2011/12/16

ねばり

すべての医療情報を私に集めなさい、という指示を律儀に守る人がおられます。

少し考えればわかることですが、ほかの病院でお受けになった結果だけを私の元にお持ちになる事は私に負担がかかる行為であり、本来私がしなくてもいい仕事ですし、他の待っている患者さんに悪いですし、費用は3割負担で1000円程度かそれ以下なのでそういう人ばかりだと当院は簡単に潰れる、そういう仕事です。それをあえてするというのは大変勇気のいることだろうと思います。

だるさ、という主訴で一年か二年に一度、他院の資料をもって相談しにくる方がおられて、その資料からヒントを少し拾い出してアドバイスをする。例えば抗核抗体が640倍と高い、それだけがひっかかっている。さてそれがだるさの原因になるのかと言われると難しい。様子を見てしまう。しかし例えばテプレノンが薬剤性間質性肺炎の発症を抑制するというような報告がある。時々テプレノンには臨床容量依存のような患者さんがおられる。それはどうしてかと思っていたけれども、抗核抗体が高い時にSLE発症を抑制する作用があるだろうか、例えばだるさが取れるだろうかとか、あるいはだるさが取れるから臨床容量依存のようになっているのだろうかとか、そういう事を考えて私も時を過ごすわけです。常に去年の私と今年の私とは違うのです。

また翌年、資料をいっぱいもって外来に現れて座る。そして何を語るわけでもない。私は人を忘れるのが早いからいったいなんで来たのかわからず過去のカルテを最初から読む羽目になる。ああ、だるさで相談しに来るのか。うちでは検査するわけでもないし、損益分岐点をまた下回ってしまう。しかし、自分の指示通り律儀に資料を持って来ているのだから文句は言えまい。さて今年は、抗核抗体について見ようかと思っていると以前高かったCRPが下がってしまっている。この意味するところは何か。症状は改善しているわけではないようだが。

「まだ、だるい?」「眠くて」「午前中?」「はい」「それは不眠です」「でもお薬をもらっています」
という会話があって、ちょっとピンと来た。「何をもらっている?」「○○です」と、有名なベンゾジアゼピン系の睡眠薬の名前を挙げた。
「いびきかくんじゃないの?」「ひどいです」「呼吸止まるんじゃないの?」「はっと目が覚めることがあります」「睡眠時無呼吸の人がベンゾジアゼピン系飲むと、やっかいなんだよね。それより、いままでのだるさが睡眠時無呼吸が原因だって可能性すらある」「そうなんですか!」「紹介します」「はい」

と、少しだけ前進があったりするのです。これで解決ではないかもしれないけれど。
ねばりを見せる人には、なんか良いことがあるかもよ、というお話しです。そのあと何年もずっと来院されないので、良くなっていると良いのですが。

患者さんの努力に応じて私の頭も少し動くので、「さあお前は名医なんだろう、診断してみせろ」というタイプの患者さんの病気は診断できる気が全然しません。

2011/12/15

消化器病のトレンド2011

2007年以来ですけれども、ランキング記事を引用してみます。
2007年は当院から二酸化炭素内視鏡を発表した年(リンク先参照:二酸化炭素で内視鏡減圧弁)であり、PPIに対して警告を発した年であり、色々ありましたが世の中遅々として進みません。
二酸化炭素内視鏡についてはProgress of Digestive Endoscopy Vol. 71 No.2 (2007) p42-45に「二酸化炭素を使用した消化器内視鏡検査とその利点:当院の経験」として発表しました。原著ではありませんが、意識下鎮静と同様、日本で最も早くから二酸化炭素内視鏡に取り組んだ5000例の症例報告であり、原理から応用までオリンパス以上(我々は減圧弁を用います。オリンパスが細かく圧は調整できませんが電磁弁をUCRとして販売しています)に理解して書いていますので是非御覧くださいませ。
ちなみに内視鏡用送水装置も、オリンパスに先駆けて高橋寛先生が開発された時にお手伝いし、私が原型を作ったのはもう8年ほど前になります。(ウォータープリーズ

医療サイトMedscapeで、2011年に読者の注目を集めた記事が載っています。

1)FDAが新しい慢性切れ痔治療薬(痛み止め)を承認
ニトログリセリン0.4%軟膏(Rectgesic)が新しく承認されました。肛門括約筋を弛緩させるので効果があるのでしょう。アメリカでは慢性切れ痔で悩む方が多く、オギルビー症候群というのになるのですね。救急病院で良く見ました。日本でもあります。
2)大腸がん検診のガイドライン改訂(ハイリスク患者で変更)
第一度近親(親・子・兄弟)に60歳以下で大腸癌になった人がひとりいる場合、40歳から5年毎、あるいはその近親者が大腸癌になった年齢の10歳前から5年毎。60歳以上で一人ならば他のグループと同じで50歳以後10年毎。二人以上の場合には年齢に関係なく40歳から5年毎、あるいは癌になった年齢の10年前から。
3)PPIに関する警告
クロピドグレルの効果減弱、骨折率の上昇、感染症の上昇、低マグネシウム血症による不整脈など。「賢く使わねばならない」
4)好酸球性食道炎
以前にどこかに書いたのですが、成人男性に多く、自覚症状が強く、組織内に好酸球、PPIは無効でステロイドを使うという食道炎です。まだ見たことはありませんが、常に探しています。
5)TNFαブロッカーの副作用
レジオネラとリステリア感染症が報告されています。
6)クリストリジウム・ディフィシル
いつも問題になる感染症ですが、新しい抗生物質(Fidaxomicin)が承認されています。
7)新しいジェル浣腸がFDAに承認される
アメリカはホントうんち関連のニュースが注目を集めますね。商品名Solestaはジェル状の浣腸らしいです。素晴らしいアイディアではないかと思います。
8)大腸の挿入テクニック
これに関しては日本はアメリカより10年以上進歩してるので、ほくそ笑みながら記事を読みました。
水浸法、キャップ法、色素内視鏡、NBIなど特殊光内視鏡、拡大内視鏡。日本ではかなり上手くても全然目立たないぐらい全体の技術が高いわけですが、うかうかしていると置いていかれますね。
9)ピロリ菌感染治療の新たな展開
特発性血小板減少性紫斑病や鉄欠乏性貧血に対する除菌治療は行われるかも知れない。一方、喘息、アレルギー、アトピーに対してはピロリ菌は負の相関があり、この研究からピロリ菌類似の物質を作らせるようなワクチン治療が出来ないかどうか考えられている。また肥満とも完全に逆相関があることが証明されており、応用が期待されている。除菌治療では従来の方法以外にシーケンシャル療法(PPI+アモキシシリン5日間のあとPPI+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間)、4剤併用(オメプラゾール、ビスマス、メトロニダゾール、テトラサイクリン)
10)IBSの新しい治療
腸内細菌の正常化のために、整腸剤、抗生物質(リファキシミン)の使用。

といった感じです。
当ブログの読者の方には、「知ってるよ!」という話題ばかりだったかと。

2011/12/13

医者の仕事

自分が普段行なっている色々な判斷は、コンピューターにも間違いなく行えることだから、将来はロボットが医者になれば良い、と思います。

でもそれを私以外の人が作ると、たぶん違うものになります。問診票や検査から答えを出す、みたいな。

馬鹿馬鹿しい。

でもたぶん私が作るとかなりリアルなロボットになるんじゃないか、と思いますが作れないのでここで書いてしまうことにします。



例えば患者さんが「風邪を引いた」と言って来たとします。

私、プロファイリングを必ずしますから、第一声は人により変えます。

学生風の人が来た時には、「学祭いつから?」とか。

近所の70過ぎのタバコを吸ってるおじさんが来たときには、「何年ぶり?風邪」とか、「葬式ありました?」とか。

患者さんの姿、様子、様々な様子から問診を「間引く」ことと、「追加すること」を同時に行うのが私が設計するロボットです。なぜならば、ぐだぐだ問診票を書いている間に患者さんの状態が悪化したりするかもしれない、気分が変わるかもしれない、だから質問は問診票よりもシンプルな方が良いです。面倒だという気持ちが患者さんに生まれると、真の症状をマスクする可能性だってあります。

前述の質問が何を意味するかと言うと、我々は患者さんの来院の目的にあわせた検査とか治療をする。「明日はどうしても○○したい」というような。学生さんが来た時に、普通は来るわけがないのだから「明日が学祭なのでこの症状がなんとかなりませんか」みたいな相談込みで来ている可能性があるわけです。人に感染するものならアウトなのでそこは医者として別の優先事項が出てきます。タバコを吸ってるおじさんだって不安なんです。とうとう癌になったか、と。その気持ちを汲まないといけません。もともと風邪では来ちゃだめだと言ってるわけで、それでも来るには理由があるんでしょう。来院目的の優先順位として、「治りたい」ではない場合があり、それを知ることが大切なのです。

さらにこちらの余力があるときにはプラスαを提供する。

顔見て肺癌よりは食道癌かな?と思うときはある(で、だいたい当たる)ので、それとなく検査に誘導します。



キーワードは二つ。

1)患者さんの真の目的が何かを最短の時間で類推する。
患者さんが診断して欲しい病気、とか理想の治り方、みたいなものを類推するところからはじまる。
実際にその通りに行くわけがないと判断されることがもちろんあって、どうやって妥協させるかを考え、そのための伏線を問診の中にすでに練り込んでしまう。

2)勝手にプラスαの診断をする。

これがリアルな医者の仕事でありまして、問診から導き出される診断なんていうちゃちいものは、医者の仕事ではないです。

2011/12/09

ピロリ菌の自然除菌

ピロリ菌は自然に除菌されてしまうことがあるのです。

ピロリ菌のいる粘膜
ピロリ菌のいない粘膜













左右で差があるのがわかるでしょうか?不思議な事に、この方は左の状態から3年後に胃がきれいになってしまった・・・。ピロリ菌がいなくなるとこのような変化は起きます。除菌治療を受ける方は多く、成功すればきれいになるのは当然です。この方は除菌治療は受けてはいない。なぜピロリ菌がいなくなった?残念ながら「わからない」とご本人は仰いました。ヨーグルトのおかげ?ブロッコリー?医療機関でたまたま抗生物質を処方された?こういう不思議な事はしばしば目にします。珍しくはないのです。白血病の治療を受けた方はたいていピロリ菌は除菌されています。白血球が低下したときに抗生物質を投与されるからでしょう。
このような不思議にしばしば出会うのは、検査をしなくてもピロリ菌の有無がわかるからです。
1997年を境に、私どもは肉眼でだいたいわかるようになっています。木村分類を意識するようになり(リンク)、除菌治療を行って経過観察していると、萎縮の中にもバリエーションがあるのがわかり、次第にピロリ菌の有無が肉眼でわかるようになるのです。
木村分類はもちろん重要ですが、現在では私どもは二つのベクトルで胃の粘膜を判定します。
上の症例では下のグラフで☆2003と示した場所から、☆2006に示した場所へ背景粘膜の様子は変化した、という事です。


グラフの説明です。
X軸:胃の萎縮は木村・竹本分類でどの程度か。
Y軸:ピロリ菌がいるのかいないのか。
右上に近づくほどリスクは高い。
(ただし萎縮とは別に、組織検査をしたときの「体部胃炎」が強いほど胃癌リスクは高いのだ、という論文もあります。鳥肌胃炎はリンパ濾胞の増殖した状態で「炎症が強い」という部類に入ります。我々のデータでは母集団に鳥肌胃炎が多いために論文に示されるほどオッズ比は高くなりませんが、「胃炎の強さ」という第三のベクトルも実は考慮しています)

C-0というのはもっともきれいな状態で、ピロリ菌はいません。
C-2~O-3ではほとんどピロリ菌感染はあるのですけれど、ピロリ菌除菌の抗生物質を飲んだ場合はピロリ菌はいなくなりますし、この症例のように不思議といなくなっている場合もある。それを肉眼で判定しようというわけです。この肉眼での判定は少々トレーニングを要すると思います。呼気テスト同様に精度は高いのですけれど、以下の要素に影響を受けます。

1)胃薬を飲んでいる場合、例えばH2RAを飲んでいる場合には、ピロリ菌がいるのにいないのではないか、と判定される場合があります。
2)アルコールや酢など、胃を荒らす因子がある場合にはピロリ菌がいないのにいるのではないかと判定される場合があります。

木村分類とピロリ菌の有無、この二つの因子がその後の胃の運命を決定づける事は間違いありません。
我々の検査が他の医療機関より優れている部分があるとすれば、この背景粘膜をきちんと見ている、という事であろうと思います。これにより感度も特異度も高い検査が出来る。

東大分院外科の竹添和英先生ははるか昔から「背景を見よ」と仰っておられました。その意味を我々が知ったのはたかだか15年前に過ぎません。そしてまだこの考えは十分に普及してはいないかも知れません。(三木一正先生のペプシノーゲン検査+抗ヘリコバクターピロリ抗体(PG+HP)でスクリーニングする方法も発想の根は同じだと思います。ただ除菌後のリスクの変化に対応することはPG+HPでは難しく、我々の出番があろうかと思います)

2011/11/23

学問ノシンカ


私は六本木というところに行ったことがなく、防衛省跡地の東京ミッドタウンが小田急線~千代田線でアプローチしやすいことも知らず、そこにリッツカールトン東京という高級ホテルがあることも知りませんでした。

慶応大学SFCオープンリサーチフォーラムが昨日と今日、そこで行われています。

二日間、この規模の学会を行うとなりますと事業規模は会場費・プログラム印刷など当日の経費だけで1000万円を超えると思います。
恐らくそれらの何割は企業からの寄付で賄われると考えます。
それ以外に必要なコストを計算すると膨大です。

でも、学生の才能を発見するのにはいい機会でもあると思いました。この学会により学生の一部は頭角をあらわすでしょう。
5人も才能がある人を見いだせれば、協賛企業にとって1000万円の投資など安いものだと思います。

中身には触れませんが、確かに才能のある学生が5人ならずいると思います。投資効率が良い事業だと思います。

翻って医学部の将来を考えました。

私は医者という職業がどういうものかは良くわかっています。
人間をメンテナンスする人です。身分は低く、日々の仕事は定型的です。
私の母方の先祖は医者ですが、医者で食えるようになったのは最近60年の話だと思います。
明治以前は、薬は利ざやが大きいですからそれを売ったり、禄をもらったり、パトロンを見つけたり、他の事業をして、それで生活をしていたと聞いています。
一生懸命勉強をして医学部に入って高給をもらう、という考えはもともと私にはありませんでした。
医学部は一種の職業訓練校だから、そこで一定の技術を学んでそれを守り伝えていく。

なので、医学部がこんなに偏差値が高くなってしまっている状況に少し違和感を抱いているのです。
要するに優秀な人達が集まりすぎだ、という事に違和感を抱いています。
実際とても優秀なのです。
彼らは医者をする以上の可能性を持っているのではないか。
勿体無いじゃないか、と思うのです。

医学部にこういう機会があるのはどうだろう。
産学協同で才能を発掘するようなイベントがあったらどうだろう。
高校時代で数学や物理オリンピックで活躍したような天才以外にも、
毎年医学部に入学する学生は9000人もいて、
その中には稀有な才能が沢山いるはずです。

青田買いというのはあんまりいい言葉ではないけれど、
医学もシンカしなくてはならないから、
特別に優秀な才能を発掘する機会が何かあれば良いなあと、
そういうことを考えました。
本当に企業なら喉から手が出るほど欲しがるような才能が、医学部にはゴロゴロしているのです。
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2011/11/22

内視鏡の時のこういう情報があとで役に立つだろう

あなたが相手から情報を聞き出すのが上手な人ならば
内視鏡の時のこういう情報があとで役に立つだろうと、思う。

ほとんどの人は無理だろうと思うけれど…

実は私も患者さんからは一回も聞かれたことはありません。
教えることはあります。
どういう方に教えるかといいますと、主に
「もう二度と私が検査をしない方」
に対して、です。(お引越しだとか)

勝手に紹介状の中には書いておきますが、ご本人にも直接教える場合があります。
それは
「使った前処置薬(鎮静剤も含める)の量」
です。

きちんとした病院では、
例えば東海大学病院、伊勢原協同病院、静岡がんセンターなどのレポートにはそれらは情報として書いてあり、実に参考になるので助かっています。

人間ドックの検査が参考にならないという理由の半分は、これがないからです。
(ある人間ドックでは、書いてあったのを見たことがあり、感心したことがあります)

みなさんが上手にお医者さんから情報を引き出せるか…私にはわかりません。無理かも。
カルテをコピーさせてもらえばわかるような情報でもありませんので。
でも、例えば人間ドックで検査を受けたりするときには堂々と聞いても良いかもしれませんね。

2011/11/12

意識下鎮静による内視鏡検査

東大第三外科で宇治先生が胃カメラを開発したのが昭和25年の話で、私の父がその医局に入局したのが多分昭和33年ぐらいじゃないかと思います。たぶんその頃、胃カメラ隆盛の時代だろうと思います。3年ほど外国に行っていましたから、昭和36年頃から分院にいたのだろうと思います。

フルブライトでアメリカに行って、麻酔と病理をして帰ってきた時に胃カメラの検査時にオピスタンを70mg使ったと言っていました。それが胃カメラ時鎮静をしたはじまりだとの事でした。それが本当だとすると、もう50年も前の話です。

父は確かあまり長いこと分院にはいませんで、昭和42年からは小田原に来ましたから、私の記憶は小田原で内視鏡をしている姿がメインです。毎週木曜日には分院に行って病理の切り出しをしていたのは覚えています。外科でしたので、毎週胃癌の手術があり、それをホルマリン漬けにして分院に持って行き、マイクロトームで切り出して、HE染色をして、見る。車で行くのですが、時々いっしょに行って、怪しげな分院の研究室で遊んでいたものでした。当時は「闘争せよ!」みたいな張り紙が院内の壁紙のようになっていたことを今でも思い出します。

意識下鎮静ではあちこちの学会で話す機会も多かったようですし、小田原の病院には沢山の先生が見学に毎週来られていました。基本はオピスタンかソセゴンに、セルシンを加えた方法で、今でもその方法で当院では行っています。古くさい、とみなさんが思う方法だろうと思います。

「寝かせて下さい」と仰る患者さんには、はっきりと「いいえ」と申し上げます。意識がある状態では事故は起きません。完全に意識を落とすことは可能であっても我々にとって検査に集中出来ない因子を作り出すことになり歓迎は出来ない事なのです。では苦しいのではないか、と思われるかも知れませんが、そうではないのです。

オピスタンやソセゴンのような合成麻薬は鎮痛効果はもちろんありますが、鎮咳効果がかなりあります。この鎮咳効果というのが馬鹿に出来ませんで、挿入時の「おえおえ」をずいぶんと抑制することが出来るのです。咽頭反射と咳とはよく似ています。

セルシンはベンゾジアゼピン系のマイナートランキライザーですけれど、これは筋肉の力を弱くするような効果があります。打てば意識はあるのに足はふらつきます。痙攣止めにも使います。重症筋無力症の患者さんには使わないことになっています。のどというのはお尻の穴と同じように「きゅぅ」っと締まっているものでして、そこを入るのですから筋肉を緩めなければならない。それにこのセルシンがずいぶんと役立つのです。

また麻薬で多少副交感神経が刺激されやすくなるような印象がありますが、それをセルシンが抑制してくれていると思います。セルシンによる脱抑制は麻薬が抑えてくれるという印象もあります。相性が良い。

両方を使うことでそれぞれの投与量を減らすことが出来、しいては合併症を避けることが出来る。

そういう理由で二剤を併用しているのです。結局のところ、意識がもうろうとなるほどでない量でも、「おえおえ」しない内視鏡が可能になります。意識はあるのに苦しくない方が患者さんはびっくりされ、またこちらに対する信頼感も増すようです。第一、麻酔の事故を避けるのに一番簡単な方法は意識があることなので、対費用効果が高いのです。

しかし意識下鎮静ではだめな患者さんに対したとき、当院では限界があります。万能ではないのです。

ウェイン州立大学に留学していたときに、叔父のDr. Sugawaは、ほぼ同じ鎮静方法で検査をしておられ、それでは無理な患者さんがいても、適宜プロポフォールや、General anesthesiaを組み合わせていました。リソースがあるのでより万能なのです。父と叔父とでは臨床上の接点はあまりなかったはずで、恐らく鎮静剤の使い方はそれぞれが独自に見出したのだろうと思います。達人の到達点は似るものだと、納得した記憶があります。

私は今昭和大学藤が丘病院でも内視鏡をします。
昭和大学藤が丘病院は、東大分院の藤田力也先生の系譜を脈々と受け継ぐ医局です。そしてやはり意識下鎮静を積極的に行ってきた病院です。私は高橋寛先生に直接教えを請うているわけですがやはり意識下鎮静を上手に使いこなされます。私にとって幸いな事は、父も叔父も師も内視鏡医としての遺伝子に共通性があったという事だろうと思います。

現在藤が丘病院では「全例に拡大内視鏡」を用意します。いざ必要があればいつでもその場で拡大診断が出来るのです。これは全国にほとんど例がないだろうと思い、誇りに思っています。それを可能にした背景には意識下鎮静があるのです。

2011/11/09

問診と検査

胸やけで来院した方の内視鏡をすると悪化していました。


通院中に悪化するというのは通常はあり得ないことです。
悪化する要因がないか洗いざらい調べます。
「お腹に力をかけるような事をしていないか」という質問をしてやっと患者さんはスポーツクラブに入会したことを思い出したようでした。体幹部の筋肉を鍛えるトレーニングを主に指導されるのだそうです。


おなか(腹腔)は、後ろは背骨、背筋、横は腹斜筋、前は腹直筋、下は骨盤底筋、上は横隔膜で閉ざされた空間です。箱のような構造をイメージして下さい。

ウェイトトレーニングをする人達は、通常は年齢も若く、横隔膜や骨盤底筋の強度は十分あります。そして必ず「力を入れるときには横隔膜の力を抜く」という動作を守っています。これにより食道裂孔ヘルニアなどの事故を予防しています。

しかしながら、閉経後の女性、とくに今まで運動経験があまりない場合には、横隔膜や骨盤底筋は弱いはずです。

もしも指導する側がきちんと運動生理を理解していれば、腹筋を鍛えるときには横隔膜の力を抜くことをきちんと指導するでしょうし、一緒に横隔膜や骨盤底筋も鍛えるトレーニングも取り入れると思います。しかしながら、それをしない、素人の腹筋運動などは危険です。弱くなった横隔膜に腹圧が集中してしまい胃酸が逆流してしまいます。LES圧が下がるのとはまた違う機序での逆流です。

骨盤底筋に圧力が集中すればどうなるでしょう。脱肛や子宮脱、膀胱脱。あるいは少しずれた場所で鼡径ヘルニアや大腿ヘルニアの原因になるでしょう。

実は体幹部のトレーニングと称する類の運動には、特に最近壮年~老年の方にそういう運動を勧めるスポーツクラブがあるようなので今回記事にしているわけですが、豊富な知識と経験が必要です。

同様の患者さんが最近複数人おられることから今回のエントリーを書きました。




問診以上の情報が、ときに検査から発見される事があります。

その事実がフィードバックされると別の患者さんの問診に生かされる。問診の時に、経験したスポーツの種類や入会しているスポーツクラを聞くだけでヒントが得られる可能性があるからです。

一方で得られたこの経験は積み重ねて強化され、知識とされねばなりません。従って他の患者さんにもフィードバックを求めます。それが当院の診療スタイルです。

しかし嫌がって利益だけを享受している患者さんもおられます。フィードバックはしないけれども利益は享受したいという気持ちはわからないでもありませんが、そればかりでは進歩がないことを理解して下さる方を歓迎いたします。

2011/10/29

脅かすのはたぶん罪です

胃潰瘍は、ピロリ菌を除菌すると完全治癒します。(←これ大切!)

ピロリ菌の除菌に失敗すると完全治癒はしません。

内視鏡で見ると、完全治癒かどうかはすぐにわかります。

除菌に成功したと検査で判定されても潰瘍が完全治癒しない場合、

癌ではないか、と疑い再検査、再検査を行う場合があります。


患者さんを心配させてはならないと思い、私が3ヶ月とか6ヶ月後に検査をするのは極めて稀ですけれど、なるべくやわらかく説明して繰り返し検査を受けていただきます。


ひょっとしたら除菌に成功していないのかもしれない、と別の検査を行うと陽性で逆に安心したりします。その場合は再除菌を行います。




こうした経過で患者さんと会話していると、とても嫌な気持ちになることがしばしばあります。

不安そうな患者さんの様子が気になり聞いてみると、

「そんなに検査してるなんて、おまえ癌じゃないの?」

「癌になりやすいんだよ、おまえ」

そういう事を本当に言う友人・知人がかなりいるそうです。

そして患者さんは傷ついているのです。



以前から繰り返して言っていますが、

例えば友人を心配して病院に行かせたいと思ったとしても、

「おまえきっと癌だから」などの脅しを使ってはなりません。

「おれがおまえを連れて行くから一緒に行こうよ」と付き添うのが友情です。

あなたが愛する友人に、「癌なんじゃないの」と言われたらうれしいですか?

いつからこんな風潮になってしまったのか、とやり切れなくなります。

テレビがあなたを脅かすかも知れません。テレビがあなたの外来についてきてくれるんですか?

健康食品屋や保険屋があなたの外来についてきてくれるんでしょうか。

もちろん脅かす彼らが悪いのですが、あなたはそれを鵜呑みにして傷ついてはいけません。



心ない一言を浴びせかけられても、あなたは気にしないで良いと思います。

あなたのことを心配しているわけではない人々の一言は軽い。



患者さん、つまりあなたの事を一番心配しているのは誰でしょう。

二番目は医者ですよ、ちなみに。

医者の様子を観察してみて下さい

あなたが患者さんだと仮定しましょう。

まず椅子に座ったらきっと「どうなさいましたか?」などと聞かれるでしょう。その時にあなたはあなたの症状を仰って下さい。症状がない場合、それは今回のエントリーでは扱いませんからブラウザを閉じて下さい。

症状の伝え方ですけれど、現在から過去にさかのぼっていくのも良い方法です。過去から現在に、と話しますと因果関係をあなたがデザインすることになってしまいます。しかし現在から過去にさかのぼって話しますと比較的あなたの主観が入らないのです。

今は比較的良くなっているのですが、数時間前まで胸の中央部が強く痛みました。痛みは昨日からですが、自分では心当たりのある食べものやきっかけはありません。

という風に。
もちろんあなたのストーリーを時系列に沿って話しても構いません。ただ、あらかじめ考えていないときには、さかのぼって行く方が恐らく間違いは少ないだろうと思います。

医師はあなたのお話しにいくつか質問をするでしょう。「それは背中に突き通すような強い痛みなんですか?」とか「水は飲んで見ましたか?飲んだらどう感じましたか?」とか「運動をしたときに増悪しますか?」などです。

あなたはなるべく正確に話して下さい。次は医師の番です。

手練れの医師はこの段階であなたを安心させようとするか、あるいは緊急で動くべきかをすでに判断しています。緊急で動くべき場合、医師のてきぱきとした指示に従って下さい。身を任せて下さい。そうでない場合、診察をしている間の医師の様子を良く観察してみて下さい。

それは医師が、「どういう病気をまず考えているのかな?」という事をあなたが探るためです。

あなたは色々な症状から、インターネットなどからも情報を得て、「これが心配だ」というような病気が心の中にあるのだろうと思います。医師はあなたのお話しから一生懸命考えて、まず第一にこれを考えるべき、第二にこれを考えるべき、とやはり心の中にリストアップしています。

果たしてあなたの気持ちと医師の気持ちは同じなのかな?という事を観察して欲しいのです。

診察が終わって、これからこういう検査が必要でしょうと医師があなたに説明する際には医師が考慮した病気を順番に話してくれると思います。

それがあなたの心配しているものにかすりもしない場合、あなたの考えている疾患は極めて稀なものです。そして医師は「稀であっても見逃してはならない」というサインについては良くわかっていますから、あなたの考えを遠慮無く仰ると良いでしょう。あるいはあなたが心配しているのがどういう病気なのか聞いてくれると思います。

ここまでコミュニケーションできれば上出来だと思います。
余計な心配をしないための一つの方法を書きました。

2011/10/22

胃腸が弱い人

「胃腸が弱い」と一言で言っても色々なベクトルで語ることが可能でしょう。

例えば「胃腸が弱い事」と「患者さんの困り具合」とは相関関係があるのでしょうか。

この画像はサンプルです。

「私、胃腸が弱くて」と患者さんから訴えがあったとき、幾つかの対応が考えられます。
むろんどのような症状から患者さんがそう感じているのだろうか、と考えることは重要です。

でも「胃腸が弱い事」で困っていない人は案外多いわけでして。
油っこいもの食べると下痢をしてしまう、とか、ストレスで軟便になる、とか、彼等なりに良く分かっていて、悩んでもいないし対処もできている場合がある。それなのに「症状を治そう」と医師がやっきになっても彼らの同意は得られません。単に彼等の予想の通り器質的な病気がない事さえ証明すれば満足する事も多いのです。

むろん困っている人もおります。
そういう方は「太れない」だとか「食欲が無い」などの悩みがあって、それは「器質的な病気があるのだろう。例えばピロリ菌がいる」事を期待すらしている場合があります。そしてその原因を取り除けば自分の悩みが晴れるだろうと思っているのです。
しかし私が「ピロリ菌もいないきれいな胃でした」と言いますと落胆した顔を見せたりするのです。お気持ちは良くわかります。

胃腸が弱いままの方がいい方もおられます。胃腸が弱い自分を気に入っている場合がある。
そういうアイデンティティを崩してもいけません。

「胃腸が弱い」という言葉そのものが曖昧です。患者さんによりその捉え方が違うので、もう少し細かく聞く必要があります。私は胃が弱い、私は腸が弱い、と区別する方もおられます。

「胃腸が弱い」に関しては「困り度」の他に、「痛くなりやすさ」「便のやわらかさ・下痢のしやすさ」「食べられる量」「胃腸炎へのかかりやすいさ」「お薬の副作用の出やすさ」など多くのベクトルで語ることが可能です。

しかし患者さんがどこまでの解決を望むかは重要で、またこちらの限界を理解していただくのも重要ですからまずは医師と患者の意見のすり合わせは「どのように、困っているのでしょう」「あなたが設定しているゴールは何なのでしょう」と聞くことから始まります。

2011/10/19

インシデントレポートこそ自動報告に出来ないか

前から思っていたことですが、医療事故につながる可能性のある事象(有害にせよ無害にせよ)の報告が大変増えているのですが非常にtime consuming(時間を食う)なのが問題です。とにかく記録を残さねばという気持ちはわからないではないのですが、細かく分析され得ない報告書であれば意味のない事ではないかと思います。

そして役に立たないので「全体の件数」が報告されて比較されるという愚かさ。

電子的にインシデントレポートを書くことは少しでも解析しやすいようにとの発想でありましょう。
ところがそれでも提出率はそれほど高くないと言います。

ジョンス・ホプキンス(アメリカの超有名病院です)に、こんな報告がありました。

医師や看護師が報告書を書く率が低いのは、「忙しい」「報告書の書き方が複雑」ではなくて、「同僚に迷惑がかかる」「同僚の手前恥ずかしいから」という理由が多いというのです。(「懲罰を恐れて」ではないようです)ドライだと思っていた米国ですらそうならば、日本はどうなのか。(日本では「懲罰を恐れて」「噂が怖い」などが入りそうな気がします)

一定の確率で生じる治療の合併症の場合にはむしろ合併症の背景を検索すべきですから患者のすべてのデータが添付されるべきです。ところが実際のインシデントレポートはそのような書式にはなっておらず、サマライズして書くことになっている。これでは失敗から学ぶ事など出来ません。

インシデントレポートは本来、失敗、ないしは失敗ではないけれども予想される危険な状態をどう避けるかを学ぶという意味があるはずですが、誰かの主観で書かれた場合にはむしろ意味をなさないと思うのは私だけでしょうか。

インシデントレポートが電子レポートであるべき理由は、その背景がすべて添付でき、分析できる事に尽きます。事後の解析が詳細に行える。従って、このようなレポートはコンピューターで生成され自動で報告されるべきだと思います。

今のインシデントレポートでもう一つ不可解なのは、「偶然上手くいった」を評価していないことです。
どうして私が沢山癌を見つけるのか。それは偶然上手くいった、から学んで必然にしていくことにあります。内視鏡に鎮静剤を使うのも、そのためにたまたま喉頭癌や噴門部癌を見つけることが出来たという偶然を重要視したからで、決して患者さんが楽に出来るように、というだけではありません。
インシデントには良い意味もあると考えており、ヒヤリ・ハットと言った訳語は嫌いですから今回は使いませんでした。

2011/10/08

変化していく常識

胃底腺ポリープ(FGP)の説明をしても納得しない素人さんは放っておく事にしています。

FGPを持つ当事者は必死で我々の説明を理解しようとし、最後にはなんとか理解して安堵するのですが、FGPを持たない家族がFGPを持つ家族に関して説明を受けているときの一種の冷たさ(「とかいってやっぱりFGPも癌になるんでしょ」的なはなから理解しようとしていない態度)を神様が見ると、私が当事者を安心させようと必死に説明している姿が極めて滑稽に見えるだろうと思います。

思う事は二つ。
家族の病気に関する説明こそ、自分の偏見を捨てて聞いて下さい。
FGPは絶対癌にならないし、FGPがある胃は癌になりにくい。検診の診断をしている先生方は肝に銘じて下さい。

さて、ピロリ菌がいない、萎縮がC-1の胃粘膜を持つ女性の6割では簡単にFGPが見つかり、インジゴカルミンを散布すればさらに小さなFGPの芽が見つかります。

すると私の興味はFGPから次へと移ります。すなわち、
「萎縮もない、ピロリ菌もいない、それなのにFGPがないって、どういうこと?」
と。FGPが無いことの方が、普通ではないのです。

例えば今日、久々にそういう胃を見たのですが、なかなか解釈が難しいです。
FGPが無いと言うことは、
1)胃酸分泌が萎縮がないにもかかわらず、少ないのだろう。
2)もしかしたらガストリンのレベルが低いのだろう。
3)女性ホルモンの分泌量が少ないのかも知れない。
4)あるいはすべて。
を考えます。
従って、
A)逆流性食道炎のような所見は少ないのではないか。
B)十二指腸の異所性胃粘膜も目立たないのではないか。
C)前庭部胃炎がNSAIDSなどで起きてはいないか。
D)月経は正常か。
などを考慮しつつ問診や検査を進めていきます。

食道胃接合部を見ると粘膜の色調変化がほとんどありませんのでA)の仮説は正しそうです。
十二指腸球部にも発赤はまるでなく、B)の仮説も正しそうです。
胃底腺と前庭腺の境界部は・・・どうでしょう。きれいに見えます。
ただし、NSAIDSを良く飲む方なので前庭部に胃炎をしょっちゅう起こし
ガストリンレベルが低い可能性はあると考えました。
ところが主訴は、「のどの違和感」だったのです。
従って、酸の逆流がのどの違和感の原因ではない、と考えて患者さんには説明していきます。
(酸ではない胃内容物の逆流という可能性はある)
FGPの有無もこうして日常診療では重要な所見として役立ちます。

無意味な内視鏡所見など、ただひとつもない。

2011/10/04

民間療法とか代替医療

お尻の拭き方だとか、風邪の予防だとか、その他もろもろの事。

真面目に考えていたのはやはりアメリカ留学中の事でした。

アメリカには2年留学。

さあ、絶対にその間には医者には行けないぞ、歯医者には行けないぞ、の覚悟で臨みました。

(むろん自分以外を連れていくのはいいのです。でも自分は絶対に行きたくはなかった)

アメリカ留学前には歯を突貫工事で全部治す。(無理を聞いていただいた松尾先生本当にありがとうございました)

身体の方もチェックアップする。

あとは、生活習慣病と感染症にさえかからなければ良い。それなら自分でケアできます。

本当に必死だから、中途半端な思いつきは却下です。そうして私は自分なりのやり方を獲得して行きました。



その知識は日本に帰っても役立ちます。育児本や育児番組もアメリカのは「必死」な経験の中から出てきた知識が多くて案外役立ちました。

日本みたいに簡単に病院にアプローチできたらどうでしょうか。

誰も必死じゃあないですよ。

だから民間療法とか代替医療とかが育つ基盤はないと言って良い。お金の問題を除けば。



和漢が生まれた昔はやっぱり「必死」だったんだろうと思いますから、それなりに説得力がある。

しかし現在の日本における民間療法とか代替医療に関しては、大方は知恵が足りないと感じています。

たまに「へ~」って思うことがあるので、どうぞまた外来で教えてくださいね。

2011/10/01

ただしいお尻の拭き方

肛門科ではない私が正しい排便を指導するのは何となく変ですが、当院は内視鏡を受ける患者さんが多いのでお尻をたくさん見ます。すると思う事が色々ありまして、指導すると「は~」とか「へ~」とか感心されるので書いておくことにしました。

3行でまとめると、
○うんちをしたあとはお尻の粘膜が脱出するのでそれをもとに戻さないまま拭くのは間違ってる。温水洗浄するのもそのあとで。
○「?」なに言ってんの?という人はすぐさま粘膜がもとに戻るような若い人です。その状態をキープすべし。
○うんちがいつまでもきれいにならない、という人はたいてい何か間違ってる。骨盤底筋も鍛えましょう。




うんちが出ると直腸の粘膜が裏返りながら飛び出てきますが、若い方では直後にスルスルと引き込まれていきます。ですから温水洗浄便座で洗っても痛くないかも知れません。でも、調子にのってジャ~ジャ~してはいけません。排便後すぐに温水洗浄をすると、水流が粘膜を刺激します。すると粘膜が浮腫を起こしてしまいます。腫れるとそこには鬱血が起きますのでの原因になります。さらにその粘膜から出血する場合もあります。

したがって排便後、まずはきちんとお尻の筋肉をしめましょう。これは若い方でも大切です。

あ、関係ないですが一番飛び出てくるのは前側、次に左右の粘膜のようです(私調べ)。痔が多いのは12時方向(前側の事)だから気付いたときは「なるほどなるほど~」とか思ってしまいました。

お尻の筋肉を締めるだけできちんと粘膜が収まる方は良いのですが、ちょっとまだ今ひとつ戻りきらない方がいらっしゃると思います。そう言うときには、花王サニーナをしみこませたトイレットペーパーを使い、周囲から優しく指で押し込むようにして露出した粘膜は直腸の中に戻してしまいましょう戻した後、きちんとお尻の筋肉を締めましょう。

戻さないまましつこく拭いて「きれいにならない、きれいにならない」と言っている方がいます。粘膜が刺激されてひどい事になっていますからすぐにわかります。あんまりお尻をいじめないでください。花王サニーナは代替品がないのですが、中身はスクワランオイルとアズレンスルホン酸です。私自身は赤ちゃんのお尻拭きとして使っていました。おむつかぶれが良く治るのです。アズレンスルホン酸は裂痔(きれぢ)に対する最強処方の一つでして、色々使いようがあります。

スクワランオイルは貴重品なので手に入りにくい方は赤ちゃん用のトイレに流せるお尻拭きを使ってもOKです。あるいは普通のトイレットペーパーで結構ですから、刺激しないように上手にお尻を拭いてください。

写真は内容とは関係ありません
話を元に戻しますと、温水洗浄便座を使うなら完全に粘膜が直腸内に収まってからが良いのです。浣腸代わりに使って炎症を起こしている方がいます。温水は粘膜に対して刺激がありますので気をつけて下さい。ウォッシュレットを使って「いてっ」と感じたら、まだ粘膜が収まっていません。きちんと収めてしまえば痛くないはずです。

温水洗浄便座を使うときに、もう一つ問題が。
誰でもお尻を拭くときには「前から後ろ」って習いますね。男性は習っていませんか?
父親教室に行くと習えるんですよ。
それは大腸菌が尿道から膀胱に入るのを防ぐためなんですが・・・

温水洗浄便座の水流は後ろから前orz」なのです。どうしてこうなった。
あまり強く使うと大腸菌などに汚染された洗浄水が尿道から膀胱に入って膀胱炎の原因になるので注意して下さい。 ていうか、
すごくこの手の膀胱炎が多いそうですから、日本のメーカーの方、どうぞよろしくお願いします。

で、温水洗浄便座は要するに使わなくても(むしろ使わないほうが)良いわけですけれど、まだ気になるという場合には最後にもう一度サニーナをしみこませたトイレットペーパーで拭きますと、裂痔など痛みが取れて治りも良く、内痔核にもなりにくいということ。腫れが強いときは市販の軟膏を使うのも良し。我々に相談するも良し。坐薬には坐薬の効用があり、それは別の場所で書きます。

検査の時にお尻を見ると、「どういう排便習慣かな」というのが良くわかりますが、たいていは長い年月のことですからあえてそこに介入はしません。

しかしさすがにお尻を拭きすぎて潰瘍を作っている(本当にいます!)場合もあり、真剣に注意しますし、少しの改善でなんとかなりそうな場合もありまして、指導をその人のお尻にあわせてするわけです。

ご老人にひとりひとり指導しても無駄、という感じがしましたので、ここに書いておけば少しは若い人も読むだろうと思って書いたという次第。痔疾はそれだけで一分野を形成するほど奥が深い分野で、なかなか理解が難しいと思いますが、意外と人生の最後で悩む人が多いので、かたよらない知識を身につけておくことは大切だと思います。

2011/09/28

生命保険の診断書について

生命保険会社が要求する証明書の存在理由が、最近無くなりました。

というのも、我々が発行する診療明細には行った手術名まですべて正確に「厚生労働省名称」で記載してあるため、彼らはそれを見るだけでどういった治療だったかがわかるからです。

(例:「内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)」で手術番号K-721は確定。保険会社はわざわざ医者にこの番号を検索させて書かせます)

我々が発行する領収書、兼、診療明細には
患者名、カルテ番号、診療日、診療明細、領収金額すべての情報が含まれています。

実は、一部の生命保険会社はこの診療明細だけで払い戻しをしてくれます。当然の事です。
偽造かどうかは彼らが確かめれば良いことです。彼らはそれだけの調査能力は持っています。
また、領収書を回収しますので医療費控除には当然申告できなくなります。未必の脱税の防止にもなります。

入院の場合でも最近の領収書は細かいのでやはり証明書は不要だと思います。
治療を見れば必然的に病名はわかるからです。

繰り返しますが、すでに「診療明細で良いよ」と言ってくれる生命保険会社はある、というのは事実です。良心的ですね。当然その分支払いは迅速なのでしょう。私は診断書を書くのに熟考するタイプなので時間がかかるのです。

この方式が普及すれば、「これは保険がもらえるはずだ。そう言われた」と勘違いして「証明書をくれ」と主張し、病院の受付さんを困らせる患者さんもいなくなるのです。

蛇足ですが、検査の結果を聞きに来ないのに診断書だけ持って来て「書け」という人が多すぎます。診断書には「終了日」っていうのを書くことになっておりまして、結果を聞きに来ない限り書くことが出来ませんので悪しからず。

2011/09/24

メタ思考について考えていました。

私は記憶容量が少ないのを誤魔化すために必死で記憶をメタ化(要するに圧縮)してなんとか医者をやっているのですが、世の中にはそれが自然に(あるいは必死か)出来る人がいるようです。それを芸術家と呼ぶのでしょうか。

川崎の岡本太郎美術館に行きましたが、すばらしい展示内容でした。様々な書籍が自由に読むことが出来るのもうれしかった。芸術家には蒐集家が多いとの印象を持っていますが、残念ながら彼のそれは事情により散逸している様子。それでも研究が進むと、本人すら意識していなかったかもしれぬ深みが作品に加えられ、素人に理解しやすくなるのが良い点です。

展示物の本の中に瀬戸内寂聴氏、梅原猛氏の対談(恐らく10年以上前の)がありまして、彼等は晩年の岡本太郎氏をあまり評価せず、若いころの複雑な彼を評価しているふしがありました。(晩年の彼は単純で「子供のような」と)しかしその場にいたら私はその意見に異を唱えたかも知れません。彼等からすると、完成された岡本太郎氏はいかにもステレオタイプ的な岡本太郎氏であり理解しやすく、見てはいられないという事なのかも知れませんが、それはメタ化の完成形でもあります。現在の瀬戸内寂聴氏がまさに瀬戸内寂聴氏であるのと同様に。

メタ化と対称の位置に存在するのは、宗教学とか民俗学とかだと思います。
言語というのはもっともメタ化しにくい対称で、私は苦手です。
宗教学や民俗学を極めた人には語学の天才が多いのも頷ける話です。岡本太郎に影響を与えたとされる宗教学者ミルチャ・エリアーデも数々の言語を使いこなしたという事でした。宗教を研究するにはそういう才能が必要なのです。岡本太郎が彼に惹かれたのは自分の対極に位置したからかも知れません。関係ないですが私は宮本常一さん(民俗学者)が大好きなのです。宮本さんも言葉に関しての天才で、万葉集の数万句を諳んじていたとされています。

岡本太郎さんが絵を描くときに、養女の敏子さんが「そこは赤」などと色を指示して描いていく、というようなエピソードを読んだときには、アンディ・ウォーホルさんと同じじゃないか、と思いました。確か彼も来客に絵を描かせたんでしたっけ。

そういう事を考えさせてくれる場所はなかなかありません。ゆったりとした時間が流れている生田緑地にふさわしい美術館だと思いました。

2011/09/13

Common disease について

診断学で最初に学ぶことは、頻度の高い疾患(common disease)から考えよ、決定樹(decision tree)を構成せよ、という事です。

例えば「お腹が痛い」「脇腹がいたい」といった患者さんの訴えがあるとします。
一番頻度が高い病気はなんなのでしょうか。

それは、
1)筋肉の痛み
2)軟骨の痛み
3)細い神経の痛み
それに匹敵するぐらい多いのは
4)内臓の筋肉の痛み

でしょうか。(当院調べ)
筋肉の痛みならばリンラキサーか何かを処方され、「一週間で治るでしょう」と説明されます。軟骨ならば、「あまり動かさなければ三週間かなあ」と説明されます。細い神経の痛みならば、「う〜ん、出たり出なかったりするかなあ。冷やさないでね。皮膚の発疹は見ておいてください」と説明されるのです。
内臓の筋肉っていうのは臓器も原因も多岐に渡るのですが、少なくともブスコパンは当院の薬局にはないのですよ。その原因を治療するからブスコパンはない。(ずるいんですが、チアトンはある)

これらのcommon diseaseの診断に、レントゲンは使えません、CTも使えません、MRIも使えません、エコーは多少役に立ちますけれども、血液では異常が出ないことが多い。common diseaseではなさそうだ、というときにレントゲン、CT、MRIなどが必要です。

うちに来る患者さんで多いストーリーは、
1)腹痛で受診し、レントゲンを撮った。
2)レントゲンで異常がないのでCTを撮った。
3)CT撮ればなんかおかしい所があったりするので、更に造影CT、MRIにまわされている。
4)それでもお腹の痛みが良くならない。胃と大腸鵜川医院で受けたいので来ました。

ちょっと待て、と。common diseaseすっ飛ばしてるじゃない?
途中からどんどんぶれているので、また最初に戻って話を聞き始める。
だって、この方々は胃や腸の検査を受けて幸せになれるのでしょうか。



私はテレビは見ないのですが、世の中には色々な番組があって、ありふれた主訴からずいぶん珍しい病気を名医が当てるらしいじゃないですか。
私は珍しい病気は見つけられませんから、嫉妬でテレビは見ません。
でも危惧します。患者さんが心配性になったら困るじゃないですか。
(出来たらテレビ見ている人は来て欲しくないと思いますけれども無理ですし)

ですから、こんな話を必ず患者さんには最初にするのです。

「いいですか?あなたの症状を説明できる状態(あえて病気とは言いません。だって軟骨の痛みなんて、教科書にも載らないレベルの異常ですから)としては、筋肉の痛み、それから肋軟骨の痛み、あとは神経痛なんかがとても多いんですけれど、実はこういうのは色々な検査では写らないんです。CTとかMRIの分解能はせいぜい数mmですけれど、それ以下の小さな異常はわからないでしょう?蚊に刺された部分をCTで見つけられます?無理でしょう?細かくお話を聞くことと、診察でだいたい当たりをつけたら、エコーで確かめなくちゃいけないことを見ておいて、あとは症状経過を追ってみて、私の見立てがあってるかどうかを評価します。これがまず最初です。もちろんそうじゃない病気も私の頭の中では考えておきますが、特にあなたが心配している病気が今あるとすれば教えて下さい」

エコーは痛くないし、軟骨の異常は良くわかったりすることと、あとはフリーエアーとか腹腔内出血とか腹膜炎とか、これ誤診したら終わりだな〜っていう病気を除外するには最適なモダリティ(検査)で、私のdecision treeでは診察・尿検査の次に存在します。従って行う場合はありますが、それは病院などで行うエコーとは目的が全く別質だと思っています。「あ、エコーならドックで受けて異常がありません」などという患者さんは多いのですが、(ああ、私とはあわないなあ)と思います。

私が医者になってから「これは習わなかった」と思っている腹痛の原因として多いのは、
1)女性の肋軟骨の痛み:肋軟骨が石灰化してくる時期に痛むことが多いようです。
2)腸腰筋の筋肉痛。
3)筋肉が腸骨と付着している部分の痛み。
です。
珍しいけれど、静脈炎、なんていう病気もありますよ。
え?お腹に?と思うけれど、あります。

2011/09/12

技の取得について(より現代的な)

長竹慶祥君というお友達がいます。
彼はジャグラーとして世界レベルの人です。参考URL

ザ・インタビューズという面白いサイトがあって、

内視鏡にも通じるなあ、若い医師で習得が遅い子が多いけれどこうすれば良くなるなあ、と思いましたので引用します。
取得なのか習得なのかと考えたけれど、よりレベルが高い印象を持つ「取得」としておこうと思う。

  1. 内視鏡の達人にその検査を見せてもらいます。可能ならば動画で撮影させてもらい、あとでたくさん見ます。(武道で言う見取り稽古)
  2. 理解出来たつもりになったら自分でやってみます。そのへなちょこぶりを見てもらってアドバイスをもらいます。
  3. まあまあ上手くなってきたら自分の動画を撮ります。そして達人との差を分析します。色々な視点から。
  4. そのポイントをひとつひとつ確かめながら自分のコツを探していきます。

まず習得が遅い子は1が明らかに不十分です。どこを見ていたんだ、というぐらい理解が出来ていません。だから動画だろうが何だろうが撮って100回でも200回でも見て下さい。私、最初に内視鏡を握る前に1000回ぐらいは見ました。最初から結構うまかったと思います。
放置している上司の場合2.が行えません。頼んでもアドバイスがもらえないなら去りましょう。
3.これは非凡。運動部では良くやるのにどうして医者はしないのか。やりましょう、是非。
4.これは非凡な人しか出来ません。出来たらあなたは次期スターですから、駆け上りましょう。

がんばれ、若い衆。

ちなみに鵜川医院では、検査の動画は全例撮り、あとで見直しますが、自分の姿を撮っていないのが欠点であります。無様な姿を晒していることもあるかと。昭和大学藤が丘病院名誉教授の藤田力也先生、教授の高橋寛先生からは、「人が見てかっこいいと思われるように検査をしなさい」と言われて育ちましたが・・・う~む。精進します。

2011/09/06

検査結果はお持ち下さい

当院に受診する時に、
1)お薬手帳(新しいものだけでなく)
2)検査結果(なるべく生のデータを)
を必ずお持ちいただくようにお願いしています。
持っていらっしゃらない方には一度お帰りいただくことも珍しくはありません。
献血の記録なども助かります。

お薬手帳がない場合には、おかかりになった医院(病院)、薬局の明細領収書でも結構です。

メリットは多大です。
1)あなたの先生の見立てや治療が私の参考になります。
2)検査、治療の重複がなくなるので若い皆さんが納入している保険料の無駄遣いを減らすことが出来ます。
3)飲み合わせのチェックは我々のほうが厳しく行いますので、薬局よりも役立ちます。
4)他院(検診)では指摘されない異常が見つかる場合や、あるいは他院(検診)で異常とされていても違う解釈をする場合があります。
5)時間の節約になります。

我々のお出しする明細領収書にはそのままお薬の内容も記載してありますし、お薬手帳にも記載しますからそれを主治医の先生にお見せ下さい。



しかしお持ちいただく理由はそれに留まりません。私にとっては宝の山です。

一例を示します。

検診の結果を持っていただいてチェックしていますと、各機関で微妙な違いがあります。検査値の並べ方、あるいはフォントの大きさなどもそれぞれこだわりがあるはずで、検査者の意図をプロファイリングするのが私は好きです。
ある公的機関の検診結果を拝見して気づいたのですが、血中尿素窒素(BUN)の数字が、
193
と書いてありました。
通常、BUNの単位はmg/dlであらわす場合が多く、その時に正常値はせいぜい20mg/dl未満です。
193は目を引きます。
その左隣に単位が示され、x10-1mg/dl と書いてあるのです。つまり検査値は普通の10倍になるようにわざわざ調整されている。

10秒ほど考えてある結論に達しました。

BUNの数字に特に注意を払う目的で、検査値が10倍に表されるようにしてある。
BUNは体を酷使した場合に上昇するが、通常は見過ごされがちである。
横紋筋に強いダメージなどが生じ得る職場であり、過去にこれを見過ごしたために死者、あるいは重大な後遺症が残った事例があった可能性がある。
二度とそのような間違いをおかさないために、数字が10倍になり目がつきやすいようにした。

というストーリーがあったのではないか。

検査結果をお持ちいただき、そのプロファイリングを行うことが私にとっては医療を行う上でのひとつの興味になっておりますから、みなさんには結果をお持ち下さいと言うのです。

もちろん他の理由ももっとありますが。




リスクは分散せよ

メタボリックシンドローム(メタボ)の患者さんを見ると、高鉄血症になっている場合が多くそれはIRHIOという概念で説明が出来る。血液中のフェリチンという鉄関連タンパク質が高い事が観察できることが多い。フェリチンは古くは(現在はまさか使われていないと思います)腫瘍マーカーとして知られていたけれど、例えば白血病で上昇するけれど、白血球は鉄の塊みたいなものであってその代謝回転が速くなるのだから上昇するのは当然と言える。間接的に病態を観察しているわけだ。ちなみに白血球はコレステロールの塊でもある。(コレステロールが高いほうが感染症に強いとか癌に強いという議論はこれが根拠だが、疫学的にはそういう結論になるのかもしれない)話を戻すとメタボでは血液中の鉄、あるいはフェリチンが高値を示し、同時に肝障害、エコーでは脂肪肝というような所見が揃う。さらに高インスリン血症(HOMA-R高値)も示す。

当然メタボ、あるいは肝炎の患者にも鉄制限食を指導します。

ところが困った事にサプリメント類の中では「鉄」がメジャーな一角を占めているのです。

マルチビタミン&ミネラル
にんにく卵黄
鉄、ヘム鉄
ウコン
青汁

など。調べるのが大変なかたはこちらの下の方を御覧ください。

ウコンなど肝臓に良いよ良いよと飲んでいると、意外にも肝障害が強くなる場合もあります。しかしこれらは話題になりませんね。それはそうで、そもそもこうしたサプリメントの健康被害が問題になりにくいのは、

みなさんは飽きやすい

という前提があるからに他ならず、真面目に何年も飲むと逆に弊害が生じるリスクは増加することをみなさんは意識すべきです。
つまり飽きやすいことがリスクを分散していたのです。良かったですね。

私には患者さんには「真面目は良くない」と常々指導していますがその真意は上のような理由です。わかりますか?

2011/08/19

確定診断

悪性病変の確定診断は、その細胞そのものを診断するのが一番良い。どんなに画像上悪性が疑われても、例えば乳腺は必ず細胞をとってから、という手順が踏まれることがほとんどだ。(事前に細胞を取ることが難しい臓器は違う手順を踏むこともあるだろう)

でも細胞での診断にも限界はあって、例えば食道の表層癌はかなり難しいので病変を切除してから評価したりする。それもまた重要な手順なので患者さんは是非ご理解下さい。

では良性病変はどうかというと、細胞を取ること自体合併症が避けられないからすべてを細胞で診断すると危険が利益を上回ってしまう。だから出来れば偽陰性率を減らしていこうと努力をする。この所見ならば必ず良性だ、という確信があればなるべく細胞をとらないで済むように努力をすべきだ。

Wikipediaの胃炎の項目も、胃底腺ポリープの項目も、私はずいぶん違和感を持っているのけれど特に、
2011年8月19日時点で、


と書いてあるこの部分には大変違和感を持った。(書き直そうがまた元に戻るので、そういう誰かの主張なのだろうと思われる)

今までFAP(家族性大腸腺腫症)以外の患者で、胃底腺ポリープが癌化したという報告は世界に一例もない。これが他の悪性疾患と鑑別が難しいならともかく生検し、病理組織学的検査を云々と書いてしまうのは・・・。素人向けの文章とは言えない。

良性病変の確定診断こそ非侵襲的に行うべく努力を重ねる事が重要ではないか。その未来像も描かずに「必要である」と書いてしまう態度に私は違和感を感ずる。

以前から書いているように、カルチノイドや胃型腺腫との鑑別の困難な隆起性病変が胃底腺ポリープに混在して存在する場合には当然生検すべきだ。しかしそれは、カルチノイドや胃型腺腫の診断のために生検をしているので、良性疾患の確定診断をしたいがためではない。

胃底腺ポリープと呼ばれるポリープには、RACがきれいに見えるものと、むしろpitがよく見えるものとがある。その差異を論じたいがための生検ならば、なるほど意味はあろう。私とて胃底腺ポリープは終わった問題だとは思ってはいない。

我々が生検をせずに診断をしていると、「取らないで良いんですか!」という態度をとる患者さんがおられるが、背景には良性疾患は可能な限り非侵襲的に診断という信念があるからだと最初に宣言しておきます。

しかしそれを知っている患者さんは私が生検をするとびびってしまうという弊害もある。

2011/08/17

ディベートとクリエイティビティ

私の口癖は「そうかもしれないね」とか「いいね」です。どんな場合でも肯定から入ります。

例外はあります。これを信じたら必ず詐欺の対象になるような間違った思考方法を患者さんがしている場合には、それが洗脳でもなんでも構わないので強い否定から患者さんにアプローチします。少なくとも患者さんが相手でない場合には否定から会話をはじめることはありません。
(倫理的な否定はまた別の話で)



息子が「お腹が下っているのだけれど、熱中症だろうか」と言いましたので、「そうかもしれないね」と私は答えました。答えてから「熱中症ではお腹を下すだろうか」と真剣に考えるのです。これがいつもの思考方法です。「水を飲み過ぎるから下痢をするのだ」というような考えは短絡的です。そこまでの思考ならば思考しない方がまだましです。下痢は熱中症の危険因子になる、そんなことはわかっています。そうではなく、下痢の本質を考える良い機会として利用するのです。蠕動の亢進状態が起きたのか、あるいは吸収不良が起きたのか。吸収不良は水分の吸収不良か、あるいは糖や油の吸収障害か。例えば蠕動亢進が生じるには甲状腺ホルモンが関与したか、あるいは他のホルモンが関与したか、あるいは中枢神経系の作用か、あるいは電解質の影響があるのか。電解質だとすればカリウムが高いのか、あるいはカルシウムが低いのか、ナトリウムは関与するのか。他のホルモンやサイトカイン、例えばアセチルコリンはどう関与してくるのか。中枢神経系だとすればそれは抑制の抑制系なのか。それらを今考えておくことは、将来未知の病態に出会ったときの準備になるのです。

もちろん資料をひっくり返し、文献検索もざっとしますけれども、自分の求める答えが得られないことの方がむしろ多く、それで良いのです。

余談になりますが、同時になぜ「熱中症」という言葉を使いその発想にいたったかを考えています。下痢をしているのは事実だとして、熱中症という言葉を使うからには付随する他の症状があるからなのだろう。その症状は何か。相手が何か言葉を発したとき、その意味について単純に考える思考と、その言葉を発するに至った背景を考える思考とはほぼ同時に処理されていると思います。


患者さんと話すときに、「受容的な態度で」などと良く言いますが私はそれを意識したことは人生で一度もありません。単純に患者さんの言葉に興味を持って聞いているだけなのです。結果として受容的だ、やさしいね、などと言われているだけです。違います。

さて、こういう思考に必要なのは基礎知識かも知れません。受験勉強や国家試験の勉強というよりも教養としての知識をいかに身につけるかを考えて勉強をしてきました。(高校の勉強が意味がないという人はその知識を使わなかっただけです)知識は使わなければ意味がありませんから、その前段階としてディベートに慣れておく必要はあるかもしれません。知識を使って揚げ足をとる、という奴です。
ディベートの場合にはまず自分の主張を決めますが、その時には徹底的に自分の理論の背景を調べます。その知識を戦わせる練習というのは、知識をいかに応用するかには必須だと思うからです。

教育をするときには、まずは吸収させて、つぎにディベートの練習をさせる。ここまでで実社会では通用します。

しかしクリエイティブな仕事をしようという場合にはディベートのような思考はやめて、上記のような思考過程をすると面白い事が起きます。一人でしても構わないのですが、この思考を二人以上でキャッチボールするとどんどんアイディアが膨らんでいくのです。私はこれこそが会話の醍醐味だと考えています。第一、なんでも否定するよりは楽しいです。子供相手にこれをすると、「褒めて育てている」と思われがちですが、別に褒めているわけではなくて、自分に何か得ようとしているのです。
(ちなみにクリエイティブな人々が育児に興味を持つと、うまくやっているように見えるのはその思考過程が現代の子育て方法とマッチする部分が多いからだろうと思います。ただその本質は違うのかも知れません。良くわかりません)



というような事を思ったのは、慶応大学の湘南校舎で坂井直樹さん(教授)に呼ばれて講義に行ったときのこと。デザイナーなどクリエイティブな方々というのは同業者に対して肯定的な態度の方が非常に多いという印象を持ったことがきっかけです。もちろん彼らはライバルです。腹の中では考えているわけですが、まずは色々なアイディアに接したときにまずは認めてみる。そういう思考はクリエイティブの根源なのかもしれない。

しかし学生さん相手だとまだそういう段階ではないのですね。私は彼らの発想も、「いいね、いいね」と褒めてしまうので良くなかったかもしれないと反省しています。彼らはプロになるべき人々です。彼らがクリエイティビティを発揮するのは十分な基礎が出来てからなので、今はあえて褒めない方が良い場合もあるのでしょう。「褒めて育てる」という段階ではすでにない彼らには失礼でした。



医者はすでにある知識を患者さんに摘要して患者さんの利益を確保する職業ですから、そこにクリエイティブという要素は必要ないかも知れません。しかし、コミュニケーション手段としてもこの思考方法は有用なので、今後も変えない方が無難かなと思いました。







2011/08/11

脳内シミュレーション

木村分類亜型というような分類方法で我々は胃の萎縮をC-0〜O-3の7段階に分けている。

なぜそれが重要かというと、胃癌のリスク評価のためだけではない。

例えば胃酸の分泌量は、最高で2L/dayと規定しておく。

C-0 = 1.0、C-1= 0.9、C-2 = 0.8、C-3 = 0.7、O-1 = 0.5、O-2 = 0.35、O-3 = 0.2

という風に係数を設定しておく。

ピロリ菌除菌後の係数は x1.1〜 x1.5 とする。

アルコールなど刺激物を飲んでいる人の係数は x1.2 とする。

これで一日の患者さんの胃液量を推定する。

次に、患者さんの胃粘膜の防御について考える。

遺伝因子を大切にする。例えば親兄弟がNSAIDS潰瘍。

あとはもろもろの因子。内視鏡所見の見た目も重要で。



PPI は胃酸の分泌量を1/3くらいにすると仮定する。ただし立ち上がりは悪い。

H2RAは初日は1/3と効きがよく、あとは徐々に効きが悪くなってきて、主に夜間の(ヒスタミン依存性)胃酸分泌は1/3にし、日中は少し胃酸分泌を抑制する程度と仮定する。



ついでに、胃酸分泌が1/3以下になった場合には、鉄とカルシウムの吸収障害が起きるのでその長期的影響を考えておく。



数万人の患者さんの経験からこうしたシミュレーションで構わないと思っている。

私から見れば、萎縮性胃炎がオープンタイプ(O-1、O-2、O-3)の場合にPPIを長期処方するのは「余程のことだ」という事になる。(他院での処方で一番違和感を感じる部分)

ひとつのお薬を出すときに、こうした脳内シミュレーションをしてから処方する。胃酸分泌についてはこんな感じ。

まずは萎縮の診断を正確に。

2011/08/10

どうあがいても混んでました。

これは当院の今月の混み具合を現したものです。


8
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2011
0.81
0.85
1.19
 
1.40
1.20
 
1.20
1.12
1.18
2010
 
0.94
0.77
1.24
 
1.28
0.97
 
1.08
0.84
2009
0.94
 
1.05
0.97
1.19
 
1.14
1.23
 
 
2008
1.06
0.90
 
1.00
0.83
1.29
 
1.23
0.99
 




標準的な混み具合を1とします。
父親が診療する火曜日、および若干内視鏡の数が少ない土曜日には係数をかけて体感的な混み具合をそろえました。

今年は混んでいると患者さんに言われましたが本当でした。
どんなに患者さんを減らそうとしても、混んでいました。言い訳のしようがありません。

天気と混み具合は関係ありません。

渋滞の時に、東名高速道路に文句を言う人はいないと思いますが、道路の身になりますと、車が重たくて大変だろうな~と思ったりします。

ちなみに8月後半は、例年前半よりも混みますので渋滞の回避をするには家を出ないこと、くらいしか思いつきません。

2011/08/06

FOBT(便潜血検査)

アメリカ合衆国では便潜血検査は50歳以上が対象です。(リンク

オーストラリアでも便潜血検査は50歳以上対象です。(PDF

日本のガイドラインは曖昧です。(PDF

アメリカの研究では50歳以上に効果、イギリスやデンマークの研究で45歳以上。日本では40歳以上で効果という論文があるものの、40歳代に限定した研究がないので実際には何歳以上で効果があるのか不明。

そこで年齢を曖昧にぼかしてあるようですが、40歳以上対象と読み取ることが出来ます。

従って市町村では40歳以上というところがほとんどでしょう。

それを無視するように人間ドックや企業検診で、20代、30代の便潜血を見ている。
その意味について彼らは深く再考した方が良いだろうと思います。




さて、便潜血検査でひっかかったあとなのですが、海外では一度全大腸検査で異常がなかった場合にはしばらく検査をしなくても良いような記述が見られます。腺腫がない場合、5年、10年、検査は必要がないと。

日本では毎年毎年便潜血陽性で再検査を指示される例がありますが、これは海外とは違うなと感じています。そんなにたくさん検査をする余裕は日本には無いと思います。



検診を有効に行うためには偽陽性を回避する工夫がとても重要に感じます。

見落とし、すなわち偽陰性をあまりに嫌う日本では、偽陽性を良しとする傾向が強いのですが、(例えば胃底腺ポリープをひっかける行為)経済への影響は小さくないと思います。患者さんに休みをわざわざとってもらって検査をするのがどれほど影響するか。検査の結果が「異常なし」ばかりでは、医療の価値は下がります。

と、思って偽陰性を減らす工夫(例えば胃底腺ポリープに関する対処法だとか)をすることが重要ではないかと思います。

2011/07/11

拡大内視鏡と内視鏡診断学

昭和大学藤が丘病院に高橋寛先生が教授として赴任されてから、すべての上部内視鏡検査にオリンパス社製のGIF-H260Zという内視鏡を使用するようになりました。

藤田力也先生と高橋寛先生が癌研有明病院時代に編纂された本があります。


癌研有明病院には、紹介患者を治療するだけでない、「自前で癌を発見する病院」という他の癌専門病院にはない特殊性があります。このために組織検査の修飾を受けていない癌本来の姿を見る機会に恵まれています。私が早期癌の発見に自信を持っているのはそのためです。(それでもtub2は難しい)

5mm以下の小さな癌は特に組織検査によって形態が大きく変化してしまいます。癌本来の姿がわからない。これが微小癌の診断学が遅れている原因と言えます。この本は、癌研有明病院で発見された癌をさかのぼって「最初の姿」を勉強することが出来る貴重なデータベースと言えるのです。私が発見した症例も含まれています。

それをさらに発展させ、「胃癌最初の姿を拡大内視鏡で記録する」というのが、昭和大学藤が丘病院に課せられたテーマです。



例えば当院ですと、このような2、3mmの病変を見つけた場合迷います。
①これを最初から拡大内視鏡のためにもう一度検査しなおすべきか。
②組織検査をして癌と診断すべきか。

私の正診率はこういう小さな病変では当然100%ではありません。
正常の可能性があるのに患者さんを拡大内視鏡の出来る病院へ紹介する負担を考えるとなかなか全例紹介できるものではないのです。

ところが昭和大学藤が丘病院では、全例で拡大内視鏡であるGIF-H260Zを使用していますから瞬時にズームをして拡大画像を得ることが出来ます。その結果、組織検査をせずとも癌とわかってしまう事すらあるのです。

拡大内視鏡を全例で使用することは、従来の内視鏡診断学をさらに発展させる可能性があります。
将来、症例が蓄積されたときに「これが決定版だ」というアトラスが出版される事を願っていますし、自分もその仕事の一端を担いたいと思っています。

2011/06/15

内視鏡挿入の奥の手(うつ伏せ挿入)~エピローグ~

うつ伏せ挿入が、内視鏡に関する様々な事を私に教えてくれます。

1)肥満者、あるいは瀑状胃の場合にスコープが胃底部でとぐろを巻いてしまう。
これには最初閉口しました。
脊椎と腹壁で圧排されるために、胃角部を超えられないのです。
2)ゲップが多くなる人がいる。
乳児をうつぶせでトントンしてゲップをさせるのですから、当然と言えます。

しかしながら、この経験は新たな気づきを与えてくれます。

A)なかなか幽門が超えられない、あるいは瀑状胃で幽門に近づくことさえ出来ない場合に、背臥位にしてみよ。
B)ひどいゲップで検査にならない場合、背臥位にしてみよ。

と、今まで悩んでいたことが解決出来るヒントとなったりするのです。

このような気づきは、うつ伏せ挿入をすれば全員にあるはずです。
どうぞ楽しんで欲しいと思います。

2011/06/14

内視鏡挿入の奥の手(うつ伏せ挿入)

内視鏡挿入が困難だと思ったら、うつ伏せで挿入することを選択肢の一つとして考えて下さい。非常に有用です。

内視鏡のうつ伏せ挿入(プロローグ)
この方法は当院オリジナルではありません。その方法との出会いなどについて記載しています。

内視鏡のうつ伏せ挿入について

<対象者>
通常の方法では入らないか、苦痛を訴える場合
あらかじめ咽頭反射が強いと予想される人
意識化鎮静で内視鏡を行っている当院では特に鎮静剤の安全域が狭く鎮静剤がやや少なめに投与される若年~中年女性、あるいは十分に鎮静剤が使えない状況で検査を行う場合

<方法>
患者は腹臥位、あるいはほぼ腹臥位とする。
モデルは当院院長

写真の如く腿にクッションを入れると体位が落ち着きやすい。
当院では胸にはクッションを入れては居ません。
枕は非常に薄いもの(タオルが良い)
首を右にひねって側方に向いてもらう。(これが重要)

あとはマウスピースをくわえてもらい、通常のように挿入を行う。

<類似の挿入方法>
ドイツのスヘンドラ先生も昔からこの方法でERCPにおける側視鏡の挿入を行っている。
日本でもERCP時に最初から腹臥位でアプローチし、すばやく乳頭部にアクセスする医師は多い。


<実際の見え方>
写真左を見てもらうと、真正面に声帯が見えてくるのがわかるだろうか。
その背側に比較的広いスペースがあり、まっすぐ入れば上部食道である。
内視鏡は通常よりもアングルを使う必要もなく、患者もほとんど抵抗することなく、実に素直に挿入されるので驚くと思う。

<なぜうつ伏せ挿入は楽なのか>
1)唾液を誤嚥しにくい
2)うつ伏せ&首を右に向けると嚥下するための筋肉の動作が甚だ制限される=反射が起きにくい
3)体動が少ない
4)そして内視鏡角度が鈍角であることが重要なのではないか (後述)
-ねじる事による角度の変化?
-ねじる事によって軟骨が移動?
-重力は関係あるか


<首をひねる事による、咽頭のスペースの広がりが挿入を容易にするのだろうか>
実際にイラストを書いてみると横に広い咽頭を90度ひねる事によって、縦に広く使うことが出来ることがわかる。

<結語>
のどが固くて挿入に抵抗する患者さんがいたら、だまされたと思って試してみるべき方法
それぞれの施設でそれぞれの工夫が必要
ほんのわずか「うつ伏せ気味」にするだけでも有効
その他挿入に関して沢山の示唆を与えてくれる

うつ伏せ挿入〜エピローグ〜

以上の内容は
第26回文京消化器内視鏡研究会
(平成21年8月29日)
において発表しました。

2011/05/25

元型を探す旅

坂井直樹さんが教授をされている慶応大学政策・メディア研究科で講義をさせていただく機会があり大変光栄に思っています。
非常勤講師という肩書きはいくつかあるのですが医学部ではマン・ツー・マンか、少人数の講義です。研究会で30人ほどの学生に対して講義を行う機会をいただく事はまた価値あるもので身が引き締まる思いです。3年前にも講義をしましたが、その時には理解出来なかった事がわかることがあるのがまたうれしいものです。

坂井直樹さんが主催する研究会で学生はプロダクトデザインなどを学んでいます。3年前に私は講師として呼ばれ、話した内容は「五十音とテンキー」というものでした。
今はスマートホンに押されて片隅に追いやられつつある通常のケータイですが、日本語はきわめてテンキー入力にマッチしやすい文字(仮名)を所有しており、その五十音がどこから発生してきたのかを、主に馬淵和夫さんの本を引きつつ解説しました。

①五十音が制定されたのは明治になってからである。
②それ以前には、大和言葉をどのように表音文字で表現すれば良いのか、あるいは中国語の音を表現するための発音記号として、様々な仮名の並べ方が試行錯誤されていた。
③しかし、縦方向に母音、横方向に子音という並べ方はほぼ不動。それはなぜか。
④まず母音があるらしい事が奈良時代に発見され、そして子音があるらしい事がその後発見されたようである。<縦と横の五十音図の原型が誕生>
⑤起源はサンスクリット語にあって、子音の並べ方(あかさたな)はその法則にのっとっている。
⑥さて、ここからは私の解釈だけれど「いろは歌」がそれと相前後して歴史に登場。そして神が与えたとしか思えないこの歌が、明治の五十音図制定まで日本のかな文字の変化を拒み続けた。(発生はしたが必ず淘汰され消えていった)

五十音図という不思議な碁盤の目は、縦方向・横方向の発見と、いろは歌によって決定づけられた。

という話をしました。
不思議な5x10の碁盤の目がテンキーのキー数とマッチして日本のケータイ文化隆盛を決定づけたであろう。そして同じような言語構造を持っている韓国とフィンランドは共にケータイ分化のトップランナーであるというシンクロニシティ。

私はひょんな事からこの話をする事になりました。その時には坂井さんの意図はわからず夢中で話しましたけれど、今回この講義の意味を知ることとなりました。

ものをデザインするときには、デザイナーの中に「元型」(アーキタイプ)があるという講義を今回拝聴しました。

テンキーは一種のアノニマスデザインだと思いますが、(ケータイのそれとPCのそれは逆方向であるにせよ)日本に素直に受け入れられたケータイのデザインの元型を探す旅がこの講義であったのだろうと。

学生さんは今回は別のテーマで勉強していますけれど、今回も同様に私の役割は「元型」を提示し学生さんに理解していただく助けをする事なのだろうと思いました。今更気付きまして、たいへん申し訳ありませんでした。あと2回の講義がありますので頑張ります。

ちなみに私の思考の元型は「あきらめ」であって、九鬼周造著「いきの構造」の影響を強く受けています。

2011/05/22

内視鏡挿入の奥の手(うつ伏せ挿入)〜プロローグ〜

小田原市にある間中病院は、明治39年に設立された伝統ある病院で、先代は漢方の先生としてもご高名で祖父はライバル意識があったようでしたし、純也先生、信也先生は父と同窓ですし、息子さんは私と同窓という事でなんとなくご縁を感じております。

10年近く前のある日、父が突然思い出したように患者さんをうつ伏せにして内視鏡を挿入しておりました。

「どうしたの?」
「こうすると楽に入るんだよ」(医者も楽、患者も楽)
「どうして思いついたの?」
「そうじゃなくて間中純也先生が前教えてくれたんだ」
「へ〜すごいね」
「内視鏡専門でそればっかりやっていないほうが、いろいろ発想できるのかな」

というような会話がありました。
この方は反射が強いな、という場合にはナースに、
「うつ伏せにしてくれる?」と頼みます。

さて、8年前に癌研の大塚病院に行きました。
ここは当時鎮静剤を使った内視鏡に抵抗があったようで、
昭和大学藤が丘病院同様の鎮静法が使えませんでした。
(高橋寛先生が何ヶ月か説得にかけて、今はもちろん鎮静剤を導入しています)

私はまだ良いのですが、研修の先生に挿入を任せるのは、
(患者さんがゲエゲエ言うのを見るのは絶対に嫌な私ですので)
不安がありました。癌研は咽頭術後の方が多く、難しいのです。

その時に若い先生にこのうつ伏せ法を試してもらいましたら、
検査が非常にスムースで、
患者さんから「すごく楽でした」の一言がありました。

昨年その患者さんを検査したのは日本を代表する名手であり、
名手をうつ伏せ法で若者が越えたのを目の当たりにした瞬間に、

「これはホンモノだ」と確信したわけです。

それを私の師匠の高橋寛先生に話したところ、
さすが達人は理解がはやいというか、
非常に評価していただきまして現在に至っております。
癌研の山本順正先生は学会で発表してくださったのではないかと思います。

まだまだ張っておきたい伏線はありますが、
プロローグが長くなりますとみなさん飽いてしまうので、
次回は具体的な方法について書くことと致します。

2011/05/19

画像解析、やってますw

コンピューターで画像を解析させると、

「あ~ど~してわかんないのよ」

と、どやしつけたくなりますが、しかし研修医と違って悪いのは100%私です。

(研修医がわかんないときは、半分は私のせいですが、半分は彼らの不勉強です)

普通、画像解析の前には正規化という処理を行うのですが、

内視鏡の場合、CTなどと違って生のデータはブラックボックス化しており、

一旦人間の視覚向けに処理されたものをまたもとに戻すのでそこで画質が劣化し、

ノイズがのってそれどころじゃないのが問題です。

メーカーに「生のデータ出してくれ」といくら言おうが無視されますから、そこら辺はちまちまと・・・。

メーカー(オリンパスでもフジノンでもペンタックスでも)の方で、心ある方はまでご連絡を。

一応現在は拡大内視鏡がオリンパスにしかないのでそれで解析中。

人間の眼ですぐに癌はわかるわけだから、コンピューターにわからないはずはないので、

諦めずにやっております。

標準医療がもてはやされていますが、標準と言うならば、コンピューターで出来るはずなのです。

なんとな~く、コンピューターさんもわかってる雰囲気だね。

2011/05/11

良医検索マッシュアップアルゴリズム

いつも自分が手動でやっていることを、マッシュアップでやれば良いわけだ。

例えば大腸内視鏡医検索アルゴリズム
①「大腸内視鏡 and <最寄り駅>」をGoogle Mapsで検索。
②そのうち、ホームページを持っている医院をピックアップする。
③「苦痛のない site:<医院のホームページ>」などでヒットするかどうかをチェックする。
日本消化器内視鏡学会専門医名簿でヒットするかを見る。他の専門医名簿もチェックする。

そのほか、scholar.google.comへの登場や、大学へのリンクなどをたどってスコア化して表示。
さらに協同演者や著者を芋づる式に再検索して最適解を探していくとか。
あとここにわざと書かなかった秘密のサイトで実績を見るとか。

要するに、今のインターネット検索って良医は隠れるようにちゃんと出来ていて、
彼らが過労死しないようになっている事実に驚愕した。

ここを通れ

内視鏡の挿入時、患者さんに咽頭反射を絶対に起こしたくない、例えばマロリーワイス症候群の緊急内視鏡など、あなたはどうやって挿入していますか?あるいは、他院でものすごく苦しくて入らなかったという時に、どう挿入しますか?

挿入時の画像

答えがこの写真です。正面に見えるのが喉頭蓋です。ほとんどの先生は喉頭蓋の背側にたくさん空間が見えますからここからアプローチしようとしますが、それはだめです。
喉頭蓋の根本、左側にわずかな空間がありますがここにアプローチしてください。10mmの内視鏡が通る空間があり、しかも患者さんはゲ~とも言いません。通ればそのまま正面に左梨状窩が見えてきます。

左梨状窩の正面視
ここでは声帯を見ようとか、NBIで咽頭癌探そうとかするのはやめましょう。目的は血を止めるとか、別の部分にあるわけだから。マロリーワイスで反射おこされて再出血したらクリッピングも面倒です。

自分は内視鏡の挿入が今ひとつだな、と思っている場合もこの方法を試して下さい。

経鼻内視鏡は自然にこの経路で入っていくんじゃないかと思いますよ。

喉頭(抜去時)

抜いたときに喉頭を見るのはちょっとコツがありますが、やっていればすぐに出来るようになります。
この方はタバコの吸いすぎなんだろうと、思います。

2011/05/10

IBS、GERD、FDの未来について

消化管の運動はペースメーカーと、
消化器近くに存在する神経節との連携でコントロールされます。
ピラミッド型に連なっていてそれぞれ別の命令が行われるため、
末梢に障害があるときには薬剤ではデリバリーの方法を工夫しないと効果がありません。

私自身は心臓のペースメーカー同様に、
埋め込み型デバイスで
食道の逆流をコントロールしたり、
胃の蠕動をコントロールしたり、
大腸の蠕動をコントロールする方向に、
医療は進むのではないか、
と感じています。

もちろん神経節のアブレーションや、
過緊張に対してはボトックスの注入なども
それ以前に行われるかもしれません。

薬剤は、抑制的にコントロールするときに使われ、
刺激したい時にはマイクロデバイスで、
と分業化するのではないでしょうか。

と、わからない話をしましたが、
これが私の想像する30年後です。

2011/05/09

フェリチンについて

フェリチン:鉄と結びつく蛋白で、肝臓内の鉄の貯蔵量を反映するとされている。

脂肪肝があるときに、その原因として鉄の過剰状態があるという概念がある。(IRHIO)
(日本では無視されているが、本当らしいので、自分の患者さんでは測定することがある)
すると脂肪肝患者では確かにフェリチンが上昇していることが多い。
若い方では献血をしていただき、フェリチンを下げると驚くほど脂肪肝が改善します。

(古くは瀉血という治療がありました。今も肝炎に行っている先生がおられます。効果はある)

身体の中に鉄が過剰にあることは非常に不利で、脂肪肝だけでなく、糖尿病、動脈硬化に悪影響があります。また、フェリチンは腫瘍マーカーともされていますが、これは鉄過剰状態が担癌状態と相関関係にあるからだろうと考えます。

汗をかいて出すくらいしか、下げる方法が高齢者ではありません。
女性は閉経後に急激に脂肪肝が悪化してくるのはこのためでもあります。

原因としては今までの蓄積だろうと思いますが、
食べ物では臓物類、魚の血合いなどは食べないようにして下さい。
長期的に、きちんと運動をして、汗をかいて、徐々に身体の中の鉄分が出て行くようにすると、脂肪肝の改善だけでなくて、血圧低下、血糖の低下などすべてが良くなることが期待されています。

アメリカでは、「じゃあ、鉄を出す薬」を開発すればいいじゃんという発想があります。
(むろん、透析を受けている患者さんでの鉄過剰をなんとかしたいという本来の目的もあります)

キレートというのがそれです。

嘘キレートはサプリメントでは大流行です。効果はゼロです。
本物のキレート剤はかなり身体に副作用が出るので、医師の厳重な監視の下で投与されているのが現状です。輸入して手を出したりしないで下さい。

2011/05/07

薬の検索が不便です

前回私、消化剤を丹念に調べて表にしました。

苦労しましたよ。

ああいう比較表は、この業界にはあっちゃいけないんでしょうねえ。

マッシュアップですぐ作れそうなものですが。

比較されちゃあいけないんでしょう。

訪問販売の基本に反しますので。

(医療っていうのは基本はプッシュ型配信と同じで、売る側が一方的にオススメの品を売るシステム)

抗ヒスタミン剤が入っていない風邪薬はなに?

とか検索出来ないわけです。

OTCがネット販売出来ると、こういう比較は可能になるのでしょうが、

それは誰かが拒否しましたから。

ちなみに抗ヒスタミン剤が入っていない風邪薬は、

カイゲン、あとは葛根湯一般、佐藤製薬ストナ去痰カプセル

でしょうか。カイゲンはNSAIDS入ってますので一応注意して下さい。

風邪の漢方の使い分けは深いみたいで、文献読んだら眠くなって48時間ぐらい寝続けられそうです。

ただ、漢方って結構ITと親和性高いなとはその時思いました。なぜ思ったかは言いません。

市販の薬が使えないからと、ただの風邪で医院に受診する方が

結構後を絶たないのですが、

結局どうしてそうなるのかというと、市販の薬が使えないという意味として、

1)カフェインが入っているものが多くて主治医から「使うな」と言われている。

2)抗ヒスタミン剤が入っているものがほとんどで、主治医から「使うな」と言われている。

3)NSAIDSが入っているので、主治医から「使うな」と言われている。

4)前に副作用が出たので嫌だ。

(ちなみに私が主治医の場合は「こういう時はこれ、こういう時はこれ、この症状の時はうちへおいで、この症状は救急」と指導しますが、なかなか徹底しないという弱みがあります)

この青字の部分を知らないで、市販品はすべてだめと思っている患者さんが多いからでしょう。

4)については合剤だから原因究明が面倒で「とりあえず市販の薬は全部使わないで」となってしまったのかもしれません。

時間がある方にとっては「病院に来た方が安い」という最大の理由も重要です。院内処方だと特に安いのでこれは問題かも知れません。

そもそも市販の薬の値段が微妙です。市販の風邪薬は3日以上飲むのはまずい事が多いのに、5日パックになっているのがおかしい。(でも漢方薬はバラで売ってくれる薬局も多いですよ)5日あるいはそれ以上市販の抗ヒスタミン剤を飲んですっかり肺炎になってから受診するのは一番避けたいパターンです。最初から2日パックにしておけば安いし、問題も起きにくいのにと思うのは私だけでしょうか。

私は個人的には風邪で医者にかかるべきではないと思っておりますが、いざアドバイスしようとしても市販薬が使いにくいシステムになっているので困っているわけです。

こんな記事をあわよくば天才プログラマーが読んで下さって、マッシュアップでも作ってくれたら。

それを実現する種を蒔くことがこの記事の主旨でございます。

2011/04/27

本当に逆流していると

内視鏡時に、アトロピンを0.5-0.6A静脈注射する事により、唾液分泌を抑制することが出来ます。
また、起きえる迷走神経反射を予防することが出来ます。


そして、この咽頭部のサラサラした液体が、逆流したものだと知ることが出来るのもメリットです。
内視鏡時にアトロピンを使用することによるメリットは良く経験することが出来ます。


本当にこのように逆流していると、なかなかPPI通常量ではコントロール出来ないのも事実です。
この声帯を見て、「右を向いて寝ていませんか?」と私は患者さんに聞きましたがその通りでした。
右の声帯の方が明らかに赤く、結節状にも見えるからです。

右を向いて寝た方が逆流はしにくいと指導されたそうですが、経験上そのような事実はなく、個人によって安楽な姿勢は違います。解剖的にも右を向いたから胃酸が全部幽門に流れる事は保証されません。左を向いたから逆流するものでもないのです。

胃食道接合部の所見(LA grade)とは関係なく、胃酸がどんどん上がってきてしまうわずかな角度の違いなどが患者さんそれぞれにあるように感じます。逆流を防止する上でもっとも効果的なのは身体全体を頭を上に5度程度傾ける事でしょう。

2011/04/25

黄色腫(消化管における)


皮膚に出来る黄色腫ではなく、消化管に出来る黄色腫について述べます。

黄色腫は、上記画像左下に見えるようなちょっとした隆起として内視鏡では認められるものです。バリウムによる胃検診でポリープと勘違いされることもあります。
少し黄色調の顆粒が隆起の内部に見えますが、これはコレステロールが黄色く見えているのです。
黄色腫を指摘されても、「私はコレステロールが高いんですよ」と医師に答えてはいけません。なぜならば皮膚の黄色腫については血中コレステロールと関連があるものがありますが、消化管の黄色腫は関係ないからです。

英語ではxanthomaと書きます。発音は「ザントーマ」という感じです。キサントーマと言うのは英語としては誤読ですが、じゃあいったい何語かと問われると、それは日本語だとしか言えません。日本のお医者さん言葉として「キサントーマ」はよく使われます。明治時代から、外来語を日本語化するときに「x」を「キサ」と呼ばせる例がかなり見られます。(キサンチンなど)私はなんとなく(格好悪い気がして)使っておりません。

この黄色腫は、炎症が起きた際がんばってくださった白血球のみなさんの残骸です。白血球はもともとコレステロールが豊富ですが、胃炎が起きますとたくさんの白血球が粘膜で活動します。それがやがて死んでしまうとマクロファージ(貪食細胞)がお掃除してくれるのですが、コレステロールを貪食したマクロファージが集積した状態がこれです。

黄色腫があればつまり、「そこには炎症があった」と、判断出来るのです。



食道に黄色腫がある場合もあります。


大腸にある場合もあります。

それぞれ、患者さんの病歴を理解しているため、「ああ、あのときに・・」と納得出来る、自分には大変興味深い所見です。

みなさんも、黄色腫を見つけたら「がんばったんだね」と褒めてあげて下さい。

血圧は株と同じように分析する

血圧は、株と同じように考えれば良いです。

始値が起床時、終値が就寝時。

下のグラフで縦の棒状になってるのはローソク足で、

白ローソクは夕方が高いバターン、黒ローソクは朝が高いパターン。

それぞれ高値と安値がある。

赤い線はここでは25日の移動平均で、緑の線は75日の移動平均。


すると例えば赤い線が緑より下がったら、今後血圧が下がるフェーズになるんじゃないかとか。

そういう風に分析できます。

逆に上がるフェーズだったら、お薬を増量しましょうとか、血圧に影響を与える因子はなんだったか考えるとか。

一回だけ高かったら誤発注だとか。要するに機器の故障も考えるとか、応用が利きます。

株がわかってる人は、「ああ、一回だけ高くても心配しないで良いのね」と理解して下さるので助かります。

でも、これは冗談で説明してるだけなので、本当に一日何度も測定しないで下さいよ、測定ばっかりしていると血圧上昇しますよ、と話しています。

血糖も考え方としては同じです。

2011/04/23

薬と胃潰瘍, medication and gastric ulcer

胃潰瘍(いかいよう)はポピュラーな病気ですけれど、初診で話を聞いただけでぱっと胃潰瘍だといつもわかるかというとそうでもありません。
風邪薬や、痛み止めのお薬は、胃の痛みも抑えてしまうので「なんとなく調子が悪い」と訴える方が多いからです。

Gastric ulcer is a common disease. However, diagnosis of gastric ulcer is not always easy because patient doesn't say "I have stomachache" at the initial visit.
Cold medicine and/or medicine for pain (NSAIDs)  cause gastric ulcer, but also reduce the pain of ulcer. Thus patients don't feel abdominal pain and seem to feel only they are just uncomfortable.



画面の真ん中が胃潰瘍です。粘膜が欠損してその下の粘膜下層が露出しています。周りはかなり浮腫んでいます。相当痛そうですが、患者さんの訴えはそうでもありません。

The ulcer at the gastric angle in the middle of the picture above. Submucosal layer is exposed due to the lack of the  mucosa. Edema is in surroundings. It looks painful, but the patient's complaint is not so severe.


胃角より上部の胃はエコーで見るのは難しく、左肋弓下からかなり苦労しながら撮った写真がこれです。
医師には覚えていただきたいのですが、エコーで小弯はこの方向に見えるのが正解だという事です。
潰瘍周囲の浮腫が黒く見え、壁は12mmに肥厚、潰瘍底には泡が付着しているため白く見えるのが特徴です。周囲のリンパ節は見えませんでした。鑑別疾患としては悪性の病気があります。

サプリメントで潰瘍を生じるケースもあります。例えばヒスチジンを含む、あるいは製造過程でヒスチジンが混入してしまうサプリメント、あるいは酸性が強いサプリメント、あるいはカプセルが溶けにくいサプリメントです。

案外患者さんは、「抗生物質は胃を痛める」と誤解されていますが、抗生物質で胃が痛んだという経験はありません。

胃がおかしいなという時には、痛くなくても胃潰瘍である場合があります。また、受診時にはサプリメントを含めたお薬の服用歴はすぐにわかるようにしておきましょう。

By ultrasound, it is difficult to see above the angular region of the stomach. Somehow I capture this picture which show gastric ulcer from the bottom left rib arch. Doctors should remember that the lesser curvature are right position which I see in this direction. Ulcer is characterized by adhering white foam at ulcer base. I did not see the surrounding lymph nodes. There is a differential diagnosis of malignant disease. Ulcers could be caused by some kind of supplements. For example, histidine, supplements lead to histidine contamination during the manufacturing process, a strong acid supplements (like black vinegar) , or supplement in hard capsule.
Some patients have been misunderstood that the antibiotics can hurt stomach, and stomach usually is not damaged with antibiotics. 
When your stomach is rather strange,  it may be ulcers even if your stomach is not painful. Please note that  when you visit your doctor, bring medication history including the supplements to let know soon.