タイトルの通りなのですが、
当院にも「3分診療最悪」と仰る患者さんが多くみえますが、
彼らのその感情の理由は、「言いたいことを聞いてもらえない」であります。
外来での行為を分解して見て行きましょう。
1)患者が医者に訴えるフェーズ
2)不正確な情報を正確に直すフェーズ
3)医者が情報を整理するフェーズ
4)医者が患者に話すフェーズ
5)理解できない部分を再確認するフェーズ
6)続くのか、終わるのかを確認するフェーズ
患者は1)だけで半分は満足します。
5)は説明である程度満足する人、「薬」で満足する人がいます。「説明が納得できない」と仰る方が若干名おります。
私は文化人類学でいうフィールドワークのように外来を捉えていて、どういう人が情報過多になるのか、あるいはどういう人からは情報を引き出す必要があるか、それに興味があるから自分で1)2)を行いますが、これは医師以外が担っても良い仕事かなと思います。
所謂「3分診療」として不満を持たれる外来はこの部分が疎かです。患者は不満を持つべきだと思います。この部分を良く褒められますが、「あーあ」と思います。そこは売りではありません。
3)は医師の実力が問われる部分です。でもこの部分は患者は無駄だと感じています。医師の一挙手一投足を興味深く観察する人などほとんどいないからです。私の場合にはキーボードカチャカチャが一種のエンターテイメントになっているようで、それはそれで楽しんで見ている患者さんが少なくないようですが。逆にこの部分で患者さんが不信感を持っている場合があります。頭は良いのにキーボードを打つのが遅い先生が損しています。医療秘書を雇うべきです。
実際に診療に必要な時間は4)と5)です。それは3分で終わらせた方が良い。いや、終わらせるべきだと思います。長くても患者さんは覚えていられないばかりか、間違えたことを覚えて帰ります。印刷して持たせてもほとんど意味はありません。読む人は少ないから。読んだら読んだで枝葉末節にこだわりすぎる人がいて結局大事な事は伝わらないのです。
シンプルにうまく情報をメタ化して伝える事は大切です。1分で伝え、2分で簡単な質疑応答をする。
私はこの部分がだめで、簡単に10分15分話してしまいます。すべてを1回で話そうとするからそもそもだめなのです。1分で話しきれない事は「続く」として外来に繰り返し来てもらうのが本当は良いのです。幸い日本は再診料が安いのですからそれで良いのです。ところが待ち時間が長いことが気になって、一回で終わらせるぞ、と躍起になる。そして自分は完璧だ、と思っていても患者さんには伝わっていない、これを20年も繰り返してきたのです。
「3分診療こそ究極」です。ところが3分って難しいんですね。「はい、正常」で3秒です。残りが177秒もありますね。私は今まで「一回として同じ説明、言葉は使わない」というしばりをつけて外来をしていたんです。これは話術の大リーグ養成ギプスみたいなものでした。同じ話を何度もするおじさんって嫌われるじゃないですか。嫌われたくなかったのです。ところが実際には同じ話を何度もして磨いていくべきだったんだと思いました。
そこで考え方をあらためまして、まずは古典落語のように、いくつかの病気をわかりやすいように説明できるように今練習しているところです。死ぬまでに間に合うのか。メタ化した知識は嫌いだ、と公言してきましたが、別に葛藤はありません。
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