UBT(尿素呼気試験)という、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査があります。
UBTの機械は非放射性同位元素である13C(炭素13)を測定しますが、無論同時に普通の二酸化炭素も調べることが出来ます。
すると割合人により呼気中の二酸化炭素濃度にはばらつきがあることがわかります。1.6%から4.2%の間ぐらいです。死腔などが影響しないような呼気採取を心がけていますが、今度データでも出してみましょうか。2回の測定のバラつき加減はその人の熟練度を示すでしょうし、二酸化炭素濃度はその人の基礎代謝率を反映するはずなので、無意味なデータではないはずなのです。
ガス分析は基礎代謝測定に使われています。本来は重要な検査ですが、大変な割に全く儲からないという点では超音波内視鏡に次ぐだろうと思います。政治的に誰も振る舞わなければ不当な安値に設定されてしまうというハードボイルドな世界が医学界です。その結果、誰も自分の基礎代謝量を知らないままに食事指導を受けるという事になっており、私の不満の一つです。
突然ですが、そのガス分析をおならの分析に使うとどんなことが出来るのか考えてみましょう。
<方法>
さて、おならの採取は大変難しい事です。それが第一のハードルだと思います。こういうのは第三者に任せたほうが面白い独創的なものが出来ると思います。もちろん自分だっていろいろ考えますよ。ダイソンのSTUDENT AWARDでは間違いなく国内予選を突破できるネタです。イノベーティブで、しかもダイソンの得意な流体力学系の話題ですから。
<ガス分析の種類とその意味>
窒素:これは呑気症について良くわかります。「本当に呑気症なの?」という人が良く他院で「あなたは呑気症だ」と言われて来院するのですが、それを証明するには窒素の分析が有効でしょう。
メタン・水素・アンモニア:これらの組成で腸内細菌叢の組成が推測できる可能性があります。メタン菌の量などです。ガスがたまってお腹が痛い、という経験はありますか?メタン・水素は特に腸管から吸収されにくいガスであり、たまると腸管が張ってしまい痛く感じやすいのです。
二酸化炭素:これは善玉菌の活動を推測できます。赤ちゃんはお腹はガスでポンポコリンですが通常は痛がったりはしません。それはどうしてかというと赤ちゃんの腸内細菌のほとんどを乳酸菌などが占めており、したがってガスは二酸化炭素が多いからです。二酸化炭素は腸管から速やかに吸収され呼気に排泄されるため、圧が一定以上に上がることはありませんから痛くはないのです。赤ちゃんに抗生物質を使ったあとや、他の理由で腸内細菌が乱れるとお腹がはって夜泣きをすることがあって、それに対してシメチコンというお薬を使ったりします。
<電撃ネットワークとガス>
電撃ネットワークはおならを燃やす芸を持っておられますが、当然それはメタンの燃焼によるはずです。
<まとめ>
非侵襲的な検査として、匂いによる癌の診断などが注目されていますが、その前にこうしたガス分析にも目を向けて欲しいなと思います。
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