例を挙げて説明しましょう。
この方は萎縮はC-3としましたが、ザラッとした感じ、穹窿部の発赤、粘液あたりの所見から、内視鏡的にピロリ菌がいるのは確定です。そして迅速ウレアーゼテストは陽性でした。
ランサップ400で除菌をして、3ヶ月後(偽陰性を少なくする目的で当院では1か月後ではなくて3ヶ月後に呼気テストで見ています)のUBTは1.3‰であり、陰性でした。
そして一年後に内視鏡を行うとこういう所見でした。
残念ながら胃炎はあって、発赤、粘液が目立ちます。萎縮はO-1としました。内視鏡的にはピロリ菌は陽性です。そしてもう一度UBTを行うと9.6‰であり、陽性でした。これは再感染の可能性もゼロではありませんが、それよりは3ヶ月後のUBTが偽陰性であった、と考える事が妥当です。
UBTは感度、特異度が95%ですから、5%にはこうした事が起き得ます。
みなさんには以下の意識を持っていただきたい。
1)除菌が成功した、と言われて、また陽性、と言われても慌てる必要はありません。
2)除菌をしたからといって終わりではありません。きちんとしたフォローの内視鏡を受けましょう。
除菌判定の方法について教えてほしいことがあります。
返信削除UBTと糞便検査の比較では、精度においてUBTが僅かに勝るというデータをよく見ます。ただ、別のデータでは二つの検査方法で精度に差はない(から、コストと手間からは糞便検査を勧める)という話も見聞きします。
先生はいかがお考えでしょうか。
便はうまくとれない人がかなり多いので、基本的はUBTを採用しています。しかし萎縮がO-3の場合にはUBTの感度はかなり低く、誤って陰性判定されるため糞便検査を採用しています。またPPIを他院から処方されてしまっている患者の場合には同様に糞便検査を採用しています。
削除最終的にそれらの判定が正しかったかどうかは一年後に内視鏡で目視で判定しています。
ありがとうございました。
返信削除勉強になるブログですね。もちろん素人なので専門用語等でわからないことも多いのですが。
返信削除私も去年ピロリ菌の呼気テストをして陰性だったので安心していたのですが、呼気テストが常に正しいというわけではないのですね。
今年の夏頃から胃腸の不調がかなりきつく、治りが悪いので、最終的に大学病院を紹介され、そこで膵臓疾患の疑いがあると言うのが判明したのですが、一応のために胃カメラを飲むと、胃もかなり荒れていたようで生検されてしまいました。今は生検の結果待ちですね。去年ピロリ菌検査と胃カメラやってどっちも大丈夫だったから、今回も胃は大丈夫で膵臓の症状だろうと思っていたのですが、こういう予想って意外と外れちゃうものですね。
患者としていつも感じるのは、予想外の事を言われたり予想外の検査をされた時に感じる不安感ですね。気にしてもしょうがないというのはわかっているのですが、どうしても頭から付いてはなれない。こういうのをもう少しコントロールできるようになれば良いといつも思っております。(つらつらと愚痴のようなとりとめのないコメントを書いてしまい申し訳ございません。今後また生検などについての記事を書いていただけると嬉しく存じます。)
組織検査をしたかどうかはたいした意味がないので、お考えにならないで結構です。自分の診断と、病理の結果とを摺合せしておきたい、という目的ですので。医療は常に「予想外」と向き合うために行われる、「リスクをとって利益を得ようとする」作業です。安心のために、とかいう考えは私はしておらず、先進国に住んでいる人だけが享受できる権利です。それを不安に思ってしまうのは大変に損なことなので、ぜひ上手に医療とお付き合いください。
削除鵜川先生、ご返信有難うございます。そして医師としての考え方、患者としての心の持ち方を教えて頂きありがとうございます。
返信削除前回のコメントからその後のことなのですが、結局生検は異常なく、原因不明の(恐らくストレス性の)胃炎と慢性膵炎疑診という診断結果になりました。
私はその他にも原因不明の慢性の前立腺炎なども患っており、今後恐らく一生、患者として医療とは関わっていかなければ行けない事になると思いますが、鵜川先生のコメントにある、「予想外」と向き合うための「リスクを取って利益を得よとする」作業、「先進国に住んでいる人だけが享受できる権利(幸運)」、を忘れないように、前向きに上手に医療と付き合って行きたいと思います。
お忙しい中、丁寧なご返信を頂き有難うございました。そして数ヶ月お礼をもうし上げられなかった非礼もここにお詫びいたします。
お返事有り難うございます。大きな異常がなく安心しました。体調は流動的ですから、医師へのフィードバックを上手に行える方が得をしている気がいたします。どうぞお大事に。
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