2010/08/28

NERDという概念には異を唱えたい

どんなほ乳類でも、相当量胃液が逆流するのが普通の事であるのに、それを疾患概念とすることには私は異を唱えたい。

むしろ下部食道過敏症であるとか、下部食道括約筋(LES)収縮異常と言った概念の方が当てはまるのではないか。

また、下部食道について意思統一された観察方法があるわけでもない。例えば切歯列からの距離であるとか、呼気時、吸気時、深吸気時などの情報なしに画像だけで云々言う事は自分には賛同しかねる。
その時の抗コリン剤の使用不使用、鎮静の有無、あるいは基礎疾患、体格なども重要であろうし。

ただ、やたらと細かくなるのは日本的でよろしくない。しかも海外では深鎮静での内視鏡が普通で深吸気での胃食道接合部観察などとても望めまい。もっと簡単な方法がないかを考えていた。

ところで逆流を見るだけならば、腹部超音波でかなり観察が可能だ。
ちょうど食道胃接合部は肝左葉の直下にあり見やすいためである。そして食道粘膜の厚み、あるいはびらんの有無は気泡の有無により間接的に知ることが可能であり、しかも唾を嚥下させれば当然LESはその瞬間弛緩するわけで(弛緩しなければ異常)、機能観察も可能なのである。

これも実際には個人的な技なのであって、まったく細かくて日本的でよろしくはないが、少なくとも情報が少ないだけに内視鏡よりは簡単であるし、医者が3人よれば3つの意見が出て結論が出ないけれども、医師以外が関与する検査については意思統一がはかられやすいかもしれないなどとも思っている。

ともかくも、いわゆるNERDと診断される患者群を相手にしたときに私がまずすることは、
○いったい患者さんが何に困っているのか、頭を冷静にしてもう一度考えてみよう。
という事である。

胃酸の逆流が本当に原因である場合に、それは
1)胃酸が細胞間を通って、カプサイシン受容体を直接刺激する。
2)胃酸が粘膜を刺激して下部食道平滑筋を刺激し痙攣が生じ、それがカプサイシン受容体を刺激する。
という二つの経路が考えられる。

そのときの治療法はいくつかあって、
1)胃酸分泌を抑制する。
2)胃酸逆流を抑制する。(LES弛緩が必ずしも重要ではないと考える)
3)食道粘膜を保護してしまう。
4)下部食道平滑筋が痙攣しないようにする。
などである。

患者に応じてそれぞれバリエーションがあるから、とてもとても複雑だけれども少なくとも内視鏡時にある程度上記のヒントが得られるというのがポイントだ。

言いたいことは、私が患者さんから得ている情報というのは、結構機能的なものが多い。視覚的診断なのだけれど、機能を見る、という事を重要視している。

どうも今までの経験上、各個人に対して、多くのパラメーターが存在しすぎる。
FD、IBSもそうだけれど、天気予報同様にこれらのパラメーターを正しくシミュレーターで計算してもらえるようになるまでは、疾患モデルをもっとシンプルにする必要がある。
臨床の現場では常に、「この人のパラメーターはこれとこれで…」などと考えているのです。
まだ出口は見えません。

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