2014/12/19

消化器病2014年注目ニュースTop10

Medscape Gastroenterologyから


1)大腸がんスクリーニングとしての内視鏡の役割 Clin Gastroenterol Hepatol. 2014 Sep 15.
2003年-2012年のドイツの医療データ440万件の解析(マカロフモデル)によると、大腸内視鏡28件あたり1件の割合で大腸がんを予防出来た。121件あたり1件の割合で早期大腸癌を発見できた。そして75歳未満では「診断しすぎ」はなく、75歳以上では若干ある。
→要するに、75歳未満では一度は大腸内視鏡をやっとけ、ということ。予防、という意味もありますからね。何度も繰り返し受けるとどんどんその意味は薄れますが。

2)スタチンは肝障害の原因となることは稀 Hepatology. 2014;60:679-686
スタチンは薬剤性肝障害の原因となることは非常に稀であるので、経過中に肝機能を定期的にチェックするよりは、投与前に肝障害があるのかないのかを調べるほうが有用ではないか、ということ。
→スタチンはむしろ肝障害を改善することがありますが、それは抗炎症作用によるものと考えています。

3)TNF-α阻害薬は癌を増やさない JAMA. 2014;311:2406-2413
自己免疫疾患の治療に使われるTNF-α阻害薬は今は世界で年間何千億円も売り上げているドル箱のひとつですが、その長期投与で癌のリスクを増加させなかった、という報告です。
→もっと長期のデータが欲しいんですよ!

4)新規経口薬のC型肝炎に対する評価 N Engl J Med. 2014;370:1889-1898
経口薬(Ledipasvir/sofosbuvir)でほとんどのC型肝炎に効果があるとする新薬です。Genotype-1のHCVに。
→薬価がものすごく高いらしい。12週間で8万4千ドル。インドでは99%引きで発売。一錠一錠に偽造防止のICタグとか付くのでは?

5)化学療法中のB型肝炎再燃 Hepatology. 2014;59:2092-2100
HBsAg陰性のB型肝炎治癒とされている人でも化学療法中に再燃する例が知られているがその頻度が明らかでなかった。この報告によれば10%の患者で再燃が見られた、という事。
→当院でも原因不明とされていた肝障害で、HBsAg(-)、HBsAb(+)、HBcAb(+)であればHBV-DNAを測定しそれが高ければ核酸アナログ投与のためにご紹介、というプロトコルにしています。年間数名おられる印象。肝障害の原因検索にはHBsAgだけではだめだと思います。

6)バレット食道は「診断しすぎ」じゃないか Gastrointest Endosc. 2014;79:565-573
既知のバレット食道患者をエキスパートが診断し直すと3割はそうではなかった、というような報告。特に噴門腺のmetaplasiaを間違ってSSBEのmetaplasiaとしてしまうことが多い、と。しっかり組織検査やれ、と。
→欧米はバレットだけじゃなく、他の臓器でもほんとバシバシ生検とってどんどん出血させても気にしない先生が多くてすごいと思う。怖くてできん。

7)肝臓の小病変の取り扱いについてガイドラインが出ました。 Am J Gastroenterol. 2014;109:1328-1347
→嚢胞だとか「どうでも良いですよ~」と説明するにもエビデンスは必要ですから便利です。

8)便潜血、じゃなくて便中DNAで大腸がんをスクリーニングする N Engl J Med. 2014;370:1287-1297
ぶっちゃけ一つじゃわからないので、全部入りのテストになってます。KRAS、NDRG4、BMP3、beta-actinです。大腸内視鏡とはコスト競争になります。
→医者はそんなにいないので、コスト次第でよろしいのではないでしょうか。

9)炎症性腸疾患の患者さんは悪性黒色腫のリスクが高い Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:210-218
これはメタアナリシスなので確実なデータだと思いますが、アザチオプリンやTNF-α阻害薬とは一応関係なく独立しているようだ、とはしているものの今後も要注目。
→これはコーカシアンだと思いますが、3)の文献とは矛盾するので今後もフォロー要

10)リンチ症候群患者さんのフォロー戦略 Dis Colon Rectum. 2014;57:1025-1048
リンチ症候群で生じる遺伝子異常はMLH1, MSH2, MSH6, PMS2であり、それらにあわせた戦略が立てられる。
→もっとも注意すべきはMSH6だということ。


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