2009/11/16

それだけで専門科があるくらいですから、痔とは奥が深い疾患なのでしょう。
私は横浜市大で学生時代を過ごしたものですから、第二外科(土屋外科と呼ばれた大腸外科の名門)での実習で毎回大腸癌を直腸診させてもらえるのはなぜだろうか思っていましたが、それは松島病院(痔の治療で有名な病院です)の先生との結びつきが強かったからなのでしょう。場所も近いですし。

症状があってこのページを見ている方は松島病院のおしりの症状チェックページが良いので、それを見て下さい。→リンク

さて、それ以外の方でちょっとこっちも読もうかという場合はそのままお続け下さい。

私にお尻の事を相談するケースはかなり偏っています。痛みがない出血か、膨らんでいるか、どちらか。

お尻から出血したとき(痛みなし)

患者さんはお尻から出血したときに、特に痛みがない場合ほどびっくりして来院されますので、以下のように診療を進めます。痛みがなくて出血するのは、内痔核とかポリープとか直腸炎とか憩室炎などです。

  1. 排便時に血がついたら、すべて痔なのかというと、直腸粘膜から点状にしみ出るような出血をしている事が多く、案外内痔核からの出血は多くはないという説明。(痔がないです、などというと「じゃあ癌だ」とびびってしまうため、そうならないためのクッションの意味もある)
  2. 「痔」と一口にいっても、裂痔(きれぢ)、内痔核、外痔核、痔瘻などがありますのでそれについての説明。
  3. 検査が必要な場合にはその必要性について。
  4. 痔や他の病気で専門の治療が必要である場合には、適切な医師への紹介。

検査には直腸鏡検査、S状結腸までの内視鏡、全大腸内視鏡、注腸バリウム検査、エコー(異所性子宮内膜症とか、憩室とか、虚血性腸炎とか、クローン病とか、癌を疑った場合)、血液検査などがあり、なるべく必要最小限の検査にとどめています。

画像は内容とは関係がありません

出血し、かつ痛かった時には切れ痔だと思って相談しない場合が多いです。

膨れている

痔瘻はクローン病で重要ですが、普通は内痔核が飛び出してしまったか、外痔核のことが多いです。その他には肛門がん、尖圭コンジローマなどが除外診断です。

痛みを伴う場合、嵌頓痔核といって内痔核が飛び出て戻らない状態や、血栓性外痔核を考えます。診察にはある程度のノウハウが必要に思います。むろん「あ、これは無理だ」と専門家にバトンタッチすることがあります。(専門家は外科の先生で、当院だと伊勢原協同病院にご紹介します)

軽いものでは当院で治療をして、むしろここからが大切ですが再発しないように丁寧に指導をします。Twitterでバズったお尻の拭き方もそうです。


ここまでは前書きで、今日、こんなことを記事に書くのは、
痔(とりあえず全部まとめて痔疾と呼びます)の患者さんにやってほしいことがあるからです。

それは骨盤底筋体操です。
お尻の穴を締める体操の事です。ご存じでしょうか。決して尿漏れ予防体操ってだけの意味しかないわけではありません。

これが痔疾に非常に効果がある。
筋肉を動かせば血流が改善しますし、悪化する前にはじめればどんどん治ってきます。
まだ便秘のツボについても記事にしておりませんが、
とりあえず痔疾への骨盤底筋体操は基本中の基本だと思ったので記事にしました。
あまり指導されていないようだから。

むろん痔疾がない人も、骨盤底筋体操はどんどんした方が良いですよ。
骨盤底筋体操、という形を取らなくてもお尻の穴を締めるだけで良いんです。20分に一度でも60分に一度でも良いですから気づいたら締めてください。
姿勢が良くなります。

あと、くしゃみの前、咳する前、階段をおりるときもお尻は締めてくださいね!これ重要。

人間は尾骨が動かなくなってから(尻尾がなくなってから)、ものすごく骨盤底筋を動かさなくなってしまった、にもかかわらず立位においてはすべての腹部臓器の重量を骨盤底筋で支えねばなりません。これは好ましい事態ではありません。身体を鍛えるのと同じぐらい、骨盤底筋を鍛えましょう。

2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    お聞きしたいことがあり、コメントさせていただきます。

    この骨盤底筋体操はかなり軽度な脱肛にも効果があるでしょうか?

    排便時、肛門から何かでている感じはするのですが、排便後は自然に戻ります。
    ただ、少しの違和感が続きます。。

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    1. 4年半ものあいだ質問を放置してしまいましたが、非常に効果があると思います。治療の基本ではないかと思います。

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