私は横浜市立大学出身なのだけれど、生理学は川上正澄教授一門の先生方の授業が面白く、魅力的で大好きな教科のひとつ。ところが勉強しない私は前期で落第点を取ってしまい、田中教授に後期に満点取らねば落とすと言われて頑張ったものの残念ながら満点はならず、肩を落としていたところが「出題ミスがあったので全員6点加算されます」のアナウンスがあったために進級させてもらえたのも良い思い出です。
呼吸生理は内科の大久保隆男教授の授業が難解で面白く、流体力学を駆使して説明する喘息を含めたCOPDの生理は臨床にずいぶん役立っていて、CO2内視鏡の安全性の理解に寄与している。
液体二酸化炭素だがボンベ内では当然ながら液体部分と気体部分が存在している。
我々の減圧弁は歴史があるので「~気圧」と表示されているが、みなさんが使用している圧力計はPa(パスカル)で表示されているはずだ。室温では液体二酸化炭素ボンベ内の気体部分の圧力は50気圧強である。今は単位系にPa(パスカル)を使用するので、50気圧が4.965MPa(メガパスカル)だから、だいたい5MPaという場所に圧力計の針があれば二酸化炭素ボンベ内にはまだ液体があるという事になる。
そして、ボンベの内容は当院で使っている7kgボンベで8リットルくらいだと仮定すると、二酸化炭素の液体部分が無くなったときに、二酸化炭素は(1気圧に換算すると)400リットルぐらい残っている事になる。400リットルあれば普通の内視鏡で10人は可能(1人2Lx10分=20L)だから、減圧弁の第一の表示の圧力はあと何人患者さんの検査が出来るかの指標になる事を知っておくと良い。
つまり圧力が下がり始めた時に「あと何人出来るか」がわかるわけで、その一番大切な一瞬を5段階とか6段階でしか表示しないオリンパスや富士フィルムの機械は「経験がない人が作ったなあ・・・」とややがっかりなのである。
減圧弁についている第二の圧力計は、その50気圧の圧力を下げるために使用する。
内視鏡の空気が出るところの断面積と圧力との兼ね合いで、二酸化炭素の流量が決定される。したがって、すべての内視鏡において二酸化炭素の流量は変化して差し支えないし、また送気バルブの押し方によって断面積は変化するので当然二酸化炭素の流量は変化して差し支えない。むしろ断面積の変化に応じてダイナミックに圧力を変化させ、流量を一定にしようと機械的な操作を加えることの方が愚かであって新たなエラーを生むのでやめた方が良い。所詮細かいコントロールは無理なのであってその部分は術者に任せる方がよほど良い。
さて、安全な二酸化炭素の流量は前回私は最大5.6リットル/分くらいなのではないかと試算した。実際には私は上部内視鏡では2リットル/分の流量で、大腸内視鏡では1.5から2リットル/分の流量で使用することが多い。そして、半分以上の時間は送気ボタンに触っていないから通常は1リットル/分以下なのだろうと思われる。
多くのオリンパス社製スコープでは、圧力を0.3気圧程度、つまり0.03MPa程度とすると流量が2リットル/分となる事が多い。当院ではそうしている。しかし、癌研究会有明病院ではさらに特注で酸素用の流量計をつけてあるから便利だ。減圧弁で0.05MPaとしておいて、さらに流量計のバルブで調節をするように提案し、ほとんどの先生がそう使用しているようだ。減圧弁で0.05MPaとすることで非常に安全に検査が行える。第二の圧力計はそのように使う。
理解できなければ、使用してはならない。
そしてオリンパスからも富士フィルムからも二酸化炭素送気装置が発売されている。(オリンパス→リンク)(富士フィルム→リンク)
蛇足になるが、オリンパス製二酸化炭素専用送気バルブを使用したときには二酸化炭素を使用しない(ボタンを押していない)間に管内圧力が上昇してしまうので微妙なコントロールが出来ないし、そもそも減圧弁使用時には1000ml/min以上の送気を彼らは認めていない。(専用装置を使った時には一定以上の圧力が上がらないように調節されるのでOKだ)一方で少しゴムが劣化すると二酸化炭素を使用しない間もチャンネルから二酸化炭素が漏れ出てしまう。そう考えると通常の送気バルブの方がより細かい圧力のコントロールが可能である。微妙な送気加減を日頃から多用している先生には通常の送気バルブを使用する事を勧めている。
富士フィルムの場合、送気チャンネルがあったけれど管が細すぎて相当圧力を高くしないと二酸化炭素が入らず自分は諦めてしまったのだけれど、当ブログを読んで減圧弁を上手に使っている先生がおられる。
Pentaxは一方、送気チャンネルに二股のチューブを使用するだけで二酸化炭素が使用できる。
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