2011/12/15

消化器病のトレンド2011

2007年以来ですけれども、ランキング記事を引用してみます。
2007年は当院から二酸化炭素内視鏡を発表した年(リンク先参照:二酸化炭素で内視鏡減圧弁)であり、PPIに対して警告を発した年であり、色々ありましたが世の中遅々として進みません。
二酸化炭素内視鏡についてはProgress of Digestive Endoscopy Vol. 71 No.2 (2007) p42-45に「二酸化炭素を使用した消化器内視鏡検査とその利点:当院の経験」として発表しました。原著ではありませんが、意識下鎮静と同様、日本で最も早くから二酸化炭素内視鏡に取り組んだ5000例の症例報告であり、原理から応用までオリンパス以上(我々は減圧弁を用います。オリンパスが細かく圧は調整できませんが電磁弁をUCRとして販売しています)に理解して書いていますので是非御覧くださいませ。
ちなみに内視鏡用送水装置も、オリンパスに先駆けて高橋寛先生が開発された時にお手伝いし、私が原型を作ったのはもう8年ほど前になります。(ウォータープリーズ

医療サイトMedscapeで、2011年に読者の注目を集めた記事が載っています。

1)FDAが新しい慢性切れ痔治療薬(痛み止め)を承認
ニトログリセリン0.4%軟膏(Rectgesic)が新しく承認されました。肛門括約筋を弛緩させるので効果があるのでしょう。アメリカでは慢性切れ痔で悩む方が多く、オギルビー症候群というのになるのですね。救急病院で良く見ました。日本でもあります。
2)大腸がん検診のガイドライン改訂(ハイリスク患者で変更)
第一度近親(親・子・兄弟)に60歳以下で大腸癌になった人がひとりいる場合、40歳から5年毎、あるいはその近親者が大腸癌になった年齢の10歳前から5年毎。60歳以上で一人ならば他のグループと同じで50歳以後10年毎。二人以上の場合には年齢に関係なく40歳から5年毎、あるいは癌になった年齢の10年前から。
3)PPIに関する警告
クロピドグレルの効果減弱、骨折率の上昇、感染症の上昇、低マグネシウム血症による不整脈など。「賢く使わねばならない」
4)好酸球性食道炎
以前にどこかに書いたのですが、成人男性に多く、自覚症状が強く、組織内に好酸球、PPIは無効でステロイドを使うという食道炎です。まだ見たことはありませんが、常に探しています。
5)TNFαブロッカーの副作用
レジオネラとリステリア感染症が報告されています。
6)クリストリジウム・ディフィシル
いつも問題になる感染症ですが、新しい抗生物質(Fidaxomicin)が承認されています。
7)新しいジェル浣腸がFDAに承認される
アメリカはホントうんち関連のニュースが注目を集めますね。商品名Solestaはジェル状の浣腸らしいです。素晴らしいアイディアではないかと思います。
8)大腸の挿入テクニック
これに関しては日本はアメリカより10年以上進歩してるので、ほくそ笑みながら記事を読みました。
水浸法、キャップ法、色素内視鏡、NBIなど特殊光内視鏡、拡大内視鏡。日本ではかなり上手くても全然目立たないぐらい全体の技術が高いわけですが、うかうかしていると置いていかれますね。
9)ピロリ菌感染治療の新たな展開
特発性血小板減少性紫斑病や鉄欠乏性貧血に対する除菌治療は行われるかも知れない。一方、喘息、アレルギー、アトピーに対してはピロリ菌は負の相関があり、この研究からピロリ菌類似の物質を作らせるようなワクチン治療が出来ないかどうか考えられている。また肥満とも完全に逆相関があることが証明されており、応用が期待されている。除菌治療では従来の方法以外にシーケンシャル療法(PPI+アモキシシリン5日間のあとPPI+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間)、4剤併用(オメプラゾール、ビスマス、メトロニダゾール、テトラサイクリン)
10)IBSの新しい治療
腸内細菌の正常化のために、整腸剤、抗生物質(リファキシミン)の使用。

といった感じです。
当ブログの読者の方には、「知ってるよ!」という話題ばかりだったかと。

0 件のコメント:

コメントを投稿