2009/02/16

内視鏡と射程距離とNBI、および胃腺腫

前回(といってもずいぶん前かもしれませんが)、内視鏡でIHb分布を見ることで、胃腺腫と腸上皮化生を鑑別するのをお見せしました。これは白色の病変が比較的認識しやすい場合には便利な方法です。ここからわかるのは、胃腺腫の表面は白色調に見えたとしても比較的血流が豊富だという事です。

今回は、胃腺腫がわかっているのになかなか見つかりづらい場合NBIが便利という話です。


この写真のちょうど真ん中ぐらいに胃腺腫があるはずだと思って見ているのですが、どうもはっきりしないまま写真を撮っています。以前の方がはっきりと白色の病変が見えたはずです。わからないまま検査を進め、また前庭部に戻ってきたところでNBIにモードを変えます。


すると中央部に茶色の領域が見えました。これが腺腫です。そこで同部位をじっくり見ると、見えてきました。


同じ白色といってもほんのわずか黄色調の領域が見えます。少し陥凹している印象で、辺縁がぎざぎざしています。そこでインジゴカルミン染色をしてみます。


これで全体像が見えました。ここですぐに拡大内視鏡に切り替え、必要があれば超音波内視鏡を行い、病変の評価を行うことができればカッコいいのですが、当院ではここまでが限界です。

なぜNBIで腺腫が見つけやすいのでしょうか。

  1. 表面が白色でも比較的表面の毛細血管が豊富な腺腫は、NBIで見ると茶色く目立ちます。これに対して腸上皮化生では表面の毛細血管は目立たないのでコントラストがはっきりしてきます。
  2. NBIには「射程距離」があります。非常に暗い光源なので数cm以上離れるとAGCがオンになっているにも関わらず見づらく、逆にAGCのおかげでノイジーで見るに耐えません。自然と射程距離内で見る事となり粘膜に接近しますから病変が見つけやすくなるのです。
普段良く見ているつもりでも、射程距離の長い通常光観察では見えてしまうために満遍なく接近して観察するということはなかなか出来ません。NBI観察は射程距離が短いがために、強制的に満遍なく観察せざるを得ないという意味でもなかなか有用なツールであると思います。

NBIがない場合、光源をあえて暗くして接近して観察してみると言う方法はどうでしょう。これも観察者の注意を惹起すると言う点で優れていると思います。

さて、接近して観察するときには見落としが怖いでしょう。自由自在に射程距離を変化させて観察できるNBIは非常に安心できるのですが、これがない場合、どのようにして見落としをコントロールすれば良いのでしょう。

熟練、というのは簡単な解決法ですが、QCの事を本気で考えたとき「熟練」という言葉ほど抽象的でいい加減な言葉はありません。

お勧めしたいのは粘膜を洗うことです。粘膜を洗っているともちろん粘液に隠れた病変がよく見えるのですが、私がメリットだと思っているのは自然と前後壁を良く見るし、粘膜に接近して、しかも余すところなく見ることができる点です。洗っていない部分がすぐにわかるので、「ああ、ここは見ていなかったな」という事が観察者には一目瞭然なのです。内視鏡検査のQCは非常に重要なのですが、観察者に気づかせずに、また観察者の熟練とは関係なく有用な手段となるのが、

NBI、および粘膜の洗浄

の二つであるという事をここでは訴えたいと思います。

粘膜の洗浄をする場合、フォルテグロウメディカルから発売されている粘膜洗浄装置をお勧めします。
十分な流量が確保でき、どのような内視鏡にでも使え、院内感染にも十分配慮しているという点で優れていると思います。

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