2010/08/30

リスクを分散する

多くの「健康食品」なるものに対して私は必ずしも肯定的ではありません。
例えば「スーパー○○」なる健康食品を3食欠かさないという患者さんに対して、私が話すことは、


例えば普段召し上がっている食品は、なるべく多くの種類を食べなさいと指導されますね。
それは食品によるリスクを回避するという点でも正しい考えです。
特定の栄養素ばかりを取った場合、それが害になる場合もあります。
あるいは、ある食品に後になって毒素が混入していたという場合にも、多くは摂らない事によってその危険性を回避できると考えます。

なぜ医者が西洋薬を使いたがるかという一つの理由はトラッキングの容易さからです。
後になってそれが害をなすとわかった場合、さかのぼって患者さんを追跡しやすいこと。
あるいは成分が単一であるために、作用を理解しやすい事も理由のひとつです。(各メーカーによって基材の違いがあるために、問題が生じたときの解決はやや複雑です)

従って、どこの誰が作ったのかわからない(多くの健康食品は転売を繰り返され、オリジンが良くわからなくなっています。一部のメーカーは除きます)それらの健康食品を大量に服用を繰り返すことは、リスク回避という視点からすれば間違いです。むろん大量に飲んでいただいた方が相手方としては助かります。安定供給しなくても良い。害があってもいつでも逃げられるなどのメリットがあります。


多くの高齢者は栄養が確かに偏っており、サプリメントが必要な場合もありますが、その場合であっても食品と同様、薬だからと信用せず消費者側でリスク回避することが必要だと考えます。
実際にはリスク回避するのが難しいかもしれませんが、その時には主治医の先生は利害と関係ない位置にいるという意味で良きアドバイザーかも知れません。

2010/08/28

NERDという概念には異を唱えたい

どんなほ乳類でも、相当量胃液が逆流するのが普通の事であるのに、それを疾患概念とすることには私は異を唱えたい。

むしろ下部食道過敏症であるとか、下部食道括約筋(LES)収縮異常と言った概念の方が当てはまるのではないか。

また、下部食道について意思統一された観察方法があるわけでもない。例えば切歯列からの距離であるとか、呼気時、吸気時、深吸気時などの情報なしに画像だけで云々言う事は自分には賛同しかねる。
その時の抗コリン剤の使用不使用、鎮静の有無、あるいは基礎疾患、体格なども重要であろうし。

ただ、やたらと細かくなるのは日本的でよろしくない。しかも海外では深鎮静での内視鏡が普通で深吸気での胃食道接合部観察などとても望めまい。もっと簡単な方法がないかを考えていた。

ところで逆流を見るだけならば、腹部超音波でかなり観察が可能だ。
ちょうど食道胃接合部は肝左葉の直下にあり見やすいためである。そして食道粘膜の厚み、あるいはびらんの有無は気泡の有無により間接的に知ることが可能であり、しかも唾を嚥下させれば当然LESはその瞬間弛緩するわけで(弛緩しなければ異常)、機能観察も可能なのである。

これも実際には個人的な技なのであって、まったく細かくて日本的でよろしくはないが、少なくとも情報が少ないだけに内視鏡よりは簡単であるし、医者が3人よれば3つの意見が出て結論が出ないけれども、医師以外が関与する検査については意思統一がはかられやすいかもしれないなどとも思っている。

ともかくも、いわゆるNERDと診断される患者群を相手にしたときに私がまずすることは、
○いったい患者さんが何に困っているのか、頭を冷静にしてもう一度考えてみよう。
という事である。

胃酸の逆流が本当に原因である場合に、それは
1)胃酸が細胞間を通って、カプサイシン受容体を直接刺激する。
2)胃酸が粘膜を刺激して下部食道平滑筋を刺激し痙攣が生じ、それがカプサイシン受容体を刺激する。
という二つの経路が考えられる。

そのときの治療法はいくつかあって、
1)胃酸分泌を抑制する。
2)胃酸逆流を抑制する。(LES弛緩が必ずしも重要ではないと考える)
3)食道粘膜を保護してしまう。
4)下部食道平滑筋が痙攣しないようにする。
などである。

患者に応じてそれぞれバリエーションがあるから、とてもとても複雑だけれども少なくとも内視鏡時にある程度上記のヒントが得られるというのがポイントだ。

言いたいことは、私が患者さんから得ている情報というのは、結構機能的なものが多い。視覚的診断なのだけれど、機能を見る、という事を重要視している。

どうも今までの経験上、各個人に対して、多くのパラメーターが存在しすぎる。
FD、IBSもそうだけれど、天気予報同様にこれらのパラメーターを正しくシミュレーターで計算してもらえるようになるまでは、疾患モデルをもっとシンプルにする必要がある。
臨床の現場では常に、「この人のパラメーターはこれとこれで…」などと考えているのです。
まだ出口は見えません。

2010/08/17

こういう情報が欲しい

患者さんには、現病歴の他に、家族歴、既往歴、嗜好品、アレルギーなどを聞きますが、コンピューターのトラブルの時にサポートする人間はこういう事を知りたがっています。

1)ハブはどのメーカーのなんという製品を使っていますか。アライドテレシスじゃなかったら、それは金属筐体ですか、ファン内蔵ですか、電源内蔵ですか、何ポートでいくらぐらいの製品ですか。最後に電源を入れたのはいつですか。
2)ケーブルはカテゴリーいくつですか。まさか自作ではないですね。安物のケーブルや薄いケーブルは使っていませんか。
3)PCのネットワークインターフェースはインテル製ですか。ブロードコム製ですか。インテルのユーティリティでネットワーク診断は出来ますか。デバイスドライバのリンク速度タブの中に診断ボタンがあります。4)ハブには無停電電源装置をつないでありますね。
5)OSとOfficeのバージョンを教えて下さい。
6)Microsoft Updateか、管理者バージョンのアップデートファイルを使って最新版にしてありますか。
7)アンチウイルスソフトないしはセキュリティスイートは使っていますか。使っていたら商品名を教えて下さい。
8)インストールしてあるプリンタを教えて下さい。プリンタドライバは最新ですか。
9)ディスプレイドライバは最新ですか。

さて質問をどうぞ。

これを患者さんに置き換えるとこうなります。

1)今までに病院に行ったことはありますか、お産や風邪も含めて。あるならばそれらの記録はありますか。あればそれを見せて下さい。なければなるべく詳しく教えて下さい。
2)今までに検診、ないしは血液検査などを受けたことがありますか。あるならばそれらの記録を見せて下さい。たくさんあってもかまいません。「異常が無かった」という答えは受け付けられません。なんの検査を「していないか」までも拝見するからです。病院なんて急にかかるに決まっているものですからそれらの結果は普段まとめておいてください。結果がもらえないならばそれは「他の医院にかからないで欲しい」というサインですから、どんな場合でもまずその医院におかかり下さい。
3)今までの投薬記録を教えて下さい。お薬手帳をお持ちの場合は過去のものもお持ち下さい。
4)ご家族(第三親等ぐらいまで)の病気について、死因とは関係ない場合も含めて細かく教えて下さると幸いです。
5)アレルギーの記録もあればお教え下さい。
6)今日の問題について主治医の先生には相談しましたか?

では今回の症状についてお教え下さい。

おそらくリサイクルされない


どうせならキャップに顔を書いて欲しかった・・・
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