食事中の脂(あぶら)などの栄養素を消化する「胆汁」という消化液(必要のない血液などの分解産物も含まれます)は肝臓で作られ、それを一時蓄えておく臓器「胆嚢(たんのう)」にできる「石」の事を胆石と言います。
石という名前が付いていますが、珪素(けいそ)でできた本物の石ではなく、胆汁が結晶になったり、固まったりして出来た物です。石の中では堆積岩に近いかもしれません。
この胆石が出来る様子は、都会の川の流れをイメージすると理解がしやすいと思います。
都市部の川にはよくヘドロが堆積しますが、それは
1.川の流れが遅い(胆嚢の収縮が悪い事に相当)
2.水が汚い(胆汁が濃い事に相当)
という理由によります。
これを人間に当てはめてみると、胆石の出来やすい人の例を挙げることが出来るでしょう。
- 食べる量が少ない、油が苦手、食事と食事の間隔が長い人。
- 食事をしないと胆嚢が収縮せず胆汁が溜まりっぱなしになります。食事量が少なかったり油を食べなかったりしても同様です。すると胆嚢の中の胆汁が徐々に濃縮してしまい、やがて飽和状態となり、さらに放っておくと結晶となって堆積してきます。まるでヘドロが川の中に留まってしまうかの様です。ですから、やせていても胆石になる人は案外多いのです。
- 胃切除後の人
- 胃を切除するときにいっしょに胆嚢を収縮させる神経を切ったり、十二指腸を切ったりする事があります。すると胆嚢の収縮が悪くなってしまいます。すると食が細い人と同様に胆汁が濃縮し、胆石が出来やすくなるのです。胃切除のときにいっしょに胆嚢も切除することがあるのは、胆石を予防する意味があります。
- 糖尿病の人を含め、自律神経障害の人
- 糖尿病を発症して5年を過ぎると自律神経障害が出てきます。胆嚢を収縮させるのは自律神経ですのでこの収縮が悪くなることにより、胆石が出来やすくなります。
- 脂っぽい食べ物が好きな人
- 胆汁中には非常にコレステロールが豊富なのですが、脂っこい食べ物を食べるとさらに濃くなってしまって飽和状態となり、すぐに結晶が析出してきます。それが種になって石となってしまいます。良く西洋型の食事で胆石になりやすいなどと言われるのはこれによるのかもしれません。ただし純粋なコレステロール結石は少ないので、この説明だけでは私は納得できません。不規則な食事や胆嚢収縮不良など、複雑な要素がからむのだと思います。
- 異常赤血球の人、溶血性貧血の人
- 胆汁の中に赤血球の分解産物がたくさん出てきてしまい、それが結晶化してしまいます。
- 抗生物質(ロセフィン)による偽胆石
<胆石の予防はどうするか>
おもしろい論文が昔Lancetという立派な雑誌に載りました。胆石の民間療法が実際に効くと言う話です。
簡単な胆石の治療法
一週間、毎日リンゴを2個食べる
最後の日に、オリーブオイルを240cc飲む
リンゴの中のリンゴ酸、これはコレステロールなどを良く溶かしてくれます。このリンゴ酸を摂取することで胆嚢内の結石の一部を溶かし、流れやすくしておくと言う意味でしょう。
オリーブオイルを飲むと胆嚢が収縮しますから、リンゴ酸でやわらかくなった胆石を一気に押し流すという事です。ちょっと荒療治ですが、ヨーロッパの民間療法だそうです。
これは胆石の生成とちょうど逆を行うと言う意味で示唆に富んだ論文だと思います。
自分でする勇気はありません。
ダイエット中にリンゴを食べると言うのは、理に適っているのだと思います。
以上より、胆石を予防するためには、
1)きちんと胆嚢を収縮させるようにある程度脂も摂る。
2)脂ぎとぎとじゃなくて、健康的な食事の内容で。
3)規則正しく食べる。
という事だと思います。
牛の胆石は大変高価な漢方薬で「牛黄(ごおう)」というそうです。
馬の胆石は馬宝(ばほう)、猿の胆石は猴棗(ばざる)、犬の胆石は狗宝(きょうほう)と呼ばれいずれも珍重されています。
もとは胆汁ですから、消化作用があると言うことまでは理解できますが、のどのつまり、喘息、認知症まで治すと聞くともはや常人の理解を超えています。
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