ヘリコバクター・ピロリの除菌療法に影響を来す因子として重要なのは「胃の中性化」であるけれど、pHモニタリングをしながら除菌治療をした論文はあまり見た事がない。
The effect of Helicobacter pylori eradication on intragastric pH during dosing with lansoprazole or ranitidine. Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 13(6):731-740, June 1999.
これはPPIとH2RAを比較していて、PPIの方が優秀だと結論づけている。
CYP2C19 genotype status and intragastric pH during dosing with lansoprazole or rabeprazole Alimentary Pharmacology & Therapeutics 14(10):1259-1266, October 2000.
ランソプラゾールとラベプラゾールを比較して、ランソプラゾールは肝臓内の酵素(チトクロームP450)のひとつであるCYP2C19の遺伝子形によって代謝が左右される事が述べられている。PM(poor metabolizers)遺伝子を持つ人々は非常にランソプラゾールが効き易く、そうでない人よりも胃内pHが高くなるという論文だ。
ランソプラゾールはCYP2C19以外にもCYP3A4という酵素の代謝(恐らくそれ以外も)も受けるため、これらの遺伝子形によって効果が異なる事が予測される。
これを事前に予測できないかという話だ。
CYP2C19で代謝される薬剤にはランソプラゾールだけでなく、ジアゼパムも含まれる。
ジアゼパムといえば当院で内視鏡時に使用する鎮静剤である。このジアゼパムという薬にも効き易い人、効きにくい人がいる。そして薬が効き易くなかなか目が覚めない人は、CYP2C19のPM遺伝子を持つのではなかろうか。そういう人については、除菌成功率が高いのではないか。そういう仮説を考えた。
逆にジアゼパムが全く効かない人達もいる。この人達はランソプラゾールもすぐに代謝してしまうため、胃内pHが上昇しにくく、除菌が失敗してしまう可能性があるのではあるまいか。
鵜川先生、もう2年も前に
返信削除この記事かかれていたのですね。さすがです。
私の最近のCYPの勉強で、
ようやく理解することができました。
実は私自身、カフェインを少し多めに摂取したとき心悸亢進して、(といっても
普通の方なら大丈夫な量ですが)
パニック症状のようなことになったことがあって。
そして、ある時、風邪をひいて、あまりにも咳がひどく、旅行中だったので、
テオドールを服用したときも、同じ様になって。
それで、CYP1A2のPMではないかと、
ちょっと心配になって、いろいろ勉強しています。
また、最近患者さんが増えている
パ二ック症候群ですが、
一部の人は、私のような嗜好品(コーヒー)
とか、薬物摂取により、CYPによる代謝異常で誘発されているのではないかなって思ったりしています。
またいろいろ教えてください。
今日は大変勉強になりました。
ありがとうございました。☆