2008/04/16

NASH そして IRHIO

C型肝炎には瀉血療法がある。鉄欠乏にすることで、肝臓の炎症を鎮静化させるというアイディアは昔からあった。

NASHと鉄の関係も色々言われているが、日本での議論は釈然とせず、短絡的すぎるので、MEDLINEを検索してみた。

すると、insulin resistance-associated hepatic iron overload (IRHIO)という概念が見つかった。
NASHや脂肪肝患者では決まって血液中のフェリチンが高い。それすらインスリン抵抗性とそもそも関係があるという概念であり、これは病因に迫っていると納得できる。そ のあたりの機序は現在解明中のようであるが、日本ではあまり有名ではないので覚書として書いておくことにします。

ちなみに、透析患者さんに使用する鉄キレートがFDAで承認されましたが、これには肝障害の副作用があるようです。NASHや脂肪肝に対して、ピオグリタゾンを使用するとフェリチンが低下するのか、これはまだ確かめていません。また、瀉血療法も行っておりません。

さてもともとは、NASHの前に高血圧でこういう概念があったようだ。(Piperno A, et al. J Hypertens 2002;20:1513-8.)

鉄と動脈硬化に関しては、HIF-1という遺伝子が低酸素で誘導され鉄との関連が深いのだという。

また、鉄と反対の働きをするイオンとしては亜鉛があり、C型肝炎の患者さんやNASHの患者さんには亜鉛摂取を推奨し、実際有用であるようだ。

以上は、閉経後女性の脂肪肝発症、糖尿病発症と密接に関連している可能性もある。

このような理由で、個人的には貧血女性に対して鉄の補充療法を積極的には行っておらず、フェリチンが少々上昇したところで終了としています。