2011/06/15

内視鏡挿入の奥の手(うつ伏せ挿入)~エピローグ~

うつ伏せ挿入が、内視鏡に関する様々な事を私に教えてくれます。

1)肥満者、あるいは瀑状胃の場合にスコープが胃底部でとぐろを巻いてしまう。
これには最初閉口しました。
脊椎と腹壁で圧排されるために、胃角部を超えられないのです。
2)ゲップが多くなる人がいる。
乳児をうつぶせでトントンしてゲップをさせるのですから、当然と言えます。

しかしながら、この経験は新たな気づきを与えてくれます。

A)なかなか幽門が超えられない、あるいは瀑状胃で幽門に近づくことさえ出来ない場合に、背臥位にしてみよ。
B)ひどいゲップで検査にならない場合、背臥位にしてみよ。

と、今まで悩んでいたことが解決出来るヒントとなったりするのです。

このような気づきは、うつ伏せ挿入をすれば全員にあるはずです。
どうぞ楽しんで欲しいと思います。

2011/06/14

内視鏡挿入の奥の手(うつ伏せ挿入)

内視鏡挿入が困難だと思ったら、うつ伏せで挿入することを選択肢の一つとして考えて下さい。非常に有用です。

内視鏡のうつ伏せ挿入(プロローグ)
この方法は当院オリジナルではありません。その方法との出会いなどについて記載しています。

内視鏡のうつ伏せ挿入について

<対象者>
通常の方法では入らないか、苦痛を訴える場合
あらかじめ咽頭反射が強いと予想される人
意識化鎮静で内視鏡を行っている当院では特に鎮静剤の安全域が狭く鎮静剤がやや少なめに投与される若年~中年女性、あるいは十分に鎮静剤が使えない状況で検査を行う場合

<方法>
患者は腹臥位、あるいはほぼ腹臥位とする。
モデルは当院院長

写真の如く腿にクッションを入れると体位が落ち着きやすい。
当院では胸にはクッションを入れては居ません。
枕は非常に薄いもの(タオルが良い)
首を右にひねって側方に向いてもらう。(これが重要)

あとはマウスピースをくわえてもらい、通常のように挿入を行う。

<類似の挿入方法>
ドイツのスヘンドラ先生も昔からこの方法でERCPにおける側視鏡の挿入を行っている。
日本でもERCP時に最初から腹臥位でアプローチし、すばやく乳頭部にアクセスする医師は多い。


<実際の見え方>
写真左を見てもらうと、真正面に声帯が見えてくるのがわかるだろうか。
その背側に比較的広いスペースがあり、まっすぐ入れば上部食道である。
内視鏡は通常よりもアングルを使う必要もなく、患者もほとんど抵抗することなく、実に素直に挿入されるので驚くと思う。

<なぜうつ伏せ挿入は楽なのか>
1)唾液を誤嚥しにくい
2)うつ伏せ&首を右に向けると嚥下するための筋肉の動作が甚だ制限される=反射が起きにくい
3)体動が少ない
4)そして内視鏡角度が鈍角であることが重要なのではないか (後述)
-ねじる事による角度の変化?
-ねじる事によって軟骨が移動?
-重力は関係あるか


<首をひねる事による、咽頭のスペースの広がりが挿入を容易にするのだろうか>
実際にイラストを書いてみると横に広い咽頭を90度ひねる事によって、縦に広く使うことが出来ることがわかる。

<結語>
のどが固くて挿入に抵抗する患者さんがいたら、だまされたと思って試してみるべき方法
それぞれの施設でそれぞれの工夫が必要
ほんのわずか「うつ伏せ気味」にするだけでも有効
その他挿入に関して沢山の示唆を与えてくれる

うつ伏せ挿入〜エピローグ〜

以上の内容は
第26回文京消化器内視鏡研究会
(平成21年8月29日)
において発表しました。