2020/04/29

数字に慣れる

数学という教科では「すべての場合について考えたか」が問われる場面が多くあり、ある程度慣れで対応できるが、苦手な人にとってはなかなか難しいと思う。自分の場合は点数はある程度取れていたが苦手意識は拭えなかった。そのギャップは「全部の場合について考えたか」モヤッとしたまま問題を解き終えるからだ。とはいえ、問題を解くトレーニングは物事を一面からは見ない癖、その数字の並び方はおかしいなと思う感覚、などを養ってくれて、必要なものだったと感じる。(逆におかしいなと感じるものが正しかったりする矛盾が時々あることも学んだ)


東洋経済からの引用だが、これはCOVID-19の感染者の年齢分布である。
これを見て、10代以下は感染しにくいのだ、と思う人々はたぶん数字に慣れていない人々かもしれない。このグラフから、どのような事を考えるかというと、

①10代以下はCOVID-19としての症状が出にくいのでPCR対象にはなりにくい。
②10代以下には感染しにくい。
③接触が限られている老人と同様に10代以下は学校の閉鎖によって接触が制限されている。

というような事を考えるが、ではインフルエンザではどういう年齢分布になるかを参考にしてみたい。秦野伊勢原医師会における、医療機関に受診したインフルエンザ患者数の年齢分布の表を作ってみた。平成30~平成31年シーズンのものである。(子供は医療機関に親が受診させるというバイアスがかかる、という目で見て欲しい)


本来ならば行動制限をせずに、COVID-19が子供にも症状が出る感染症ならばこれに近いグラフであっただろうと思われる(40代というのは接触が最も多い年代なのだろう)色は東洋経済に似せてみた。

では10代には本当に感染しにくいのかを考えると、良いサンプルがあることに気づいた。ダイヤモンド・プリンセスである。全員ではないが多くの乗客が濃厚接触者としてPCRを受けていて参考になるだろう。



という国立感染症研究所からの報告から各年代の感染率をグラフにしてみた。
10代は23名しか乗船しておらず、誤差が大きくなるのだが、うち5名が感染しておりそれなりのPCR陽性率であることがわかる。


ここからわかることは、上記の②は否定的であり、10代は決して感染しにくいわけではなく、PCRで陽性にもなる、感染力のある感染者になり得る、という事実だ。

以上より、学校を閉鎖したことは見えないクラスター(症状が出ないので、発覚しにくい)の発生を未然に抑え込んでいた可能性がある。可能性の一つでしかないが。

中国は休校がはやく、日本と韓国は2月中には学校を閉鎖。感染がそれほど広がらなかったベトナムは2月14日時点ですでに休校を決めている。ドイツはクラスターが発生すると街レベルでロックダウンを行っていたようだ。米国は2007年にNPI(nonpharmaceutical interventions) を策定し、休校は薬剤ワクチン以外で出来るパンデミック対策の有効な手段としていた。
https://stacks.cdc.gov/view/cdc/11425
休校もロックダウンに先立って行われているようだ。

ソーシャルディスタンスを重視した対策の概要については日本語で解説したものを見つけたのでこちらにURLを貼る。
パンデミックを防ぐのに人と人の接触を減らす「非医薬品介入」はどの程度効果があるのか? - GIGAZINE

休校の延期が徐々に決まりつつあるが、議論の内容をサマライズしてくれる能力がマスコミに期待できない(申し訳ないが、全く期待していない)以上、時間がそれほどない自分には内容の詳細を知ることは難しい。こどもの成長には物理的接触が極めて重要であるのにも関わらず、これほどの長期間、活動が制限されてしまう事は心配だ。

米国の話だが、ごく少人数ならばクラスターが発生しても追跡がしやすく軽症で済む可能性が高いという理由だろうか、大学生と子どもたちをマッチングしてシッターとして活動してもらうというような試みをハーバード大学のサイトで見たし、ZOOMなどのデバイスでやはり高校生と小学生を結びつける試みがあるとも聞く。昔のボーイスカウトよろしく、集まれどうぶつの森をサバイバル感覚にして少人数でお姉さん、お兄さんたちと子供がチャットしながらゲームで問題解決をしていくような未来がふと思い浮かんだ。困難は発明を増やすそうで、スペイン風邪のときに多くの特許申請があったという記事を読んだ。人々の知恵に希望を持っている。

話がそれてしまったが、数字を見たとき、それで結論がつけられる事はとても珍しく、むしろモヤモヤした状態の中で最適解を探していく事が連続する。数字は事実をあらわすのだ!と簡単に言うなかれ。(ファクト!とか言ってる人は幸せでいいよなあ)それが自分の言いたいことだ。

2020/04/21

4月の咽頭違和感について思うこと

COVID-19パンデミックのこの時期、当院に増えたのは「咽頭違和感」です。ストレスにともなうヒステリー球、口腔内乾燥、逆流性食道炎の発症が増えたのかもしれない。このあたりでは草木を消毒をする時期であることは関係するかもしれない。しかしその中に本物が混じるので気が抜けない、いつものような内視鏡で安心をする技も使えません。(3月から内視鏡は緊急例を除き休止しています)

ほぼ無症状で発熱がないコロナウイルス感染症ならばしかし、1週間で症状は消えるでしょう。例外的に副鼻腔炎などの併発で長期に渡りPCR陰性にならない症例はありますが。(日本感染症学会に多くの症例報告があります。先生方のご努力に感謝します)

発熱の有無は重要であり、起床時と、午後あるいは夜の2回の測定はこのとき役立ってくる。なぜなら体温はその人固有のもので個人差があり、どこまでが正常とは言えないからです。今からでも遅くないから毎日測定しておくと良いでしょう。(測らずに「熱がない」の自己申告は、意味をなしません。なぜならば夕方には37度を超えることが多い事を知らない人こそ、そういう事を言うからです)

米国CDCでは初発の症状から7日間経過し、かつ呼吸困難や発熱が完全にない状態が3日続いたら観察期間を終了するとしています。そのレベルならばウイルスの排出は少なくクラスターは作らないという判断です。(まだ暫定)

Discontinuation of Isolation for Persons with COVID-19 Not in Healthcare Settings (Interim Guidance)

もともとインフルエンザ流行の1-2ヶ月後から咽頭違和感の患者さんは増えます。PM2.5の時期でもあります。アレルギーや4月の年度代わりのストレスも関連するでしょう。つまり例年この時期は、咽頭違和感の患者さんは多いのです。

これをお読みになって皆さんがどう判断されるかはわかりません。

私を信頼している患者さんには催眠がかかるらしく、2世紀の本である傷寒論に咽中炙臠の記述があったり、フロイトがヒステリー球の記述をした時代背景の事を話すとそれだけで症状が軽くなるようではあります。

問い合わせをしてくるほとんどの患者では症状が通常のやり方では取れず苦しむようです。例えば抗生物質で治らなかった、トラネキサム酸で治らなかった、イソジンやお茶うがいで治らなかった、などです。

咽頭違和感や口腔内違和感がとれれば良いと思いますから、例えばまだ処方されていなければ胃酸分泌抑制薬を試す、傷寒論にある半夏厚朴湯でも良いです。例えば0.9%塩水でのうがいをしてもらう。(うがいぐすりやお茶などは症状を悪化させることがありますので医師のアドバイスを受けてください)ビタミンB2、B6、あるいは亜鉛、鉄欠乏があれば鉄などのサプリメントの服用、など他にも色々ありますが、それらで症状が楽になれば幸いです。

いつものごとく、当院への来院が減ることを祈って書いています。

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