おそらく2005年ころから使い始めた言葉があります。40前になってはじめて覚えた日本語です。
診察の最後のあたりで患者さんが、「日柄ものですかねえ」と仰る。
私は最初その言葉がわからず、しかし「日」「日柄」という時間を意味する言葉が含まれているので「そのうち治る」という意味だろうと思い、
「そう思いますよ」と申し上げる。
すると患者さんはがっかりするのではなく、むしろニコニコとしてお帰りになる。
こういう会話を何度も何度も繰り返しました。
ある日、高齢の方に「これは日柄ものです」と言ってみた。
すると患者さんはほっとしたような顔になり、「そうですか、良かったです」と言う。
「そのうち良くなる」という言葉とは表情が違う。
おそらくポジティブな意味なのだろうと思い、以後は自然に軽快するだろう、という意味で安心させたいときに使うようにしています。乱用は避けています。高齢の方が良くお使いになりますが、伊勢原だけの言葉ではないらしい。(参照記事)
65歳より若い方にはほとんど通じず、「そのうち良くなりますよ」などと言いますがどうもよろしくない。「この医者め、いい加減なことを」という表情になります。「時間が最高の良薬ですね」というとなんだかキザっぽい。それにそう言うとただ寝ている人がいて、それではどんどん悪くなる。心をポジティブにして、できる限り身体を動かし、普通の生活をしなさい、という意味が「日柄もの」には含まれている。「必ず良くなるから頑張ろう」というようなおまじない、言葉の魔法がかかっている気がするのです。65歳以下には何でも理詰めで説明する必要があって、全く面白くない。もちろんそれ以上の年齢でも「日柄もの」という言葉がわからない方の場合には説明は難渋します。そういう言葉が世代間で失われているのはちょっと悲しくも思います。
柿が赤くなると医者は青くなる。 柿は糖度が20度もあるので血糖が上がった人もいます。 また、柿の渋でイレウスになった人がいました。 伊勢原の柿は美味しいんです。 でも食べ過ぎてはいけません。 |
桃栗三年柿八年、 この柿の木は樹齢100年を越えているらしい。 |
病気になれば機能を失う、ある機能はリハビリテーションにより回復しますから適切な時期にリハビリテーションをはじめる必要があるのです。「日柄もの」はポジティブの加減が良い塩梅で、理解できるかできないかでずいぶん患者さんの人生も違ってくるのかもしれません。
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