2014/09/07

内視鏡と画像強調


オリンパスの内視鏡用画像プロセッサCV-260以降のモデルでは内視鏡画像の画像強調をA、B、2つのモードでそれぞれ8段階設定することができる。Aモードは輪郭強調とも言われ、画像の明暗・色調変化のある部分を太く強調 する。このため、皺襞や凹凸などの輪郭、血管や腺窩などの構造物はより太く強調される。一方Bモードは構造強調とも言い、画像の明暗・色調の変化率をより強調する 設定となっている。アンシャープマスクの半径の大小の違いだ、と言うと画像処理をする人ならば感覚的にわかるだろう。したがってBモードでは構造そのものがシャープに 強調される。

Aモードが何に役だつかというと、皺襞や凹凸などを見ることに役立っている。内視鏡のレンズは曇りやすく、少しの粘液でも解像感が落ちる場合がある。それを補うのがAモードで、シャープな輪郭で写真をわかりやすくしてくれる。反面、解像度が落ち、小さな構造を見ることが不得意だという特徴がある。

例:

B5 での観察であるがややシャープさを欠く
A5とすると襞辺縁はどうにかシャープなのだが発赤が強調されすぎているし、解像度が落ちている
B5 レンズをきれいにしてシャープな画像を得る 情報量が多い画像
Bモードは、もっと細かい構造を見るのに適している。特にIPCLやRACなどの構造はAモードより観察することが容易だ。反面レンズの曇りに弱く、粘膜とのコンタクトを避ける、曇りを取り除くテクニックなど、Aモードを使用した観察よりも操作に繊細さが必要になる。技術的に難しくても高い解像度を活かすためにはBモードでの観察は欠かせず、特にNBIを用いた観察についてはBモードしか使うべきではないと言って良い。もともとNBIは短波長であるために画像は白色光よりもはるかにボケにくいのでそれほど難しくもない。

直接は関係ないが必ず水を一度フラッシュすべき。そうするだけで情報量は格段に増える。髙橋寛先生と自分とでウォータープリーズを癌研大塚で作った時の当初の目的はこういう使い道だった。

こうした反射は粘液を洗っていないから生じる
洗うとこれだけ情報量が増えるので、胃でも必ず水で粘膜をフラッシュすべき

CV-260SLを使い始めて7−8年ほど経つと思うが大学でAモードになっている機械を使うと非常に戸惑う。ピロリ菌がいない時のきれいなRACがAモードで強調されると、ピロリ菌がいるときのザラザラ感との見分けが難しいからだ。すぐに気づいてBモードに戻すけれど、練習も必要かと思いAモードも試してはいるが、やはり慣れない。

これが自分にとってのRAC+ 
これは無駄に強調されすぎていると思う
Bモードで、ピントのあったきれいな写真を撮るのは難しいかもしれないけれど、早期食道がんの診断や、RACの同定には非常に役立つので、H画質、HQ画質の内視鏡を用いるときにはBモードでの観察をおすすめしたいと思う。自分は慣れているのでB5だけれどもオリンパスのデモを見る限りB8を使っている先生が最近は増えてきているように思う。

ところでオリンパスには理解してもらえないが、RAW画像の記録がまだ出来ないのはどうにかならないか。かつてはそのようなコンセプトがあり、あとから画像強調を行うことが出来るソフトを販売していたのに。

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