2014/12/31

無床診療所の自動受付に必要十分なシステムはなにか

当院を自動受付にしたいと思っているんです。
当院では順番取りは無効にしたいと思っているのです。
たとえば他院に通院している病歴の患者さんが最初に3人いたら、それでそのあと30名からの人が2時間待つのが良い事ではありませんよね?
朝一番で風邪の人が来たら診療前に1時間も待合室で他の方と一緒に待つわけですよね?

かといって近所の(近所の!)急病の人は診たいじゃないですか。
それをしないで完全予約制にするのはもうのっぴきならないほど自分の健康状態が悪いとか、他の仕事で忙しいときに限りたい。

リソースの最適化をしたい場合にはコンピューターに頼るのが一番良い。
ところが問題になるのが患者さんのリテラシーです。
が、それは強制的にアップグレード可能だろうと思うのですよね。

で、要件ですが、
1)医院の診療時間前から稼働する。
 つまりサーバーにはつながないで独立して動作する。
2)ハックされても重要な情報を内部に持たない。
3)容易にいたずら、破壊されない。
4)操作が簡単である。

を考えますと、

1)液晶一体型PCでタッチパネル動作
2)VESA対応で壁にネジで固定ができる
3)USB端子付き

が良いのではないか、と思いました。

こんな感じですね。
顔認証も不可能ではないと思うので一応入れましたが、こうするとハックされたときに嫌かもしれません。

システムとしては、QRコードの中に患者氏名(偽名可)、IDさえ入っていればよろしくて、それを読みとって受付してしまえば良いわけです。
で、あとで医院の業務がはじまったあとでデータベースに受付テーブルを読み込めば安全でしょう?
その時に発熱していたらいったん帰宅して待機とか、相当急を争うようだったら申告とか、お薬手帳とか他院やドック・検診の結果忘れていたらいったん取りに帰るとか、いろいろリソースの分配をして効率的に出来ないか、と思うわけです。


「病名」から想起される所見に再現性がないのならば、それは「病名」とは言うべきではないのではないか。

「他の病院で逆流性食道炎と言われた」
と患者さんがおっしゃれば、私は
「それは異常がなかったということですね」
と答えるし、

「表層性胃炎と言われた」
とおっしゃれば、私は
「たぶんピロリ菌がいないのですね」
と言いますし、

「胃で出血してると言われた」
とおっしゃれば、私は
「それもきっとピロリ菌除菌後なんでしょう」
と申し上げます。

そして患者さんは少し怪訝な顔をして、
「どうしてそんなことがわかるのですか?」
とおっしゃいます。それに対して私は、
「逆流性食道炎ならば、それはロス・アンゼルス分類でグレード何だ、と言われましたか?あるいは文章で結果をもらっていますか?」と質問し、それに対して答えられた方はまだいません。

逆流性食道炎は、ロス・アンゼルス分類でグレードA、B、C、Dとがありまして、それに色調変化型のMを加えて我々はM、A、B、C、Dを使い分けます。このうち、B、C、Dについては割合重要でして、その方々をいったん見つけた場合に自分のクリニックでフォローをしないというヘマを医者はほとんどしません。結果として世の中でクリニックからクリニックに渡り歩いている「ザ・逆流性食道炎」の患者はロス・アンゼルス分類でM、ないしはAであると考えられます。実はMであれAであれ、2時方向に炎症が強いタイプなのか、7時方向に炎症が強いのか、あるいはShort Segment Barrett Esophagus(SSBE)を伴うのか、あるいは食道裂孔ヘルニアを伴うのかどうか、という付随所見もその後の患者指導には重要ですけれど、それをされている方はおられるでしょうか?そういう説明なしに「薬を一生飲め」という医者がいるそうです。勉強不足もいい加減にすべきです。

そもそもSSBEの診断にも、食道裂孔ヘルニアの診断にも「深吸気」と、反射が起きないこと、の2点が重要です。つまり、患者さんを寝かしてもいけないし、反射を起こしてもいけないし、というとてつもなく高いハードルがあります。私は自分の内視鏡の宣伝をしませんが、その理由は、「ただの一度だって自分で100点をつけられる検査をしたことがない」というストレスに常につきまとわれているからで、患者が来ないに越したことがない、と本気で思っているからです。(それに、機能を見るのに内視鏡を使うというのは極めてマニアックな世界なので、内視鏡の時にそれを見なければいけない義務は医師にはありません。むしろそういう検査としてマノメトリーとpH測定という方法があり、興味があって検査をしてほしい方は当院には来ないで自分でその検査をしてくれる大学病院を探し、入院をして検査をお受けになって欲しいと思います)
こういう検査ができる医者がどれだけいるのか、というと、患者さんにすごく我慢をさせれば可能だと思いますが患者さんが喜んでお受けになる、という状態でそれを実現しているという先生は思い浮かびません。

表層性胃炎の場合には、それがピロリ菌がいての発赤ならばすぐにそれとわかるのでピロリ菌が除菌されるでしょうし、そうでない非特異的な赤さには多種多様の意味があり、なかなか一筋縄では理解ができません。それでも何にもないきれいな胃の線状発赤(櫛状発赤は誤訳)を表層性胃炎と呼ぶ医師は多く、それは異常がないという意味に他なりません。ただ「胃が動いている」という事を示す所見なのです。表層性胃炎には点状発赤、亀甲模様のような発赤、線状発赤など様々な所見が含まれており、言葉からの再現性が非常に乏しい病名です。

胃で出血、と言われる場合、ごくごく微量の血液が胃酸で変化し黒変して粘膜に付着したヘマチンと呼ばれる物質を指していることがほとんどです。そうでなければ胃潰瘍として治療されているはずです。そしてヘマチンが付着しているというのは胃酸が多い正常の粘膜で多く認める変化です。頻度的にはかつてピロリ菌がいて、現在はいない、というような除菌後の胃に多い所見なので「除菌後では?」などと私は言いますが、単なる勘です。むろんワーファリンなどを飲んでいてヘマチン付着が目立ちますね、などと言った意味のある所見はあるにはあるのですが、それを描写する医師は稀です。

以上、なるべく病名から患者さんの状態を想起しようとしますが、実際には勘で言っているにすぎない、という事がおわかりになりますか?このように、所見を想起できないこうした病名を患者さんに言うのは間違っている、と私は思うわけです。萎縮性胃炎もそういう意味では同じ穴の貉です。

では内視鏡の結果は患者にどう伝えるべきなのでしょうか。病名よりも大切なものがあるのではないでしょうか。

私の所見用紙をもらった患者さんに申し上げます。
1)もっとも重要なのは、一行目。何を何mg使ったか、という鎮静の薬剤についての記載があります。それに加えて十分鎮静ができていたか、反射があったか、などが書かれます。それは他院で内視鏡をお受けになる場合に参考になりますから持っていてください。あなたの忌憚ない感想を追加しておけばもっとよろしい。
2)私は食道についての評価は甘いです。ロス・アンゼルス分類でグレードMについては記載しない場合が多いです。胃・食道逆流症については症状を優先しており、病名をつけることによる患者さんの混乱を避けたいのです。ただしきれいな写真は左上に残してありますから、そこからどの程度の所見なのか推測は可能なようにしてあります。所見には書きませんが「うんと酒飲んでるな」などはわかっています。
3)胃粘膜萎縮の基本は木村分類で、私の診断は極めて精度が高く自信を持っています。貧血のある方に送気をしすぎて萎縮性胃炎と間違って診断している医師があまりにも多いのが気になっています。萎縮に加えてピロリ菌がいそうな場合にはそう記述してあります。ほとんどの場合ピロリ菌がいれば除菌をしています。胃潰瘍瘢痕や腺腫などの所見が書かれることがあると思います。びらんは時々書きます。NSAIDなどとの関連です。後日比較をするために粘膜下腫瘍は大きさが書いてある場合があります。胃底腺ポリープについてはほとんどある/ないしか書きません。胃底腺ポリープの数など複数あるのが普通で無意味です。過形成性ポリープについては部位など、やはり後日の比較のために写真を残してあります。基本的にあとで患者さんが読んで心配になるようなことは書きません。
4)十二指腸は腫瘍の有無などが重要ですが、あまりブルンネル腺過形成とか、異所性胃粘膜は書かない傾向があります。
ある程度、所見には自分の癖、というものがありまして、そういう背景を公開しておくのも親切かなと思って書きました。

病名の一人歩きは嫌なものです。みなさんは、食道裂孔ヘルニア(これは本当に程度をあらわすのが難しいです)、逆流性食道炎、などの病名に惑わされないでほしいと思います。

2014/12/26

定期処方は12月20日までにもらっておきましょう。

平成26年12月28日より休診といたします。新年は平成26年1月5日より診療いたします。

お分かりの事と思いますが、もう一度申し上げます。普段診療をお受けになっていらっしゃる皆さんには12月20日の週までにお薬をとりに来られるようにおすすめしました。その理由としては医療機関はインフルエンザをもらってしまう感染の機会でもあるためです。今週医療機関でインフルエンザをもらってしまうと潜伏期間があって発症するのがお正月となり、各方面に迷惑をかけてしまうかもしれない。そのため皆さんにはあらかじめ20日までに定期処方のお薬を取りに来たほうが良いですよ、と言っているわけです。相変わらずギリギリで来院という方が多くおられますが、種々のリスクを増大させるのみですから、賢く通院するようにいたしましょうね。

2014/12/21

スタチンによる筋肉痛発現率のそのほかの話題

スタチンを高容量で投与した場合の筋痛発現率(PRIMO studyより)

Pravastatin 40mg 10.9% 日本ではメバロチン10mg-20mg
Atorvastatin 40-80mg 14.9% 日本ではリピトール5mg-10mg
Simvastatin 40-80mg 18.2% 日本ではリポバス5mg-10mg
Fluvastatin 80mg 5.1% 日本ではローコール10mg

筋関連副作用の分類
Myalgia = muscle ache or wekness without elevation in CK
Myositis = muscle symptoms withelevation in CK
Rhabdomyolysis  = muscle symptoms with significant elevation inCK and elevation in creatinine.

CoQ10がこれらの症状を改善した。(→リンク

CoQ10が効くことから、スタチンを大量に投与すると筋肉内の呼吸に何らかの影響があるのではないか、という説と、細胞膜上の受容体への影響ではないか、という説があるようだ。

スタチンは2型糖尿病発症リスクを若干上げる
代謝を下げるのか?呼吸の問題で?これもCoQ10で抑制できたりしてw

スタチンは認知症発症率を若干下げる
Swiger KJ, et al. Mayo Clin Proc. 2013;88:1213-1221
> 1 year after station initiation 29% reduction in incident dementia in statin-treated patients

スタチン以外の新規脂質代謝改善薬
Shinkai H. Vasc Health Risk Manag. 2012;8:323-331

Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitors (CETP阻害薬)
 HDLコレステロールを劇的に上げるとされる
Dalcetrapib ロシュ社 開発中止
Anacetrapib メルク社 Phase III: 2-4年後も血中に残存?
Torcetrapib ファイザー社 開発中止
Evacetrapib イーライリリー社

注目の遺伝子異常
Nordestgaad BG, et al. Eur Heart J. 2013;34:3478-3490
PCSK9 Mutations
1/500 for HeFH(オランダは7割が家族性高脂血症らしいので大問題、日本は1%未満)
→PCSK9受容体阻害薬が新たなコレステロール薬になり得るのでは?と話題

ゼチーアはスタチンだけでコントロールできない場合には使われる。

2014/12/19

消化器病2014年注目ニュースTop10

Medscape Gastroenterologyから


1)大腸がんスクリーニングとしての内視鏡の役割 Clin Gastroenterol Hepatol. 2014 Sep 15.
2003年-2012年のドイツの医療データ440万件の解析(マカロフモデル)によると、大腸内視鏡28件あたり1件の割合で大腸がんを予防出来た。121件あたり1件の割合で早期大腸癌を発見できた。そして75歳未満では「診断しすぎ」はなく、75歳以上では若干ある。
→要するに、75歳未満では一度は大腸内視鏡をやっとけ、ということ。予防、という意味もありますからね。何度も繰り返し受けるとどんどんその意味は薄れますが。

2)スタチンは肝障害の原因となることは稀 Hepatology. 2014;60:679-686
スタチンは薬剤性肝障害の原因となることは非常に稀であるので、経過中に肝機能を定期的にチェックするよりは、投与前に肝障害があるのかないのかを調べるほうが有用ではないか、ということ。
→スタチンはむしろ肝障害を改善することがありますが、それは抗炎症作用によるものと考えています。

3)TNF-α阻害薬は癌を増やさない JAMA. 2014;311:2406-2413
自己免疫疾患の治療に使われるTNF-α阻害薬は今は世界で年間何千億円も売り上げているドル箱のひとつですが、その長期投与で癌のリスクを増加させなかった、という報告です。
→もっと長期のデータが欲しいんですよ!

4)新規経口薬のC型肝炎に対する評価 N Engl J Med. 2014;370:1889-1898
経口薬(Ledipasvir/sofosbuvir)でほとんどのC型肝炎に効果があるとする新薬です。Genotype-1のHCVに。
→薬価がものすごく高いらしい。12週間で8万4千ドル。インドでは99%引きで発売。一錠一錠に偽造防止のICタグとか付くのでは?

5)化学療法中のB型肝炎再燃 Hepatology. 2014;59:2092-2100
HBsAg陰性のB型肝炎治癒とされている人でも化学療法中に再燃する例が知られているがその頻度が明らかでなかった。この報告によれば10%の患者で再燃が見られた、という事。
→当院でも原因不明とされていた肝障害で、HBsAg(-)、HBsAb(+)、HBcAb(+)であればHBV-DNAを測定しそれが高ければ核酸アナログ投与のためにご紹介、というプロトコルにしています。年間数名おられる印象。肝障害の原因検索にはHBsAgだけではだめだと思います。

6)バレット食道は「診断しすぎ」じゃないか Gastrointest Endosc. 2014;79:565-573
既知のバレット食道患者をエキスパートが診断し直すと3割はそうではなかった、というような報告。特に噴門腺のmetaplasiaを間違ってSSBEのmetaplasiaとしてしまうことが多い、と。しっかり組織検査やれ、と。
→欧米はバレットだけじゃなく、他の臓器でもほんとバシバシ生検とってどんどん出血させても気にしない先生が多くてすごいと思う。怖くてできん。

7)肝臓の小病変の取り扱いについてガイドラインが出ました。 Am J Gastroenterol. 2014;109:1328-1347
→嚢胞だとか「どうでも良いですよ~」と説明するにもエビデンスは必要ですから便利です。

8)便潜血、じゃなくて便中DNAで大腸がんをスクリーニングする N Engl J Med. 2014;370:1287-1297
ぶっちゃけ一つじゃわからないので、全部入りのテストになってます。KRAS、NDRG4、BMP3、beta-actinです。大腸内視鏡とはコスト競争になります。
→医者はそんなにいないので、コスト次第でよろしいのではないでしょうか。

9)炎症性腸疾患の患者さんは悪性黒色腫のリスクが高い Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:210-218
これはメタアナリシスなので確実なデータだと思いますが、アザチオプリンやTNF-α阻害薬とは一応関係なく独立しているようだ、とはしているものの今後も要注目。
→これはコーカシアンだと思いますが、3)の文献とは矛盾するので今後もフォロー要

10)リンチ症候群患者さんのフォロー戦略 Dis Colon Rectum. 2014;57:1025-1048
リンチ症候群で生じる遺伝子異常はMLH1, MSH2, MSH6, PMS2であり、それらにあわせた戦略が立てられる。
→もっとも注意すべきはMSH6だということ。


2014/12/13

更年期の話



更年期=女性ホルモンが少なくなる時期



女性ホルモン分泌刺激ホルモンGnRHが余計に出るようになる。



GnRHは脳下垂体から出るホルモンで、出方が非常に特徴的。普通のホルモンはゆっくりと分泌量が変化するのにGnRHは律動的(ビュッビュッとリズミカル)と出る。



GnRHが出ると血圧が一瞬下がる。



そうすると反応的にほてったり、めまいがしたり、動悸がしたりする。

それらは血圧が下がり、また血圧をあげようとする反応である。




運動をすると、筋肉による血管の圧迫でGnRHによる低血圧を予防出来るから、更年期症状はかなり楽になる。

漢方薬にはこういう症状を緩和する効果がかなりあるようだ。

エストロジェンの補充療法をして、GnRHが出ないようにする人もいる。



いずれ年をとるとGnRHも出なくなるから更年期症状はなくなる。






参考:GnRH(鵜川医院ブログ)
 GnRHをGoogle検索




GnRHというのは極めて多機能でユニークなホルモンとして注目されています。更年期はGnRHとともに理解が可能ではありますが、その症状の多様性にはまだまだ解明すべき点が多いのだと思います。

2014/12/05

アニサキス症、実際にはこういう診察の流れです。

世の中変化したのは食生活で、かつては生鮭、生イカ、近海物のマグロなどなど、実に多彩な食材が原因となっていた胃アニサキス症ですが、最近はしめ鯖が原因となることがほとんどです。他の食材は生で流通することが少ないか、生で食べないのかもしれません。生鮭は今は流通することはほとんどなくて、養殖マスですからね。

http://blog.ukawaiin.com/2011/02/blog-post_25.html
にも書いたのですが、アニサキス症の診断と治療の流れを書いてみます。

夕食にしめ鯖を食べた方がいて、夜中に強烈にお腹が痛くなりました。
間欠的に痛くて、救急車を呼ぼうかどうか迷うほどでした。
なんとか我慢をして、いらっしゃいました。
痛くて朝ごはんは食べられなかったそうです。
今は多少は良い、とのことです。

「昨日は何を食べましたか?」
「しめ鯖です」
「じゃあエコーをしてみましょう」

ポイント:アニサキス症はエコーで診断が出来ます。


「おや、胃の厚さが11mmもありますね。これはアニサキス、しめ鯖の中の虫が胃に食いついてしまった所見です。お時間があれば内視鏡で取りましょう、お時間がなければお薬を使います」
「内視鏡をお願いします」

ポイント1:すぐに内視鏡が出来ない場合もあります。その場合にはお薬を使います。どういうお薬を使うかは後述します。
ポイント2:意識化鎮静で、二酸化炭素内視鏡を行います。むろん他の急性腹症という可能性もあるわけですから、二酸化炭素を選択しています。


ヒダが浮腫んで見えたらどこかに必ずアニサキスは隠れています。ほら、いましたよ。


生検鉗子で取ります。
でもこれで終わりじゃありませんよ。
ポイント:アニサキスに慣れている医師は、1匹じゃ済まないことを知っています。


ほら、もう1匹見つかりました。むろんこのあとも探しますが、2匹だけでした。そんなに簡単な検査ではありませんよ。

最後に、ファモチジン20mg、エピナスチン塩酸塩20mgを水に溶解したものを撒布し終了します。
ポイント:取ってすぐに痛みが改善しないことが多いことを知っているのは、アニサキスを取り慣れている医師です。H1RAとH2RAの組み合わせは経験上、最も速やかに症状を軽快させてくれます。

鑑別診断はAGML、Type4の胃癌です。絶対にそうじゃない、と確信している場合(直前で当院で内視鏡が済んでいる)には内視鏡をしないで治療する場合があります。
あいにく内視鏡をすることが出来ない場合にはH1RAとH2RAの組み合わせが良く症状を取ってくれます。1週間程度の投与で良いでしょう。

2014/12/02

エクセルかアクセスでお薬手帳への入力アプリを作る

電子お薬手帳を使うにあたって問題になるのは、

1)過去の電子化されていないデータを電子化したい。
2)仕様がまちまちで特定の医療機関に囲い込まれやすい。(ロット番号管理していないので囲い込み以上の意味ないです)
3)そのお薬手帳のデータを医者に渡せない。

です。
特にせっかく電子化されている情報をテキストデータとして書き出せるのは、
ありとあらゆる電子お薬手帳の中で(株)ダイナミクスが作った
candyだけだというのは恐ろしいことです。(2014年6月に調査しました)

candy for iPhone
candy for Android

みなさんはQR処方箋というのがかなり普及しているのをご存知でしょうか。


こういう処方箋をもらっている方は、それをスキャンして入力できれば薬局のお世話にならなくて済みます。(どのメーカーの薬をもらったかはわからないので副作用のトラッキングができないのですが、どうせ薬局が関わっている電子お薬手帳にもそのような仕様はありません)



さてこれらの問題のうち、2)、3)は上記のソフトで解決できます。そして1)も解決できるのですがそのためにはテキストファイルが作れなければならないのです。そのためのソフトウェアを作ろうかな、と思っているところです。

Webアプリが良いのかもしれませんが、負荷と自分のスキル不足で、エクセルやアクセスあたりになりそうな気がします。

自分でできる方はこういうテキストを作れば読み込ませることができます。

JAHISTC01
1,佐藤 花子,2,19690914
5,20141018
11,鵜川医院,14,1,4000000
201,1,ファモチジン錠20「サワイ」 20mg,2,錠,2,610463167
301,1,1日2回朝食後、就寝前,14,日分,1,1,
201,2,セルベックスカプセル50mg,3,Cap,2,612320346
301,2,1日3回毎食後,14,日分,1,1,
501,ダイナミクスで出力
JAHISTC01
1,佐藤 花子,2,19690914
5,20141022
11,鵜川医院,14,1,4000000
201,1,ラベキュアパック400,1,シート,2,622289101
301,1,1日2回朝、夕食後,7,日分,1,1,
201,2,レベニン散,3,g,2,620007148
301,2,1日3回毎食後,7,日分,1,1,
501,ダイナミクスで出力

1行目は、JAHISTC01です。
2行目は、1,名前,性別,生年月日
(1は名前情報)
3行目は、5,処方日
4行目は、11,処方した医療機関,県番号,医院か薬局か,その番号(適当でいいです)
以後、
201ではじまる行は、薬,数量,単位,2,厚生省コード
301ではじまる行は,用法,数字,日数など,1,1,
501ではじまる行は自由コメント
となっています。

仕様に関しては、
をご覧ください。
厚生省コードはなくても良いのですが、
で検索が可能ですし、ダウンロードもできます。

2014/10/28

Q:なぜ、除菌後一年で、内視鏡をしたほうが良いのか。

A:それは、呼気テストが正しいとは限らないからです。



例を挙げて説明しましょう。



この方は萎縮はC-3としましたが、ザラッとした感じ、穹窿部の発赤、粘液あたりの所見から、内視鏡的にピロリ菌がいるのは確定です。そして迅速ウレアーゼテストは陽性でした。

ランサップ400で除菌をして、3ヶ月後(偽陰性を少なくする目的で当院では1か月後ではなくて3ヶ月後に呼気テストで見ています)のUBTは1.3‰であり、陰性でした。

そして一年後に内視鏡を行うとこういう所見でした。



残念ながら胃炎はあって、発赤、粘液が目立ちます。萎縮はO-1としました。内視鏡的にはピロリ菌は陽性です。そしてもう一度UBTを行うと9.6‰であり、陽性でした。これは再感染の可能性もゼロではありませんが、それよりは3ヶ月後のUBTが偽陰性であった、と考える事が妥当です。

UBTは感度、特異度が95%ですから、5%にはこうした事が起き得ます。



みなさんには以下の意識を持っていただきたい。

1)除菌が成功した、と言われて、また陽性、と言われても慌てる必要はありません。

2)除菌をしたからといって終わりではありません。きちんとしたフォローの内視鏡を受けましょう。

2014/10/10

ピロリ菌の除菌で過形成性ポリープは縮小する

胃腺窩上皮過形成性ポリープは、ピロリ菌の除菌で縮小します。



ポリープからの出血のため、相当の貧血を呈したこの患者さんでは、しかし、容易にポリープ切除が出来ない原疾患があったためまず除菌を行いましたが失敗し、二次除菌を行いました。


すると二年でここまで縮小しています。個人的な経験では幽門付近の過形成性ポリープは縮小しない例があります。これは蠕動に伴う刺激のせいなのでしょう。

2014/10/07

気圧が低いとどうして調子が悪くなるのか

気圧が低い時には身体の調子が悪くなる人が多いのですが、それをどう解釈すれば良いのでしょうか。


単なる酸素不足でしょうか。普段の生活で非常に酸素供給を必要とする部位を持っていて、そこが悲鳴を上げるのでしょうか。


ご存知のように、潜水病の治療には高圧酸素療法が行われます。これは毛細血管で実際に窒素が気化するから起きるわけですが、そこまで行かずとも気圧が下がった時に窒素が気化しそうになる状態、これが不調の原因とはならないだろうか。気化する手前で一対何が起きているのか。


身体のありとあらゆる液体には、酸素や窒素が溶け込んでいます。骨の組織の間質までも。気圧の変化が起きると、それらは緩やかに変化していきます。その分圧の変化が身体に変調を起こすのではなかろうか。窒素分圧の高い間質と窒素分圧の低い血液との間で何か起きるのではないか。NOは非常に血管を広げる作用があることで有名なのですが、血液中でNOが増えるとか減るとかするんじゃないか、感覚的にそんなことを考えてしまいます。


一方で、身体の中の閉鎖腔、例えば乳突洞がそうですが、そこでは低圧でもとからある空気が膨張して不調の原因となりそうですし、副鼻腔が閉鎖している場合にも同様に内部の空気が膨張し、頭痛の原因となったりしそうです。


それらは時に交感神経系に刺激を及ぼすかもしれない。そこでアレルギーや自己免疫疾患など、白血球が関与する疾患は交感神経系の影響を強く受けるので不調の原因になるかもしれない。


また、気圧が下がると外界にも気圧以外の変化が生じます。PM2.5の量は大きく変化するでしょう。これが不調の原因となり得る可能性がある。一方温度や湿度も影響をおよぼす可能性があります。


では、それらの症状を抑えるにはどのようにすべきなのか。


1)酸素:酸素は減圧による影響に対して一定の効果があるだろうと予測します。
2)交感神経系を賦活する:緊張状態は症状を軽くする可能性があるかもしれない。
3)Skins、CW-Xなどのスーツ:これらの圧力は症状を緩和させないか。
4)ネブライザ:副鼻腔、耳管などのトラブルについてはこれを緩和できないか。
5)PM2.5対策:雨の日に雨宿りしている人がタバコを吸うのは周囲への影響も普段以上なのではないか。


「気圧が下がると調子が悪い」はただの都市伝説とは思えません。意図的に順応を計れば大丈夫、という人が多いのは交感神経系が影響するからかもしれません。それを排除して前向き研究をする、というのは非常に難しいため、「減圧室で研究」などというのはナンセンスな話です。かといって、これほど「気圧が下がると調子が悪い」という考えが広がっていればバイアスは避けられない。こうした風説がない国でライフログをとる、という方法しか考えつきません。

2014/10/01

PPI + モサプリドクエン酸塩を最初から同時投与してはならない

モサプリドクエン酸塩の追加投与がPPI抵抗性NERD患者に有効



という、報告を見て、初診の「胸焼け」を訴える患者さんにいきなりPPIとモサプリド2剤を投与する先生がかなりおられる。


しかしこれは間違いなので、日本語を注意して読んでほしいと思う。
~の追加投与が~」と書いてあるでしょう。これはすなわち
最初はPPIのみ投与する
という事を前提としているのであり、決してモサプリドを必ず併用すべき、と言っているわけではない。



当院には「他院で良くならない胸焼け」患者は日常茶飯事ですが、
PPI + モサプリドクエン酸塩
を投与されたが良くならない、神経じゃないか、と医者に言われたという人がたくさん来院されるのです。



もう一度言いますが、最初から2剤を投与するのは間違いです。
再びPPIのみにしてさしあげると症状がとれる場合がかなりある。
その場合余計な処方だった、ということです。



それはなぜなのか説明します。これはそういう主訴で来院された患者さんの写真ですが、LES圧が高いのがお分かりでしょうか。食道裂孔ヘルニアとは全く逆の状態です。





この状態にモサプリドを使ってしまうと、平滑筋が収縮しますのでもっと食道のつまり感が出てしまいます、と説明すればわかりやすいでしょう。実際には縦方向の筋収縮も重要だとされているので、内視鏡検査の結果は必ずしもあてにはなりません。そこは注意が必要です。


なぜモサプリドが「慢性胃炎」に適応があって、「逆流性食道炎」には適応がないのかもこれで見えてきます。逆流性食道炎にはモサプリドが効く症例と悪化させる症例とがあるからです。この方は後者です。PPIとモサプリドが見事に相殺されて効果はないのです。きちんと症例をセレクトすれば第三相はうまくいくでしょうが、患者の選択を誤れば、治験では良い結果が出ないだろうと思います。


最後にもう一度申し上げますが、モサプリドはPPIだけでは症状が改善しない逆流性食道炎に効果がある場合がある、という事実を自己流に解釈して、PPIとモサプリドを最初から投与するのは間違いだと思います。最初はまずPPIから、が基本です。
(PPIにも4種類あって、どれが効くかは患者により違いますがそれはまた別の話です)

2014/09/26

low grade intraepithelial neoplasia of the esophagus

食道の低異型上皮内腫瘍は、内視鏡の発達により容易に診断されるようになりました。
(容易に発見できるのは慣れている内視鏡医だけですが)
この病変の自然史はまだ明らかではありません。しかし、自然史を明らかにするためには毎年フォローする必要があるのでそれは医療のリソースを圧迫することも事実です。

とはいえ、発見しなければはじまらないのです。

これはGIF-H260での写真です。NBIで容易に発見される病変でも、


白色光ではなかなか。NBIのない時代、これを見つけるのを自分は得意にしていましたが、今ではその自信はありません。


ルゴール不染です。


H画質でないとだめかというとそんな事は全然なく、GIF-Q260でも容易に発見できます。


白色光では難しいですね。見つけられますか?


ルゴール不染です。


この病変は、胃腺腫よりもはるかに高確率で見つかります。ですから、内視鏡医のトレーニング問題として使えるとすら思います。厳しいですか?

2014/09/07

内視鏡と画像強調


オリンパスの内視鏡用画像プロセッサCV-260以降のモデルでは内視鏡画像の画像強調をA、B、2つのモードでそれぞれ8段階設定することができる。Aモードは輪郭強調とも言われ、画像の明暗・色調変化のある部分を太く強調 する。このため、皺襞や凹凸などの輪郭、血管や腺窩などの構造物はより太く強調される。一方Bモードは構造強調とも言い、画像の明暗・色調の変化率をより強調する 設定となっている。アンシャープマスクの半径の大小の違いだ、と言うと画像処理をする人ならば感覚的にわかるだろう。したがってBモードでは構造そのものがシャープに 強調される。

Aモードが何に役だつかというと、皺襞や凹凸などを見ることに役立っている。内視鏡のレンズは曇りやすく、少しの粘液でも解像感が落ちる場合がある。それを補うのがAモードで、シャープな輪郭で写真をわかりやすくしてくれる。反面、解像度が落ち、小さな構造を見ることが不得意だという特徴がある。

例:

B5 での観察であるがややシャープさを欠く
A5とすると襞辺縁はどうにかシャープなのだが発赤が強調されすぎているし、解像度が落ちている
B5 レンズをきれいにしてシャープな画像を得る 情報量が多い画像
Bモードは、もっと細かい構造を見るのに適している。特にIPCLやRACなどの構造はAモードより観察することが容易だ。反面レンズの曇りに弱く、粘膜とのコンタクトを避ける、曇りを取り除くテクニックなど、Aモードを使用した観察よりも操作に繊細さが必要になる。技術的に難しくても高い解像度を活かすためにはBモードでの観察は欠かせず、特にNBIを用いた観察についてはBモードしか使うべきではないと言って良い。もともとNBIは短波長であるために画像は白色光よりもはるかにボケにくいのでそれほど難しくもない。

直接は関係ないが必ず水を一度フラッシュすべき。そうするだけで情報量は格段に増える。髙橋寛先生と自分とでウォータープリーズを癌研大塚で作った時の当初の目的はこういう使い道だった。

こうした反射は粘液を洗っていないから生じる
洗うとこれだけ情報量が増えるので、胃でも必ず水で粘膜をフラッシュすべき

CV-260SLを使い始めて7−8年ほど経つと思うが大学でAモードになっている機械を使うと非常に戸惑う。ピロリ菌がいない時のきれいなRACがAモードで強調されると、ピロリ菌がいるときのザラザラ感との見分けが難しいからだ。すぐに気づいてBモードに戻すけれど、練習も必要かと思いAモードも試してはいるが、やはり慣れない。

これが自分にとってのRAC+ 
これは無駄に強調されすぎていると思う
Bモードで、ピントのあったきれいな写真を撮るのは難しいかもしれないけれど、早期食道がんの診断や、RACの同定には非常に役立つので、H画質、HQ画質の内視鏡を用いるときにはBモードでの観察をおすすめしたいと思う。自分は慣れているのでB5だけれどもオリンパスのデモを見る限りB8を使っている先生が最近は増えてきているように思う。

ところでオリンパスには理解してもらえないが、RAW画像の記録がまだ出来ないのはどうにかならないか。かつてはそのようなコンセプトがあり、あとから画像強調を行うことが出来るソフトを販売していたのに。

2014/09/01

名医を探している人たちに共通する特徴

「先生、○○科で名医はいないでしょうか」という質問が来ました。


ホイ来た。それは当院でのFAQです。患者の住所を確認。
そしてその近隣には名医のA先生がおられます。


(きっといつものパターンだろうな)と思い、慎重に聞いていきます。


「あなたはS市にお住いでしたね」

「はい」

「もうすでに近隣の先生にはおかかりである、と考えてよろしいですね」

「はい」

「では、評判の良い、患者のとても多い先生にすでにおかかりになったのではないですか?」

「はい。A先生です」

「やっぱり、それでどうなりました?」

「実は一ヶ月ほど前にかかったのですが、処置して、これで治ると言われたんです」

「なるほど。しかし治らずに黙って別の医院に行きましたね?」

「そうなんです。またなってしまったので、今度はB病院に行きました。そうしたら、B病院では前の処置が悪いと言うんです」

「なるほど、でもB病院でも治ってないんでしょ?」

「そうなんです」

「私、A先生は名医だと思ってます。厳しすぎるっていう評判もありますけれどね。まず、見立てが良いです。診断が正しい。これは大切なことです。実はB病院でやっている定期的な研究会がありまして、私それに出るんですけれど、そこで毎回発表されている開業医ってA先生だけです。他の先生たちより圧倒的に珍しい症例が多いです。そしてとても頭が良いです。こういう研究会でどういう活動をしているのか、って実は医者の実力を一番知るいい機会。名医だと思う次の理由は患者が多い事です。あんなに厳しくてもやっぱり多いんです。どうしてか。治るからでしょ?あと、あなたにもそうだけれど、『治りますよ』って言ったんでしょ?つまり混んでいるのは次回も来なさいと強制しているからじゃないっていう証明です。混んでいる医院の中には予約を必ずとるところが多いですからね。でもそうじゃないことがあなたの言動からわかって、良かったです。ますます名医だと確信を持ちました。さて、B病院。診てくれた先生、ひよっこでしたよね?」

「ええ、まあ。若い先生で」

「B病院が損してるなあと思うのは、前の医療機関の批判を必ずする先生が多いってところです。自分が上手くいかない時の保険をかけちゃう」

「自信がないんでしょうか」

「だとすれば、損ですよね。きっと上の先生の言動を真似しているだけなんですけれど。そこがB病院の惜しいところです。でもあなたが紹介状を持っていかないのが悪いんですけれどね。今聞いたところではA先生の処置は正しいです。でもね、あなたは再発をするリスクを持ってる。これは再発してからわかります。再発してから情報を集めるのが効率が良いですからA先生のやり方は正解だと思うんです。だからあなたが失敗だったのは治らなかった時にA先生のところにもう一度行かなかったことです。名医ってのはまた来いとは言わないことが多いです。だって患者さん減らしたいんだもん。そこで淘汰されるわけ。あなた淘汰されちゃったんです。だからあなたの通院パターンでは誰も名医になることは出来ません。逆にいうとあなたは名医にはかかれないんです」

「えー」

「だってそうでしょ。最初から名医にかかっちゃってるんです。でも親切でもない、手取り足取りでもなかった、という理由で二度とかからなかったんです。名医はなんとなく患者さんを減らそうとする、という法則があることさえ知っていればねえ。惜しい。ちなみに名医はこんな無駄話はしない」

「じゃあもう一度かかるのが良いんですね」

「です。治らなかった時こそ名医の真価が発揮されます。そこから糖尿病とか膠原病とか別の病気が見つかることがある。良い患者さんというのは先生とのコミュニケーションがうまい。あなたもそうなれるようにしてください」



名医を探している人にある程度共通する特徴があります。

1)自分がかかっている医師の真価がわからず素通りしている。
2)なぜなら「後医は名医」の法則を信用しすぎており、あとに聞いた意見を優先するから。
3)コミュニケーションが上手いと思っているけれど、本当は下手で、前に引き返すことが出来ない。

常にベルトコンベアーに乗っているかのように、一方通行でドクターショッピングをする人に名医を見つけられるわけがありません。


ほとんどがこんな具合なので、まずはその人の経過を聞いてみます。すると途中ですでに答えを出してくださっている先生がおられ、しかしそこを無視して通りすぎてしまっている、という事がよくあります。そして通りすぎてしまう理由がコミュニケーション不足です。

ちょっとだけ考え方を変えると良い医療が受けられるのにもったいないことです。良くならないときにいかに上手く情報を医師に伝えられるか、です。メモを書いて持っていく。自分の病歴を詳しく話す。できる事はたくさんあると思います。

2014/08/24

自然気胸はなぜ痩せて背が高い男性に多いのか

「自然気胸はなぜ痩せて背が高い男性に多いの」と聞かれました。
考えたことがなかったんですが、「わからない」とは言いたくないですよね。

非常に単純に考えますと、

1)物理的に肺の表面積が大きいほうが気胸になりやすいだろう。
2)内圧が陰圧になりやすい方が気胸にはなりやすいだろう。

という事になりましょうか。
やはり背が高いことは肺の表面積と関連するでしょう。
あと陰圧というのが重要かなと。穴あいたときに漏れやすいので。
女性や太っている人では横隔膜がやや上のほうにシフトするので少し陽圧気味になるんじゃないかと。背が高い上に痩せていると横隔膜を上方に下から押す力は全く働きませんから、相対的に陰圧になりますね。

肺尖部のブラに穴があいて自然気胸になるケースは当然多かろうと思われるので次にブラの生成について考えます。ブラ自体は普通の肺胞よりも脆弱だろうことは想像がつきます。

「ブラがどうして肺尖部に出来やすいのだろう」という問題もなかなかの思考実験です。

1)重力、は関連するのではないか。
2)動きが一番ない場所、という事は関連するのではないか。

重力という点では、もっとも単位容積あたりの血流が少ないという事が言えましょう。それが炎症やその治癒を悪くする。そして最も肺の中では動きのない場所である、という事も関連するのでしょう。それが何か炎症が起きた時にドレナージが悪いなどの原因になるかもしれませんし、タバコの煙や汚いガスもその部分に長く貯留するのかもしれません。

2014/08/15

根拠のある推定と根拠のない推定を見分けよう

医学は数学などのような論理的な世界とは若干ことなるかもしれませんが、しかし化学、物理学、数学、いろいろな学問の上に成り立っていることは確かです。
ならば真実を理解するのは容易い、と思いきや複雑すぎることがその理解を邪魔します。
結果として世の中には様々な「医学的に見える嘘」が存在しており、しばしば皆さんを、あるいは医師をも惑わせます。製薬会社の過剰なマーケティングの弊害をみなさんもご存知でしょう。しかしそうしたやりすぎを利用して(陰謀論、などと呼ばれますが)自らの利益にしようとする人々がいることもまた事実です。そして皆さんに被害を与えるのです。残念ながらマスコミや政治家、あるいは医師までもが好ましくない嘘をついてしまう現状で、みなさんはどのように本当の情報を得れば良いのでしょうか。

何かをみなさんに主張したいとき、判断の材料を辿るように出来ることがもっとも誠実な方法です。
そういう点で、テレビというメディアは信頼度がゼロに近いと言えます。それでいて希求力が高いのです。インターネットはどうでしょう。意図的に情報を隠ぺいすることは可能なので、やはり信頼度は低いと言えましょう。

したがって、能動的にみなさんが「真実を知りたい」と検索をする能力がなければならない。あるいは取材を繰り返さねばならないのが現実です。しかもそれらの情報を手に入れるのは有料だったりする。まるで「お前たちは真実を知るな」と言われているようで腹が立ちませんか?悔しいですが、まだそういう時代なのでしょう。できればみなさんは英語が出来たほうが良いし、pubMedやら、up-to-dateにアクセス出来る能力を身につけてはじめて真実とは何かを見分けることが出来るのです。なんとハードルが高いことでしょう。

「そういう時代」と言いました。そう、まだ真実をどう保証するかという方法がないから現状では限られた場所にリソースが集中するのです。では将来はどうでしょう。bitcoinという仮想通貨があります。これには金銭の授受のすべての記録が保管されるという特徴がありしかもその真正性が保証されます。

もっとも誠実な方法である「学術論文」においても、知識のロンダリングとでも呼びたくなるテクニックが使われることがあります。論文を孫引きまでして読む人が少ないことを利用して、論理を少し捻じ曲げるのです。しかしbitcoin的に判断材料の履歴がすべて保管され遡れるとしたら面白くありませんか?

私はbitcoinのアルゴリズムによって、完全にデジタル化された芸術作品がこれで可能になった、と喜びましたけれど、色々な知識には「履歴」という属性が大切であり、それを保証する手段にも使えるのではないかな、とぼんやりと考えたのです。

2014/08/05

より積極的に介入することにしました

介入というほど大げさではないのですが、ラガードという言葉を使いたいだけでこのエントリーは書いています。

アメリカの社会学者エヴェレット・ロジャースが提唱したイノベーター理論を応用して、健康診断の受容時期を早い順から層状に分類していくと以下のようになります。
まずイノベーターは関係ないので除きます。

アーリーアダプター(最初に飛びつく人)
アーリーマジョリティー(アーリーアダプターに早期に追随する人)
レイトマジョリティー(効果がわかってから追随する人)
ラガード(ぐずぐずしている人)
そこにネグレクト(拒否する人)を加え、5層になります。

医療機関に受診する事がない人々には介入できないので、ここで問題になるのはラガード層です。この方々は単純に「やり方がわからない」というだけで検診を受けていないのです。

主に対象となる人々:
40−64歳の方で、
社会保険家族の保険証をお持ちの人々はほとんどがラガードです。
国民健康保険の保険証をお持ちの方の半数以上がラガードです。
65歳以上の方々にはほとんど主治医がおられるので介入しません。

具体的な方法:
問い合わせ先の電話番号、あるいは申し込みハガキの書き方を外来でお教えします。
具体的には患者さんの目の前で各保険を検索してサイトを表示しプリントしています。
具体的な日程が決まっている場合にはそれを教えます。

チェック項目:
B型肝炎C型肝炎検査を受けたことがありそうか
40歳以後の便潜血検査を受けているか
50歳以後2年に1度のマンモグラフィを受けているか
子宮頸がん検診を受けたことがあるか
肺がん検診を受けたことがあるか
胃がん検診を受けたことがあるか

検診においては、やり過ぎが非常に問題になるのは当然なのですが、受けていない人のほうが圧倒的に多い事実を忘れてはなりません。欧米では便潜血検査の受診率は60%を超えると言われ、日本では20%以下とされる上に陽性となったときの精検受診率も甚だ低いのです。大腸内視鏡を繰り返して受ける人がいる一方で便潜血検査を受けていない人々が多いのは不公平すぎます。

例えばこの10年ほど、待合室に必要な検診の受け方について掲示していますがその通りに受ける方は1割といったところでした。
しかし直接患者さんに日程を説明すると、すぐさま申し込んでお受けになることが非常に多いことに気づきました。6割とは行きませんが、半数ぐらいは行ってくれるかのような手応えを感じています。伊勢原市の場合は一度受けてくださると、例えば便潜血検査は翌年もお知らせを送ってくださるようで助かります。

以下、近隣自治体での具体的な申し込み方法について書いておきますので参考にしてください。(平成26年8月5日現在)
伊勢原市
便潜血検査についてはに電話をしますと容器を送ってくださって、あとは伊勢原シティプラザなどで検診が行われている日に持っていくだけで完了です。乳がん子宮がん検診は上記電話番号に電話して予約してくださいと説明しています。かなり簡単。
秦野市
もう来年の申込みが始まっています
厚木市
受診対象者全員にお知らせが郵送されているそうです。4月から保険証が変更になった場合にはこの限りではありませんのでこのページの下部にある連絡先に問い合わせてください。
平塚市
はがきで申し込みましょう。(→リンク)日程はこちらページの予約状況を御覧ください。
大磯町
はがき申込も個別検診も行っています。(→リンク先のPDFを見ましょう
二宮町
特定健康診査といっしょに受けられたりもします。(→リンク先のPDFを見ましょう


2014/07/30

「理解」とは何か。

なんでもかんでも理解したいという欲求を持つ患者さんがいる。
「それはどうしてですか」が口癖だ。


基礎を知らない人を分かった気分にさせるには嘘のメタ知識に頼る方法が無難だ。
「あなたは高血圧だが、◯◯タイプだ」というのが典型例だ。
「ただの高血圧じゃない」+「◯◯タイプ」。ある程度知的欲求がある人々に響く言葉だ。
しかしその「◯◯タイプ」は全くの嘘かもしれないし、実際本当にいい加減な説明であることが多い。しかもだからといってどう違うか、どうすべきかなどの知識を一緒に身につけているわけでもない。診断根拠を患者に持たせないから信用できず、次の医療機関で検査のやり直しになることは当然で、それは患者の不満を生む。
テレビがそうだし、全国から患者を集めてクリニック経営している医療機関の診療内容をみるとその傾向がある。患者のアドヒアランスを上げるという良い面がある反面、「理解」の誤解が起きているような気もする。


どういう誤解かというと、インフォームドコンセントにおける「理解」を、医学の論理的な理解と履き違えるのだ。したがって、別の病気になった時に説明を受け、上記のような実に単純なメタ化が行われず少しむずかしい説明になって、それがわからないなと思った時になかなか納得しないし、どこがわからないかも説明が出来ない。そのために相当単純化して伝える必要が出てきてしまう。テレビだとか、上記のような医療機関は命とは関係ないところで議論をしているのが常であって(もちろんそういうビジネスモデルだ)多少の誤解があろうがあとで矛盾が出ようが差支えはない。しかし実際の医療では命が迫っている場合が多い。そういう事態にも関わらず「わからない、理解させろ」という気持ちに患者さんがなってしまうとすればそれは間違ったインフォームドコンセント感の弊害ではなかろうか、と思う。


「理解」を辞書で引くといくつかの意味がある。ひとつは「物事のしくみや状況,また,その意味するところなどを論理によって判断しわかること」であり、別に「相手の立場や気持ちをくみとること」という意味もある。医療現場における「理解」は双方を内包した深い言葉だ、という事を日々実感している。



2014/07/27

「必要か」という問い

「その検査(治療)は必要なんですか?」という問いを患者さんが良くするけれど、自分が逆の立場だったらその質問はしない。私は主語のない問いかけは極力しない。


私ならばこう言い換えると思う。「その検査(治療)は私にとってどのように有益なのですか?」と。


「必要」という言葉自体に、物事は神様か何かが決める事、のようなニュアンスを感じてしまうので、検査とか治療などという人生の中では最高に主体的でなければならないライフイベントを神様に決めてもらおうというような感覚には少し違和感を感じてしまう。むろんほとんどの人にはそういう言語感覚はなくて、ただ良く使われている言葉だからという理由でその質問をしているのかもしれないが。


検査(治療)の主体は自分だけれど利己的ではいけない、というのが難しい。なぜならば最も正しい答えの近くにいる医者との合意が必要であるし、自分勝手な判断をすると自分にとって不利益になるだけでなく、社会にとって不利益になる場合があるからだ。


実際には自分での判断は難しいので医師の意見を参考にする場合が多かろうけれど、「その検査(治療)が必要なんですか?」という問いに対する答えは非常に抽象的であるので、理解できない可能性がある。ガイドラインはその面倒な説明を端折るために用意されているけれど、理解を助けるものではない。そしてガイドラインはもともと不信感がある人にとっては意味をなさなかったりする。


観察していると、恐らく小さなトラブルの経験があろうという人が「必要か」という問いをするのは事実で、悲しく思う。トラブルが過去にある、あるいは自分では経験がなくともそういう経験を聞かされている、そういう人々の根には、非積極性がある。その気分を上手にほぐしていく、という稀有な才能をもった医療関係者あるいは一般人の人々がいて、自分は最大の敬意を払っている。

2014/07/23

ピロリ除菌で胃ポリープは消えるか

胃の前庭部(出口に近いほう)に過形成性ポリープがあったケースです。ピロリ菌を除菌しました。


これが二年経つとこうなりました。


ほぼ消失しています。
前庭部の過形成性ポリープは、ピロリ菌除菌では消失しない場合があります。前庭部の蠕動が非常に強い場合はその傾向があります。背景にびらんが多数あったり線状発赤が目立つ場合には蠕動が強いので、患者さんには「消えますよ」と説明してしまうとあとで「消えていないじゃないか」と患者さんの信頼を失う場合があります。消化器内科医は説明には慎重であるべきです。

一方でこういうポリープが出てきます。


胃底腺ポリープです。胃体上部大弯やや前壁よりです。胃底腺ポリープはピロリ菌陰性の胃粘膜における正常所見の一つと言って良いでしょう。

結論を申しますと、ピロリ菌除菌で過形成性ポリープ(胃腺窩上皮過形成性ポリープ)は消失する場合が多く、胃底腺ポリープは出現する場合があります。

2014/07/21

見立て、について(回答編1)



患者さんが、「眠れない」と受診をされました。
診断は、ウイルス感染症とし、4日ぐらいで軽快するのではないか、としました。
いったいどのように病歴を聞いたのでしょうか。




「眠れない」

「どうしてだろう」

「わからない」

「眠れない、って睡眠時間が短いということなんだろうか、寝付きが悪いという意味なんだろうか、それとも途中で起きてしまうという意味なんだろうか」

「途中で起きてしまう、かな」

「それはトイレで起きるんだろうか、眠りが浅いんだろうか」

「トイレかねえ」

「いつから?」

「2日前から」

「昼間眠くなる?」

「昼寝はするね」

「この2日間?」

「そう」

「おしっこするときにおしっこをする場所が痛いだろうか」

「痛くない」

「おしっこの量は多くなっているだろうか」

「行きたいんだけれど、ちょっとしか出ない」

「背中叩いてみるよ、どう?痛い?」

「痛くないねえ」

「おしっこ採って、熱計ろうか。血圧は137/80で、脈は80回か、ちょっといつもよりは高めで脈も速いか」

「おしっこ採ってきました」

「おしっこは、きれいだったねえ。熱は36.8度。平熱は?」

「36.4度ぐらいだねえ」

「診察させてくれる?この首どうした?」

「うん、なんか腫れてる気もするねえ、それとちょっと痛い」

「それはいつから?」

「2日前かな?」

「わかった。とすると、2日前から眠れなくて辛い、と。おしっこが頻回になっていると。少し血圧・脈拍・体温がいつもよりも高めで、のどが痛いんだね。それに腫れている。おしっこはきれいで膀胱炎ではないらしい。とすればウイルス感染症で頻尿になる事があるから今回はその可能性があって、あと2−3日で治ると思いますよ」

「あー、そんな気がする。じゃあ治るのかね」

「良くなりますよ。ところで風邪薬は眠くなるんだけどさあ、自分は風邪薬出すの好きじゃないんだけど、お薬なしでいい?」

「良いです良いです」

「塩水でうがいして下さい。調子が悪いなと思ったらまた見せてください」

「ありがとうございました」




感染症ではインターフェロンのようなサイトカインが放出されます。肝炎の時に使うインターフェロンでも頻尿の副作用がありますが、風邪の時にも頻尿を訴える人はおられます。ポリモーダル受容器にサイトカインが働いて閾値が低下したりする事があるそうで、そんなことが膀胱でおきるのでしょうね。風邪、頻尿で検索すると説明にもならない下らない説明をしているWebサイトが多いのですが、上記のような考え方が妥当でしょうね。

2014/07/16

見立て、について。

患者さんが、「眠れない」と受診をされました。

診断は、ウイルス感染症とし、4日ぐらいで軽快するのではないか、としました。

いったいどのように病歴を聞いたのでしょうか。



患者さんが、「他の病院で検査をしているが便秘の原因がわからない」と受診をされました。

私はある所見から、

「神経疾患ではないかと思うので、神経内科に紹介します」

と紹介状を書きました。

いったいどういう所見があったのでしょうか。



書き出してみると突拍子もない印象がありますが、

振り返ってみれば、あり得ること、なのです。

2014/07/10

一生飲まなくちゃいけないんですか

整腸剤(乳酸菌とかビフィズス菌とか酪酸菌などが主成分)を処方するときに「一生飲まなくちゃいけないんですか?」と心配する人は意外といる。

そして答えに困ってしまう。その質問がナンセンスである、という事を説明し、理解させることがまず大変だからだ。

「このお薬は一生飲んでくださいね」という言葉を医者が安売りしすぎたのがそもそもの原因じゃないか、と人にせいにしてみた。
昭和60年以前に乱発された言葉だろうか。現代でもまだこのセリフを間違って使う医者はいるらしい。

一生とは言わないまでも、相当長期間飲み続けなくちゃいけない病気はもちろんあるが、このセリフが乱発されたせいで色々弊害があるようだ。

例えば、
1)あんまり必要なさそうなのにずっと飲んでいる人々
がいるし、
2)俺は飲まないぞ
という事に快感を覚えてしまい(反権力という欲求を満足させる)薬をやめて適切にお薬を飲んでない人がいるし、
3)一生飲むなら飲まないほうがまし
という哲学的命題に取り組む人もいるし、
全くこちらとしては困ってしまう。

私自身は「一年先のことは一年先考える」というスタンスだし、色々なお薬を「〜まで使ったらもう一度評価」と説明する。
「再評価」は常になされるべきだからだし、そもそもあなたがた、それが出来るのは医者だけだから医者にかかるんです。
「薬だけ」という外来を絶対に絶対にしない、というと首をかしげる人が居る。
それは「治療について再評価をする」という医者の使命を全く理解していないし、そういう医者にも会ってないんでしょう。再評価と称して検査漬けにする医者が出てくるともっと面倒だけれど、どうも最近医療にはそういう傾向も出てきたから書いてしまう。

そして最近の事だけれど「一生飲まなくちゃいけないんですか?」という質問をした人は「薬だけくれ」と言うことに気づきました。その考え方がペアになっていることでピンと来たのですが、どうもこれらの人々は「ものを再評価する」という概念が欠けているのでしょう。

だとすれば、「一生飲まなくちゃいけないんですか」という問いに対する答えは簡単に出来る。

「いえ、一定期間経ったら評価をしなおしますので、一生ではありません」と答えておけば良いのだ。




2014/07/08

ICTが可能にすること〜曜日の無視〜

病院に勤務する医師が、生活のためにアルバイトをせざるを得ない状況があります。
「研究日」という呼び方をしたりしていますが、実質は違う。

ほとんどのアルバイトについて雇用者側は「曜日」で労働者(この場合は医師)を拘束します。それは現在の商習慣ではやむを得ない事でしょうが。

しかし、交代制加算というものが検討されてくるとまた変わってきます。
病院はこの交代制加算を導入して医師が当直したら翌日は休みというシフトを組みたい。しかし、翌日アルバイトがあれば実際には医師は過剰労働という事になります。
現在のままでは医師の交替勤務制は絵に描いた餅です。第一外来はどうするのですか。
外来もアルバイトも手術も給与もすべて曜日にしばられている事がせっかくの理念を歪ませてしまいます。

そこで周りは何をすべきかです。
今考えているのは完全不規則業務に患者を慣れさせる、という考え。
医師の勤務などはすべてコンピューターに管理を任せてしまいそれにしたがってカレンダーを作成する。曜日はとりあえず無視です。
大きな病院では主治医制は廃止。もともと主治医制と交替勤務制は相性が悪いのです。

私がいた大学病院でのことですが、総括医のようなものがおりました。担当医の上から診ているような医師です。総括医は誰もがなれるわけではなくて、カルテを見るとすぐに全体を把握できる、俯瞰能力の高い医師が選ばれます。患者は不安な事は担当医だけでなく総括医にも部長(教授)にも相談することが出来るシステムでした。これは非常にクレームが少なく、担当医も休みが取りやすく、実際の医療ミスも少ないという良いシステムでした。これに似た二人主治医制にすでに移行している病院も多くあります。

当院は二人主治医制ですが、「院長に」「邦夫医師に」と医師を指定する患者さんがいます。それは逆に監視されにくいというリスクを負うということを意識すべきでしょう。

曜日という概念は、能力に限界がある人間のためには便利ではありますが、リソースの最適な配分を考えるにあたっては邪魔です。
それを乗り越えるにはICTの活用が不可欠です。それに必要なインフラとしてはケータイ電話があればよく、あとはそれを使えるリテラシー教育さえ行えば良い。
それを草の根でやってみたいな、と思っているのが現在の私と言えます。

2014/07/01

おならについて

「おならは我慢しちゃいけませんよ」が私の父親の口癖であり、唯一の教育だったかもしれない。(「勉強しなさい」と言われたことはないので)

父は医者になってからしばらくの間アメリカに留学していたから、社会的作法がアメリカ的な側面があり、おならを我慢するな、もその一つだったと思う。他にはケチャップ大好きなどの特徴が彼にはある。

おならを我慢するなと言われても、日本の社会でそれを実践するのは少し困難だなあと思いつつ学生時代を過ごしていたけれど、心理的な縛りがなかっただけましだろう。

自分がアメリカに留学していた時のこと。おならが出てしまっても"Excuse me."と言えば終わり、という場面を何度か目にした。若い女性であってもそれを恥ずかしがる事はないのだ。なるほどこれは良い社会的作法だと実感できて、自分も「おならは我慢しちゃいけません」派になった。

おならに関して良く話すエピソードは2つ。

ひとつは”屁負比丘尼(へおいびくに)"の話。時代劇で高貴だったり裕福な家の若い女性に必ず尼さん風の女性が付き従っているけれど、この比丘尼が放屁や過失などを引き受ける役だったという事。それほどに放屁ははしたないこととされていたらしい事を示すエピソードとして。

もうひとつは禅宗の修行道場は音に大変厳しくて、下駄の音、食事の音も出すことはいけない。唯一うどんをすするときだけはOKらしいけれど、どうもトイレの音も駄目らしい。そこで音がしない排便や放屁の仕方を身につけるのであると禅宗のお坊さんが話しているのを伺ったことがある。

どちらも臭いに対しては寛容で、音に対しては敏感な、当時の様子がうかがい知れる。

「音がしなければOK」がもともとの解釈なのだろう。

ところが、日本ではおならがいじめの材料に使われたりするという問題がある。
いじめとは教育者でない人物が相手を教育に見せかけ無理強いしたり矯正しようとしたりすること、というような言われ方をする。一般的に「これがマナー」とされるような事象があると、それに反した人を教育者でない人々が「指導」をするというような風俗・習慣が人間社会にはあり、特に学校の中では容易にそれが起きやすい。例えば音がでないおならの場合ですら「おまえやっただろ」というような発言をする人物が登場しやすく、これがいじめにつながっていくかもしれないと恐れる子供たちは多い。

したがって学校ではおならが出来ない、うんちが出来ない、だからお腹がいたい。学校にいけない。そんな子供を見るたびに、マナーの拡大解釈を呪い、大人はちゃんとしろと憤り、自分の無力を悲しく思う。

トイレで大便をすることすらからかったりいじめの対象にするような残念な子供も未だにいるのだろう。そのような人物の方にこそ問題がある、ということをわからせるためには小さな頃から、「おならは恥ずかしくない」「うんちも恥ずかしくない」と教育するほうがよほど有意義だと思う。生理現象をマナーに組み込んでしまうことは有害ではなかろうか。

だいたい、「きたなーい」とか言っている子供に限って本当の清潔操作のことなどわかっていない。もちろん潔癖症の人も全然わかっていない。科学を学ばない、理解できないとこういう事態に簡単に陥ってしまうから教育は重要だと思うのだ。

2014/06/25

一般診療における「紛れ込み」について

いろいろな検査や治療、薬には常に有害事象が起きる事があります。
ワクチンのあとに調子が悪くなった、と訴える患者さんの中にはワクチンとは関係のない事象があって、これを「紛れ込み」(ニセの有害事象)と称したりします。しばしばこれらを利用して、反ワクチンの材料に使われてしまうことに心を痛めています。
医師と患者との信頼関係が問われます。

我々の行う一般診療にも常に「紛れ込み」が存在します。

検査のあとに調子が悪かった、という事例を詳細に調査をすると全く関連のない熱中症であったりという例があります。

それがニセの有害事象であっても本当の有害事象であっても我々の対処方法は同じです。患者さんの健康が現状に復帰できるよう、全力で努力をする。

一般診療における有害事象について、私が関わるのは以下の4通りです。

1)他院での診療での紛れ込み
2)他院での診療での真の有害事象
3)自院の診療での紛れ込み
4)自院の診療での真の有害事象

やることは同じであるのに、心理的なストレスはあまりにも違います。
1)、2)では私はストレスをあまり感じません。そして他院の先生にストレスをかけまいという余裕すら発揮します。
一方、3)、4)においては極めて大きなストレスを感じます。淡々と現状復帰に努力すれば良いのにも関わらずです。例えばピロリ菌除菌時の薬疹です。

紛れ込みが起きやすい人というのはどうしてもいます。高齢者は我々が予期しないような行動を起こすことがありますし、そもそも病気になりやすいのです。真の有害事象を減らすことは出来ませんが、紛れ込み事故を防ぐことはもしかしたら可能かもしれない。それには患者のバックグラウンドを精査したり、ICTを用いてライフログを分析するといった対処方法が考えられます。

医療におけるICTの活用は、例えばQCに使用するなどいろいろなアイディアがあるのですが、紛れ込み事故を防ぐ事も出来るのではないか、と考えています。ライフログは有用につかえば大変に素晴らしい可能性を秘めていますが、詐欺にも簡単に使えてしまうという諸刃の剣です。CCCをはじめとした各社が躍起になって集めている個人情報ですが、どうか悪用されることなく有用に使われて欲しいと心から思います。

私はこれらの個人情報の取り扱いについて、開業医なり基幹病院なりをひとつの単位として「カプセル化」「オブジェクト化」することを考えています。良く、オブジェクト思考では中身を隠蔽してしまうという事をやります。開業医を一つの単位としてそこに1000人の患者さんを集めて、「この薬飲んでる人何人いる?」「13人」「その人達の平均年齢と標準偏差は?」「45歳±3.2歳」などと言うふうに、個人情報を関数化するわけです。こうすれば個人情報はヒポクラテスの誓いにがんじがらめになっている医師の良識に守られる、ということになります。この方法は企業にとっては頭に来る方法かもしれませんが、ライフログを悪用されないためにはなかなか良い方法だと思うのですけれどもね。

2014/06/19

健康管理プラットフォーム競争

アップル:ヘルスキット
サムスン:SAMI:クラウド
グーグル:グーグルフィット:ブレスレット型

これらに共通するのは、「統合」というキーワード。

血圧
体重
体温
呼吸
脈波
心電図
筋電図
脳波
SaO2
CO2
インピーダンス
運動量(加速度)
食事(栄養)
アルコール
喫煙
投薬
サプリメント
睡眠
怪我
病気
Webアクセス履歴
+α(プロファイリングからわかる色々な事:異常行動を含めて)

応用例:ホーム転落事故、突然死をスマートフォンで防止する、など。

これらのデータをどう統合していくか、まずはサンプルとしてデータがないと研究も進まない。世界的には数百兆円市場であるから、注目に値する。日本以外の国の医療は比較的大雑把なのでコンピューターにしっかり記録されている情報は投薬、手術、処置程度だ。軽微な病気でもフリーアクセスで受診出来る日本のような国は世界には例がなく、やる気があれば世界をリードできるインフラが整っているのが日本だ。そして最もこれらのデータの応用に関して実践的な知識を持っているのは手前味噌だけれど電子カルテダイナミクスのユーザーだ。
もしも本気で応用に取り組みたいメーカーがおられたら、電子カルテダイナミクスを使用中の医師にコンサルテーションを頼むと良い。無尽蔵のアイディアを持っているはずだ。

2014/06/13

曲解について

メタ知識で生きている人とそうじゃない人を見分けるにはこんな会話をすれば良い。

「先生便秘なんですが」

「便秘にはランニング」

「ああ、運動ですね」

「違います。ランニング」

「歩くのじゃダメですか?」

「いいえ、ランニング」

「へー」

なぜランニングなのか、という事について考える人かどうか。もちろんすぐに「どうしてですか?」と聞く人もやはりメタ知識で生きている人ですが。

「先生便秘なんですが」

「定期的にこのお薬を使ってみたらどうでしょう」

「使えません。他の方法ないですか?」

「んーじゃあ、あなたのやり方でいいや」

「先生、やっぱり便秘です」

「でもお薬使えないんでしょう?」

「先生私の方法で良いって言ったじゃないですか」

これはネゴシエーションが出来ない人です。よくある会話ですが、ボタンの掛け違いをどこでやってしまっているのかを本人に気づかせるには会話を全部録音するしかないのかもしれません。日本語の言語構造が難しいと思う理由は、揚げ足の取り合いをしているうちに意味が変わりやすいから。曲解の起きやすい言語ではないか、と思います。

2014/06/10

貧血と浮腫

簡単に説明するという事は大切なんですが、簡単にしたはずの説明も、その人がちゃんと家事ができないと理解が出来なかったりする。簡単な説明というのは生活に直結させて行うことが多いからです。

「今浮腫んでいるのは貧血のせいですよ」

「ああそうなんですか」

で終わっちゃう人が多いです。これは物事の仕組みをあまり考えようとしない人だし、浮腫があると全部貧血だと思う場合があります。こういう反応は私は望んではいない。

「今浮腫んでいるのは貧血のせいですよ」

「?」

となる人は筋があって、どうしてか考えている人です。そういう人にはこんな喩え話をする。

「血液が通っている血管って、メッシュなんです。布みたいな。濃いシチューと薄いシチューがあって、布で濾してみるとどっちが簡単に水が滲み出てきます?」

「薄いシチュー」

「そう、サラサラしている方が水が外に出てくる。同様に貧血のほうが血管から水が滲み出てくるから浮腫みやすいとうい原理」

「サラサラとドロドロだとサラサラが良いように思いますけれどね」

「程度問題ですよね」

みたいな話題は料理を知らない人にしても通じないのです。ちょっと凝った料理を作ったことがあれば雰囲気は掴みやすいはずなのですが。

同様に腸内細菌叢の話も、パンだとかの発酵を知らない人に説明してもまるで理解は出来ない。

自分の子供に限らず、子供は手伝いをすべきだと思いますが、衣食住にかかわる事柄は人類の大事な共通言語の一つだと考えます。言葉だけが共通でもしょうがない。生きるための知恵が共有されていると医療のような場では極めて有用です。

家のお手伝いには共通言語を育むという効用がありますのでそれが出来る子が強いというのは当然の事のように思います。

(この記事を書く背景には「デザイン言語」という授業を大学で聞いた経験があります)

2014/06/06

電子お薬手帳(本論)

序論が長いのですが、長すぎるため本論のみ公開します。

アメリカ合衆国の電子処方箋には以下の特徴があります。
  1. 腎障害の情報が入る(クレアチニン値)
  2. すべてのお薬をその場で用意できる薬局がインターネットで選択できる(待たされない)
  3. 安価な薬の中からさらに選択が出来る(これがザ・ジェネリックですよ、と薬局の都合で押し付けられることは避けられる)
  4. リフィルが出来る
  5. 市販後調査が出来る
どうですか。なんだか敗北感がしませんか?
もともとアメリカは処方箋が医師の手書きだったので、「読めない」という疑義照会が多かったそう。それが「読める!」というので日本よりも先に電子処方箋の普及が始まっているようです。

それに対して、日本の電子お薬手帳の仕様はこれです。

  • 患者氏名・性別・生年月日
  • 調剤年月日
  • 調剤医療機関名称・都道府県・医科歯科の別・医療機関コード・医師氏名
  • 処方医療機関名称・都道府県・医科歯科の別・医療機関コード・医師氏名・診療科
  • 処方番号・薬品名称・用量・単位名・薬品コード識別・薬品コード
  •  補足情報
  •  用法レコード
  • 備考レコード

笑っちゃいますか?落胆しますか?
  1. 処方ミス(腎障害は良く見落とされる)を防ぐ仕組みはあるのか?
  2. 電子的だからこそ役立つ仕組みがあるのか?
  3. 患者さんの利益になるのか?
  4. それが公益に貢献するのか?
何も満たしていません。
日本の場合、QR処方箋という仕組みの下位互換で作っているのが丸見えなんですね。
全然役立つ「お薬手帳」ではないのです。

少なくとも仕様書に絶対的に欠けているものは、
1)処方・調剤した医師・薬剤師への連絡手段がない=電話番号などが入らない
2)ロット番号などの情報がない=トレーサビリティがない

です。上記仕様ではお薬手帳として何の役にも立たないのです。
彼らの言い訳としては「データを小さくしたいから」というものを用意しているでしょうが、そんな言い訳は断じて認めません。コード化(もともと用意されています)すればもっともっとデータは小さく出来るのですから。
仕様策定のメンバーに自分を入れて欲しかったと思います。
そこで我々は、備考レコードにこれらの情報を入れることにしています。
どの電子お薬手帳アプリでも、ちゃんと仕様通りに作っていれば読み込んでくれるはずです。

お薬の情報は極めてプライベートな情報ですので、広告などはもってのほかだと思います。
私自身はお薬情報を使用した広告、CCC(カルチュアコンビニエンスなんちゃら)などによる情報収集には極力反対していく立場ですが、副作用の追跡には役立つ仕組みなので、普及させたいなという思いはあります。

第一歩として、
の2つのアプリケーションが用意されました。私が使っている電子カルテのメーカー、ダイナミクスから無料で提供されています。(もちろん広告も出ません)吉原先生に感謝。

私が使っている電子カルテからは、テキストファイルやQRコードでデータをお渡しします。

私のメールアドレスと電話番号は入るようになっています。

仕様は同じなので誰が作って頂いてもよろしいと思いますが、絶対に必要な機能、例えば患者さんの電子お薬手帳から、初診でかかる病院の電子カルテへ情報を受け渡す、(MFC経由でもQRコード経由でも良いのですが)というような仕組みを提案していくつもりです。皆さんが大きな利益を得られるような仕組みにするのが当面の目標です。

みなさまのご意見を大歓迎いたします。

2014/05/25

過去の世界に思考を漂わせる

のどのつまる感じ、を患者さんに説明する時に、ジークムント・フロイトの名前は無視できません。
残念ながら日本語でも英語でもフロイトの言う"ヒステリー球"を興味深く語るストーリーは見つけることが出来ませんが、過去に想像をめぐらせる事が可能です。 想像を潜らせていき、他人の思考を辿るのが自分の楽しみ方です。 

患者さんはほとんどがフロイトの事は知らないので、医学の世界に多くの影響を与えた巨人である、と説明しています。 フロイトは1900年ごろに活躍した人です。 フロイトを語ることは、100年以上前のヨーロッパで彼の患者になった特定の階級の人々の生活を想像することだろうと考えます。

 1885年に彼はフランスのパリでジャン=マルタン・シャルコー(シャルコー・マリー・トゥース病にその名前を残しています)から催眠によるヒステリーの治療法を習います。ヒステリーというのはシャルコーが登場するまではなんだかおぞましい概念で、それは英語版のWikipediaを読むとわかりますがリンクは張りません。それをやや科学的に考えたのがシャルコーと言え、彼の教えを受けたフロイトはドイツに帰ってから"男性のヒステリー"という発表をしているわけですから、ヒステリーを抽象的な"女性のなにか"と捉えることをやめて、"精神的ななにか"と理解したのだろうと思います。

フロイトがヒステリー球という言葉を残したという事はすなわち当時の彼の患者には精神的だと思われる理由でのどのつまりを訴える患者がかなりの数いた、という事を表しています。彼のあまり幸せそうではない人生を追体験するのは辛いことですのでそれはやめて、当時のドイツで精神分析医にお金を払うことが出来る女性というのは、中流以上の婦人なのであろうと想像します。すると現代の暮らし向きに比較的近くて余裕もあるであろうか、などと考えるのです。"のどのつまり"はある程度の"思考の空間"がないと出てこない症状で、現代の先進国の生活とある程度状況が似ているのかもしれないと考えると興味が湧いてこないでしょうか。

金匱玉函要略述義 3巻 丹波元堅 学 井口綏之 写 嘉永5 [1852]
"梅核気(ばいかくき)"という言葉があります。"咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)"とも言うそうです。紀元2世紀、後漢の時代に張仲景(医聖)が著した『傷寒雑病論』は後に失われて再編集され『傷寒論』となり、さらに異本として『金匱要略』(きんきょうようりゃく)が編集されるのですが、その中に「婦人、咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)有るが如きは半夏厚朴湯之を主る」とあるのが初出だそうです。和漢の処方には江戸時代の比較的新しいものも多いと思いますが、半夏厚朴湯が1800年以上も前の処方だと知るとこれまた興味が湧いてこないでしょうか。2世紀の婦人が、咽中炙臠という症状で悩んでいたとは!後漢は製紙が発明された時代で天文学や数学など大きく科学が発達しました。そうした時代に女性が医師に「のどがつまる」と受診するのです。なんと世の中は変わっていない事でしょう。

全く違う想像をする事も可能です。2世紀に張仲景が傷寒論を書いたそもそもの背景には感染症の流行で彼の親類縁者が多数亡くなった事があるそうです。ところで消化管の機能的な異常、例えば機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群は感染症の流行の後に患者さんが増えるとされています。(サルモネラの集団感染後のディスペプシア症状の報告が有名ですが、実際に外来では良く診ます)すると2世紀当時、感染症から生き残った患者さんが機能性疾患としての咽頭違和感を訴えても不思議ではないのではないか、と想像することは出来ませんか?あるいはフロイトがヒステリー球を記述した当時はハンセン病からはじまり、1894年北里柴三郎によるペスト菌の発見、1898年志賀潔による赤痢菌の発見など、細菌学が目覚ましく進歩した時期でもあります。この感染症学と咽頭違和感とのオーバーラップは全くの偶然なのでしょうか。医学の進歩とはそういうものだ、と言われればそれまでですけれども、まるで進化におけるカンブリア爆発を彷彿とさせます。

そのような妄想はおいておいて、このように「咽頭違和感」が極めて古い概念である、という事は知っておいて良い知識だろうと思います。古の人々の様子を理解することもまた、気になる症状を少し和らげてくれるかもしれないからです。

私は和漢の事は詳しくありません。エキス剤の出典は時々確認し、その処方が登場した歴史、当時の社会情勢、文化に想像を膨らませます。古い時代の西洋医学は治療よりも病気の詳細な記述に驚嘆します。新しい知識を身につけるのも大切でしょうけれど、古い時代のお医者さんがしてきたことを追体験することも、基礎的な医学知識を持っているから出来る事だと思いますし楽しみたいと思います。

さて実際に咽頭違和感がサブスタンスPの増加によるのだ、というような仮説があるのかどうかは知りません。(なんとなく今思いつきました)しかし神経が過敏な状態になっているのは事実であろうと思われ、これを解決する方法には色々なアプローチがあって良いと思います。私も毎度毎度違う説明をしているように思います。

2014/05/24

Functional dypepsia 2014



機能性ディスペプシアについてまとめましたので公開します。
すでにある程度知識のある方向きです。
これに本当は音声が入ると良いのですが。
問診の重要性などは音声で実例を挙げつつプレゼンしました。

2014/05/22

ブランディングと問診

FDについてメーカーでレクチャーしてきたのですが、まるで医者向けの内容になっておりました。多少は他の新規薬剤についても触れましたが。みなさんが理解出来たかどうか心配しています。

FDというのは機能性ディスペプシアの略称です。この疾患概念の中身は多様で「機能性ディスペプシア」と呼ぶのは好きではなく、FDという呼び方をします。FDですと「その他」という言葉のように名前自体には意味がなくどうでも良い印象がありまして嫌いではないのです。

「あなたには器質的な疾患があるわけではない。それ以外の理由で症状があるのだ。それを我々はFDと呼んでます」

長ったらしい名前はそれなりに意味があるみたいじゃないですか。病名なんてものは「便秘」ぐらい簡単なほうが良いんです、カジュアルで。患者さんが悩まないから。ですから、FD。

フロッピーディスクが絶滅してくれたのでちょうどよいです。FD。

このFDの診療では、投薬の変更がしばしば起こります。決まった治療の方法がないからです。それをうまく患者さんには説明しないと不信感を招く場合が当然あるでしょう。したがって信頼関係が重要であることは言うまでもありません。ではどうやって信頼関係を築くかですが、これは「医師の態度」と「検査の質の高さ」によるだろうと思います。

高いブランドとしての価値をすでに持っている病院では、ブランド価値が信頼感を担保してくれるので、問診票を使ってある程度医師のインタビューを簡略化しても構わないと思います。しかし、そうでない医療機関ー当院もそうかもしれませんがーでは、問診こそ患者さんと信頼関係を築ける最大のチャンスであって、それを医師が疎かにすべきではありません。

途中から関係を修復する事の大変さに比べたら、最初から良好な関係を築くことがいかに簡単であるか、コストが安く済むかということを考えると、問診というのは実に重要なツールだなと思います。特にFDでは。

そういう自分は今、問診票のプログラムを作っています。笑

人生というのは矛盾に満ちているのです。

2014/05/03

ガス分析

UBT(尿素呼気試験)という、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査があります。

UBTの機械は非放射性同位元素である13C(炭素13)を測定しますが、無論同時に普通の二酸化炭素も調べることが出来ます。

すると割合人により呼気中の二酸化炭素濃度にはばらつきがあることがわかります。1.6%から4.2%の間ぐらいです。死腔などが影響しないような呼気採取を心がけていますが、今度データでも出してみましょうか。2回の測定のバラつき加減はその人の熟練度を示すでしょうし、二酸化炭素濃度はその人の基礎代謝率を反映するはずなので、無意味なデータではないはずなのです。

ガス分析は基礎代謝測定に使われています。本来は重要な検査ですが、大変な割に全く儲からないという点では超音波内視鏡に次ぐだろうと思います。政治的に誰も振る舞わなければ不当な安値に設定されてしまうというハードボイルドな世界が医学界です。その結果、誰も自分の基礎代謝量を知らないままに食事指導を受けるという事になっており、私の不満の一つです。

突然ですが、そのガス分析をおならの分析に使うとどんなことが出来るのか考えてみましょう。

<方法>
さて、おならの採取は大変難しい事です。それが第一のハードルだと思います。こういうのは第三者に任せたほうが面白い独創的なものが出来ると思います。もちろん自分だっていろいろ考えますよ。ダイソンのSTUDENT AWARDでは間違いなく国内予選を突破できるネタです。イノベーティブで、しかもダイソンの得意な流体力学系の話題ですから。

<ガス分析の種類とその意味>

窒素:これは呑気症について良くわかります。「本当に呑気症なの?」という人が良く他院で「あなたは呑気症だ」と言われて来院するのですが、それを証明するには窒素の分析が有効でしょう。

メタン・水素・アンモニア:これらの組成で腸内細菌叢の組成が推測できる可能性があります。メタン菌の量などです。ガスがたまってお腹が痛い、という経験はありますか?メタン・水素は特に腸管から吸収されにくいガスであり、たまると腸管が張ってしまい痛く感じやすいのです。

二酸化炭素:これは善玉菌の活動を推測できます。赤ちゃんはお腹はガスでポンポコリンですが通常は痛がったりはしません。それはどうしてかというと赤ちゃんの腸内細菌のほとんどを乳酸菌などが占めており、したがってガスは二酸化炭素が多いからです。二酸化炭素は腸管から速やかに吸収され呼気に排泄されるため、圧が一定以上に上がることはありませんから痛くはないのです。赤ちゃんに抗生物質を使ったあとや、他の理由で腸内細菌が乱れるとお腹がはって夜泣きをすることがあって、それに対してシメチコンというお薬を使ったりします。

<電撃ネットワークとガス>

電撃ネットワークはおならを燃やす芸を持っておられますが、当然それはメタンの燃焼によるはずです。

<まとめ>

非侵襲的な検査として、匂いによる癌の診断などが注目されていますが、その前にこうしたガス分析にも目を向けて欲しいなと思います。

2014/04/29

子供のピロリ菌除菌

子供のピロリ菌除菌を語る立場にはありませんが質問が多いので今のところの自分の立場を述べる。アドバイスがありましたらよろしく。


自分が認識している事実
○5歳までにピロリ菌は感染する。
○感染の機会は無数にある。現代では子供たちの感染率は概ね2割程度であろうが地域差があろう。
○貧血などでピロリ菌感染が問題になる場合があるが少数である。
○子供は除菌治療薬の容量設定が難しい。


そこから導き出される考え
○すべての子供の対してピロリ菌感染防御をするならば一斉に検査・除菌をするのが学問的に正しいのであろうが、以下の理由で行われていないだろう。すなわち、
 →ワクチンに比較すると除菌治療の副反応が多い。
 →除菌をしても再感染する機会があるかもしれない。再感染のチャンスは大人より集団生活の子供の方が多かろう。


いつピロリ菌の検査・除菌をするか
○貧血、成長障害、消化不良、潰瘍などで小児科に受診する子供については従来通りその時点での検査・除菌が良いだろう。
○それ以外の子供については、18歳以後の検査が適切なのだろう。


問題点
○若い方では除菌の失敗例が多いのでそのレスキュー。
○副作用が起きたときの対策がシステム化されていない。


ひとつの希望
○「感染症」について、保険で治療期間まで限定されているのはどうでしょう。海外では2週間法、新しい方法も柔軟に保険が適用されます。感染者が多いのでその費用の大きさにたじろぐ厚生労働省の気持ちも理解できないではありませんし、いい加減に除菌をする医師がいるのも事実です。双方がすり寄るためのシステム作りには、患者側の参加が不可欠であり、そのための思考実験を今から行っておく必要があります。

2014/04/27

「ありとあらゆることを試しました」

患者さんが
「ありとあらゆることを試しました」
という言葉を使っている場合に、いくつかのことを考えます。

1)苦労・ある程度の達成感・あるいは諦め
2)知識の不足・ないしは拒絶
3)苦労を知ってほしい気持ち・ある種の訴え
4)Many = All としてしまう大雑把さ

心情はなんとなく理解は出来るのですが、
そこに不足しているものは何かというと、

1)未来への希望・医学は流動的で進歩するという認識
2)世界の広さの認識
3)具体性

です。
ここで、「◯◯は試しましたか?」という質問はNGです。
患者さんが試したことがないことであっても勝手に脳内変換して「やりましたやりました」と言う場合がほとんどであるというのが第一の理由。
二番目の理由はそのやりとりで患者さんは自発的に落胆するからです。

実際の記録を持ってきていただくと、自分が考えつくことの半分も試していないのが普通なので、「とにかく記録を持ってこいや」というのが正解なのではあります。
今までの自分の苦労を語りたいという気持ちが前面に出るあまり、損をしている典型的なセリフのひとつです。

事実の記録がある事が重要なので、お薬手帳や検査結果、明細領収書(必ずもらってください)などを保存しておくことが大切ではないかと思います。

2014/04/20

「3分診療こそ究極」

タイトルの通りなのですが、

当院にも「3分診療最悪」と仰る患者さんが多くみえますが、

彼らのその感情の理由は、「言いたいことを聞いてもらえない」であります。



外来での行為を分解して見て行きましょう。

1)患者が医者に訴えるフェーズ

2)不正確な情報を正確に直すフェーズ

3)医者が情報を整理するフェーズ

4)医者が患者に話すフェーズ

5)理解できない部分を再確認するフェーズ

6)続くのか、終わるのかを確認するフェーズ



患者は1)だけで半分は満足します。

5)は説明である程度満足する人、「薬」で満足する人がいます。「説明が納得できない」と仰る方が若干名おります。



私は文化人類学でいうフィールドワークのように外来を捉えていて、どういう人が情報過多になるのか、あるいはどういう人からは情報を引き出す必要があるか、それに興味があるから自分で1)2)を行いますが、これは医師以外が担っても良い仕事かなと思います。

所謂「3分診療」として不満を持たれる外来はこの部分が疎かです。患者は不満を持つべきだと思います。この部分を良く褒められますが、「あーあ」と思います。そこは売りではありません。



3)は医師の実力が問われる部分です。でもこの部分は患者は無駄だと感じています。医師の一挙手一投足を興味深く観察する人などほとんどいないからです。私の場合にはキーボードカチャカチャが一種のエンターテイメントになっているようで、それはそれで楽しんで見ている患者さんが少なくないようですが。逆にこの部分で患者さんが不信感を持っている場合があります。頭は良いのにキーボードを打つのが遅い先生が損しています。医療秘書を雇うべきです。


実際に診療に必要な時間は4)と5)です。それは3分で終わらせた方が良い。いや、終わらせるべきだと思います。長くても患者さんは覚えていられないばかりか、間違えたことを覚えて帰ります。印刷して持たせてもほとんど意味はありません。読む人は少ないから。読んだら読んだで枝葉末節にこだわりすぎる人がいて結局大事な事は伝わらないのです。


シンプルにうまく情報をメタ化して伝える事は大切です。1分で伝え、2分で簡単な質疑応答をする。
私はこの部分がだめで、簡単に10分15分話してしまいます。すべてを1回で話そうとするからそもそもだめなのです。1分で話しきれない事は「続く」として外来に繰り返し来てもらうのが本当は良いのです。幸い日本は再診料が安いのですからそれで良いのです。ところが待ち時間が長いことが気になって、一回で終わらせるぞ、と躍起になる。そして自分は完璧だ、と思っていても患者さんには伝わっていない、これを20年も繰り返してきたのです。


「3分診療こそ究極」です。ところが3分って難しいんですね。「はい、正常」で3秒です。残りが177秒もありますね。私は今まで「一回として同じ説明、言葉は使わない」というしばりをつけて外来をしていたんです。これは話術の大リーグ養成ギプスみたいなものでした。同じ話を何度もするおじさんって嫌われるじゃないですか。嫌われたくなかったのです。ところが実際には同じ話を何度もして磨いていくべきだったんだと思いました。

そこで考え方をあらためまして、まずは古典落語のように、いくつかの病気をわかりやすいように説明できるように今練習しているところです。死ぬまでに間に合うのか。メタ化した知識は嫌いだ、と公言してきましたが、別に葛藤はありません。

2014/04/15

「検査しなきゃいけないんですか」

という質問は良い質問だと思う。



ただ、自分は他の人よりも考えるパラメーターが多すぎるタイプなので、ちゃんと話すと100%患者さんは理解が出来ませんので大雑把に書いておこうと思いました。



一人当たりの医療費を最小限に、時間も最小限(待ち時間が長いのも計算に入れてます)に、かつ効果を最大限に、自分のもうけは最小に、患者の損も最小に、藪医者と代替医療に流れるお金は最小にという複雑な計算をして、そこにエッセンスとして、「自分は検査が面倒くさいからなるべくやりたくない」を加えて、最後に「○の時期にこの検査をしたらどうですか?」と言うわけです。他で無駄な医療を受けまくっている患者の場合にはこちらは介入を極力避ける。

検査の質は高くしようというポリシーが根底にあるわけですが、非常に自分は疲れるからむしろ他の病院に行ってくれるとありがたいな、という気分が背景にあります。だって医師のレベルはどこに行っても一緒のはずだし自分がやらねばならないという事はないんですから。考えるパラメーターがいくら多くて複雑でも、出る結論というのはそれほど変わらないってのは身をもって体験していますから、そんなに価値のあるものではないんです。

あとは患者さんがその「検査を受けたいかどうか」の気持ちをトッピングしてくだされば完成。



しかし患者さんの気持ちは良くわかるんですよね。

患者さんの中には、医者が「是非やらせてくれ」と下手に出るか、「絶対にやらなきゃだめだから」と命令されるか、どっちかでないと決定が出来ない人々がいますから。自分は下手に出るのも、高圧的になることも出来ない人間ですが、そこは折れてなんとか説得します。時間がもったいないなと思いつつ、です。

どちらにせよ自分で決定するのに躊躇するのでしょう。その苦手の背景というのは人それぞれなんでしょうけれど、過去に自分が「検査しなさい」「はい、癌がありました」という経験をしている方がいるので申し訳ないなと思います。私自身は「当たる」という経験は、偶然でしかない感覚ではあるのですが、患者さん本人からすると「当てられた」が100%になってしまうから怖いんだろうと思います。そういう人は私が「検査」というと、「また何かあるんだ」と恐れおののいてしまう。そうじゃないのですが。

むしろこちらの事はコンピューター(アキネーターほど当たりませんが)か何かだと思っていただいて受診していただいた方が良いのではないかな、と思います。特に怖がる必要はありません。



で、結論を申し上げれば、「検査しなきゃいけないんですか」という質問は良い質問だけれど、いささか棘がある言い方で、相手によっては怒り出してしまうかもしれない。しかしその質問に対する答え方で医師のその時の気分だとか、哲学だとか、そういうものがわかってしまうという怖い質問だと言えるのです。

2014/04/08

機能性ディスペプシア fuctional dyspepsia 周辺の情報収集

主観的な検査(内視鏡とエコー)を利用して機能を見る、という点で10年20年の蓄積がある当方は、所謂「機能性ディスペプシア」の多様性と病態を多少は良く理解しているつもりでおりますが、だからこそブログには書いたことはありません。理解されるどころかますます混乱させるからです。しかし、議論が最近まとまってきた(つまり自分たちが持っていたアイディアもほぼ海外で認識されるようになってきた)と思うので少しまとめてみようと思いました。


定義:Rome III参照

疫学:西洋社会の20-25%の人々はディスペプシア様症状を訴える。そのうち25%(55歳以上)には何らかの疾患が見つかり、75%には異常がなく機能性ディスペプシアと言われる。海外では55歳未満の場合にはいろいろな検査はあんまりしないのが日本とは違う。

病態の理解:1)運動の異常、2)神経の過敏性、3)感染症、4)精神疾患の存在

検査:検査で器質的疾患を除外する。

治療:古典的にはPPI、H2RA、三環系抗うつ薬、メトクロプラミド

さて……こういう命に関わらない分野で、しかも患者数が莫大に多いわけで、一攫千金を狙いたいのはわかる。花粉症とか高脂血症とか逆流性食道炎のように当てたいことでしょう。便秘もだけれど。ブレイクスルーはありませんが、それでもなお、一発当てようとする企業が後を絶たないのはしょうがない事ですね。しかし今のところは万能薬というのはない。ないのはどういうことかよく考えてみよう。病態の理解が間違っているか、病態が多彩か、どちらかしかないでしょう。

Recognizing Comorbid Functional GI Disorders

消化管機能異常は併存する場合が多いという記事(当たり前なんだけど)
便秘型過敏性腸症候群の人はGERD(25-50%)とFD(30-60%)を併存しやすい。
慢性便秘の人はGERD(30-40%)とFD(40-50%)を併存しやすい。
では逆にGERDの人はどうかというと、10-20%が便秘型過敏性腸症候群、30-40%が慢性便秘を併発している。これ臨床やってる自分からすると当たり前な事なんですが、日本でちゃんとこういう指導している先生が実に少ないと嘆いている部分。いいぞもっとやれ。

Dietary Proteins and Functional Gastrointestinal Disorders

蛋白質と機能性ディスペプシア、という議論。

グルテンと牛乳に関する過敏性、という視点です。腹が張る、腹が張る、という人の中には過敏性が原因という方が少数いるはずです。(欧米では数%ぐらいだそう)しかし小麦、グルテンのようにすでに原因の検索方法が確立されているならともかく、未知の食材に対してアプローチしていくのは大変医療側が支払うコストが高くて放置されているのが現状なのかもしれません。スプルーにまでなっても日本では診断されていないケースがあります。

Can Pancreatic Enzymes Be Used to Treat Indigestion?

膵酵素は治療薬として使えるのか、という議論。

酵素薬の歴史は古く、2005年~2010年にかけてFDAでは再評価がすすみ、認可されたものはアメリカではCreon®, Pancreaze®, Pertzye™, Ultresa™, Viokace™, Zenpep®, and Pancrelipase™ 5000の7種類。

当方もまとめています。至適pHを考えているという点ではまだ私の方にアドバンテージがあるようです。Viokace以外はすべて腸溶錠なんですね。しかもViokaceはPPIと使わないといけないという罠。これらはむしろIBS向きの治療薬ですし、酵素剤はスピードが命なのでこいつら何にもわかってない、という印象があります。フリーズドライ大根おろしでも作って西洋で売ればバカ売れしますよ。その方が効きますからね。


なるほどこの論文があるからモサプリドを使うのか。
胃が痛い人に他院でモサプリドを使うともっと痛くなる人がいるわけです。で、当院の患者が増えて私が過労になり辛いです。内視鏡をすると前庭部びらんがひどいわけです。本郷先生は先に胃にはびらんがないよ、ってのをちゃんと見ているわけですからね?使うなら先にびらんがないのは確認するか、使って増悪するならすぐやめてください。(製薬会社の売り方がまずいと思う)ノロウイルス感染症に出すなんかもっての外で、吐き気止め代わりにモサプリド使わないでくださいと声を大にして言いたい。(びらんが無い方では確かにモサプリドは効きますし、精神疾患のある方でも有効だと思っています)テプレノンは不思議な薬です。免疫を調節する作用があるのか(肺がんの化学療法時の間質性肺炎に予防的に働くとか)一部の患者さんに極めて効くというか、依存的になっている人すらおられて興味を持っています。IgG関連の腸管アレルギーをテプレノンが調節するのであればつじつまが合うのですよね。ディスペプシアの原因の一部にはアレルギーが関与すると言われているのですから、無視してはならない薬剤でしょう。あるいは胃の粘液分泌能に影響を与え、過敏性を調節するとかでしょうか。


ディスペプシアが寿命に影響を与えるか。答えはNo。
QOLは下げる、QOLは下げる、と良く言うのですけれどね。明らかに寿命に影響するQOLの低さというのを臨床では経験しますが、なかなか難しい指標です。


機能性ディスペプシアでの精神科的アプローチ。
誘因として身体的精神的ストレス、犯罪被害がある、うつなど精神病の併存、過敏性の存在、向精神薬は効果が認められている事。
認知行動療法っていうのでしょうか、消化器内科医が自然に行っているカウンセリング的なものはごく一部で、こうしてまとまると、なかなか長大で大変なものですね。精神科すごいわ。



集め出すときりがないわけですが、これがおまんまの種であります。
で、つきつめていくと、最大公約数的な治療では有効なものがない、というのが今までの結論で、そして器質的な疾患がないとされている中にも実はアレルギーや神経伝達物質の異常などが関与するケースがありそうだという事がわかりますね。それをどう評価していくか、背景をどう分類していくか、この煩雑で膨大な仕事は自動化せねばなりませんから、結局みなさんのライフログをどうとるか、が鍵になります。
じゃあ、それをどうする、ということを日夜考えているわけですね。




2014/04/06

消化器内科ニュース2014年3月

○プロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期使用すると、低カルシウム血症(骨折の増加)、低マグネシウム血症、C.Difficile感染症の増加、肺炎の増加につながる。

<個人的な意見>その通り。PPIを不必要に「効かせすぎている」場合がかなりあるなあという感想。背景の萎縮、HPの有無、PPIを使用した時のpHなどを総合してフォローできる医療機関は多くはないだろう。イノセントにPPIを処方すべきではない。胃粘膜の様子で「ああ効かせすぎているなあ」というのは胃底腺ポリープの増え方、粘膜のべたつき、白さ、などで自分は判定している。

○大腸内視鏡検査の普及で大腸癌激減(アメリカで年3%減少)

<個人的な意見>便潜血検査での予後の延長は、「たまたま大腸がんじゃなかったけれどポリープはとった」人が将来大腸がんを発症しないからであるようだ。大腸ポリープに関しては乳がん、肺がんで見られるような過剰診断が有害になる、という事象が少ないため、積極的な検査が受け入れられるようになるのではなかろうか。みなさん便潜血検査は真面目に受けるように。

○イギリスではリンチ症候群の患者が適切にフォローされていなかった。

<個人的な意見>リンチ症候群の診断基準は新アムステルダム基準で「3人以上が家族内でHNPCC関連癌の確定診断を得ており、その内のひとりは他のふたりの一度近親者である。連続した2世代で罹患している。ひとり以上の50歳未満でのHNPCC関連癌患者がいる。家族性大腸ポリポーシスは除外されている」というものですが、これで素人の方がわかると思いますか?50歳以下で、大腸がんになった近親者がいる場合は医師に相談してください。間違ってもリンチ症候群を知らない医師にかかってはいけません。

○国際肝炎会議2014開催

<個人的な意見>HIV研究のおかげでRNAウイルスに対する種々の対策が開発され、C型肝炎に関しては特にその恩恵を受けています。スクリーニングに関してもより積極的に行われるべきでしょう。

○小腸腸内細菌異常増殖症(SIBO)とはなにか

<個人的な意見>あんまり良く病態が理解されていないこの病気。私も腹部単純で小腸にガスがある人や、IBSの一部、腹部術後の一部、ガスコンを飲むと調子が悪い人々、脂肪肝のある人々の一部、などがこれに含まれると思っていますが、アメリカでは盛んに抗生物質が投与されているらしく。あとはプロバイオティクスでしょうか。個人的には便移植の適応ではないかなと。

○ネオジム磁石の誤嚥事故が増えている

<個人的な意見>大変危険なので注意喚起したいところ。

○ヨーロッパでUC、クローン病に対するVedolizumabが推奨。

<個人的な意見>TNF-α抗体の次の薬剤。IgGに対する抗体。作ったのは武田薬品です。

○慢性C型肝炎ウイルス感染の治療における新規薬、オーラルヌクレオチドNS5Bポリメラーゼ阻害剤、Sofosbuvirの有効性と安全性

<個人的な意見>インターフェロン不要の薬剤です。かなり期待されているのだとか。

○種々のインターフェロン不要のC型肝炎治療で高い治癒率

<個人的な意見>このあたりのスピード感すごい

○ヨーロッパで低ナトリウム血症治療ガイドラインがアップデート

<個人的な意見>これ読んで下さい。→(リンク) 塩入れるなよ!というような事が書いてあります。

Medscapeから

2014/03/24

薬マスターフォームのパッチ

業務連絡です。


さきほど、PukiWikiにアップロードしたパッチは、常用量のデータが非連結になっていました。
訂正版を、薬マスターPtch_New.zipとしてアップロードいたしました。ご迷惑をおかけしております。


2014/03/16

幸せを支える三つの柱

同じ電子カルテダイナミクスのユーザーであるというご縁で、横浜市瀬谷区のめぐみ在宅クリニック院長小澤竹俊先生のご講演を平成21年9月26日に拝聴することが出来、それ以来、余命が長くない患者さんとの会話に先生から教えていただいた三本柱の話題が自然と出るようになりました。

普段はこのブログにはアフィリエイトは貼りませんが、小澤先生の著書をご紹介します。
「医療者のための実践スピリチュアルケアー苦しむ患者さんから逃げない!」

この本の中に、三つの柱で支えられた平面モデル、というお話が出てきます。
人間の幸福は、
時間存在
自立存在
関係存在
という三つの柱で支えられているテーブルのようなものである、という教えです。

本では自立存在と関係存在の順番が逆なのですが、患者さんと家族に話す時には上記の順番でお話をしています。

色々な会話をしながら、以下のような主旨の事を伝えるようにしています。

幸せのテーブルは三つの柱で支えられると安定しているといいます。
その一つは自分に未来があることです。(時間存在のこと)
もう一つは自分の未来を自分で決められることです。(自立存在のこと)
あと一つは周囲からの支えがあることです。(関係存在のこと)

でも癌という病気で余命が限られていますよ、とわかった場合、自分の未来が不安定になりますね。現在はあなたは幸せだという気分ではないかもしれないけれど、それは自分の未来がが見えないから、というのも理由の一つですよね。

最近の医者は自分を含めてほぼ例外なく、癌の告知をしますよね。それは自分で自分の未来を決めるという事が大変重要だからなんですね。医者はあなたが意思決定できるように情報を正しくわかりやすく伝えようとします。ウソは必ずボロが出ますが、真実をあなたに話せば何もほころびがないのですね。それは我々との信頼関係にも関わる部分ですからすごく重要な事だと思っています。

そしてあなたにはご家族がついていて、私ども医療者も常に寄り添っているのだ、という事も大切なのですね。あなたは一人ではなくて、あなたも誰かの支えになっているし、我々もあなたの傍についていようと思うわけでして、そういう周囲との関係を常に感じていて欲しい、と思っています。

今回のように未来が見えなくて不安定になってしまったときにはどうすれば良いのでしょう。

周囲からの支えを太く太くすればよい。柱が三本でなくても、柱が太くなれば幸せのテーブルは安定するのですよ。私もあなたの支えになりたいと思っています。一緒に生きていきましょうね。








誰かが病気だ、実際に思わしくない、という状況で、
「きっとなんでもないよ」「あなたは大丈夫だよ」「たいしたことないよ」
という人が昔の日本では大半でした。これは不安定になっている時間存在の柱を一生懸命太くしようとする発言で、悪くはない。悪くはないが、やはりまだ不安定な印象を持ちます。

しかし現在では、
「いつも見守っていますよ」「一緒にいますよ」
と声をかけてくれる人が多くなり、変わったなあと思います。

2014/03/04

FDG-PETでの消化管への集積について

18F-FDGという核種を注射すると、ブドウ糖を利用する臓器・組織に取り込まれますのでそれをスキャンするのがPETという検査です。

消化管への集積もそれなりの解釈が成り立つのでメモしておこうと思います。

1)平滑筋へ集積する場合
2)白血球へ集積する場合

胃の場合、ヘリコバクターピロリ胃炎があると集積する場合があり、多くの読影医は「胃体部に集積がありますからヘリコバクター・ピロリのチェックをお願いします」と書くようです。またヘリコバクター胃炎がない場合でも、ヘリコバクター陰性胃癌が複数見つかったと癌研有明から報告があります。これはPETが体部胃炎の指標になることを示しているのではないでしょうか。癌への集積ではなく、背景にある強い炎症がわかる、という事です。体部胃炎は胃癌のリスクになることは過去の論文で示されているのですが、なかなか肉眼での診断が難しい上、全員に複数の生検を行っても点での診断になります。PETはそもそも胃を目的臓器としては見ておらず、ついでにわかる所見ですので有用かもしれません。
ついでといえば、機能性胃腸症の一部はこの集積から胃の蠕動を予測することが可能だと考えます。まるで集積がない場合もそれはそれで所見として考えます。
噴門部への集積はそれが逆流性食道炎を示す場合があります。

というような事があるので、PETを撮るようなドックを受けた人が、文章だけのペラペラの紙だけ持参する場合、「つまらない」というのが正直な感想です。平均して9万円以上のお会計をしているわけですし、数百円のカラープリントのコストはケチケチしないでほしいと思います。

大腸も同様で、憩室がある人では蠕動が強い場合がありますし、その場所を把握しておくことは全く無駄なことではありません。IBS症状のある方ですとか、通りにくい場所がある場合もわかる可能性はあると思います。個人的にはビールの飲み過ぎがわかるんじゃないか、と思っているんですけれどね。

2014/02/28

胃の出口はダイナミックに動く

胃の出口は幽門(ゆうもん)と言います。英語ではPylorusです。ヘリコバクター・ピロリ菌の名前の元にもなりました。

幽門の由来を探したくて、宇田川玄真(膵臓の「膵」という国字を考えた人)で検索したら面白い書類が見つかりました。(「膵」という文字を巡って→リンクPDF

ではターヘル・アナトミアとして知られるクルムス解剖書かと思ってこのリンクを眺めました。

すると189ページ(リンクでは219を指定する)に、
Pylorus of Janitor
 Maag ontlafter of portier den Maag, alwaar
 b. Een ronde Valvula, Klap-vlies, die
とあります。これを英語に訳すと、
Pylorus or Janitor
 stomach emunctory or the stomach door, where
 b. A round válvula, Folding fleece, which
となります。

Janitorはラテン語でドア(門)
Pylorusはギリシャ語で"gate guard"だそうで、胃と十二指腸の間の門番、という意味でしょう。

ontlafterはなかなか大変でした。古語なのか、素直に検索できません。フランス語を経由することにしました。するとフランス語で émonctoireだ、という事がわかり、それを英語にするとどうも排出器官という意味らしい。なるほど。

では解体新書では幽門という言葉はあったのでしょうか。

解体新書を国会図書館デジタルで調べます。
こちらのリンクをご覧頂きましょう。
第三巻19ページに腸胃篇第二十というのがあります。

解体新書
あれ、幽門ではなくて、胃之下口 その形状は徳利口の如し のように書いてありますね。

原語にある、
 b. A round válvula, Folding fleece, which
というのが良いですね。丸い小弁、折りたたまれたカーテン、みたいな意味でしょうか。
ピロルス:胃の排出口、出口、それは丸い小弁、折りたたまれたカーテンのようなもの。
というような意味でしょう。胃之下口 その形状は徳利口の如し、というのは実物を見ながらの杉田玄白の描写なのでしょう。リアル。

さて驚きました。
ターヘル・アナトミアを書いたクルムスは動いているのを見たのでしょうか。まさにそうなのですから。


全く内視鏡を動かさずに撮影するとこんな感じで実にダイナミックに動くのが胃の幽門です。
みなさんが痛い痛い言うのもここを指し示している場合がおおい。
どうしてこんなに小さな穴なのか、考えてみると面白いと思いますよ。

さて、「幽門」はどこから来たか。まだ調べられませんが、幽門は中国の解剖書にはその名前がすでに書かれています。1624年の類経図翼にはすでに幽門という字を見ることが出来ました。

2014/02/21

「必要」と「得」

患者さんからの質問で「それは必要なんですか?」というものがあります。
割合本質をついていて、良い質問だと思う。

医者になって20年以上、それについて深く考え続けて来ましたし、医者は「目の前に困っている人を救いたい」という情熱(ドラマではたいていこれだけ)のほかに、シビアに公衆衛生への貢献を考えねばならない難しさがありますし、いかに自分が儲からないように(医療費を節約することは公衆衛生に貢献する)するか、教育(教育には逆にお金がかかる)をいかに行うか、自分の生活と健康(持続性がなければならない)を維持できるだけの収入をどう得るかを高次元で調和させる必要がある事は子供のころから祖父や父を見てわかっていましたから、そういう質問に対して本気で答えはじめると話が終わりません。

ただ、患者さんが期待しているのは本当は、「必要か」ではなくて「自分が得をするか」なのだと思うのですね。それはマーケティング上も重要だし、患者さんのモチベーションは治療の成否にかかわる部分ですので、「必要か」を答えるよりは「得をするか」という視点で答えるようにしています。

ピロリ菌の除菌なんていうのは、高齢者にとっては非常に重いテーマで、「必要かどうか」という視点ではなかなか話が収束しませんが、「得かどうか」で考えると若干わかりやすい。

「胃癌のリスクが70歳で委縮がO-3のあなたの場合は毎年0.4%だと見込めて、それを0.13%に絞り込むことができ、しかし除菌をしようがしなかろうが内視鏡をする回数は今後もほとんど変化がなくて、そのかわり内視鏡をしていれば9割は内視鏡切除可能な癌で見つかる。除菌をすると1.5%の人は副作用で苦しむし、0.1%の人がかなり苦しむ。つまり今後10年で胃癌になるリスクを4.1%から1.3%に絞り込めるが寿命にはおそらく影響はしない。しかし内視鏡を全く受けないような不真面目な人の場合には寿命には影響するかもしれない。ところでそのために短期での薬疹のリスクを取りますか、という判断を患者さんがすれば良いと思います」

という説明でわかるでしょうか。70歳の方にはなかなか理解が難しいかもしれない。

ただ、ひとつ注意したいのは、「必要かどうか」という質問をすると必ず、「…%は死ぬ」とか「…%は癌になる」という話題が不可欠になるわけです。ですから私が「死亡率」という話題を出した時に、「先生驚かさないで下さいよ」という患者さんがおられるわけですが、それは患者さんが「必要かどうか」という質問をしたからやむなく答えているわけで、決して驚かしているわけじゃない。

一定の患者さんにとっては医療はブラックボックスであったほうが、精神的には幸せである場合があるので、そういう方は「必要か」という質問(ブラックボックスを開ける質問、開けゴマのような呪文)は避けた方が無難ではないかと思います。でも出来ればみなさんが命を見つめる目を身につけてそのブラックボックスを開けてしまう世の中になれば良いとは思います。

2014/02/16

家庭菜園の野菜を食べている人の便の色は黒い?!

胃や十二指腸で出血しますと、胃酸と血液のヘモグロビンが反応します。

反応した物質は acid hematin(ヘマチン)と言い、黒に近いコーヒー色をしています。formalin pigmentという別名もあります。

ヘモグロビン
ヘマチン

左がWikipediaからお借りして来たヘモグロビンの構造図なのですが、ヘマチンは、
中央のFe(II)にOHが結びついたものだそうです。(右)

「塩酸ヘマチン」という呼び名は混乱をするから使いたくはありませんし、ホルムアルデヒド(CH2O)と反応させても同じものになるそうですからこの呼び名はおかしいです。「塩酸ヘマチン法=ザーリー・小宮法」という血液の濃さを知る簡易の検査がありまして、誰かが文章を書くときに混乱したのではないか、と思うのですが誰が間違ったのかは調べられませんでした。「胃酸によって塩酸ヘマチンへ変化する」という一文がコピペされてあちこちで使い回されているのを良く見ます。私が間違っていたらどうぞ指摘してください。

ヘミン
ちなみにヘモグロビンの中央のFeに塩素が結びつくとそれはヘミンです。
ヘミンはポルフィリン症の発作時に使われます。塩酸ヘマチンと書くとこれと混乱されそうで嫌なのです。混乱は実際にあります。シカゴのアボット社が作っているオーファンドラッグのPanhematin®なのですが、これは実際にはヘミンです。(こちらをどうぞ→リンク

ところがこれを塩酸ヘマチン注と翻訳しているサイトが実際にあるのです。こうした用語の混乱は日本語とくに医学界隈にはしばしばあるのですが、個人的にはそういういい加減さが代替医療の人に好き勝手される元凶のひとつである気がしていてとても嫌な事です。


ここまでが前置きです。単にヘマチンと呼べばよろしいと思いますし内視鏡医は誰だってヘマチンと読んでいます。気取って塩酸ヘマチンと呼ぶのはおかしい、という話をしました。

さて「便が黒い黒い」と来院する患者さんが多くおられます。

このヘマチンが原因で便が黒くなったのならば、
1)ある程度の量出血しなければならないから、血液中のヘモグロビンは低下する。
2)血液は下剤の働きをすることが多く、ほとんどが軟便か下痢になる。
というような条件を満たすのが普通ですし、満たす場合には診断が簡単です。

ところが全くヘモグロビンに変化がない上に、便は普通ないし硬い、というような訴えの方は多くて、
「それは違うんですよ」と言っても納得せず、
検査まで行って、「ほら、何もありません」と言ってもまだ納得せず、
それらの人に一体どうやって説明したらわかってくれるのだろうと、ずーーーっと考えていました。
(内心、「それは出血じゃないんだから食べ物の影響に決まってるじゃないか!食べたものの記録全部持ってこーい」と思いつつ、です。そういう人に限って、「普通のものしか食べていない」と言うのです)

さて、私の記憶をたどると、ずっと野人として外で暮らしている日本男性のお話が思い浮かびます。記者がその人と一緒に生活をするために、山に入った。その男性はうんちをそこらへんでするのすがそれを見た記者曰く、「こんな黒光りするうんこを見たことがない!」と書いてありました。
その出典が探せないのですが、私は記憶力はそんなに悪い方ではないからたぶんそういう記述はWebのどこかにあろうかと思います。

小松菜とかホウレンソウだとかを食べ過ぎたり、ジュースにすると確かに便の色が濃くなりますし、それは自称黒色便の原因の代表格です。関係があるかどうかはわかりませんが、それらは鉄含有量が多い野菜として有名です。

上記の記憶を根拠にある日、納得しない患者さんに聞いてみた。

「小松菜を食べすぎていませんか?」

すると鳩が豆鉄砲を食らった顔、というのはそういう顔なのかもしれませんが、あれほど納得しない頑固だった人が一転、

「小松菜を家庭菜園で作っていて、それを毎日たくさん食べている。。。それかあ」

と、すぐに席をお立ちになって帰られたのです。

それが数年前の事で、以後便の色が黒いという人に家庭菜園をしていないか、いただいた野菜を食べていないか、と聞きますと半分以上の確率で当たる。なかなか思い出すまで時間がかかる人も多いのですけれど。

「おじいちゃんが作った野菜はうんちが黒くなるから嫌だと孫に言われるんですよぉ」
とまで言う人がいました。

クロロフィルc1
苦し紛れに繰り出した「家庭菜園」という言葉ですが、案外嘘でもなさそうな、という気がしていて現在はその事実について検証を積み重ねている段階です。

ここまで読んでいくつかの疑問が思い浮かぶ皆さんがおられると思いますが、私の思いも全く同じです。

面白いなあと思って読んで下さったみなさん、ありがとうございます。

黒い便は体に悪い、気を付けろ、などと考えなしに書いているみなさん、悪意はないとは思いますがもうちょっと良く考えましょう。

2014/02/09

専門と非専門

医師がこうしてブログやツイッター、SNSなどで情報を提供することは現在では珍しくなく、広報係のように頑張っておられる方もおられて頭が下がることもあります。

しかし、なんだか微妙に間違っていることを仰っておられてその主張に「つっこみ」が入りやすい状態になることもあり、広報なんだか広報じゃないんだかわからない状態になる事もある。

情報を受け取る側のみなさんが正しい情報を受け入れるためのちょっとしたTipsを書いておけば良いかと思いました。

医師には専門、非専門がある。

大雑把な専門、例えば私は内科ですが、さらに内科のうちで消化器内科、消化器内科の中でさらにエコーやら内視鏡を駆使した診断が得意、という状態です。

例えば私が輸液や感冒や抗生物質に関して何か書いたとすると、内科であるから大雑把に言えば自分の領域内の事でありますが、まあだいたいEBMに沿った一般的な事しかわからない。

ところが専門領域に入りますと自分の主張というのが入ってきます。EBMを超えた何かを主張したがるというような。

精神科の人がテレビで何か内科の病気について言っている時には私が精神科領域の病気についてコメントしているのとさして変わらないと考えてください。30年前の知識を背景に大きな嘘をつく可能性すらある。

しかし精神科についてコメントしている時にもその人のポジショントークになる、という事です。私が消化器について語るときにはそれはポジショントークです。

したがって皆さんは、発言をしている医師の専門領域は何か、そしてその専門領域内ではどういう主張をしているグループに入っているのか、を知っていれば右往左往することがないだろうと思うのです。(医師という看板を商売にしてマスコミ内で活動しておられる方がそういうポジションを明らかにしないのはマーケティング上の理由で当然のことだと思います)