記録とが一意でないという特殊な検査である(内視鏡もそう)としても、やはり症例の蓄積は重要だし、異常を異常として気付くための検査として超音波検査はきわめて有用で、臨床医には「肝障害があったら全部の検査をやっておけ」と説明するよりも、「こういう所見があったら次の検査に進めよ」と教えたほうが有用にも思う。アメリカの臨床の問題を見ていると、あまりにも網羅的にすべての病気を調べすぎる傾向があり、これは医者がどんなにバカでも同じ結果が出ると言う点で非常に優れているのは認めざるを得ない一方で、お金もべらぼうにかかるし、看過出来ないほどの資源の無駄遣い、つまりその医療はアメリカ国内の一部の患者さんしか享受出来ないという悲しい側面もある。

診断においては子供に限らず侵襲の少ない検査から行なおう、資源を使わない検査から行なおうとすべきで、問診、診察を一番に、そこでおかしいと思えば私の次の一手は、尿検査、便の検査と同じくらいの重要度でエコーだ。エコーは一度買ってしまえば電気代がかかるだけで、(もちろんプローブは消耗品だし、ゼリーも使うけど)患者さんにはほとんど害をなさないし、少なくとも血液検査をするよりは私には抵抗感が少ない。しかも私にはきわめて有用だ。有用かどうかはただし、エコーの熟練度によって決まってしまうのが実情で、エコーでなんでもわかると豪語するのは危険だし、客観性に欠けると言う絶対的な欠点があるためにたとえ自分は出来ると思っても普及させようとは思わない。しかし将来はロボットがエコー検査を行なう時代が必ず来て、検査が客観性を持つ時代が来るわけで、その時代に備えて症例の蓄積が重要だから行なっているような側面も私にはある。

このWilson病のケースでは肝障害の診断においてエコーが無視されているほかに、世界的には最も多いだろう飢餓性の肝障害とか寄生虫による肝障害にも全く触れられていない事も気になった。

もちろんアメリカではエコー検査が10万円以上(日本は5300円で、血液検査をするよりも安い)するために、検査として話題にも登らないことは理解出来る。

しかしながら、こういう国内外で違う医療事情を知らずに盲目的にアメリカの教科書を読んで勉強して、そのままを当てはめていく医者が今後増えていくのならばそれはそれで問題だ。

ともあれこの問題が勉強のきっかけになり、やはり非常に良かったと思える。それにアメリカではおかしいなと思えばメイヨークリニックで遺伝子診断してもらえて良いなあとか思った。日本ではまずコマーシャルで遺伝子検査をしてもらえるもの以外は不可能だし、可能だとしたときに料金を誰が負担するかでもめる。アメリカでは支払いをどうするか、保険会社と事前に直接交渉できるだけまし。日本は保険が事前に認めるかどうかの交渉は出来ない。保険で認められている検査ですら、あとで支払い基金が「払いません」と言ったらそれで一巻の終わりだ。ましてや保険が認めていない検査については本来医師の裁量で行なっても良いとなっているはずなのに実際は全部基本的にはだめだ。また、コマーシャルではない検査なら、「混合診療禁止」とかいう変なルールでアウト。混合診療とは本来、診断がついてからの問題なんであって、その診断名について保険診療と自費診療を混ぜてはいけませんというルールだったように思う。でも、診断についてもコマーシャルでないものを使うときに「混合診療禁止」とかいって請求出来ないようなムードになっているのはおかしいなとも思う。

2009/11/16

内臓脂肪

内臓脂肪とは、本当は、門脈系に分泌している脂肪細胞を指します。
といっても全然わからないかもしれませんが、腎臓の周囲の細胞まで内臓脂肪と呼ぶ先生がいますが間違いであると主張したいのです。脂肪細胞といってもTNFを作ったり面白い細胞群です。

さて、内臓脂肪量を推定するのに、どうするか。

私がいた横浜市大第三内科は肥満外来で昔有名で、全員CTで内臓脂肪量を測定していたのですがそれがお臍の高さで断面を見て脂肪量を測定する方法でした。つまり今と同じ。

ところが考えてみてください。そんなにお腹って横とか縦に大きくなりますか?CTは寝て測るんですよ。寝て測ったとき一番最初に影響が出るのは、横隔膜の高さだと私は思うんです。力学的に。

私は男性85cm以上、女性90cm以上という基準は極めて正確に内臓脂肪量を反映している良い数字だと思っています。だって男性は本当に内臓脂肪が多いのです。それエコーで横隔膜の高さ、つまり肝臓の位置を見ていると一目瞭然なのです。

では男性がみんなメタボかというとそんなのが全部吹っ飛ぶぐらい悪いのがタバコですから、まずそちらに眼を向けるべきではないかと思います。

それだけで専門科があるくらいですから、痔とは奥が深い疾患なのでしょう。
私は横浜市大で学生時代を過ごしたものですから、第二外科(土屋外科と呼ばれた大腸外科の名門)での実習で毎回大腸癌を直腸診させてもらえるのはなぜだろうか思っていましたが、それは松島病院(痔の治療で有名な病院です)の先生との結びつきが強かったからなのでしょう。場所も近いですし。

患者さんはお尻から出血したときに、特に痛みがない場合ほどびっくりして来院されますので、以下のように診療を進めます。

  1. 排便時に血がついたら、すべて痔なのかというと、粘膜から点状にしみ出るような出血が多くて案外内痔核からの出血は多くはないという説明。(痔がないです、などというと「じゃあ癌だ」とびびってしまうため、そうならないためのクッションの意味もある)
  2. 痔と一口にいっても、裂痔(きれぢ)、内痔核、外痔核、痔瘻などがありますのでそれについての説明。
  3. 検査が必要な場合にはその必要性について。
  4. 痔や他の病気で専門の治療が必要である場合には、適切な医師への紹介。

検査には直腸鏡検査、S状結腸までの内視鏡、全大腸内視鏡、注腸バリウム検査、エコー(異所性子宮内膜症とか、憩室とか、虚血性腸炎とか、クローン病とか、癌を疑った場合)、血液検査などがあり、なるべく必要最小限の検査にとどめています。

画像は内容とは関係がありません

ここまでは前書きで、今日、こんなことを記事に書くのは、
痔(とりあえず全部まとめて痔疾と呼びます)の患者さんにやってほしいことがあるからです。

それは骨盤底筋体操です。
お尻の穴を締める体操の事です。ご存じでしょうか。決して尿漏れ予防体操ってだけの意味しかないわけではありません。

これが痔疾に非常に効果がある。
筋肉を動かせば血流が改善しますし、悪化する前にはじめればどんどん治ってきます。
まだ便秘のツボについても記事にしておりませんが、
とりあえず痔疾への骨盤底筋体操は基本中の基本だと思ったので記事にしました。
あまり指導されていないようだから。

むろん痔疾がない人も、骨盤底筋体操はどんどんした方が良いですよ。
骨盤底筋体操、という形を取らなくてもお尻の穴を締めるだけで良いんです。20分に一度でも60分に一度でも良いですから気づいたら締めてください。
姿勢が良くなります。

あと、くしゃみの前、咳する前、階段をおりるときもお尻は締めてくださいね!これ重要。

人間は尾骨が動かなくなってから(尻尾がなくなってから)、ものすごく骨盤底筋を動かさなくなってしまった、にもかかわらず立位においてはすべての腹部臓器の重量を骨盤底筋で支えねばなりません。これは好ましい事態ではありません。身体を鍛えるのと同じぐらい、骨盤底筋を鍛えましょう。

2009/10/19

胆嚢ポリープ

まだ胆嚢ポリープが胆嚢癌になった症例を、私は見たことがありません。何万人も見ているのにまだ見つかりません。もう、一生見つけられないかもしれません。

通常、早期癌を一症例見つけると二千万円くらいの社会的な貢献になるという計算を見たことがあります。

個人的にはその10分の1、つまり一人の早期癌を見つけるために二百万円のお金をかけるのは許されるのではないかと思っています。大腸癌は内視鏡で2%の有病率なので50人の患者さんを拝見すれば良いので百万円で見つかります。胃癌は特定のリスクがある患者さんを選ぶと同様の割合ですからやはり百万円から二百万円で見つかります。消化器癌は内視鏡で検査するべきと主張する理由がここにあります。一方同じ消化器癌でもバレット癌は非常に発見効率が悪いので、それが多いヨーロッパですら「内視鏡にコストベネフィットなし」と結論づけられています。したがってピロリ菌のような明確なリスク因子が発見されるまで、内視鏡でのサーベイランスは合理的ではないとされてしまいます。(しかもラジオ波焼灼で先に治療をしてしまえば、さらにサーベイランスの意義が無くなってしまいます。もはやバレット癌は恐れる病気では無くなったと、欧米で盛り上がりを見せている理由はそれです)

胆嚢癌は、疫学によれば剖検例の0.2%~1%に見られるという事です。つまり私が胆嚢ポリープだと思っているものの中に多くの癌があるという事です。それでも胆嚢癌で命を失う人がいないという事実は、甲状腺癌と同様に害を及ぼさない癌が多い可能性を示唆します。しかし一方で、胆嚢癌が発見されたのちは死亡率が高いというのが解せません。しかもその成長過程を私が出会った事がないというのが解せない。(もちろん進行癌では見た事があります)

それを説明するには、害を及ぼさない癌がほとんどである一方で発育が極端に早いものがあり、一年に一度のスクリーニングでは容易に早期癌が発見できないのではないかという仮説を立てねばなりません。

だとすれば、チャンスはポリープを見つけたその時一回だけという事になります。エコーでポリープがある全員を3ヶ月毎にサーベイランスするというのではコストベネフィットがありません。何しろポリープはしょっちゅう見つかるのです。

したがって今重要で、しかも私に出来る唯一の事は、あとで残念ながらポリープが癌化したときに、さかのぼってそのエコー像がどうだったのか、という事を正確に記録に残しておく事です。と言っても経験がないので一生役に立たないかも知れませんが、それでも最高の機械で最高の記録を残しておく事が医学に貢献する可能性があります。

内視鏡だってそれを繰り返して発展してきたのです。どういう腫瘍が進行しやすいのか。
今では上部内視鏡では「褪色した陥凹を見つけろ(それが未分化癌で進行しやすいから)」というのが常識になっていますが、それがわかるまでは大変な努力が必要だったのです。

胆嚢ポリープを当院で見る、というのは以上のような意味があり、残念ながら患者さんを安心させるためではないのです。それが理解できる患者さんは当院で検査を受けると良いと思います。

2009/10/13

EndoDB2でのCOMポート変更手順

EndoDB2では、内視鏡のトリガー入力にいくつかの方法が可能ですが、現在主流なのはUSB-シリアル変換器を使うものです。
(私自身は、トリガーをジョイスティックの信号に変換しそれをDirectX7経由で入力していますが、それは以下に示す煩雑さを嫌ったためです)

まず、USB-シリアル変換はほとんどFTDIのチップを使用しているので、以下のようにCOMポートを確認してください。

仮想COMポートの確認方法(WindowsXPの場合)

[スタート]→[コントロールパネル]→[システム]
システム内で
[ハードウェア]→[デバイスマネージャ]→[ポート(COM/LPT)]
USB Serial Port(COMx)が有ればOK (x:でチャネル確認)

COMポートの変更手順(変更したい場合)
IDの重複を避けるため自動的に仮想COMポートは後、後に増設されますので、注意下さい。
[コントロールパネル]→[システム]→[システムのプロパティ]→[ハードウェア]→[デバイスマネージャ]
→[ポート(COM とLPT)]
→[USB Serial Port(COMx)]
→[USB Serial Port(COMx) のプロパティ]
→[Port Settings]→[Advanced...]→[COMx 選択]→[OK]・・[OK]

EndoDB2でのCOMポート変更手順
[ツール(T)]→[CommPort]→[COMx選択]

2009/10/03

結腸憩室炎

S状結腸や上行結腸などの憩室に、細菌感染がおきたものです。





入院を必要としない憩室炎の治療について

■抗生物質
  • (ア) 一日一回です。
  • (イ) 一週間しっかり飲みきりましょう。
  • (ウ) 飲みきったら、また来院してください。

■食事
  • (ア) 線維のない、流動食が基本です。
  • (イ) ゼリー、ごはんはOK、パンもOK、うどんOK、そばはNG、プリンOK、酒はNG、海藻類はNG、ごぼうなど線維の多い野菜はNG、野菜はポタージュとか野菜ジュースならばOK、豆腐はOK、ヨーグルトはOK、アイスクリームOK、ごまとか、いちごとか、キウイとか、小さな種はNG。脂っこい食べ物は痛くなります。
  • (ウ) 水分は多めに。ゆっくりひたすら飲むが吉。

■自己管理
  • (ア) 熱を測ってください。
  • (イ) 痛みを昨日と比較してください。
  • (ウ) 増悪するならば入院です。(基本的には手術はしませんが・・・状況によります)

■他の薬
  • (ア) 栄養剤:飲んで良いです。
  • (イ) 整腸剤を処方します。ガスコンも処方します。
  • (ウ) 痛み止め:チアトン・・・点滴よりも効くでしょうが、多用禁止。抗生物質が効けば痛みはおさまります。市販のバファリンは効きます。 基本的には腸を刺激しなければ痛くありません。
  • (エ)海外では回復してきたときサイリアムシード(食物繊維)を勧められるようです。私は水溶性の食物繊維を普段多めに摂る様に指導しています。

■お風呂
  • (ア) シャワーが良いでしょう。手早く。

■ 普段のお薬
  • (ア) 血圧の薬は続行しますが利尿剤は場合により中止します。尿酸の薬も続行します。
  • (イ) コレステロールの薬は、不要です。
  • (ウ) 安定剤は併用大丈夫です。

憩室炎は多い病気ですが、繰り返すことがあるので普段の生活習慣の指導もかかせません。
でも、どういう生活習慣が良いのかあまりまとまった文献をしりません。water & fiber diet だけじゃだめだろうと思います。人により指導内容は変わります。理解力がある人ほど入院を避ける方向に指導しますが、逆に理解力がない人は入院して管理する方が良い結果が得られるように思います。
上の指導を読んで、そのバリエーションまで思い浮かぶ人でない限りは、自己管理は無理ではないかと思います。

2009/09/30

痩せている人はコレステロールが高い

大学院に入ったときに数名の「思春期やせ症(神経性食欲不振症)」の入院患者さんを受け持っており、その内分泌的な変化を研究するのも仕事であった。

視床下部ホルモンに大きな変化が出るだけでなく、甲状腺、副腎、女性器からのホルモンも大きく変化するけれど、それとは別に、血液中のコレステロールが過剰なほど上昇しているのもこの病気の特徴である。

全く食べていないのに、コレステロール値が高い。

いよいよ中心静脈栄養をしないと命が危ないという直前までコレステロール値が保たれてしまう、あるいは高値なので栄養指標としては使えないのであった。

コレステロール値は食事とは関係ないのだ、という感覚がそこで私の脳内にインプットされた。そう言えば食べ過ぎの人では中性脂肪が1000を軽く超えるのに、コレステロールは見事にコントロールされている。コレステロール代謝は簡単ではない。

コレステロールは、「やせ」「るいそう」という状態においても肝臓で十分に産生される。当時ひいた文献ではストレスと関連してホルモンを産生しなければならないからその材料としてこの栄養が必須でありそのために肝臓で産生されているというような説明であったと思う。

当時は見つけられなかったのだけれど、その後検索を続けてもっと納得のいく説明が得られたのが、この論文である。食事を制限すると胆汁分泌がなされないためにコレステロールの腸肝プールが減少し、血中コレステロールが上昇するという説明だ。



この内容については
拒食症では血液中コレステロールは上昇する(2010年5月)
やせた人は、油を摂取すれば血中コレステロールが下がる件(2011年4月)
に書いた。

やせた患者さんへの食事指導は糖尿病でも難しく医師の理解度が問われる。脂質代謝異常に関しても同様であって、「卵を食べるな」「脂肪は制限」的な乱暴な指導は避けなければならない。そしてやせた人の高脂血症には原理的にはゼチーアは絶対に効かない。効くのはプロブコールのはずだ。

脂質代謝異常もひとりひとり観察していくと極めて興味深い病態だ。
しかしその興味深い病態が、一律の「コレステロール治療」に埋没していくのが極めて残念だ。一律に治療できるなら、そもそも我々はお呼びではない。

しかし実際には「治療を受けたらかえって悪化した」と言うような相談を受けるのだ。

BMIが20いかないようなやせの人がコレステロールが高い場合にはまずはコレステロールの腸肝プールの減少があるのではないかと疑うセンスが大切だ。
ターゲットを明確にしないテレビなどのマスメディアの情報には多くの嘘が含まれるので注意が必要だ。

2009/09/25

除菌中にじんましんが出ると、中止しても成功しているというジンクス

数人の自験例、それから他院から引き継いで診た数人の患者さんの経験。

ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性で消化性潰瘍があり除菌治療をすることになった。

そして除菌を開始したが数日でじんましんが出たので中止した。

残念ですねと言いつつも、一年後にチェックしてみるとピロリ菌が居ず、除菌に成功しているという症例がかなり多い。むしろ、成功している確率がかなり高い。

なぜ、じんましんが出ると成功していると言えるのか。

菌体が一時的に大量に放出されたことによるのか。(Jarisch-Herxheimer reaction)

ピロリ菌がいなくなり、炎症がなくなるとサイトカインバランスが崩れるのか。

ヒスタミン分泌になんらかの影響が出るのか。すなわちピロリ菌が死んで局所のヒスタミンが増えるはずがそれが全身に影響をするのか。

仮説をあげればきりがないが、単純な薬剤のアレルギーと考えてはいない。

今のところしたがって、発疹が出た上に失敗してと・・・落ち込む患者さんを見ずに済んでいるので、このジンクスには助けられている。

2009/09/14

結腸憩室症

結腸憩室症・・けっちょうけいしつしょう・・と読みます。
結腸だけでなく、消化管ならばどこにでも、食道にも胃にも十二指腸にも小腸にも憩室というものができます。袋状に粘膜が管外に脱出した状態です。
「休憩室」の「憩室」です、などと説明しますが、時々悪さをしますので困ります。

下にイラストを書きました。粘膜の一部分が、ぽこっと外側に飛び出た状態なんですが、伝わりますでしょうか?

外側に飛び出しているだけならばそんなに困ること無いはずですけど、炎症が起きますと扁桃炎などと同様になかなか治りにくいものです。そして脱出した粘膜から出血することがあります。また、憩室ができる方には、ガスなどによる腹痛を訴える方も多く居られます。

有病率はなんと4割、内視鏡を受ける患者さんのうち約半数に認めるありふれた状態です。

この憩室に細菌が入りこみ炎症を起こすことを「憩室炎」と言います。急性虫垂炎になる人が約2割と言いますが、憩室のトラブルも、憩室症の方の約2割に起こるといわれます。一生のうち一回でも起きれば、それはカウントされるので2割が多いのか少ないのか、その判断は皆さんにお任せします。他の統計では毎年1%というものもあります。

実際の写真は下に示します。





よく憩室症には水分と食物繊維と言いますが、この食物繊維という言葉には罠があるのです。

大切という繊維ですが、それは水溶性の繊維の事です。水溶性と言うのは水を含むとブヨブヨになる性質を示しています。それは効率よく色々な物を吸着して腸の中をきれいにしてくれますし大便の形や硬さを上手に調節してくれます。不溶性というのは文字通りで、水分を吸収しない繊維を示しています。例えばゴボウなどの根菜。水溶性と不溶性の違いはというと、廊下を雑巾で拭くか、ほうきで大雑把に掃くかくらいの違いがります。困ったことに不溶性の繊維は小腸での消化吸収を邪魔するので、小腸で吸収しきれなかった糖質が大腸内に増加する事となり、結果として発酵が活発となりすぎてガスが多くなります。このガスが憩室症には非常によくないので避けた方が良いのです。

では、水溶性、不溶性、どうやって区別すれば良いのでしょう。勉強して覚える必要はありません。①水でふやける様な食べ物は水溶性、②水につけても姿が変わらない物は不溶性と判断すれば良いのです。ゴボウは水につけても何も変わらないから不溶性。お豆やフルーツ、穀類はふやけるので水溶性と判断します。不溶性繊維が悪いとは言っていませんが、合わない人がいるのです。

水は一日2リットル以上飲むことを心がけると良いとされていますが、できれば食事といっしょに摂取した方が大腸には良い影響があると思われます。

私見ですが整腸剤も大切です。多発した憩室症の患者さんには整腸剤を処方する場合があります。自覚症状の改善に役立ちます。(予防が出来るかどうかは検討しておりません)

上記のような心がけでトラブルを予防しても炎症が起きてしまった場合、なるべく早期にエコーなどで診断をし、ニューキノロン系の抗生物質を使うと著効することが多く入院を回避できます。

一方、この憩室の粘膜は薄いので出血も起きやすいのです。

高齢になると、加速度的にS状結腸の憩室症の有病者が増加します。70歳以上では非常に多くなります。また出血などの合併症が多く、虚血性腸炎との鑑別が重要ですが、稀に命取りになります。実際内視鏡をしていると、高齢者の大腸は非常に緊張が強く、その理由がまだわかりません。バイアスピリンなどの抗血小板薬を使用している患者さんも多いので困った問題です。この内臓の緊張が強いのは手足の緊張が強いのと同様、末梢神経障害なのでしょうか。

ではいざ出血した場合に止血をどうするかというと、注腸バリウムを行うことがあります。粘度の高い液体で、出血点を封じ込めるという古典的だが効き目のある方法です。

アメリカでは手術での治療も多く、私が勤務していた病院では毎週のように症例がありました。

日本では保存的に治療をすることが多いと思います。憩室を裏返して内視鏡で止血することは不可能ではありません。アメリカでの実験的なライゲーション(ゴムで結紮する)による治療を見てきましたが、それを応用した手法を日本でも知人が発表した事があります。しかし、その手技は労力に対して利益が少なすぎ、二酸化炭素などを使用しなければ長時間にわたる検査は患者への侵襲も大きく、あまりお勧めの止血法ではないような気がします。出血点が幸い特定できればクリップなどでの止血が行われます。大量出血の場合は血管造影も行われると思いますが、症例は多くはないでしょう。

ところで横浜市大時代お世話になった多羅尾先生が、先日の神奈川消化器で驚くべき発表をなさいました。「長期ランニングによって上行結腸憩室症が治癒した一症例」というものです。憩室症は治らないと思っていた私は、衝撃を受けると同時に感激しました。実際の発表を拝見できなかったのが残念ですが、今後は「憩室症は治るかも」と患者さんに積極的にアピールしていこうと思います。

2009/09/07

Evaluation~評価~

「Evaluation済んだ?」

これは、Detroit Receiving Hospital で Prof. Sugawa (私の叔父です) の元で研鑽を積んでいた時代に、毎日何度も耳にした決まり文句です。

Evaluation とは日本語で「評価」の意味で、患者さんの状態あるいは病態を把握するという意味があります。

欧米では先に評価があり、そして治療を行います。例えば吐血で運ばれてきた患者さんがいるとして、どのくらいの血液が失われたかをまず評価します。そして、その結果血液の7割が失われた状態だったとしましょう。

ここで日本ですと輸血しながら急いで内視鏡をし、とにかく止血しようという事になります。しかし血液の7割が失われた状態では治療が失敗に終わる確率が高いので、欧米ですとまず失われた7割のうち半分でも輸血してから内視鏡をしましょうという事になる。日本では評価するまで待てない、名人芸で何とかしてしまおうとする。そういう違いはあると思います。これは哲学の違いであって、比べることは難しいかもしれません。でもそういう違いがあるという事は知っていても損はないはずです。どちらが良いとか悪いとかではないと思います。期待値の差はわずかです。

実際日本の患者さんは沢山の恩恵を受けます。日本では「診断即治療」という東洋的な考えがあります。評価はしないでも取りあえず薬を投与してみて効果があるかどうかで診断が正しかったかどうかを判断します。治療が非常にスピーディで、医師の勘に頼る部分は大きいものの医療費も安く、時間もかかりません。日本の風邪の診療など、まさにそういう発想です。

アメリカだと「血液培養した?」が合い言葉になります。もちろんempiric therapyという便利な言葉はあって、予測にしたがって最適だと思われる薬を出すというやり方をしますけれど、基本的にはまず評価ありき、です。

「診断即治療」「評価と治療」それぞれに良い点がありますが、問題は前者は失敗した場合の軌道修正を考えねばならない点、後者はやたらと医療リソースを使う点です。医療リソースを使わずにすばやく評価できるとするならばどうでしょうか。それが最強の医療と言えないでしょうか。

ここまでは前置きで以下に実例を示そうと思います。

胸焼けに対する、一般名Mという薬を使うときの注意点についてです。

Mという薬には、実は胸焼け、すなわち逆流性食道炎に対する適応はありません。あるのは慢性胃炎の諸症状の改善および、消化管検査の前処置薬としての適応のみです。それがなぜ逆流性食道炎に使うのか私は知りません。しかし非常に多くの病院で胸焼け症状に対してMが処方されるようです。一般的には消化管を良く動かすとされているからなのでしょう。

ところで胸焼けで医師からMを投与された患者さんが心窩部の激痛を訴えて救急外来を受診しました。2度受診してあまり良くならないということで当院に受診されたのです。この方の訴えを良く聞いておりますと、胸焼けだけではなく心窩部痛もあったようなのです。それで私は考えて超音波検査を行いました。


胃壁にずっと空気の泡が貼りついている時はその部分はびらんか潰瘍になっている所見です。これは胃の前庭部でその部分が腫れており、典型的ではないけれどAGML(急性胃粘膜病変)に近い状態と思いました。ピロリ菌がいないことはわかっている方で、内視鏡の必要は恐らくありません。

胃の出口や十二指腸で炎症を起こした場合に胸焼けを訴えることは良くありますが、それで逆流性食道炎と判断してはまずいのです。逆流性食道炎スコアなどというものに頼ると失敗するでしょう。PPIだけを出すならばまだしもMを処方してしまったために蠕動刺激により痛みが増悪してしまい胃痙攣の如き症状を訴えたのだと考えました。

診断即治療をする場合には増悪させないような処方を選択する。あるいはそこに単純且つ効果的な評価を加えてより病態にせまった投薬をすれば喜ばれます。エコーによる消化管診断は病態にせまるという意味では、簡便、安価、安全、効果的、すべての特徴を備えた必携の検査法になりつつあると考えます。

2009/09/05

検診で「胃ポリープ」と言われました

胃のバリウム検査などで「胃ポリープ」という病名が書いてある場合、絶対に心配してはなりません。なぜか。

今、胃ポリープとされる病変のほとんどは「胃底腺ポリープ」だからですし、その他のポリープであっても慌てることがないからです。


■胃底腺ポリープはピロリ菌がいない人にみられるポリープで、一番頻度が高い。

胃の前庭部(出口近傍)で作られているガストリンというホルモンがあります。ピロリ菌がいる人といない人で比較しますと、ピロリ菌がいない人では前庭部に炎症が起きないのでガストリンがよりたくさん産生される事が観察されています。
若い人々の多くはピロリ菌がいません。ピロリ菌がいなければ組織内ガストリンが上昇します。ガストリンが多ければ胃底部の粘膜が刺激されて増殖する。この増殖が粘膜のぷくりした膨れとして観察されます。まるで風船のように中に胃液を含んだ嚢胞状の膨らみが同時多発的に出現します。この膨らみを「胃底腺ポリープ」(fundic gland polyp: FGP)と呼んでいるのです。

ピロリ菌が感染していないとすでにわかっている場合、あるいは背景の粘膜に萎縮がない場合、胃にポリープがあると指摘されたらほとんど胃底腺ポリープです。(例外あり)

ピロリ菌が感染していても、ガストリンが高い場合や、同じく胃粘膜の増殖を刺激する女性ホルモン(Estrogen)が多い場合、あるいは増殖にかかわるβカテニンという遺伝子の異常がある場合も同じく胃底腺ポリープを認めることがあります。

私の個人的なデータでは、ピロリ菌の非感染者、女性に限ると55%以上にこの「胃底腺ポリープ」を認めています。男性は45%です。さらに色素を使用して1mm程度の大きさのポリープを頑張って探すともっと見つかります。ピロリ菌非感染者のほぼ全員にもともと「胃底腺ポリープ」があるのではないかと思うほどありふれた所見です。

■その他のポリープも一刻を争うものはないが、正確な診断が大切だ

一般にピロリ菌が感染している場合に見られるポリープは、幽門腺が増殖した「過形成性ポリープ」が多く、背景粘膜や位置、形状などからバリウム検査で鑑別するのは難しい事ではありません。従って「胃ポリープ」などという曖昧な呼び方は止めて欲しいと思っています。(さすがに遠慮があるのか、最近は「胃隆起性病変」というさらに曖昧な呼び方をしています)

さて、胃ポリープとされてしまう疾患には、鑑別が容易な「過形成性ポリープ」の他にどんなものがあるのでしょう。粘膜下腫瘍というものがあります。これは1cm以下ではあまり問題にはならず、しかも形態的に鑑別も可能で、胃ポリープと呼んではいけません。「腺腫」(この場合腸型腺腫)も診断は極めて容易です。もちろんも診断は容易で、わざわざポリープとは表現しないはずです。

カルチノイド胃型腺腫といった、医者を悩ませる病変がない事はないのですが、頻度としては医者が一生かかってカルチノイドが数例、胃型腺腫は見つかるかどうかという少なさからすると、素人のみなさんが「胃ポリープだ」と言われてそれを連想する事は合理的ではありません。

従って、「胃ポリープ」と表現されるような疾患に心配なものはなく、安心して良いですよ、と説明するのです。ただし、必ず一度は正確な診断を受けて欲しいと思います。正確な診断とは、美麗な写真を記録し、その写真を専門医が見れば誰もが納得するような、そういう診断の事です。

■こんな記事もあります。

胃底腺ポリープ:より詳しく知りたい方へ
胃底腺ポリープへの先入観と実際:そんなに男女差があるわけではないよ、という記事
ピロリ除菌で胃ポリープは消えるか:一般的に過形成性ポリープは消失します
確定診断:この言葉が一人歩きしているようなので

■今後こんな事を書きたい

ピロリ菌陰性者に多い、胃体上部~噴門部の過形成性ポリープについて
胃底腺ポリープが増えるようなPPIの使い方は美しくない




2009/08/28

抗凝固療法

抗凝固療法がわからない人は当ブログの読者にはおられないと決めつけて話を続けます。

抗凝固療法のひとつとしてアスピリンを使ったりしますが、単独で使うよりも二剤以上の抗凝固薬を併用して使うと非常に合併症(要するに消化管出血)が増加するため、PPIの併用が推奨(というか、必須?)されているわけです。(「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン」第2版2007年4月)
当院はアスピリンを処方するときに粘膜保護薬は同時処方していません。粘膜保護薬には消化管出血を予防してくれるという証拠がなく、その実感もないためです。(胃のびらんを抑制できる事と、消化管出血を予防できることは同義ではありません)実際に、NSAIDSで潰瘍になりやすい人は、タバコを吸うなどの危険因子があるか、あるいは胃の防御をプロスタグランディンに依存するような個性があるような人と思っています。ただし、NSAIDSで胸焼けなどの症状を訴える場合はあり、同時に対症的な薬を処方する場合はあります。内視鏡をする機会がたまたまあり、必要性がありそうだと判断した場合にはPPIを処方しています。しかしアスピリンのみでPPIが必要になる人は当院ではまれです。恐らく重篤な血管合併症がある患者さんが少ないからでしょう。

さて、数度経験があるので注意を喚起したいのが、他の病院でNSAIDSが処方されたり、OTC(市販薬)のNSAIDSを服用したりというケースです。アスピリン投与中にこれらの薬を飲む場合には、上に示した二剤併用と全く同じリスクになってしまいます。つまり、PPIを使わないと消化管出血の合併症が多くなります。粘膜保護薬はこういうときには無力だと思います。命にかかわるようなメレナ(胃や十二指腸から出血して黒い便が出ること)は経験がありませんが、ヘモグロビンがガクっと下がるメレナは時折経験があり、聞いてみるとOTCを使ったり、他院で痛み止めをもらったりしているわけです。お薬手帳も持ち歩かねば無意味ですし、持ち歩いていても処方先で気づかねばそれまでです。大抵その時の出血は速やかで、服用後すぐに出血することが多いと思います。内視鏡で見ると浅い潰瘍であることがほとんどです。

したがって、抗凝固薬を服用中には、市販薬の風邪薬や痛み止めはPPIを服用していない限りは使用を避けるように指導します。あるいは他院で痛み止めを投薬されたときには当院でPPIを処方するのでそれまで服用を待つようにお願いしています。しかしこうした予防的な指導というのはなかなか周知するのが難しいというのが現状です。(電子カルテの本来の強みはこうした事がどの病院や薬局でも可能になる点。現状は機能評価に有効な仕組みがなく、使う側のスキルが伸び悩み、その潜在能力が十分に生かされていないだけです)

(2009・8・29 いくつかの「坑」⇒「抗」に訂正しました。ご指摘感謝します)

2009/08/24

便潜血陽性

便潜血検査は、その感度が期待されているスクリーニング検査です。

大腸癌を見つけるための検査です。

偽陽性が多くたって良いのです。偽陰性が困るんです。

便潜血検査が陽性だからといって、大腸癌ではありません。それは偽陽性が多いと言う事です。陽性でも間違ってる事が多いという事です。それで良いんです。

そして便潜血検査が陽性であれば、若干大腸癌である可能性があります。感度は決して高くはありませんが、500円だし患者さんに侵襲がない検査なので許されます。

便潜血検査は感度だけが期待されている検査です。(統計のマジックがあって、癌から見てしまうと、感度特異度ともに高くて、さぞ使える検査という風に解釈ができますが・・・)したがって、便潜血検査で、(+)、(-)となったときに、「癌があるとは思えないから、じゃあもう一度便潜血検査をしてみましょう」便潜血が陽性になったので再検査をしてください」という人は、全く統計というものがわかっていません。もし再検査が陰性になり、それを陰性と判定するのであれば、そもそも便潜血検査を行った事自体が間違いです。最初から陰性にしたいのならば、検査をしなければいいのです。(+)、(-)となった時点ですでに陽性なのですから、それ以上繰り返す事は無意味です。

最初から大腸の精密検査を受けたくない、あるいは検査をしてあるとか、全身状態が悪くてそもそも検査の適応がないのならば便潜血検査はしない、受けない、これが重要です。

では80歳以上の高齢者や、30歳以下の若年者、あるいはワーファリンなど抗凝固療法中の方に便潜血検査を行う事が適当なのでしょうか。これについては偽陽性率、偽陰性率、感度、特異度、多くの統計では除外されている母集団ですから算定不能で、ノーコメントとします。

一方、特異度、感度ともに高く、偽陽性、偽陰性が少ない大腸内視鏡検査後に便潜血検査を行う事も無意味です。大腸内視鏡検査が100%でない事は認めますが、便潜血検査にはそれを覆すほどの説得力はありません。

すべての検査には、必ず偽陽性、偽陰性などの側面があります。それを知らずに検査の予定を立てたり、要らぬ心配をしたりすることはやめた方が良いと思います。

2009/08/21

病変とその背景

これはたぶん副甲状腺だと思うのですが、通常甲状腺と同じエコーの吸収量なので大きくなっても認識できないことが多く、これはたまたま見えたのではないかと思います。症状はありませんでしたが、高感度PTHは上昇していました。CEAなどは調べていません。


内視鏡を教えるときに、貧血には本当に気をつけなさいと言います。
そもそも癌の色調変化は血球の色に由来する場合が多いのです。
老人、あるいは女性では貧血があってそのコントラストの変化が少ないことが非常に多い。
偶然目の中に変化が飛び込んでくるなどという幸運を待つのではなくて、背景粘膜に貧血があったらあらゆるテクニックを駆使して病変検索をしないと容易に見落としてしまうのです。

脂肪肝が背景にある場合、血管腫を見逃すならばまだしも、やや高輝度の早期癌が見えないこともあります。背景がコントラストをつけてくれる場合は良いのですが、逆にコントラストが低下する場合もあって注意が必要なのです。

大腸ではメラノーシスがあるとコントラストは上昇してポリープが見えやすくなります。ただし、メラノーシスというのはアントラキノンという色素による粘膜の着色で、それは下剤でして、それを連用している患者さんは必ずしも大腸検査がしやすいわけではありません。したがって喜んではいられないのです。

色々な病変を見つけるためにはその背景の理解が必要だということです。人間の目というのは相対的にしかものの判断が出来ませんから。

この話は、医学だけでなくあらゆる事象に適用される、社会に共通する法則のようにも思います。

2009/08/02

お休みと混雑状況

当院の休暇は私よりも事務が詳しいので電話で聞いて下さい。

上部内視鏡は10年にわたる「胃底腺ポリープが診断されたらフォローしない作戦」「除菌後徐々にフォロー間隔をあける作戦」が功を奏して検査は数日先に予約が可能です。むろん緊急時(医者から見た緊急という意味)はこの限りではありません。
下部内視鏡はもともとモチベーションが低いので・・・。予約は1-2ヶ月先までいっぱいです。

いつ空いているのかという質問が多いのですが、天気予報と同じで当たりません。


図でお示ししたように、当院では2回以下の受診で済んでしまう患者さんが60%です。
また、毎日受診している患者さんのうち、2回までの受診という人が26%を占めています。1/4は新患に近い患者さんだという事です。
3ヶ月に一度受診する人(年4回以上受診)を「定期的な受診者」と定義すると、「不定期の受診者」つまり3回以下の受診という人々は36%です。

定期的な受診者の率が低いのです。

初診の患者さんを拝見すると話を聞くだけで随分時間がかかりますし、みなさん病気になるタイミングは予約できませんから、いつ混んでいるかどうかの予測ができません。

ということで、いつ来ても混んでいるというわけです。

年間10回以上受診しており、症状容態の安定しているほんの一握り(わずか10%)の患者さんの忍耐力に本当に感謝いたします。

2009/07/25

どうして足がつるのか

「どうして足がつるのか」の、「どうして」は、「足」にかかっているのか、「つるのか」にかかっているのか、あるいは言外のどこかにかかっているのかで答えは変わってくるのでしょう。電解質の濃度が変化して細胞膜の安定性がどうのこうのって説明しても自分がわかってないわけで。芍薬甘草湯が効くのだからカルシウムチャンネルが開きすぎたりするんだろうとは思うのですが説明しても「だから何?」と言われるのがオチでしょう。

ただ、気づいたのです。

ふにゃふにゃの人は、足がつるとは言わないようだ。

もともと足が細くて、運動もしない、そういう人が足がつると言うのをあまり聞いた事がない。

そこでこんな答えを用意してみました。

「もともと運動が得意だとか、健脚だという人が、年をとったとする。筋力は低下するのに、まだまだ若いつもりの頭からの命令はその低下した筋力を超えたチカラを要求すると。すると痙攣してしまうんじゃないでしょうか」

などと言いますと、「健脚」だとか言われて悪い気はしないようで、素直に納得される方が多いようです。

「じゃあどうすれば良いのでしょう」という問いに対する答えは、「自分の筋力を知ろう」です。あるいはずっと筋力を維持する?

夢の中でスーパーマンになっていると夜中に足がつってしまうのでしょうか。私の場合、伸びをするとそのまま足がつります。もっと上品に伸びをすれば解決です。実際のところは芍薬甘草湯で解決です。カルシウム拮抗薬に予防効果があるのかどうかは知りません。[このリンクを見ていると効きそうな気もしないでもありませんが]

PPIと膵炎

心窩部痛にニトログリセリンが効いて、それが実は胆石だったとか、逆流性食道炎だったとか言う話は以前からありますが。

心窩部痛にパリエットが効いて、それが実は膵炎だったときには案外しゃれになりません。

なので、逆流性食道炎のファーストチョイスは最近PPIじゃなくなりつつあります。

ちなみに逆流性食道炎に効く薬は沢山あります。

PPI・・・萎縮がない人とか除菌後の人に適応があると思います。(もちろん例外あり)腎障害があるときにはH2RAよりも使用しやすい薬です。各種のPPIで薬剤への感受性、薬価は違うのでその特徴を見極めながら各人にあったPPIを投与するのが通だと思います。PPIを使用しすぎた時の胃や消化管内での雑菌の繁殖、骨粗鬆症の悪化には注意しています。

H2RA・・・夜間の酸分泌はヒスタミン依存です。夜間の酸分泌を抑えたい時にはPPIよりも効果があります。また効果の立ち上がりが早いので、ファーストチョイスとしても良い薬です。使用方法はその切れの良さもあり、オン・デマンドです。PPIほどではないけれど、カルシウム吸収を抑制します。プロテカジンには逆流性食道炎の保険適応はありません。

制酸剤・・・これらの中にはカルシウムを吸収しやすくする薬があり、PPI、H2RAの悪い効果を帳消しにしてくれるかも。と言うことで併用すると良いことがあるかもしれません。速効性はあり、痛み、しみる、などの症状をすばやく取ってくれる場合があります。

蠕動促進薬・・・ガス◯チンは全く悪化させることがあるので要注意です。患者さんは黙って逃げます。逆流性食道炎には、食道が痙攣するタイプとそうでないタイプとがあります。便秘に麻痺性と痙攣性があるのと似ています。痙攣するタイプの患者さんに投与すれば症状を悪化させます。これを理解しないで全員にこの手の薬を処方しておいて不思議がっていてはいけません。そういう患者さんには逆にブスコパンを処方して効くことがあるのです。頭を柔軟にしましょう。

私の隠し玉・・・ガスコン。要するに逆流性食道炎の生理は単純ではないのです。どうして大して圧もかかっていないのに、胃からのどへ胃酸が逆流するのですか?そんなのおかしいではないですか。LES圧が低いだの高いとか言う前に物理的にどうして逆流するのか、考えなければ。考えられるとすれば表面張力です。つぶれた食道内に胃酸が進入した時、比較的すばやくのどまで上昇してくるとすれば、それは表面張力によります。したがって、ガスコンで表面張力を下げれば良いのではないか。のどの症状や咳が強い患者さんには試す価値がある投薬だと思います。

アルギン酸・・・アルコール飲みすぎて味覚障害などある場合には、その微妙な甘みをまずく感じるらしく恐ろしくコンプライアンスの悪い薬ですが、この薬でないとコントロール出来ない場合があり重宝しています。人工イクラの原料です。イクラは胸焼けを悪化させるのに、人工イクラは胸焼けを軽快させる。人工なのにイイやつです。

他にも挙げればきりがないのですが、内視鏡時に食道を洗浄した水の挙動(流れ具合)も結構参考になることを追加しておきましょう。

結論から言えば、沢山の患者さんが来院されますが、シンプルにPPIだけ服用している患者さんは、当院では稀です。まずはダイエットからはじめます。あと、下手なウェイトトレーニングをしている方も多いので注意しています。

膵炎の話のはずでしたが、いつのまにやら逆流性食道炎の話になってしまいました。慢性膵炎はアルコール性が多いのですが、自己免疫性とやらも増加しつつあるようです。まだまだ診断・治療に進歩が望める病気です。

2009/07/22

センチネルループサイン

「お腹が痛い」と来院する場合には、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸と言った消化管が原因であるとは限りません。もちろん病歴が一番重要で、いつから、どこが、どのように、どのくらいの頻度で、どのくらいの時間、どの程度痛くて、便とか尿の性状がどうか、原因として、何を食べたのか、他の疾患はないか、薬を飲んでいないか、過去にどのような病気があったかなどを事細かに聞くわけです。

そして必要だと思えば腹部超音波検査を行うわけですけれど、例えば尿管結石の時には麻痺性イレウスになっていることが多く、尿管結石を念頭に置いていない場合にはついだまされてしまうことがあります。胆石発作の時、膵炎の時、それぞれその周辺の腸管の動きが麻痺して非常にガスが目立つようになってきます。腹部単純X線写真で「センチネルループサイン」と呼ばれるような所見を腹部超音波検査で認めることは本当にしばしばで、毎週のように見ることが出来ます。そしてこの時に痛みの質を聞いていると元の病気で痛いのか、腸管が痛いのか、その痛みが混合されて複雑になっている場合も多いのです。

  • <メモ> センチネルとは歩哨(みはり)の事です。見張りのように腸が痛いところにへばりついてループを描いているのでそう表現されたのでしょう。裂痔を繰り返すとその部分が盛り上がって白いイボになってきます。これを痔だと勘違いする人が多いのですが、違います。これはセンチネル・タグと言って、肛門の見張り番です。タグ=荷札のようなイボの形なのでそう呼ばれるのだと思います。胃酸が多い人には胃の入り口、噴門に過形成性ポリープが出来ます。これはピロリ菌の有無とは関係なく出来るポリープです。これもセンチネル・ポリープと言います。胃の見張り番です。ネーミングにはセンスが必要ですが、これらの命名はなかなかセンスがあると私は思います。

ちなみに腰椎椎間板ヘルニアの時にも腸管が麻痺している例がありますし、帯状疱疹でも同様です。

女性の下腹部痛と聞けばまずは女性器、しかし周期的な強い痛みと聞いて最初は消化管の痛みかと思いました。そしてエコーを行いました。


私はこの所見はフレッシュなチョコレート嚢胞だと思います。なぜフレッシュだと判断したかというと、少し時間が経つと卵巣嚢腫の中で血液が沈殿してくるのですが、ここではそれがないからです。たぶんこれが悪さをしていることは理解できるのですが、周期的にどうして痛いのでしょう。


すぐそばの腸管、S状結腸なのでしょうか、非常にガスがたまっています。周期が少し不定期で痛みがある瞬間を捉えられなかったのが残念ですが、センチネルループとでも言うべき腸管の麻痺、ガスの貯留はこのように腹痛がある場合一般に見ることが出来ます。そして以外と診断には役立ちません。しかしながら、そこが痛いのだなあ、詐病ではないのだろう、よほど痛いのだろうと同情を禁じ得ない所見だという点で重要だと考えています。

先程書いたようにこのような場合のお腹の辛さというのは原疾患の辛さ+腸管の辛さなのかもしれません。周期的に痛いのも、腸が周期的に収縮してこれが嚢腫の頚部を刺激したりするのかもしれませんし、腸自体が痛いのかもしれません。

したがって、ガスコン、整腸剤、消化剤を使用して腸管ストレスを減弱するような処方をしてみることが良くあります。文句を言われたことはないので、多少は役にたつのでしょう。

2009/07/17

食道アカラシア

昨日第9回西神奈川消化器カンファレンスで発表した食道アカラシアです。


まずこの一枚目の写真に意味があります。
私は余裕があれば梨状窩の写真、声帯の写真は必ず撮ります。
しかし撮っていないということは、すばやく検査をしなければと思わせる理由があったに違いありません。
反射はなかったのでそれ以外の理由です。
また、この泡を洗わずに写真を撮っているということは泡を洗える状況ではなかったということ。

すなわち食道に残渣が沢山あるために水で洗えば患者さんが誤嚥をしてしまい危険だと判断したということです。この泡だらけの写真には、「食道残渣があって、粘膜を洗う余裕がなかった」という意志がこめられていると思ってください。食道粘膜の白っぽさには注目しておいてください。


微妙に白っぽい粘膜と共に残渣をとらえた写真です。ここでも注意しているのはなるべく残渣が咽頭に戻ってこないようにスコープをコントロールすることです。誤嚥したら危険ですので吸引できるものは吸引し、無理なものはなるべく吸引せずに押し込むようにしていると思います。重力の関係で残渣は9時の方向に見えます。


胃内に残渣があるのはおかしいのですが、挿入時に食道から落ちたのだと考えています。残渣がありますのでいつものように水で洗浄はせずに観察しています。



噴門です。少し巻きついている感じはします。くるくるスコープを回したときにくっついてくる感覚なのでしょうが、実際にはあまり良く分かりませんでした。


抜去時は残渣が少なくなり余裕があったので空気を入れて拡張した食道を見ています。透視で見ると6cm近くの拡張がありました。
アカラシアは挿入時の残渣と、食道粘膜の白っぽい感じを見て確信を持ちました。以前に同様の所見を見たことがあったので。



<アカラシア・メモランダム>

Symptoms
  • 嚥下困難、悪心、嘔吐、胸焼け、しみる、食道痛、胸骨後方痛、せき、たん、体重減少
Type(X-ray)
  • Sp.(Spindle) / F.(Flask) / S.(Sigmoid)
  • Spindleタイプで発見するにはアカラシアをまず疑うことが大切かもしれません。
Grade
  • I. d<3.5cm / II. 3.5≦d<6cm / III. 6cm≦d
Endoscopic findings
  • 結腸様収縮波、憩室様陥凹、噴門のまきつき現象、めくれこみ
  • しかし、個人的には食道のglycogenic acanthosisおよび残渣も重要所見だと思います。当院ではアカラシアは2例目です。

2009/07/04

減圧弁

私は横浜市立大学出身なのだけれど、生理学は川上正澄教授一門の先生方の授業が面白く、魅力的で大好きな教科のひとつ。ところが勉強しない私は前期で落第点を取ってしまい、田中教授に後期に満点取らねば落とすと言われて頑張ったものの残念ながら満点はならず、肩を落としていたところが「出題ミスがあったので全員6点加算されます」のアナウンスがあったために進級させてもらえたのも良い思い出です。
呼吸生理は内科の大久保隆男教授の授業が難解で面白く、流体力学を駆使して説明する喘息を含めたCOPDの生理は臨床にずいぶん役立っていて、CO2内視鏡の安全性の理解に寄与している。

液体二酸化炭素だがボンベ内では当然ながら液体部分と気体部分が存在している。
我々の減圧弁は歴史があるので「~気圧」と表示されているが、みなさんが使用している圧力計はPa(パスカル)で表示されているはずだ。室温では液体二酸化炭素ボンベ内の気体部分の圧力は50気圧強である。今は単位系にPa(パスカル)を使用するので、50気圧が4.965MPa(メガパスカル)だから、だいたい5MPaという場所に圧力計の針があれば二酸化炭素ボンベ内にはまだ液体があるという事になる。

そして、ボンベの内容は当院で使っている7kgボンベで8リットルくらいだと仮定すると、二酸化炭素の液体部分が無くなったときに、二酸化炭素は(1気圧に換算すると)400リットルぐらい残っている事になる。400リットルあれば普通の内視鏡で10人は可能(1人2Lx10分=20L)だから、減圧弁の第一の表示の圧力はあと何人患者さんの検査が出来るかの指標になる事を知っておくと良い。

つまり圧力が下がり始めた時に「あと何人出来るか」がわかるわけで、その一番大切な一瞬を5段階とか6段階でしか表示しないオリンパスや富士フィルムの機械は「経験がない人が作ったなあ・・・」とややがっかりなのである。

減圧弁についている第二の圧力計は、その50気圧の圧力を下げるために使用する。
内視鏡の空気が出るところの断面積と圧力との兼ね合いで、二酸化炭素の流量が決定される。したがって、すべての内視鏡において二酸化炭素の流量は変化して差し支えないし、また送気バルブの押し方によって断面積は変化するので当然二酸化炭素の流量は変化して差し支えない。むしろ断面積の変化に応じてダイナミックに圧力を変化させ、流量を一定にしようと機械的な操作を加えることの方が愚かであって新たなエラーを生むのでやめた方が良い。所詮細かいコントロールは無理なのであってその部分は術者に任せる方がよほど良い。

さて、安全な二酸化炭素の流量は前回私は最大5.6リットル/分くらいなのではないかと試算した。実際には私は上部内視鏡では2リットル/分の流量で、大腸内視鏡では1.5から2リットル/分の流量で使用することが多い。そして、半分以上の時間は送気ボタンに触っていないから通常は1リットル/分以下なのだろうと思われる。

多くのオリンパス社製スコープでは、圧力を0.3気圧程度、つまり0.03MPa程度とすると流量が2リットル/分となる事が多い。当院ではそうしている。しかし、癌研究会有明病院ではさらに特注で酸素用の流量計をつけてあるから便利だ。減圧弁で0.05MPaとしておいて、さらに流量計のバルブで調節をするように提案し、ほとんどの先生がそう使用しているようだ。減圧弁で0.05MPaとすることで非常に安全に検査が行える。第二の圧力計はそのように使う。

理解できなければ、使用してはならない。

そしてオリンパスからも富士フィルムからも二酸化炭素送気装置が発売されている。(オリンパス→リンク)(富士フィルム→リンク

蛇足になるが、オリンパス製二酸化炭素専用送気バルブを使用したときには二酸化炭素を使用しない(ボタンを押していない)間に管内圧力が上昇してしまうので微妙なコントロールが出来ないし、そもそも減圧弁使用時には1000ml/min以上の送気を彼らは認めていない。(専用装置を使った時には一定以上の圧力が上がらないように調節されるのでOKだ)一方で少しゴムが劣化すると二酸化炭素を使用しない間もチャンネルから二酸化炭素が漏れ出てしまう。そう考えると通常の送気バルブの方がより細かい圧力のコントロールが可能である。微妙な送気加減を日頃から多用している先生には通常の送気バルブを使用する事を勧めている。

富士フィルムの場合、送気チャンネルがあったけれど管が細すぎて相当圧力を高くしないと二酸化炭素が入らず自分は諦めてしまったのだけれど、当ブログを読んで減圧弁を上手に使っている先生がおられる。

Pentaxは一方、送気チャンネルに二股のチューブを使用するだけで二酸化炭素が使用できる。

2009/07/01

花王サニーナ

いつのころからか、大腸検査の患者さんが増えてしまい、必然的にお尻の件について相談されることも多くなりました。当院では院長がもともと外科ですから肛門疾患に関しては詳しいのですが、数を見ていると消化器内科医の私でもだんだんわかってくるものですね。今では症状を聞く前にお尻を見ればすぐにわかります。(ちょっとだけ嘘です)

お尻に関しては悩みも人それぞれ。

しかし、これを勧めておいて間違いないという商品があり、それが「花王サニーナ」です。

サニーナは現在体験キャンペーン中です。(2009年7月16日で終了しています)

花王サニーナがピンチかもしれない、という記事も面白いので御覧ください。

類似商品もなく、しかしどのドラッグストアに行っても片隅に必ずある、ロングセラーでありベストセラーである商品だと思います。地味なヒット商品として、お菓子界のかっぱえびせんに匹敵する存在だと思っています。

中身はスクワランオイルにアズレンを混ぜただけのもの。

それでも応用範囲は極めて広いのです。

1) 排便前に潤滑剤として(内痔核や裂痔を予防する)
2) 排便後に潤滑剤として(清拭による刺激を和らげる)
3) 裂痔(きれぢ)の治療薬として(アズレンスルホン酸が裂創を治癒させる)
4) おむつかぶれにひとふき(オイルによる肌の保護)

それだけでなく手に塗ったり、擦り傷に塗ったりしてもかまいません。効果があります。

シャワーによる肛門の洗浄装置には確かに汚れの除去やマッサージの効果があるかもしれません。しかし、水は浸透圧の関係で粘膜を荒らしてしまいます。したがってあまり根本的な解決にはなっていないと考えますのでおすすめはしていません。

温水洗浄便座が自動生理食塩水製造装置と紫外線滅菌機能を備え、かつ前方から後方への洗浄を実現したら革命だな。

2009/06/24

フジノン Advancia

フジノンAdvanciaを使用する機会がありました。
使用スコープは上部がEG-590WR、下部はEC-590WMです。

オリンパススコープとの違いを書きます。
1) グリップはフジノンがやや細めです。
2) EG-590WRはオリンパススコープより5cmほど長いです。
3) アングルの遊び、角度については個体差があるので言及しませんが、すぐ対応出来ないというほどではありません。ほぼ同じ。
4) スコープはパンフォーカスですが、1cm以下に近寄った場合ピントがほとんどあいません。解像度は高いのですが、近くに寄れないのは難点。
5) レンズが大きいのか、送気がレンズの真ん中を通ってしまうためレンズ周辺の曇りを取るためにかなり苦労します。隅から隅までシャープな写真を撮るためにはGIF-Q260H以上の注意深さを必要とします。送水も同様でレンズの真ん中を通るのがわかります。一方拡散しないがために、胃内に生成される霧の分量はオリンパスよりも少ないです。
6) 上部内視鏡においては、吸引口が6時半方向にあります。一方オリンパスは多くのスコープで7時方向です。微妙ですが大きな差です。咽頭、食道を見るときには7時方向が咽頭吸引時に便利で、これはアジャストするのが少々困難でした。
7) 露出はオートでは少々ハレーション気味で、マニュアルでピークとし細かく調節した方が良い画像が得られます。一方、ダイナミックレンジを生かすならばガンマも調節できるべきで、もったいない画像です。ガンマを1.1にしてアンシャープマスクをかけました。
8) 構造強調は単純な計算式を使用しているためか、解像感に欠けます。オリンパスのA強調とほぼ同様です。Photoshopでアンシャープマスクをかける方がきれいです。色彩強調は彩度が上がるだけです。赤味が強くなりますが、それほどインパクトがあるわけではありません。
9) 以前から主張しているようにRAW画像保存から無限のFICE画像を生成して最適解を求められるような現像ソフトが欲しくなります。FICEは見ている以上の情報は得られないので、NBIとは全く違うものと考えた方が良いと思います。FICE時にハレーションがさらに強くなってしまうのは気になります。
10) EC-590WMは十分にやわらかく、挿入性はPCF-Q260AIとあまり変わらないと言えます。二酸化炭素は、EC-590WMの別チャンネルにつなげてみましたが、今回はうまくいきませんでした。PENTAXの場合二酸化炭素は使用できます。
11) 鉗子口のゴムは、フィット感がオリンパスとやや異なりますので最初は慣れが必要です。
12) スイッチのクリック感がありません。また、レリーズボタンのみでは写真を今回撮る事が出来ませんでした。(デモのときには写真が撮れるように設定する方が良いです)
13) 静止画にしたときに動画がPinPで映るのですが、これの場所を移動したりなど、色々したいことが検査中に出てきます。PinPの最適な場所は左上だろうと考えます。オリンパスでは左上が一番画像が歪む場所であり、重要なものは左上には持って来ない癖が術者にはあるだろうからです。

経鼻内視鏡はEG-530NWが発売されます。120度の視野角でも硬性部が短かったので十分でしたが、恐らく要望があったのでしょう。140度の視野角を確保し、2灯式ライトガイドなどPENTAXの良い点を取り入れているようです。送気送水ノズルがレンズよりも若干遠く、私が良く使うレンズ乾燥テクがつかえないのではと懸念されますが、なかなか魅力的なスペックです。

2009/06/22

高齢者には簡単に大腸内視鏡は勧められない

NCI キャンサーブレティン6月12日号の記事より。

もうすぐ邦訳も出ますが内容は、65歳~95歳までの高齢者について、保険診療にて外来で行われた5万例強の大腸内視鏡について解析したもの。5万例というのはかなり少なく、というか少なすぎてデータとしては不安なんですが、その中ですら1000例あたり6.9の合併症があったということ。そして、85歳以上では危険率が2倍以上になるということでした。ここで言う合併症とはおそらく大腸穿孔の事で、かなりの大事です。これ以外に、糖尿病、脳卒中、うっ血性心不全も年齢以外の危険因子であったという事です。

症例数は異常に少ないのですが、この結果は重要です。米国のがん予防特別委員会においても75歳以上の患者さんに安易に大腸内視鏡を勧めない様提言しています。

それぞれの健康状態、今までの大腸検査歴、今後見込まれる余命を加味して一人一人丁寧に大腸内視鏡をすべきかどうか、適応を吟味すべきだと思います。

高齢の患者さんに安易に便潜血検査が行われている事が果たして公衆衛生に寄与しているかどうかも検討されるべき課題だと思います。

2009/06/12

ピロリ菌の除菌治療でなぜ禁煙が成功するのか。

もともとやめる気がさらさらない患者さんは別にして、ピロリ菌除菌をする時に禁煙が成功してしまう患者さんが結構います。30%くらいは成功しているように思いますからなかなか優秀です。

ピロリ菌がいる場合、喫煙していると発癌率が非常に高いことが最近明らかになってきたようですが、それ以前から喫煙者で高率に除菌が失敗することがわかっていますので、当院では除菌治療の際にはタバコを絶対に吸わない約束をしていただいています。

そして多少はアドバイスするものの、そのまま禁煙が成功することが多いのには実は理由があるのではないかと最近考えます。

理由1
禁煙をしたときに、便秘で困る場合があるのだが、ピロリ菌除菌中はむしろ便秘しにくいという事実。

理由2
禁煙をしたときに非常に咳が増えるのだが、ピロリ菌除菌中は抗菌剤のおかげでその症状がおさえられるという事実。

もちろんニコチン欠乏によるイライラとか不眠はあるのかもしれませんが、少なくとも便秘と咳という禁煙に伴う二大身体症状は除菌により抑制されるわけで、これが案外簡単に除菌のハードルを超えていく人が多い隠れた理由であるのかもしれません。もちろん「病気を治さなくては」と言う強い決心が禁煙を成功させた第一の理由だと理解しています。

2009/06/05

楽な内視鏡の理由

AFP Newsに、「飲酒で攻撃的になるのは『低グリコーゲンレベル』も要因」という記事がありました。
内容は、
フィンランドのヘルシンキ大学が、アルコールで問題を抱えている男性と、問題のない男性で、インスリンとグリコーゲンのレベルを測定した。
前者のうち、その後8年間で飲酒後に暴力ざたを起こした人は、インスリンレベルは高く、グリコーゲンレベルは低いことが明らかになった。
研究チームは、以上から、グリコーゲンの生成を促すと同時に低血糖リスクを抑える物質を摂取することが、こうした衝動的な暴力行為に対する有効な治療法であると考えられるとしている。さらに、お酒を飲むときは食べ物も並行して摂取するという習慣も重要だと指摘している。
アルコールは膵臓からのインスリン分泌をうながす物質で、糖尿病患者では時に低血糖を誘発することがあり危険です。この研究では、興奮の結果低血糖になったのか、低血糖が興奮を来したのかは明らかにしていませんので本当に低血糖を予防することが(そもそもできるのか?)問題解決の糸口になるかわかりません。それはともかく、当院での事例もひとつのヒントになるかもしれません。

当院では上部内視鏡で意識下鎮静というのを行います。具体的には硫酸アトロピン、ジアゼパム、ペンタゾシンをそれぞれ少量ずつ静脈内投与します。この量は患者さんにより0~100%の間で増減させます。この方法はごくありふれたものと言えます。(当院の院長はもう40年以上もこの方法で鎮静を行っています)

私は他の病院でも内視鏡検査を行いますけれど、当院の内視鏡が不思議だなと思う点が何点かあります。そのひとつに、患者さんの体動が少ない事があげられます。他の病院で検査をすると、かなり体動で苦労する事がありますが当院ではそれがない。はじめから終わりまで、患者さんはピクリともしません。
同じように他の病院でもやっているのに、何が違うんだろうと思っていました。

しかし、このAFP Newsをヒントにするとこう解釈できます。すなわち、

当院では検査前に必ず甘いジュースを全例に飲んできていただいています。
だから血糖値が下がらず、したがって攻撃的にならないのです。

これはかなり自分的には説得力のある説明です。何しろ他院と当院との違いはこのくらいしかないのです。
当院院長はかなり頭が柔軟な元麻酔科医兼外科医です。アメリカで研修しておりますので、麻酔の知識はあちらで取得したものですが、麻酔前には夜12時まで飲食OK(no drink or food after midnight)と指導されていたようです。また、内視鏡時の飲水については全く問題ない事はわかっていました。ですから、以前より内視鏡当日の飲水は自由としていたのです。それがなぜ甘いジュースになったのか。
それを語ると長いのでやめますが、ジュースの中に必ず入る消泡剤が胃をきれいにするという経験、甘いものを飲んだ人の方が検査後明らかに調子が良さそうなどなどの経験知から次第に甘いジュース推奨に変わってきたわけです。

たしかにジアゼパムを使うと脱抑制になり攻撃的になる人がいても良いはずです。それはペンタゾシンやオピスタンで抑制できると考えられますが、それでも当院での体動の少なさはどうにも説明できず、どうも血糖値が重要なのではないかと思うに至りました。

大腸内視鏡で鎮静剤をあまり使わないのは痛くないからです。でも痛くないのに不機嫌という人は多いのです。それもおそらく低血糖なのでしょう。今度から点滴内にブドウ糖を入れてみようかと考えています。(下剤を飲み終わり大腸がきれいになったら、検査直前にはジュースなどを飲んでも良い事にしていますから、それを推奨しても良いかもしれません)

2009/05/28

定額給付金ドック

定額給付金の目的は、12000円という高いんだか十分なんだかわからない程度のお金を各業界が「よ~いどん」で奪い合う事にあります。
ものすごく知恵を絞ったものが勝利する。

逆に今まで甘やかされていた業界はぴくりとも動かないでしょう。給付金に対する反応の具合で業界のサバイバル能力がわかります。今回の騒動で医療業界が如何に甘いかが良くわかりました。

三浦市立病院のように「定額給付金でドックを受けてみませんか?」セットを販売しているところもありました。元気です。(当直したことありますが、ハードでした・・・)

他にもありましたよ。給付金コースを設定している医院が。私だったら何をするでしょう。以前から主張していますが、「~年齢」とかいう言い方は衒学的で出鱈目、うそっぱちですから、そういうのは測定しません。12000円以内で、検診とは重ならず、かつ役に立つ検査を挙げてみます。私は人間ドックは検診以上に役にたつどころか、良い主治医を探す機会を奪うだけで皆さんが期待するような意味はないと思っています。

さて、健康管理に重要なのは
身長、体重、日々の体温、血圧、尿所見、自覚症状、他覚所見、家族歴、嗜好品
です。これに献血でしてくださる程度の血液検査を加えたのが特定健診です。
絶対値が正常であるかどうか、よりも変化をみるほうが異常は見つけやすい。脳出血を若くして起こす方を遡ってみていくとやはり血圧が高めである、という場合は多いですし。
人間ドックはこれに肺のレントゲン、心電図、胃のバリウム検査、便潜血を加えて、これで4-5万円とると何か言われそうなので肝炎検査、血液型、腫瘍ま~か~なんか加えておく、程度のものです。

では私なら何を測定したいか。そして12000円以内で収めるにはどうしようか、と考えてみました。

■電解質検査(1000円)
重要な割りには行なわれない検査なんですよ。ナトリウム、カリウム、カルシウム、いろいろな情報がつまっています。採血したらすぐさま測定しないとだめなんです。ですから集団検診では無理な「プレミアム検査」の一つです。どうして人間ドックで行われないことが多いのか、おわかりですね?

■TSH(2000円)
甲状腺機能を高脂血症の際に測定しないのは片手落ちだし、いろいろな腫瘍のプロモーターとしての役割も注目されてますね。測定している人間ドックはあります。私はエコーで上甲状腺動脈の血流を見たりもします。(これは高いですよ)

■フェリチン(2000円)
以前に申し上げた、IRHIOという病態、あいかわらず日本では私だけが注目中??とにかく、脂肪肝とは相関しますから、私は大注目。最近、足のムズムズ病ではこれが低い人が多いことも言われてますが、低くない人が足がムズムズするからと鉄剤を飲めば、動脈硬化一直線です。どうして人間ドックで測定しないのかわからない検査のひとつ。超高級ドックがこれを売りにしてるのは見たことがあります。2000円。笑

■ペプシノーゲン検査、抗ヘリコバクターピロリ抗体(2100円:当院値段)
まだ導入していない自治体が多いですから。バリウム検査より良いです。

■シスタチンC(2000円)
CKD(慢性腎臓病)重要ですからね。特定健診で疎かにされているのが腎機能です。

■Lp(a)、RLP-C(8000円)
脂質代謝異常を語るなら、このぐらい見ておかないといけないかなあ。でも、毎月医師に保険診療で測定されている脂質代謝異常の患者さんをお見かけするとなんか辛いです。高いか低いかわかれば、それは目標設定にはなるけれど、毎月こういう高い検査をすることが意味をもつ患者さんは少ない。

■銅、鉄、セレン、亜鉛など金属(それぞれ1000円から5000円ぐらいまで)
なかなか測定する機会もないものでこの際だから・・・ビタミン類だって測定したいですよね。サプリメントを飲んでいる場合、「過剰」が問題です。

■CRP(500円)
これはどうして特定検診に入っていないのか不思議です。毎月外来で測定するならそれは免疫学的検査判断料じゃないだろ、とは思います。個人的にはIL-6はどうなのかと思いますが・・・。

他にも沢山沢山候補はあるでしょうけれど、例えばホルター心電図も良いですよね。
ちなみに当院ではこの類の健診はしていません。電話されても困ります。
あくまで架空のお話ですから、あしからず。

2009/05/25

発熱相談センターでしてくれること

発熱相談センターで相談したときに、新型インフルエンザではなさそうだと推測された場合、あるいは推測された場合でも、「医療機関を受診してください」と言われるそうです。

しかし、医療機関を受診する前にはインフルエンザに限らずあらゆる感染症で電話をしてから受診するべきだと私は考えております。

相談センターの方には一般論として「電話をしてから(医療機関を受診してください)」と説明してほしかったと思います。

では本当にただの発熱で医療機関を受診すべきかという問題はデリケートですので今回は言及しないでおこうと思います。

最近京都大学保険管理センターの「新型インフルエンザに対する緊急情報(第2報)」がきわめて知的であると医師内で評判ですが、その理由のひとつは「熱がある、あるいは熱っぽい場合は自宅で安静にしましょう」という極めて重要かつ基本的な一文が書かれているからにほかなりません。この一文は読む相手が知的でないと通用しません。書く方、読む方、どちらもが知的である場合に限り、「自宅安静」と書いてあっても重症化しそうな場合には「ああ、これは自宅安静ではまずい状況なのでは」という判断が自分で出来、医療機関に相談して受診するなどの正しい判断が出来るだろうと予測できるのです。そうでない場合には、「とりあえず医療機関を受診」という歯にものが詰まったような書き方、言い方しか出来ないのです。

病院に発熱で受診するとき、多くの人の共通した要望は「明日会社に行きたいから」です。風邪薬を飲んでも風邪は治りません。風邪の蔓延を手助けするために医療機関を受診することは残念ながら資本主義における経営の効率化、利潤追求という点でも間違っているのは少し勉強をした人にとっては自明です。風邪は自宅で安静にさせておく事が会社の利益を生むという判断が出来る経営者ばかりなら、しかし、こんなに不況にはなっていませんね。

2009/05/24

膵分離症、Pancreas divisum

デトロイトの叔父、Wayne State UniversityのProf. Choichi Sugawaの元に留学していたとき、印象深かった症例のひとつがPancreas divisum(膵分離症)でした。

膵臓は腹側、背側のふたつの部分から構成されていて、その二つは胎児の頃に合体してそれぞれの膵管は交通があるのが普通です。膵臓の出口は二つあるのですが、たとえそのどちらかが潰れてしまってももう片方から膵液が流れ出るために膵炎になることを防いでいます。ところが先天的にこの二つの膵臓が合体しても膵管が交通せずにバラバラのままの人がいます。これが膵分離症です。

欧米では6%程度、日本人では2%程度とされており、珍しくない状態なのですがもともと交通は非常に細くてERCPでは確認できるもののMRCPでは確認しにくく正確に診断できていないと思います。

副乳頭を生検し、膵炎を起こすのは恐らくdivisumの患者さんだと思います。

例えばこの膵臓分離症の人の副乳頭(副膵管の出口)に炎症などが起き、以後括約筋の異常が起きたと仮定しましょう。するとこの患者さんは周期的に強い腹痛を繰り返すことがあります。膵炎を起こしてくれればわかりやすいのですが、GERDと同様に痛みだけを伴う場合がありやっかいです。というか、日本では完全に無視されている病態だと感じています。

アメリカではクリーブランドクリニックなど、乳頭切除術を積極的に行なう病院があり、かなりの治療成果を挙げています。腹腔鏡的に乳頭切除を行なう方法もあります。世界は進歩しているのに、日本では報告がほとんどありません。一度完全に乗り遅れてしまうと、その分野の研究が日本で進むというのはなかなか難しいです。なぜかというと、いまさら膵分離症を研究してももはや世界とは太刀打ちできないし、日本では教授にもなれませんので医者の興味はそちらに向かないのです。

それでも臨床的には重要な概念のひとつであり、原因不明とされている腹痛の数%は膵臓分離症に伴う痛みである可能性があります。女性に多く、若いころから発症する事が多い病態です。

日本ではERCP後膵炎のリスクのひとつにすら挙がってこない膵臓分離症ですし、MRCPを撮ってみてもあまり所見がはっきりしませんので、なかなか診断が困難な上、治療は乳頭切除という大胆なものですから、敷居が高いのも無理はありません。

しかし診断に難渋している腹痛の患者さんがおられたら、一度コスパノンをお試しいただきたいのです。
胆管膵管系の痛み(尿管も)にはブスコパン、チアトンに比較してコスパノンが圧倒的に効果が高いのは有名だし、日本で「胆道ジスキネジア」としてコスパノンを長期投与されている患者さんの中に上述の病態が隠れているという印象を持っています。
周期的な強い上腹部痛、時にはトリプシンなどが上昇する、あるいは血清アミラーゼが上昇あるいは低下している、膵胆管系に一見して異常が見当たらない場合、胆管、膵管の括約筋機能異常が原因となって生じる痛みではないかと疑ってみる必要があると思うのです。また、通常の上部内視鏡では副乳頭が目立たないかを確認してほしいのです。

小児の膵炎が増えていると聞きますが、これはまた別の話かもしれません。(ただ、「遺伝性」とされる膵炎の中にはこうした形態異常は当然含まれるでしょう)MRCPの解像度がさらに上昇したり、食事前後で機能評価ができるようになったりするとまた別の展開があるのかもしれません。

2009/05/15

アメリカの開業事情から世相を占う

Medscapeを読んでいると、アメリカの開業医のコストカットの極意みたいな記事があった。

コストカットの第一は「電話代」
当院は電話代はそんなにかからないのだけれど、回線をなるべく切り詰めてお得なプランを選択しなさいなどと書いてある。さらには電話代の誤請求が多いとも。
電話代はたかが数千円だと思うけれどそれがトップに来てしまうということはアメリカの開業医はさぞ電話しまくりなのだろうなあ。確かに彼らはセルフォンでずっと話をしているよ、うん。

第二に「無駄なコストを切り詰めよ」
アメリカではすでに電話帳への広告はその価値がないなどとGoogleが盛んに主張しているらしい。当院では幸い広告コストはゼロなのだけれど、広告などの医療外コストはアメリカでは大きいのかもしれない。

第三に「労働時間を減らしなさい」
さすがにアメリカは雇用者の責任なんて関係ない。作業時間を短くするか、それに異を唱えるフルタイムワーカーが居たら辞めていただいてパートタイマーを二人雇いましょうなどと書いてある。そういう考え方が今回の不況の根だと思うけどなあ。

第四に「職員の健康保険を見直しなさい」
ご存じのように、クライスラー、GMがぺちゃんこになった原因は手厚い健康保険。職員の健康保険を安いものに切り替えたり、職員の家族はカバーしないように変更したりしてコストカットしなさいと書いてある。
全く鬼ですね。確かにクライスラー、GMは無駄なくらい福利厚生が充実していたけれどね。

第五に「医師のサラリーキャップ」
大リーグと同じで、医師のサラリーに上限をもうけるというもの。また、スタッフの給料は昇給はなしにして、ボーナスで実質昇給するように払うと良いと。年々、意味もなく昇給するのは確かにおかしいのでこれは良いのかな。

第六に「消耗品は賢く買え」
ま、当たり前なんですが。日本じゃ請求書だの、納品書だの、要求する上に、支払は2カ月後などという慣習を守っている病院が沢山ありそうですね。それじゃあ出入り業者から定価で買わざるを得ず、コストカットは無理ですね。アメリカでも同じような事情がありそうです。

第七に「患者さんとのコミュニケーションをWebベースに替えよ」
要するにダイレクトメールや電話をやめて、Webやメールにしろって事ですね。確かに若い患者さんの場合にはそれで十分ですね。このブログを読んでくれている患者さんもいるようですし。当院はもともとこのコストはゼロなので・・・。インターネットも、自分が個人的に払ってるので経費としては計上してません。計上すべきかもしれないけど・・・。

第八に「家賃を見直せ」
これはやってる人は見たことあります。この不況ですからやむを得ない動きかもしれませんね。
でも、動かせない設備などあるでしょうから、攻防が大変そうだなあ。

第九に「ひとりレイオフしなさい」
うわ~、とうとう。とにかく、お客さんが来ないんだからレイオフしなさいと。アメリカってきついですね。
「ご利用は計画的に」なんて言うコピーがありますけど、これじゃあ何も計画的になんて出来ませんね。

最期に「従業員に相談し、アイディアを求めなさい」
これが最初にあるべきじゃないでしょうかね。でも、そこがアメリカなのかも。
まずレイオフ、残ったもので何とかするという・・・。






ここで面白いなと思ったのが、

1) 集客の努力をせずに、現状のままでコストカットが基本。

2) 医師のスキル、リクルートについては全く不問。

非常に不況らしく現実的な提案だと思ったわけです。日本のコンサルよりははるかにましかな。

2009/05/01

発熱相談センター

秦野保健所より以下のアナウンスが出ています。

新型インフルエンザに対する対応(発熱相談センターを設置しました)

アメリカ・カナダ・メキシコ及び新型インフルエンザ流行地から帰国した人、帰国した人と接触した人などで、発熱などの症状を有する方はまず発熱相談センターに電話してください。
渡航歴のない患者さんの発生に伴って、監視が強化されます。
インフルエンザ症状のある場合の問い合わせ番号は変わりませんが、24時間体制となりました。
ただ、これは随時変わると思われますから、テレビとかラジオではなくてインターネットでの情報収集をお勧めします。テレビはソースのはっきりしない情報を垂れ流しているのが気になりました。

秦野保健福祉事務所
· 相談時間 
8:30~17:00 (17:00以降は下記 神奈川県保健福祉総務課へお願いします。)
· 電話番号
0463-82-1428
※5月18日追記:9:00を8:30に変更


神奈川県保健福祉総務課
· 相談時間
17:00~翌8:30
24時間対応
· 電話番号
045-633-3777
※5月18日追記:9:00-21:00だったのを変更
※5月21日追記:17:00-8:30だったのを変更
045-210-7442
※電話が増設されました。

また、海外渡航歴がなくても発熱者は医院には入らず電話でご連絡をお願いします。車での待機をお願いする場合があります。

2009/04/28

MCVが好きです

今日は厚木飛行場で夜間訓練が行なわれているのか合衆国海軍の戦闘機が非常にうるさいです。豚インフルエンザに対応しているわけではないと思いますが。

さて、Mean Corpuscular Volume (MCV) とは、平均赤血球容積の事です。
手抜きの健康診断では結果に書いていない事が多いのですが、血算を測定してあれば計算できます。ヘマトクリット値を赤血球数で何となく割り、「高いな」とか「低いな」とかを見るようにしています。細かい数字にこだわる必要はなく、大体で良いのです。

例えばヘマトクリットが40%で、赤血球数が400万個/μℓであったらMCVは100fl(フェムトリットル)です。感覚的にわかれば良く、100以上だったらMCVが大きいと判断しています。

例えば水風船を作る工場があって、でも風船が足りないや、という時にどうやって誤魔化すかというと、ちょっとずつ沢山の水を風船に詰めてしまい10tトラックで出荷してしまえば相手にはわかりませんよね。

ここで言う水とはヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質の事ですが、ヘモグロビンは足りているのに他の材料(風船)が足りない場合にはMCVが大きくなるという事です。このたとえ話、わかりやすいでしょうか。

ここで言う他の材料とはビタミンB群の事で、造血にはきわめて重要な栄養素です。

私は皆さんのMCVを必ず見ます。検診の結果が「正常・異常」という報告を口頭でする事なく必ず結果票を持ってきなさいと口を酸っぱくして皆さんにいうのはMCVは高くても低くても検診では無視されるからです。さて、MCVからは例えば以下のような事を考えます。(あくまで私の妄想ですから、あまり真に受けないように)

  1. お酒を飲みすぎている人はビタミンB群をアルコールを解毒するために消費してしまい、相対的にビタミン不足になる。この時にMCVが大きくなる。お酒を飲みすぎている人は食道癌や胃癌になりやすいので、MCVが大きい人は上部内視鏡を受ける適応がある。その前にお酒をやめてくれると助かります。
  2. ピロリ菌が居て萎縮性胃炎が高度になると、胃から分泌されるビタミンB12を吸収するための内因子という物質が不足し、結果としてビタミンB12が吸収されなくなるためMCVが大きくなる。萎縮性胃炎が高度になった状態では胃癌が増加するため、MCVが大きい人は上部内視鏡を受ける適応がある。
  3. 手術のあとで胃がない場合には同じく内因子が分泌されないのでビタミンB12が吸収できず、(内因子なんか要らないと発表している先生もおられると小耳にははさみますが、でも圧倒的に吸収量は違う)MCVが大きくなります。これはビタミンB12の注射をするための指標として大切です。(胃がない人にビタミンB12を内服で処方する事がどれだけ意味があるのかは知りませんが、結構世の中では気にせず処方されている様子です)

いずれにせよ、MCVが大きい場合には上部内視鏡を受ける適応があるのか判断する必要が出てきます。ところがMCVが大きくても、胃にピロリ菌はいないし、萎縮はないし、お酒も飲まない、ましてやA型胃炎(特殊な胃炎です)も何もないという中年以後の女性がいたりします。そういう方は大抵ベジタリアンであるとか、そこまでいかなくてもお肉を食べないという人です。ビタミンB12が不足しているのです。それはそれで、栄養障害の一つですからきちんと栄養を取りましょうと指導する事になるのです。ビタミンBの不足は、うつ状態の原因となったり、脂質代謝異常の原因となったりもするのです。

さて、血算を取りますとMCVの他に、MCH、MCHCという数字も計算できます。しかし、どうもMCVばかり見てしまうと言うのは依怙贔屓の一種です。Hb、Hct、RBCという指標があると、何となくHbという指標が依怙贔屓されるのと似ていると思います。

2009/04/27

エコーでは胃の小弯の方向が違う



エコーの画像を示します。
右側の写真。小さい水色の字でA+と書いてある部分が潰瘍です。胃は逆さになったダイアモンドリングのように見えますよね。その辺縁を撮影したのが左側の写真です。ダイヤモンドリングはちょと小さめになったもののダイヤは大きくなりました。これは潰瘍周囲の浮腫でぶ厚くなった胃粘膜です。ダイヤモンドリングは下を向いている、という事は身体では背中側に潰瘍がありますよ、という事を示しています。


場所は胃の出口のそばですから、前庭部です。前庭部の後壁にある潰瘍でしょうか?
いいえ、不正解です。

正解は前庭部小弯の大きな大きな潰瘍なのです。エコーで見ますと小弯は背側に見えるべきなのです。なぜなら大動脈ー腹腔動脈ー総肝動脈ー右胃動脈がある方向が小弯ですので、背臥位の状態で空腹であれば小弯は背側になるのが自然でしょう?背側になるのは後壁だろう、と考えるのは間違いだ、という事がわかりますか?

え?何を見ているかわからないって?

ただ、こういう立体感覚は消化管のエコー検査を行う上で重要だ、という事は知っておくべきです。



AplioXGはこういう画像もきわめて簡単に描出してくれます。高い機械を使うには理由があるのです。

2009/04/25

5月21-23日は内視鏡学会総会

5月21-23日は内視鏡学会総会が名古屋で開かれます。
四郎医師は22日に休診します。
邦夫医師は23日に休診します。
いつもの事ですが、混雑が予想されます。

2009/04/18

腰痛と便秘は表裏一体

経験した方ならわかると思うのですが、腰痛の時に排便をすると、腰がますます痛いですよね。いきめないから当然便秘になるのです。でも便秘をすると息むことが必要になりますよね。ますます辛くなる。いったいどうすれば良いのでしょうか。


[Tips] ご家族の方が排便時に後ろから腰椎を支えて差し上げると、上手くすれば無痛のまま息むことが出来るのですが・・・。

それはともかく腰痛の場合には最初から便秘する事態を想定しておかねばなりません。便を出そうと思って繊維質(例えば根菜類)を多く取ればガスが増えて腹圧が上昇し腰痛が増悪すること間違いありません。ここは普段とは逆に治療する。つまり「便秘をしてもお腹が張らないように。多少便秘することは覚悟して腰痛の急性期が過ぎるまでしのぐ」というスタンスの方がよろしいかと思います。

良くあることですが、ガスが増える類のお薬を飲んでいればそれはお休みした方が良いような気がします。それはセーブル®とかベイスン®など、糖の吸収を阻害する薬。コレスチラミン®やゼチーア®のような薬でどうなるかですが、ガスは増えなくとも脂が刺激になるかも知れず、私だったらお休みします。あとは低残渣の食事で腰痛が良くなるまでじっくりと経過を見るのが吉だと思います。

ガスコン®には消泡作用がありますが、細菌を培養するときに消泡作用がある物質を入れますと粘度が下がるために発酵しにくくなるようです。したがって私はガスコン®には消泡作用+大腸内発酵抑制作用があると考えて使用しています。(これは羊などにガスコン®を投与すると動物の体内でのメタンガス産生を劇的に減らすことが出来るという記事から勉強しました。人間でも同じなのでしょう)

乳酸菌は他の細菌の繁殖を抑えますし、発酵しても産生されるのは二酸化炭素ですからすぐに吸収されるためお腹が張りません。したがって、乳酸菌製剤とガスコン®は投与しておいた方が良いと考えています。

お腹の状態と相談しつつ、下剤を使うのか、浣腸なのか、戦略を立てますが毎日状況が変化しますのでその判断は容易ではありません。

便秘で夜中や休日に病院に駆け込むのは大変格好が良くないし、避けるべき事なので、よくよく先を見通して調節する事が必要です。便秘というのはたいそう知恵が要求される、奥深い状態と言うことが出来ます。

2009/04/13

Aplio XGと、DICOM worklist、つながる

Aplio XG と、CONQUESTのworklistがつながりました。

ログの解析では、Aplio XGからのクエリはCONQUESTが正常に受け取っていること。
そして該当者を吐き出していることまではわかりました。

東芝のSEさんにそのログをお渡しし、SEさんは手持ちのRISと、CONQUESTが吐き出すデータの違いを検証してくださいました。その結果、ISO IR 100は不要であるということで、CONQUEST側で設定を変更しました。そしてあとはstudy instance uidがあればという事でした。

study instance uidは、検証してみると1.2.392.200036ではじまればなんでも良いようですので、適当に設定するようなプログラムを作成します。

これでworklistが無事にAplio XGで表示されるようになりました。

ひとつだけ不満はreflesh modeを
clear and load scheduleではなくて、add new schedule(conventional)に固定したままSEさんがお帰りになってしまったことです。
これはclear and load scheduleでないと柔軟で使いやすい運用が出来ません。
次回直してもらうことにします。

ていうか、なんで固定にされちゃうのだろう。よほど信用されていないのでしょうね。
悪いことしそうなユーザーですからね。笑

2009/04/08

特定健診、エラーのとどめを刺す

特定健診をオンラインで請求している、特に実際には特定健診ではない生活機能評価部分を沢山オンラインで送っている当院の実績はなかなか貴重です。

最初のうちは、わざとらしく2カ月遅れてエラーを送ってくるペースに慣れず、全くエラーの原因が掴めないままにオンライン請求を続けるという醜態をさらしてしまいました。慣れてくると、エラーをわざと忍ばせて、どのような処理をしているのか探れるようにもなりました。

すると明らかに国保連合が間違っている、というエラーも見つかります。

例えば、特定高齢者候補者の場合です。これは候補者となりますと血清アルブミン、貧血、心電図検査が必須項目となり、これは詳細健診項目では無くなります。追加項目扱いになるはずなのです。ところが、実際にはどうかと言いますと、これは特定高齢者以外と同様に詳細項目扱いとしないとエラーとなってしまうのです。可笑しいですね。

次に市の追加項目です。
65歳以上ではアルブミンが追加されるのですが、説明書によれば追加項目は2058円となっています。ところが、国保連合会のコンピューター内では、1942円+114円と処理されていることがわかりました。つまり、1942円以上の追加項目がありますとすべてエラーとして判定されるということです。これは恐らくあちらが申請書を作る際に良く理解していなくてミスしたものと考えます。あるいは、当方への説明書が間違っているかのどちらかです。

わけのわからない特定健診というシステム。ようやく理解したかなと思ったころには、もう終わりです。パズルとしては悪くはありませんが、エラーなく通らないと患者さんに結果が行き渡らず不都合があります。総額が正しければ通す、(どうせ細かい仕様は説明が間違っていたのだから)くらいの姿勢を見せてほしかったなあと思います。

ところで、今回の特定健診では恐らく数百億円、お金が宙に浮いているはずです。会計上はどう処理するつもりなのでしょうか、興味があります。「使い切っちゃおう」などと他の事に使われちゃったりして。

2009/04/03

当院の寿命

特定健診のデータを使うと様々な分析が出来ます。


今回はそのデータを使用し、信頼は何年で形成されるのか、そして当院の寿命を計算してみたいと思います。

下のグラフの青線は当院の「新患数」の推移を表しています。
当院の院長は開業前、小田原で外科として相当数の患者さんを拝見していた関係で患者数が最初から多いことがわかります。そして毎年順調に新患数が減っています。2001年に上昇しているのは私が参加したからでしょうか。しかし全くの誤差範囲内であると思います。
このまま推移しますと、新患はあと10年後にはゼロに近くなるでしょう。対数グラフにプロットしてもやはり同様の結果でした。

この結果よりわかるのは、医院というのは開業からおよそ30年も経つとプラトーに達してしまい新患を受け入れることが出来ないという悲しい事実でしょう。これは当然の結果と言えますが、医師はどんどん供給されねばなりませんし、社会のためには継承するよりは新規開業の方が良いのかもしれないという事です。荒療治にはなりますが、その方が多くの患者さんを受け入れることが出来るかもしれないのです。

もうひとつの悲しい現実は、私が参加しようが全く医院としてのパワーが伸びていないという事でしょう。2人の医師が揃ったら、2倍以上の仕事が出来そうにも思いますが、なんと実際には1+1=1という結果。院長が働きすぎだという説を取りたいところですが、あまり言い訳が出来ません。


紫色の線は、昨年度健診を受けた患者さんが当院に最初に受診した年度を求め、それを新患数で割ったものです。例えば開業初年度に受診した患者さんのうち2.4%が当院に健診を受けに来ているという事を表しています。

すると開業から4年以内に来院した患者さんの数が多い事がわかります。最初に通った医院にリピートする法則でもあるのでしょうか。あるいは単純に、「近いから」というのがその理由の真実なのかもしれません。今回の数字には、「新患で受診して何年目に最初の健診に来ているか」というデータがありませんのでわかりませんが、印象からはやはり健診に来るのには、新しく受診してからある一定の年月が経ってからというケースが多いような気がします。このデータを毎年蓄積すると、「信頼を形成するには約13年を要する」などという法則を導き出せるかもしれません。

2009/03/28

下剤は単独でなく、整腸剤と投与した方が良いと思う。

大腸内視鏡で直腸に入ったときに「腸内細菌叢」の乱れがはっきりとわかる。
学会の発表で、大腸内視鏡前3日間の整腸剤投与で粘膜が洗浄しやすくなるとの報告を見たが、有意差があることと、満足いくほどきれいになることとは違う。個人的には14日以上投与した方がきれいになると思う。

特に酸化マグネシウム単独の長期投与は大腸の内側に頑固な膜(硝子様の偽膜と形容したいような)を形成することがある。これに気づいてからは単独投与は避けているけれど、世の中ではまだまだ単独投与がなされているようだ。これは気をつけた方が良いだろうと思う。

塩類下剤だけでなく、大腸刺激性下剤を使用する場合でも整腸剤の役割は大きいように思われる。

一般的にヨーグルトは栄養豊富すぎるし、酸化マグネシウムとの同時投与はミルク・アルカリ症候群を避けたいのでおすすめ出来ず、ぬか漬けも塩分の関係でおすすめ出来ないのが辛い。結局整腸剤を適当に服用していただくのが良いと考えている。酸化マグネシウムは胃内で酸と拮抗的に働くだろうから、それで整腸剤が生きたまま大腸に届いてくれれば一石二鳥である。

ところでミルク・アルカリ症候群と少し関係があるが、胃粘膜萎縮のある患者さんはカルシウム吸収が悪く骨粗鬆症になりやすい。何か胃薬を処方しなければならない事態になり、どれを選ぼうか迷ったときに、ひょっとして水酸化アルミニウムゲルとか酸化マグネシウムを投与すればカルシウムが吸収しやすくなり骨が強くなるんじゃないか、などという気持ちを込めて選び投薬することがある。あくまで気持ちの問題である。

Aplio XG と、DICOM worklist

東芝のAplio XGが搬入されました。
早速CONQUESTと接続し、worklistを引き出せるかと思いきやダメでした。
仕様表がないので、搬入した方にもわからないようです。

接続ログをユーザーが出せる様にしてくれれば、問題がサーバーにあるのかぐらいはわかるとおもうのです。>東芝さん

CONQUESTのworklistサーバーはデフォルトのポート5678を共有して使っているようで、Aplio XGからのworklist queryはちゃんとCONQUESTに届いています。(新しいサーバーを用意したのですが、またしてもGUIでのMySQLインストールはトラブル続きでした。悔しいけれどデフォルトのままインストール。MySQLのインストールはコマンドラインが確実だと思う)

worklist テーブルでの指定方法ですが、ModalityはUS、AETはAplio XG側でワイルドカード指定してしまえば関係ありません。START DATEは当日の日付を。START TIME は0000以上、235900以下という設定。CONQUEST側ではエラーが起きていませんから、Aplio XGでworklistを受け取れていない様です。マニュアルを読むと、受付番号(Accession number)の内容によってはトラブルが起きることがあるから、サービスマンに相談を、という事でした。きっと何か仕様があるのでしょうから、ログぐらい見せて欲しいものです。(注:教えていただいたのですが、Accession numberはある程度の桁数がないとだめらしいです。私は最初から8桁の番号を用意していたのでエラーは出ませんでした)

worklistがつながらなければ、Aplio XGも高価なガラクタに過ぎません。そのぐらい、シームレスに臨床とつながる事と、旧態然としたスタンドアローンで行う検査との差は大きいのです。内視鏡のファイリング(当方が作ったEndoDB2がめっぽう速すぎて他のファイリングは使う気にはなれません)を使っているとそれを実感します。あまりその点に関して、メーカーは積極的ではないようです。結局つながった顛末は→コチラ

Aplio XG からは、PIMSメニューでStore DestinationをHDDからServerに変えれば、DICOMサーバーに画像は直接飛んで行き、スピードはHDDに書き込むのと変わらずだいたい一秒以下です。これもマニュアルは不親切でした。

ところでK-PACSとCONQUESTをつないだ場合、その画像の読み込みの遅さが気になります。Osirixではどうなるのか、今度試してみようと思います。
(→DICOMルーティングを教えていただきました。コメント欄をみなさま御覧ください)

ダイナミクスからworklistの編集は簡単です。→リンク

これ使えば、CRだろうがCTだろうがUSだろうがすべてオーダリングは完了します。

2009/03/25

IKEAと100均、駐車場

新百合ケ丘の駅前、川崎アートセンターの隣に医療複合施設が出来ました。(川崎アートセンターのホームページの写真、奥の5階建てのビルがそうです。鹿島建設が作っています)
3階、4階には聖マリアンナ医科大学のブレスト&イメージングセンターが入居しています。神奈川県内にこうした施設が出来るのはうれしい事です。最先端のPETセンターも良いですが、女性の通いやすいブレストセンターが出来る事の方が社会には貢献します。
さて、私(33期)の高校の先輩(24期)である福本学先生が院長を務める「新百合山手福本内科」はこのビルの2階、4月1日に開院です。おめでとうございます。福本学先生は内視鏡学がご専門で、名手酒井義浩教授の元で研鑽を積まれた先生ですからその実力たるや推して知るべしです。安心しておかかりになれます。乳腺疾患がある患者さんは消化管疾患の定期検査が必要ともなり、良い組み合わせではないかと思います。他のクリニックにはない特徴として、'Virtual colonoscopy' (お尻から二酸化炭素を注入しすぐにマルチスライスCTを撮影後、コンピューターで計算し直して3次元化し、大腸内視鏡の代用とするもの。欧米では大腸内視鏡に代わる検査法として定着するだろうと思われます。(私が監修したNCIブレティンの翻訳記事、「『バーチャル内視鏡』は大きなポリープを検出できる」をご覧ください)なぜならば欧米には大腸内視鏡の名手がほとんど育っていないからです。日本は岡本平次先生をはじめ、酒井先生など名手が多く技術の普及に尽くされましたから安楽に大腸内視鏡を行う事が出来る技術が育っているのは幸いです。ただし、名手が行っても入らない大腸は実際にありますのでこうした技術が用意されているというのは特記すべき事なのです。しかも福本先生がお使いの電子カルテは「ダイナミクス」です。

ダイナミクスは「医者にも患者にもデータが丸見えの電子カルテ」です。「医療データは信頼性がすべてですので改竄防止のため、当社規定の方法で保存し医師にも患者にも見せません」という大手の言い分をそのまま信用し、あるいは信用せずともついていかざるを得ない情報弱者の医療機関が多いのには閉口します。改竄防止には改竄防止サーバーをひとつ置けば済む事です。(これについては以前に書いています)実際には彼らの「改竄防止」という'Magic word'の裏には「なんとしてでも利権を守るぞ」という気持ちが見え隠れしています。ともかくそれのないダイナミクスに惹かれる医師が多いのは当然でしょう。

さて、長い前置きは終了して今日はIKEA港北の話です。IKEAというのはその内容よりもWallmartのごとく創業者がやたらとお金を儲けているという事が先に情報として入ってきたスウェーデンのホームセンターです。ですからビジネスモデルに興味がありました。ちょっと行ってみましたが、商品のデザイン自体はたいしたことがありません。普通です。普通であっても、デザインを前面に打ち出したことがコンセプトとして成功している好例と言えます。普通デザインというのは企業が商品にプラス値段の付加価値を与える役割を果たしています。しかし、IKEAの場合、デザインを商品に施すことで大幅なディスカウントをしていると感じさせることに成功しているのです。実際にはディスカウントしていないにも関わらず、デザインを施すことで普通の商品を安く感じさせるというコンセプトは良いと思います。また、デザインを施すことで商品のライフタイムサイクルが結構いい加減で良くなります。綿密な商品計画をたてて追加発注をして、などという事はせずに一回大量発注したら売り切って終了というのが基本コンセプトと見ました。デザインがあるからただのバーゲン品にならないのです。また、在庫処分の値段のつけ方もきわめて合理的です。定価150円の商品に29円などという値段がつけられているのは、在庫がコンピューターで管理され、在庫として保持しておくコスト、廃棄のコストまで考えてシミュレーションしてつけられた値段ではなかろうかと思います。また客を一方通行に歩ませる戦略、接客の少なさ、恐らく検品などしていないであろう割り切り方、そして初期不良の多さを10年保証として隠蔽する能力は大したものだと思います。実際どんなに検品をしても輸送で破損は起こるものです。ですから思い切って客に検品を任せてしまうというやり方は悪くないと思います。もう一つ感心したことは、ものの値段が非常に細かくつけられているということです。これは100円均一と同様に、客のコスト計算をある程度麻痺させます。セットで10000円というポップももちろん書いてあり安さを強調します。もちろんそれには組み合わせの妙があるわけです。IKEAが強いのも当然と思いました。大きな規格を決めておき、デザイナーには自由に作ってもらう。これはLEGOにも共通するコンセプトかと思います。

さて、話が戻りますが新百合ケ丘の医療施設です。メディカルモリノビルと言うそうですが、ビルの隣に駐車場があります。なぜ地下でないのかはわかりません。そこの駐車場料金は30分150円と書いてありました。私は不思議に思います。なぜ、20分100円でないのだろうかと。Timesという駐車場は料金が100円単位で成功していると思います。50円のお釣りを用意しなくて良いだけでずいぶん楽だと思います。また、100円単位の方が客の思考を麻痺させます。どうせ50円のお釣りを用意するのであれば大胆に10分50円とすべきでした。

IKEAに行った直後にメディカルモリノビルに行ったもので、こんな下らない事を思いました。

ところで新百合山手福本内科には私が開発した内視鏡ファイリング、EndoDB2を採用していただきました。ありがとうございました。

2009/03/24

SCシリーズの困った状況について(2)

KOHJINSHAのSCシリーズは結局、WindowsXP SP2にしたり、WindowsVistaにしてもデバイスドライバ問題は解決しませんでした。

チップセットがそもそも組込み用のもの(US15W)で、Windows用のINFファイルの整備の不具合が原因らしい。Intelのドライバアップデートに期待するべきではないかと思います。

たとえば他のPCでは、Express Card ポートは
Intel(R) 82801G (ICH7 Family) PCI Express Root Port - 27D4
などと表示されており、
これにカードを指してpci.sysというデバイスドライバでつながると、
Texas Instruments のXIO2200Aを搭載したEC/34 IEEE1394カードは
PCI 標準 PCI Express to PCI/PCI-X ブリッジとして認識されますが、
SCシリーズでは
Express Card ポートが、Intel 標準 PCI Port
となっているので、カードをつなげてもXIO2200Aは
当然のようにPCI 標準 PCI to PCI ブリッジとなってしまいます。
同じpci.sysというドライバなのですが動作しないのです。

しかし、Express Cardポートなのですから、これは間違いです。
IntelはSCシリーズのチップセット(US15W)に対して新ドライバを会員向けにすでに公開していますので、そのうち一般にも公開されると思います。

Express Card が正しく動作すれば、SCシリーズの活動の幅は広がります。
今これを直すにはハードウェアのデバイスIDを使用してINFファイルを作ってやるしかないのでしょうか。

2009/03/15

SCシリーズの困った状況について

KOHJINSHAのSC3WX06FSについてです。
Windows XP HOME SP3なのですが、これが曲者。
IEEE1394関係はデバイスドライバ全滅のようです。
せっかくのExpress Cardスロットが泣いています。

IntelのXIO2200Aに関しては標準PCIE-PCIブリッジとして認識されず、標準PCI-PCIブリッジとして認識され、このドライバの変更がどうしても出来ません。このためOHCI Compliant IEEE1394ドライバも導入されないのです。

対処方法として、SP2を導入しようかと思いましたがこれも一筋縄でいかなさそうです。
たとえばPanasonicのCF-W5では容易に起動するOSインストール用のフラッシュメモリが正常には起動してくれません。

今日はテストとして他OSを導入してみる予定です。
EndoDB2でIEEE1394経由でキャプチャする予定の先生のために頑張らねばなあ。
バックアップとして、中古のThinkPad X60 Tabletの出物があったので注文してしまいました。これにはIEEE1394がついていますので。MLCの安いSSDに換装しても相当使い物になるのではないでしょうか。
むしろそちらの方が楽しそうです。

今後は注目のHPのタブレットPCのテスト、ASUS Eee Top(ただしこれは拡張性がないのでアウトのような気がします。VESA用の穴、EC/34ぐらいつけておくべきでしょう)のテストを行っていく予定です。
個人的には電磁誘導式、感圧式併用のタブレット、ThinkPadが技術的にはすごいなと思っています。

2009/03/02

続発性骨粗鬆症がおろそかにされているようだ

胃の切除後に続発性骨粗鬆症になるのは有名な話で、ただ体重が10%~20%ほど標準体重より低いのが普通であるためか
Gut 1991;32:1303-1307; doi:10.1136/gut.32.11.1303
Osteopenia and osteomalacia after gastrectomy: interrelations between biochemical markers of bone remodelling, vitamin D metabolites, and bone histomorphometry.
のような論文はあるものの、あまり強調されていないような気がする。

Mindsで公開中の骨粗鬆症ガイドラインによれば、
続発性骨粗鬆症の中にももちろん胃切除後は含まれているもののその扱いは小さいように思う。
そしてその発症機序は、骨吸収促進型でも骨形成低下型でもなく、カルシウム吸収低下によるものだと考える。

Scand-J-Gastroenterol. 1997 Nov; 32(11): 1090-5
Osteoporosis after total gastrectomy. Results of a prospective, clinical study.
これは胃切除後5年のフォローをした研究で5年間では差は出てこない。

Calcified Tissue International 2000 Volume 66, Number 2: 119-122
Osteoporosis After Gastrectomy: Bone Mineral Density of Lumbar Spine Assessed by Dual-Energy X-ray Absorptiometry
これは5年後以上経った患者さんを見た研究で、BMDが0.70 g/cm2を骨粗鬆症と規定すると男性では18%が、女性では71%がそれと診断されるようである。それは胃の部分切除であっても全摘であっても差はなく、一方で術後20年以上では高率に骨粗鬆症と診断されるようである。

30年前から消化性潰瘍での胃切除は減ったとは言え、当時十二指腸で胃切除を受けた患者さんがスクリーニング検査で骨粗鬆症のチェックを受ける時期に入ったといえる。したがって、潜在的に胃切除後の続発性骨粗鬆症に罹患している患者さんは多いはず。もちろん癌サバイバーも多い。

このところ胃切除後の患者さんにエビス○やら、ビスフォスフォネートが処方されている例を良く見かける。血圧の初期診療では二次性高血圧の除外が重要であるように、骨粗鬆症のガイドラインでも総論の最初に
  • 診断マニュアルでは,第一義的には低骨量の存在を確認する。
  • ついで,低骨量をきたす疾患や続発性骨粗鬆症を除外する。
とはっきり書いてある。
続発性骨粗鬆症の除外をきちんとする必要がある(こんなに沢山ある)ことを強調する必要があると考えている。

ところで、萎縮性胃炎の有無によっても投薬は大きく違うはずである。
とりあえず治療、ではだめである。病的な骨量低下については患者背景を正しく理解し戦略をたてる必要があるのだ。

2009/02/23

KOHJINSHA SCシリーズをテストする

内視鏡中に
■この前の写真を見たいな
■今、どの部分の写真を撮っているのかコメントを入れておきたい
■生検の番号を入れておきたい
などの要求を満たすファイリングシステムが見つかりません。学会発表で見たことはあるけれど、製品になって出てきません。
しょうがなく作ったのがEndoDB2で、このシステムはタッチパネル液晶を使わないと本来の実力を発揮できません。なにしろ内視鏡中の右手は不潔ですから、マウスの操作が出来ない。なので、感圧式のタッチパネルを用いて、削った割り箸などを右手で持って触るのが無難だろうと。

今まではそれだけで10万もするのでお勧めしていませんでしたが、KOHJINSHAのミニPCの登場で少し変化の兆しが見えてきました。49800円でタッチパネル付きのPCですから。ASUSもEee Topというのを登場させますし、楽しみです。

7インチのディスプレイはあまりにも小さく、やはり辛いです。しかしタッチパネルは便利だし、某企業系病院から「ン万円」しか絶対に出せないと言われて今システムを組んでいるのですが、普通にシステムを組みますと私が自腹を切る羽目になるのでそれだけはどうしても避けたく、なんとしてでもこのミニPCを用いたシステムを成功させねばと思っています。

チューニング次第で画質もなんとかなりましたし。

細かい仕様、チューニングなどについてはまた後述する事とします。

2009/02/21

生理食塩水を作ろう

注意:脱水の治療目的に使用する経口補水液(経口補水塩)を調べよう、と思って間違って開いてしまった方は、こちらのリンクへお進みください。

colon tree.jpg Kunio Ukawa 2008
目や鼻にしみる事がない、体液と同じ濃さの食塩水を「生理食塩水」と言い、便利なので良く我々は医療現場で使います。
例えば傷や身体の中の洗浄に使いますし、脱水になったときの点滴などの中身は生理食塩水です。

実は500ccの生理食塩水のボトルは定価が121円(2010/8/9現在、大塚製薬)しかしません。厳重な管理の元製造されて、偉そうに鎮座ましましている点滴のボトルも、洗浄用のボトルも、みなさんが飲んでいる500ccのペットボトルのジュース、しかもディスカウントストアで買う値段とほぼ同じです。

この生理食塩水は「うがい」ですとか、花粉症で目や鼻を洗いたいときにも便利だし、傷口を洗うにも便利なので作り方を覚えておくと良いです。体液と浸透圧が同じなので刺激が少なく、しみたりしないのです。

用意するものは、500ccのペットボトル(キャップつき)、それから食塩です。アンデスの赤い塩などを使ってももちろん良いのですが、もったいないので安い食塩をお勧めします。

ペットボトルはあらかじめよく洗っておきます。ペットボトルに、キャップ半分~一杯弱の食塩を入れます。これに水道水を入れて良く振り溶かしましょう。ペットボトルのキャップにすりきりいっぱいの塩を入れて重さを測定したところ5gでしたので、一杯弱だと4.5g。それを500ccのお水に溶かすと0.9%の食塩水が出来上がります。この0.9%の食塩水の事を生理食塩水と呼ぶのです。(追記:2010/8/9 実測すると8gであったとのご報告をいただいて私も測定してみました。最近ペットボトルの薄さが変わったなあと思っておりましたら、キャップも変わっておりますね。より薄く、大きくなっているような・・・。十六茶のキャップで測定したところ、ご報告通り8gであり、スクリューが途絶える高さでちょうど5gであるようです。ご報告ありがとうございました

少しだけ鋭い人は「キャップのスクリューの隙間に塩が充填されているのかいないのかわからない状態で重量を測定しているだろうからそれが正確なのだろうか」と思うでしょう。その通りですが、いい加減で良いのです。濃度だって0.8%だろうが、0.85%だろうが0.95%だろうが、それで天地がひっくり返るわけでもないし、厚生労働省に変な書類を出して許可を取るようなものでもないので適当で良いと思います。

作り置きは出来ませんので、必要なときに作ってください。そして体温とほぼ同じ温度にするのが良いです。

お風呂に入るときにペットボトルを浴槽に入れておきますと、良い具合に温まります。これでうがいをしたり目を洗ったりするととても気持ちが良いのでお勧めです。「鼻うがい」も個人的には好きですが、全員にお勧めするものではありません。

女性が顔を洗うときにも生理食塩水で洗えばもっときれいになるのに、と思う事があります。
少なくとも私がエステサロンを開業したら、それを売りにするでしょう。

2009/02/16

内視鏡と射程距離とNBI、および胃腺腫

前回(といってもずいぶん前かもしれませんが)、内視鏡でIHb分布を見ることで、胃腺腫と腸上皮化生を鑑別するのをお見せしました。これは白色の病変が比較的認識しやすい場合には便利な方法です。ここからわかるのは、胃腺腫の表面は白色調に見えたとしても比較的血流が豊富だという事です。

今回は、胃腺腫がわかっているのになかなか見つかりづらい場合NBIが便利という話です。


この写真のちょうど真ん中ぐらいに胃腺腫があるはずだと思って見ているのですが、どうもはっきりしないまま写真を撮っています。以前の方がはっきりと白色の病変が見えたはずです。わからないまま検査を進め、また前庭部に戻ってきたところでNBIにモードを変えます。


すると中央部に茶色の領域が見えました。これが腺腫です。そこで同部位をじっくり見ると、見えてきました。


同じ白色といってもほんのわずか黄色調の領域が見えます。少し陥凹している印象で、辺縁がぎざぎざしています。そこでインジゴカルミン染色をしてみます。


これで全体像が見えました。ここですぐに拡大内視鏡に切り替え、必要があれば超音波内視鏡を行い、病変の評価を行うことができればカッコいいのですが、当院ではここまでが限界です。

なぜNBIで腺腫が見つけやすいのでしょうか。

  1. 表面が白色でも比較的表面の毛細血管が豊富な腺腫は、NBIで見ると茶色く目立ちます。これに対して腸上皮化生では表面の毛細血管は目立たないのでコントラストがはっきりしてきます。
  2. NBIには「射程距離」があります。非常に暗い光源なので数cm以上離れるとAGCがオンになっているにも関わらず見づらく、逆にAGCのおかげでノイジーで見るに耐えません。自然と射程距離内で見る事となり粘膜に接近しますから病変が見つけやすくなるのです。
普段良く見ているつもりでも、射程距離の長い通常光観察では見えてしまうために満遍なく接近して観察するということはなかなか出来ません。NBI観察は射程距離が短いがために、強制的に満遍なく観察せざるを得ないという意味でもなかなか有用なツールであると思います。

NBIがない場合、光源をあえて暗くして接近して観察してみると言う方法はどうでしょう。これも観察者の注意を惹起すると言う点で優れていると思います。

さて、接近して観察するときには見落としが怖いでしょう。自由自在に射程距離を変化させて観察できるNBIは非常に安心できるのですが、これがない場合、どのようにして見落としをコントロールすれば良いのでしょう。

熟練、というのは簡単な解決法ですが、QCの事を本気で考えたとき「熟練」という言葉ほど抽象的でいい加減な言葉はありません。

お勧めしたいのは粘膜を洗うことです。粘膜を洗っているともちろん粘液に隠れた病変がよく見えるのですが、私がメリットだと思っているのは自然と前後壁を良く見るし、粘膜に接近して、しかも余すところなく見ることができる点です。洗っていない部分がすぐにわかるので、「ああ、ここは見ていなかったな」という事が観察者には一目瞭然なのです。内視鏡検査のQCは非常に重要なのですが、観察者に気づかせずに、また観察者の熟練とは関係なく有用な手段となるのが、

NBI、および粘膜の洗浄

の二つであるという事をここでは訴えたいと思います。

粘膜の洗浄をする場合、フォルテグロウメディカルから発売されている粘膜洗浄装置をお勧めします。
十分な流量が確保でき、どのような内視鏡にでも使え、院内感染にも十分配慮しているという点で優れていると思います。

2009/02/09

ウルトラCの処方

肝血管腫が消えてしまった話を書こうと思いましたが、思い出したことがあるのでウルトラCだと思った処方の事を書きます。

逆流性食道炎があるのに主治医からブスコパンを処方されている患者さんが居たのです。当然逆に増悪するだろうと考えて質問すると患者さんは「効果はある」と言います。この時に思い出したのは東海大学の元教授である三輪剛先生が以前仰っていた話です。(三輪先生じゃないかもしれません。間違えていたらごめんなさい)
「あの、ブスコパンっていう薬はあんまり効かないんですよ」
「ブスコパンは、注射は良いんだけど、経口だと非常に吸収が悪いので、蠕動は全く止まらない。でもね、なんか良い感じに胃の幽門が開くんですよ。だから胃の痛みが取れるんじゃないかな」

なるほどなあとこの時は納得していたのです。しかしその後さらにこんな事実を知ったのです。
「胸焼け症状は下部食道括約筋の痙攣である」という論文がある事を兵庫医大教授であるもうひとりの三輪先生、三輪洋人先生が講演で仰っておられたのです。

これを聞いたときに私は逆流性食道炎を完全に理解したと思いました。つじつまが合う症例を沢山経験していたからです。

痙攣を抑制する事が実はブスコパンが効く理由なのでしょうか。しかし先程経口ではあまりブスコパンは吸収されないと聞いたばかりです。

ブスコパンがLESの痙攣に対して効果がある、あるいは幽門を開くことによって逆流を防ぐ、果たしてどちらが本当なのでしょう。(ブスコパン同様の効果があるハーブとしてミントがあります。ミントは胸焼け、腹痛、下痢などに効果があります。平滑筋のカルシウムチャンネルを直接阻害するようです。故黒坂先生からいただいたペパーミントオイルを胃の蠕動抑制に使っていたことは以前に書いたかもしれません。これについての論文は癌研病院の比企先生がお書きになっています)

一方、内視鏡の時にブスコパンやアトロピンを投与すると、下部食道括約筋(LES)はどうなるでしょうか。どうも単純にLES圧が低下するわけではないような印象を得ています。(単純にブスコパンでLESが弛緩するわけではない)

矛盾するようないくつかの事象が存在しますが、少なくともその患者さんにとってブスコパンが効く事は真実です。常識をうち破るウルトラCの処方だと感動した覚えがあります。

以来、逆流性食道炎にはPPIという古くさい考えは捨てました。
逆流性食道炎らしい患者さんを拝見したときに、それこそ何百通りもの処方が可能ですが、イマジネーションを働かせて働かせて、自分なりの知恵をふり絞ります。

それでもまだ、ブスコパンを処方する勇気は私にはありません。

2009/02/06

絶食と胆泥

胆泥の出来ている人があまり食べないと思われる食べ物の一例
素人さん向けに注釈:「胆汁」という消化液を濃縮して溜めておく「胆嚢」という臓器がある。胆嚢が長時間収縮する機会がないと胆汁がどんどん濃縮され、結晶化してしまう。これが胆泥である)

親戚が急性膵炎になってしまい、一週間程度の絶食が必要であった。そして退院した後も厳しく脂肪が制限された。軽い膵炎だったようで、CTやエコーでは変化はなかったようだが、退院後のチェックアップの意味もあり腹部超音波検査をしてみると胆嚢が緊満し、胆泥で満たされていたため驚くと同時に妙に納得してしまった。ずっと胆嚢が収縮する機会がなかったのであれば、当然の事であろう。(「お、言われた通りまじめに治療していたな?」と思ったのである)

そういえば、胆泥/胆石が出来る患者さんといえば、
1) 胃の術後・・・胆嚢が動かないから胆石が出来る
2) 糖尿病・・・自律神経障害+食事制限で胆嚢が動かないから胆石が出来る
3) やせた人・・・きっと食事を抜くのだろうし、脂肪も食べないのだろう。だから胆嚢が動かず胆石が出来る。
4) 太った人・・・古典的にはコレステロールリッチな食事をしている人には胆石が出来やすいとされている。(胆汁内のコレステロールもリッチになり結晶になりやすいから?)
と相場が決まっている。
家族歴も重要である。

このうち3)は胆嚢ポリープにも関わっているような気がする。胆嚢ポリープが出来ている人も、胆泥がある人も、たいていは「朝食を食べない」「食事を抜いても平気」「すぐ飽きるけどダイエットが好き」などのライフスタイルが共通するような印象を持っているし、肺炎をして2週間入院していた、などの病歴が直前にある事も多い。胆泥はコレステロールの細かい結晶で、これが壁面に付着しそれが核となって結晶が大きくなってくると胆嚢ポリープと呼ばれるのだろう。

だいたい、私自身が食事は抜いても全然平気、やせていて、でもコレステロールリッチな食事も好きと来ているから、胆嚢ポリープが出来るのも当然なのである。

胆泥はうまく胆嚢が収縮すれば自然に消える場合もあるけれど、そのまま結晶が成長して胆石になってしまうこともある。こうした細かい胆石がある時に、リンゴを毎日一個食べて2週間ぐらいしたらオリーブオイルを250ccほど飲めば全部消えてしまうと、昔ランセットで読んだことがある。リンゴに入っているリンゴ酸はウルソデオキシコール酸(UDCA)の様にふるまい、コレステロールの結晶を溶かしてくれるのだろう。素人が浅はかな知識で考案したダイエットは嫌いだけれど、リンゴダイエットが流行したときには、少なくとも胆石が出来ないダイエットだから、だまっていた。他のダイエットは胆泥やら胆石が出来る可能性がゼロではないので、実際プロスペクティブに観察してみたいものである。
胆石を溶かすといえば、細胞保存にも用いるDMSOをカテラン針で直接胆嚢に注射、というような論文を見たことがある。あっという間に溶けるのだろうけれど・・・自分には出来ません。

そういえば某高齢医師は粗食を勧めているが、なぜオリーブオイル30ccを毎朝飲むのか、「健康に良い」というだけで根拠を説明していなかったはずである。むろん必須脂肪酸の補給という意味もあろう。ご本人は気づいているのか知らないが、これは胆嚢を収縮させるためでもある。粗食には胆石が合併症としてつきものだけれど、それを予防するのである。30ccはなんとなく飲むのがはばかられると、それを嫌がってオリーブオイル以外を真似する素人がいるが、それは問題だと思う。

繰り返すけれど、多くのダイエットプログラムは種々の健康障害を生む。胆石は代表選手のひとつであるので留意しておいたほうが良い。

ちなみに親戚にはUDCA(商品名はウルソ)を投与したところ胆泥は溶解した。
膵炎で食事制限をするのは良いが、病態生理をよく考慮したほうが良い。もともと胆石性の膵炎だった場合にはそれほど変化をしない場合もあるし、人によっては急に胆石を形成し逆にこれが新たな膵炎のきっかけとなることさえあるのだ。

(2015/12/04追記)
抗生物質のセフトリアキソン(商品名ロセフィン)の副作用で偽胆石、というのが報告されていると教えていただきました。胆汁排泄されたセフトリアキソンがカルシウム塩を作るのだそうです。(胆汁中にカルシウムが多いのはイヌの胆石についてコメント欄において読者の方とのメッセージのやりとりがありますからなんとなくわかると思います)初期にしっかり胆嚢を収縮させれば可逆的だろうと思われます。
他に薬剤で胆石のリスクを上昇させるのはピル(可能性のみで疫学的には証明されていない)、クロフィブラート、オクトレオチド。肝動注化学療法は胆のう炎のリスク。エリスロマイシンとアンピシリンも胆のう炎を起こすことがあるようです。(Drug-Induced Gallbladder Disease, Drug Safety, January 1992, Volume 7, Issue 1, pp 32-45

(201/02/23追記)
リバーフラッシュというのがあるらしいけれど、あれは本当に胆石を排出させているわけではない一種のまやかしだということは化学がわかる人なら理解はできますね?^^
むしろ憩室がある人には危険なのでは?

2009/02/04

内視鏡時の反射抑制に鎮咳剤は使えるか

ツムラ麦門冬湯の添付文書を読んでいたところ、サブスタンスPに基づく咳反射を抑制と書いてあった。

誤嚥しやすい患者さんに、唐がらしのカプサイシンを含んだ飴であるとか、胡椒を口に含んでいただくとサブスタンスPが増加し咽頭反射が出やすくなる。そのことにより誤嚥性肺炎を予防できるという。

降圧薬であるACE阻害薬はサブスタンスPを増加させるため咳反射が出現することが良く知られているがこれも却って誤嚥性肺炎の予防になるので投与を推奨する先生もおられる。私も好きだ。

ACE阻害薬発売当初、麦門冬湯を一緒に処方したこともあった事を思い出した。



内視鏡検査のときに、日本人は非常に受容性が高くほとんど反射が出ないことと、誤嚥性肺炎が起きやすいこととは恐らく関係があろう。

反射が強い人は記録を取っているけれど、以下のような特徴があろうか。

1) 萎縮がない(GERDやDUもそう)>萎縮がある
2) 香辛料を使う>香辛料は使わない
 (ただし香辛料は全くだめ、苦手、という人は反射が強い)
3) 年齢が低い>年齢が高い

1)は酸がカプサイシン受容体を経由してサブスタンスPを増加させたり、炎症により過敏になっている可能性を考える。
2)は興味深く、最初中国人や韓国人の患者さんが非常に多くの鎮静剤を必要とすることから気付いたもの。香辛料を料理に使わない人ほど、受容性が高いような印象を持つ。
これはもともとサブスタンスPが高いため香辛料の刺激を許容できないと考える。
同じアジア人でも韓国や中国など香辛料を使う国の人ほど反射が強いのは、サブスタンスPが多く発現しているからではなかろうか。ただし全く香辛料を受付ないという人々はサブスタンスPが多いらしくて反射は強いようだ。
3)これは当然か。

関係ないがシンメトレルもドパミン経由でサブスタンスPを上昇させるから、反射が強くなるのだろうか。

喫煙者では反射が低下し、肺炎が重篤になることが多い。非メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性が高い。

一方咳反射のため普通のタバコは吸えない人がいる。ところが彼らはメンソールのタバコを吸う事はできる。これが大いに問題で、風邪をひいていてもタバコをやめないものだから気管支炎や肺炎となり重篤化する症例を、当院は消化器科であるにもかかわらず毎年数例経験する。メンソールのタバコを吸っている人は真に要注意なのである。メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性は低い可能性があるし、実際低い印象だ。



さて内視鏡検査の話。
当院は内視鏡の際に鎮静剤を使ってしまうからもともと反射とはあまり縁がない。一方経鼻内視鏡はひたすら反射を抑制するニーズから導入されているものである。しかし経鼻内視鏡にも限界がある事は間違いがなく、例えば表面麻酔薬であるキシロカインにも使用には許容量が定められているし、8%キシロカインスプレーにはアルコールが含まれているから禁忌となる人もいるだろう。大体味が良くないし。内視鏡の苦痛を抑える方法は他にないのか。

内視鏡が苦しい、という人々は「若い」「萎縮が少ない」など胃癌低リスクな人が多いのだけれど例外的に萎縮性胃炎が強いのに、あるいは喫煙者なのに、あるいは老人なのに反射が強い人々がいて難渋する場合がある。こうした背景を持つ人々は本来反射がなくて、鎮静剤を使わない内視鏡への受容性が高い。これらはイコール胃癌ハイリスクグループなのであるけれど、内視鏡を大抵は嫌がらずに受ける。だからこそ胃癌はちゃんと早期発見されてきたし、日本で鎮静剤を使わない内視鏡が問題視されなかった理由の一つだろうと思う。しかし例外的に反射が強い人々がいて内視鏡をどうしても受けられないために胃癌を見つけるチャンスを逃したり、反射が強いために噴門部の癌が見つからなかったりするのは気の毒だ。この人々は鎮静剤さえ使わなければ楽なのではないかと当院に訪れるわけだけれどももともと呼吸状態が悪かったり肥満が極端だったりあまりに高齢だったりして遠慮なく鎮静剤が使えるというわけではないのだ。「しょうがない」のではあるけれども、誰も解決しようとはおそらくしない取り残された人々に何かアプローチ出来ないだろうか。そうでないと自分の精神も安定しないわけである。



さてそこでやっと本題なのだけれど、このサブスタンスPを低下させる鎮咳剤を内視鏡の際に前処置として使うことは許容されるかどうかと言う事である。具体的な方法としては麦門冬湯でうがいをしてもらうとか、麦門冬湯を固めた氷をなめてもらうとか、のどあめも良いのかもしれないし、龍角散はどうかはわからないけれど効く可能性だってある。コデインだって効くのだろう、使う気はしないけれど。キシロカインに替わる麦門冬湯ゼリーなんてものが発売される事だって、将来ありえるかもしれない。

ベンゾジアゼピンだけでは反射が強い患者にオピオイドを臨床医は使うでしょう?あれはまさにこの原理の応用である。

そもそもなぜ麦門冬湯の添付文書を読んだのかと言うと、パーキンソニズムの人に使っても良いのかどうかを確認したかったからだ。サブスタンスPは抑制しても、ドーパミンを抑制するわけじゃなさそうなので使っても良いのだろうと言うのが結論だ。

2009/01/17

二酸化炭素で内視鏡

防爆の目的で古いファイバースコープの時代から標準的にオプションとして用意されている炭酸ガス用の送気送水タンクを用いれば、わずかの出費で二酸化炭素を内視鏡に使用することができる。

St. MarksのDr. Williamsが日本でかつて講演された際に注腸バリウム検査に二酸化炭素を用いると仰っていたことをヒントに当院院長が内視鏡でも可能かどうかをオリンパス社に問い合わせたところカタログにもすでに載っていて脱力したそうである。ヨーロッパ向けのオプションであって、日本では宣伝されなかったものだから誰も知らなかったのである。それは、私が医者になる前の話で1980年代である。

私は医者になったころには、すでに7kg入りの大きな二酸化炭素ボンベが当院の内視鏡の横に鎮座ましましていて、大腸内視鏡の度にそのバルブを開けるのが通例であった。たまには閉めるのを忘れて翌朝には二酸化炭素の残量がゼロになってしまい、もったいないなあと思ったこともある。

そういうことで、私は二酸化炭素でしか大腸内視鏡をしたことがない。院長により、10数年前に私が内視鏡を持った当時から二酸化炭素、あるいはキャップ、あるいは送水装置など、挿入が簡単になり、患者さんに苦痛を与えないためのあらゆる工夫がすでに用意されていた。初心者であった私もそのために幸い患者さんに苦痛を与えたという経験がなく、自分は特別に上手いのだと勘違いしているふしがある。そのくらい、二酸化炭素を用いた内視鏡は安楽である。それは間違いがない。

二酸化炭素用の送気バルブも、ボタンを押さないときに二酸化炭素が漏れるかどうかの違いしかないために、脆弱なそのバルブがしょっちゅう壊れて買いなおすコスト(+バルブ生産のために要するCO2の量)よりも、漏れる二酸化炭素の方がはるかに少ないという合理的な判断から、使用していない。

なぜ、このように良いことづくめの二酸化炭素内視鏡が普及しないのであろうか。

ひとつは、二酸化炭素の利用が高額なのではないかという勘違いがあると思われる。
当院での実際を計算すると、一人当たりのコストは23円である。

私のメールから引用すると、

ヨーロッパの先生が誤解しているだろう事は、CO2を使用するために特別な装置が必要だと思っているところだと思います。減圧弁、流量計で充分なのに、です。日本でも国立がんセンターがCO2注入用の機械の使用経験を発表しています。しかし長時間、大量に二酸化炭素を使ってしまうかもしれないESDならばともかく、通常の検査でそれは全く必要ないのです。

二酸化炭素が体内にたまるのではないかという疑問については、私は以下のように答えたことがあります。

拘束性換気障害については充分に注意が必要です。
しかしリスクは空気>>CO2です。CO2の方が安全です。
空気で腸を膨らませた場合に横隔膜が挙上し、換気量が低下してしまいます。この為、患者さんのSO2も低下します。換気量が絶対的に低下した場合にはCO2も蓄積しやすくなります。(これは呼吸生理の話です)
空気が入ってしまうと取り返しがつきません。拘束性換気障害があり、O2が必要な患者さんについてはそもそも内視鏡検査のときにgeneral anesthesiaの準備をしてから行うべきです。
ところがCO2では、こういう自体を予測していなかったとしてもアンビューを押していればリカバーできます。空気よりも安全です。

では、COPDの人はどうでしょう。
COPDの患者さんでは、それほど換気量は低下していません。
SO2の低下が軽度であれば、CO2の拡散スピードからして、たまるということはありません。理論的に。PCO2を測定する意義というのは、PO2がすっかり下がってから、あるいはO2大量投与時の状態を知ることにあります。したがってRoom Airで検査をしている限りはPCO2を測定する意義はありません。

しかしESDの登場で少々変化が出てきました。ESDをするときにO2を投与しながら際限なくCO2を入れるような乱暴な手技が行われないかと危惧しています。(パンパンに膨らませたいという心理は理解できますが・・・)これですと、換気量を超えてCO2を入れてしまう可能性がゼロとは言えず、どのくらいの圧力でCO2が平衡に達するのか基礎的な検討が必要です。
またそれほど大量にCO2を入れたときに血管が開いたりするのか、それで血圧が低下しないのか、興味深いところではあります。私はESDをしないので検討のしようがありません。残念です。

しかし、Room Airで普通に検査を行った場合、1分あたりのCO2使用量は1.5リットル程度です。しかもそのほとんどは大腸には注入されず、内視鏡のボタンから漏れていくわけです。COPDがある患者さんであっても、SO2の極端な低下がない場合安全に使用が出来ます。

このあたり(COPDにも安全)は古い文献にも記述があります。

成人が1分間で体重1kgあたり4.66ミリリットルの酸素を必要とするということは単純に考えて60kgの人間が280ミリリットルの酸素交換を普通にしているということであろうけれど、二酸化炭素は酸素の20倍拡散しやすいなどという記述も見られるから、二酸化炭素の肺での交換能力として最低でも5.6リットルまでは保証されているという事なのだろうか。換気量が落ちて極端にSaO2が低下すればまだしも、通常の状態ではやはり問題にはならないように思う。そして、消化管からの吸収スピードよりも肺胞からの排出スピードの方が比べ物にならないほど速いということが、何よりも重要である。
もっとも、だからこそ腹腔鏡手術に使用されているわけであるが。

以上については、Progress of Digestive Endoscopy Vol. 71 No.2 (2007) p42-45に「二酸化炭素を使用した消化器内視鏡検査とその利点:当院の経験」として発表しました。

2009/01/06

胃底腺ポリープ

hokusai?.jpg Kunio Ukawa 2008
2013/10/6記
この記事が医師以外の方に良く読まれているので書き直します。(もともとは医師向けのブログです)
最初に「前回の『萎縮』に引き続いて」と書いてあるように、萎縮の概念が理解できないとポリープは理解しにくく混乱が生じます。まずは萎縮についてお勉強しましょう。

日本では胃粘膜が薄くなる原因のほとんどがピロリ菌であるので、それのみに焦点をあてて説明します。
ピロリ菌が感染すると症状がほとんどないものの炎症が起きては治る、が繰り返されます。炎症の起きて治った部分は元の粘膜より薄くなることが観察されます。その薄くなった領域が胃の出口から徐々に徐々にゆっくりと広がっていきます。この広がりには特定のパターンがあって、それを発見したのが木村健先生、そのパターンは木村・竹本分類と呼ばれています。
とはいえ、まともな解説がWeb上にありません。参りました。以下に私が書いた文章を示しておきますが……。(わからない若い内視鏡医は私に直接メールで相談してくださっても結構です。あなたの上司は間違っているかもしれません)

萎縮とはなにか
再掲:萎縮性胃炎とはなにか
萎縮性胃炎2


上記の「萎縮」の話は読んだとして続けます。やっと「胃底腺ポリープ」(fundic gland polyp: FGP)の話。

検診で「ポリープの疑い」なんて書かれたらほとんどがこれで、そして医師にもまだ理解していない人がいるので書いておこうと思います。(「検診で胃ポリープと言われました」)(2016年追記:逆に「幸せポリープなどと書いてしまう愚かな人もいて困るのですが……検診しかやってないとそうなるかもしれませんが、PPI使いすぎ、などの指標にもなります。一部の人にとっては幸せとも言えません。何にせよ正しい知識が重要です)このあたりから少しですます調をやめますがしばらくお付き合いください。

胃は粘液などを分泌する腺細胞で覆われており、それらは胃の出口(幽門)を中心に分布する幽門腺、入口(噴門)付近の噴門腺、それ以外に分布して胃酸などを分泌する胃底腺、に分類されている。

腺細胞が過剰に増えるとそれは表面から見て膨らんで見える。それを胃ポリープと呼んでいる。場所により腺細胞は違うのだからポリープにも幽門腺由来のもの、胃底腺由来のもの、噴門腺由来のものとがあるはずだし実際そうだ。

ピロリ菌が感染して胃の表面に炎症が起こると粘膜の増殖が生じることがあって、これは胃底腺領域であっても組織で見ると幽門腺のような形態になって増殖(過形成)が生じてくる。これを一般的には「過形成性ポリープ」と言う。もちろん幽門腺がそのまま増殖してくることもある。(噴門腺は難しいので省略)

消化器病学会のページで「胃腺窩上皮過形成性ポリープ」として紹介されているものがそれだ。(用語集も参考になります→こちら

このいわゆる過形成性ポリープの話は今回はおいておくけれど、読売新聞にたった数年前に書かれた記事ですら、この過形成性ポリープと胃底腺ポリープが完全に混同されてしまっている。偉い先生が書かれた記事なのに、だ。「検診で指摘されるポリープはほとんどが過形成性ポリープで云々・・・」という書き方からも混同している事は明らかだった。胃底腺ポリープも確かに胃底腺の過形成なのだけれど、それを混同するのは問題だろうと思う。

さて胃底腺ポリープは、胃底腺そのものの過形成で生じたポリープで、実際その数は膨大だ。検診で指摘されるポリープの多くはこのポリープだ。

当院ではオリンパス社の内視鏡装置を使っていて、200シリーズ、230、240、260シリーズとだんだんステップアップしてきた。このうち、胃に関しては、240シリーズ、260シリーズで非常に画質の進歩があった。解像度だけでなく、ダイナミックレンジも拡大している。(経鼻内視鏡の一部はまた200時代の画質に戻っているのでここでは考えないことにする)

どうしてそんな話を書いたかというと、胃底腺ポリープの発見率は使用する装置にひどく依存するからだ。

欧米で胃底腺ポリープの発見率は1.9%程度という報告がある。(日本でも1989年の報告で1.9%という数字がある)が、これは著しく低い数字である。当院では女性の23.4%に胃底腺ポリープは見つかっているし、男性にも16.3%見つかっている。恐らく報告があった当時、ヨーロッパの機械は100シリーズやファイバースコープであったろう。(ヨーロッパで使用されているオリンパス社の電子スコープ100シリーズは日本の装置と比べて少々画質が落ちる。使うCCDが違うから。というのも日本では単色のCCDを使用し、赤緑青のフィルターを通した光を順番に照射しその合成像を画像として得る。これを面順次式というけれど、きちんとぶれずに写真を撮るには技術が必要だからヨーロッパの先生には評判が悪いのだそうだ。なので画質は落ちるけれど、カラーCCDを使用した数字が1で始まるシリーズをオリンパスは日本以外の国へは輸出している)

ピロリ菌がいない患者さんに限れば、女性の57.1%、男性の48.3%に胃底腺ポリープが見つかる。非常にありふれた所見だ。200シリーズの時代は10%~くらい、それが機種を新しくする度に上昇しているわけだ。このポリープの発見率について学会で発表したときに、「ひょっとして全員あるんじゃないのかな」と思い、さらに注意して見るようになるとますます沢山見つかるようになり、現在の割合に至っている。

「胃底腺ポリープ」というのは、胃底腺がそのまま素直に増殖した隆起だから表面がクリっとして平滑で、周囲との境界が鮮明で、色調は周囲と全く同じで、腺構造が見えたり、あるいは regular arrangement of collecting venules (RAC) という毛細血管が表面に見えたり、あるいは中に水のようなものが溜まっているように見えたりする。非常にわかりやすい形態だ。とはいえ、色調が同じなので機械のダイナミックレンジよりは解像度がとても重要だから、ファイバースコープの時代にはある程度の大きさがないと見えなかったのだと思う。

そのポリープが見つかる胃には以下のような特徴がある。(前回の萎縮の記事を理解しないとこれはわからない)

1) 萎縮は、C-1あるいはC-0である。つまりピロリ菌感染がない非常にきれいな粘膜である。
2) 萎縮はC-2とかC-3。だけれど、過去にピロリ菌の除菌をしていて非常にきれいな粘膜である。
3) 萎縮もあるし、いかにもピロリ菌感染があるのだけれど、なぜかそこに胃底腺ポリープがある。

圧倒的に多いのは1)のパターンだ。しかし、ピロリ菌の除菌をする症例が増えると2)の患者さんも増えてきている。さて、わからないのが3)で、ほんの数例だが背景に萎縮があり、ピロリ菌もいるのに形態的には胃底腺ポリープだ、という膨らみが胃内に存在する患者さんがいる。これはβカテニン遺伝子異常などが関与したりするのかも知れないけれど調べられないので今後の課題。

ではなぜ背景に萎縮がなくて、ピロリ菌がいない患者さんに胃底腺ポリープが出来るのか、そして10%だけ女性に多いのはなぜか。

その前にFGPとFGP-like lesionとは違うのだろうか。
「違う」とされているが、PPIで大きくなるFGP-like lesionはもともとすべてFGPとして認識されていた隆起だ、という論文もあり、よく分からない。
「違う」と明言するならば、ブラインドでFGPなのかFGP-like lesionなのかを当てなければならないけれど病理医にそれが出来るとは思わない。PPIを服用している胃のFGPないしFGP-like lesionもバラエティに富んでいる。すべて取ってみて、遺伝子のレベルで調べてみれば、FGPにもいくつかのバリエーションがあることがわかるのだろう、将来は。このFGP-like lesionでは血中ガストリンが高い事があるとされており、FGPとは違うのは確かなようだ。しかしFGPでは組織内ガストリンレベルは高いとされていて血中のそれとは挙動が異なる。なかなか理解が難しい。

1) 前庭部の粘膜内ではガストリンという消化管ホルモンが盛んに産生される。ガストリンは胃底腺を刺激して胃酸分泌などを誘導するが、FGPのある胃では血中ではなくて組織内のガストリンが多く観察されるのだという。それにより刺激された腺細胞が増殖を起こす。血中ガストリンが高いのはピロリ菌感染した胃なので難しい。PPIで胃酸分泌を抑制すると大型化したりすることも考えると、ガストリンが有効活用されない「なにか」機序があって、それが組織中ガストリンの増加およびFGPの出現を惹起するのかもしれない。またある種の遺伝子変化があるともされている。
2) 女性で多い理由は、女性ホルモンが増殖に関与している。(腺細胞の中にエストロジェンの受容体が証明されているわけではないけれど、もともとエストロジェンのようなホルモンは、細胞膜を容易に通過して核内に入り込み細胞増殖に関与する可能性がある。あるいは多くの胃癌でエストロジェンレセプターが発現している事から、もともと腺細胞にはエストロジェンへの感受性があるかもしれない)面白いのはどうもこのエストロジェンで刺激されているかもしれない10%のポリープは、いわゆるFGPよりもやや大型であるということだ。これはこれでFGP-like lesionと呼ぶべきなのかもしれない。
3) ピロリ菌が感染し、胃炎がおきると前庭部の粘膜内ガストリンが低下するので胃底腺への刺激がなくなる。これがピロリ菌感染者では胃底腺ポリープが少ない理由である。

この仮説を増強するように以下のような事象が観察されている。

1) プロトンポンプ阻害薬を使用すると胃酸分泌を抑制、そのため胃酸分泌を刺激するためのガストリンが過剰産生される。この薬を長期にわたり使用していると胃底腺ポリープが大きくなることが観察される。
2) ピロリ菌の除菌をした患者さんでは、除菌後に胃底腺ポリープが発現することがある。

以上をまとめると以下のようになる。

胃ポリープと言われたら
1) 胃ポリープは肉眼的に容易に診断が可能で、一度は内視鏡を受けておく価値がある。圧倒的に数が多いのは胃底腺ポリープであるが、注意していないと見つからないことも多々ある。胃底腺ポリープはFAP(家族性大腸腺腫症)に合併する事が多いと脅かすマスコミや医師がいるが、FAPに合併する胃底腺ポリープは肉眼所見が全く異なっていて密集した無数のポリープであるから、胃ポリープがあるからといってFAPを心配するのは間違い。
2) 胃底腺ポリープがあるときに、背景粘膜がどうであるかによって説明は変わる。通常は背景粘膜はピロリ菌の居ないきれいな粘膜であるが、その時には将来胃癌のリスクは低いと考えられる。定期的な経過観察についても一部の患者さんをのぞけば必要なしと説明している。
3) 本来は胃透視でも容易に診断ができるが、背景粘膜を読影せずに「要精密検査」と判定される事があれば問題である。
4) 胃にポリープがある、と言われた場合には必ず胃腺窩上皮過形成性ポリープなのか、胃底腺ポリープなのか、それ以外のポリープなのか、それを医師には質問して欲しい。良性です、はその答えにはなっていない。