いろいろな検査や治療、薬には常に有害事象が起きる事があります。
ワクチンのあとに調子が悪くなった、と訴える患者さんの中にはワクチンとは関係のない事象があって、これを「紛れ込み」(ニセの有害事象)と称したりします。しばしばこれらを利用して、反ワクチンの材料に使われてしまうことに心を痛めています。
医師と患者との信頼関係が問われます。
我々の行う一般診療にも常に「紛れ込み」が存在します。
検査のあとに調子が悪かった、という事例を詳細に調査をすると全く関連のない熱中症であったりという例があります。
それがニセの有害事象であっても本当の有害事象であっても我々の対処方法は同じです。患者さんの健康が現状に復帰できるよう、全力で努力をする。
一般診療における有害事象について、私が関わるのは以下の4通りです。
1)他院での診療での紛れ込み
2)他院での診療での真の有害事象
3)自院の診療での紛れ込み
4)自院の診療での真の有害事象
やることは同じであるのに、心理的なストレスはあまりにも違います。
1)、2)では私はストレスをあまり感じません。そして他院の先生にストレスをかけまいという余裕すら発揮します。
一方、3)、4)においては極めて大きなストレスを感じます。淡々と現状復帰に努力すれば良いのにも関わらずです。例えばピロリ菌除菌時の薬疹です。
紛れ込みが起きやすい人というのはどうしてもいます。高齢者は我々が予期しないような行動を起こすことがありますし、そもそも病気になりやすいのです。真の有害事象を減らすことは出来ませんが、紛れ込み事故を防ぐことはもしかしたら可能かもしれない。それには患者のバックグラウンドを精査したり、ICTを用いてライフログを分析するといった対処方法が考えられます。
医療におけるICTの活用は、例えばQCに使用するなどいろいろなアイディアがあるのですが、紛れ込み事故を防ぐ事も出来るのではないか、と考えています。ライフログは有用につかえば大変に素晴らしい可能性を秘めていますが、詐欺にも簡単に使えてしまうという諸刃の剣です。CCCをはじめとした各社が躍起になって集めている個人情報ですが、どうか悪用されることなく有用に使われて欲しいと心から思います。
私はこれらの個人情報の取り扱いについて、開業医なり基幹病院なりをひとつの単位として「カプセル化」「オブジェクト化」することを考えています。良く、オブジェクト思考では中身を隠蔽してしまうという事をやります。開業医を一つの単位としてそこに1000人の患者さんを集めて、「この薬飲んでる人何人いる?」「13人」「その人達の平均年齢と標準偏差は?」「45歳±3.2歳」などと言うふうに、個人情報を関数化するわけです。こうすれば個人情報はヒポクラテスの誓いにがんじがらめになっている医師の良識に守られる、ということになります。この方法は企業にとっては頭に来る方法かもしれませんが、ライフログを悪用されないためにはなかなか良い方法だと思うのですけれどもね。
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