悪性病変の確定診断は、その細胞そのものを診断するのが一番良い。どんなに画像上悪性が疑われても、例えば乳腺は必ず細胞をとってから、という手順が踏まれることがほとんどだ。(事前に細胞を取ることが難しい臓器は違う手順を踏むこともあるだろう)
でも細胞での診断にも限界はあって、例えば食道の表層癌はかなり難しいので病変を切除してから評価したりする。それもまた重要な手順なので患者さんは是非ご理解下さい。
では良性病変はどうかというと、細胞を取ること自体合併症が避けられないからすべてを細胞で診断すると危険が利益を上回ってしまう。だから出来れば偽陰性率を減らしていこうと努力をする。この所見ならば必ず良性だ、という確信があればなるべく細胞をとらないで済むように努力をすべきだ。
Wikipediaの胃炎の項目も、胃底腺ポリープの項目も、私はずいぶん違和感を持っているのけれど特に、
2011年8月19日時点で、
と書いてあるこの部分には大変違和感を持った。(書き直そうがまた元に戻るので、そういう誰かの主張なのだろうと思われる)
今までFAP(家族性大腸腺腫症)以外の患者で、胃底腺ポリープが癌化したという報告は世界に一例もない。これが他の悪性疾患と鑑別が難しいならともかく生検し、病理組織学的検査を云々と書いてしまうのは・・・。素人向けの文章とは言えない。
良性病変の確定診断こそ非侵襲的に行うべく努力を重ねる事が重要ではないか。その未来像も描かずに「必要である」と書いてしまう態度に私は違和感を感ずる。
以前から書いているように、カルチノイドや胃型腺腫との鑑別の困難な隆起性病変が胃底腺ポリープに混在して存在する場合には当然生検すべきだ。しかしそれは、カルチノイドや胃型腺腫の診断のために生検をしているので、良性疾患の確定診断をしたいがためではない。
胃底腺ポリープと呼ばれるポリープには、RACがきれいに見えるものと、むしろpitがよく見えるものとがある。その差異を論じたいがための生検ならば、なるほど意味はあろう。私とて胃底腺ポリープは終わった問題だとは思ってはいない。
我々が生検をせずに診断をしていると、「取らないで良いんですか!」という態度をとる患者さんがおられるが、背景には良性疾患は可能な限り非侵襲的に診断という信念があるからだと最初に宣言しておきます。
しかしそれを知っている患者さんは私が生検をするとびびってしまうという弊害もある。
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