2013/12/25

テレビは選んで視られない

「先生、私2時間毎に夜起きるんですけどね」
「トイレに起きる?」
「そうです。テレビで、『過活動膀胱』というのをやっていましてそれかしら」
「なるほど。2時間毎に眠りが浅くなるのでその時に尿意が来る、と」
「そうですね、2時間毎です」
「で、困る?」
「困りはしないんですけどね、テレビで『過活動膀胱』だと言ってましたのでそれかしら」
「なるほど、では別の番組を見た患者さんのお話を私再現しますね」

「先生、私、良かった」
「何が?」
「テレビでやっていたんです。夜水を飲むのは良いって」
「良いですよね、脳梗塞の予防になるんじゃないでしょうか」
「私2時間毎にトイレで目が覚めちゃうんですけれど、その度に口が乾かないように水を飲んでいたんです。そうしたらテレビで、夜水分を補給するのは脳梗塞や心筋梗塞の予防になるって言うじゃないですか」
「そうですよね」
「私、長く寝ていると口が乾いてしまうし、トイレで起きてもすぐに寝られるし、そんなに苦ではないんです。それに脳梗塞の予防になるんだったら、すごく良いですよね」
「そうですね、あなたが感じる通りではないでしょうか」

「と、こんな話です。症状は同じでもあちらは楽天的、あなたは悲観的」
「先生、夜トイレで心不全が起きるってテレビでやっていました」(この辺りの切り返し方はなかなか普通の人には出来ないと思いました)
「ああ、それは冬寒くてトイレとか風呂とか気をつけろっていう話ですね。それは本当」
「だから私、トイレに行く時にはすごく暖かくしています」
「それでよろしいです」
「ところで私先生に朝ごはんを食べろと言われまして、今まで9時に起きていたんですが6時半にしました。6時半に起きて色々やっていますと、夜は眠くなりますので夜は9時頃寝つきます。それで良いんでしょうか」
「健康的じゃないですか」
「私もなんだか気持ちが良いような気がしています」
「良かったですね。ところでさっきの別の方の話、聞いてました?」
「ああ、テレビの。私その番組見ませんでした。私、見たのは全部メモしていますから」
「じゃあ、今度私が見たらちゃんと記録して詳しくお話しますよ」
「はい」


ところで、ご老人。
6時間寝ている、という方でも9時間10時間、ベッドに入っているのは当たり前です。
彼らの「2時間おきにトイレ」は寝ている時間は含まれていない可能性があるので注意は必要。

21時にベッドに入る。23時にトイレ。1時にトイレ。その後5時まで飛んで、5時にトイレ。ベッドからは出ないで7時にトイレ。こういうパターンが結構ある。実際にねているのが23時~1時、1時~5時、あとはまどろんでいる感じで、本人申告の睡眠時間は6時間です。

本当の睡眠パターンがわかるまでは、夜中にトイレが多い、の真実はわからない。大体一回じゃ本当の事はわからないので、何度も何度も聞き方をかえて調査するのが常です。毎日同じとも限りませんし。この方の場合も9時間半も寝床に入っているわけで、本当に2時間おきならば4回起きていないといけない計算になりますが実際には3回なのでした。そしてそれに病名をつけるのは勝手にして頂いてよろしいのですが、投薬するかどうか決めるのは簡単では無いということは皆さんならばお分かりになるでしょう。

軽い会話だとお思いでしょうが、
1)医者と患者の違いは、同じ聞き流しているようでもそれを後で役立てようとしているか、そうでないか。
2)患者に聞き流されることはわかっていても、「考え方をニュートラルに戻そう」という努力はする。
3)テレビに影響された患者は訴え方まで抽象的になってしまい真実を伝えないので情報収集にかえって時間がかかる。
4)そういう影響をテレビは明らかに考慮しないが、それは彼らの能力の限界なのだからしょうがない。
というような事を読み取っていただくとありがたい。



この人にはこのテレビを視せたい、がコントロール出来る世の中に早くならないんでしょうか。

2013/12/24

両方とも真実

「先生、さつまいもを食べたらおなかが痛くなっちゃって。もう食べません」
「そういうことありますよね」


「先生、お通じがちょっと悪かったんでさつまいもを食べて、気持ちよく出しました」
「そういうことありますよね」


どちらも真実だと思います。


1)何が体に良いかなんて、やってみなくちゃわからない。
2)あるとき良かったことが次に良いとは限らないし、悪かったことが次に悪いとも限らない。ただし人間ってのは成功したことは繰り返したがるし、失敗したことは繰り返したがらない。


色々やってみる人って結構好きです。
やっているうちにだんだんと2)の傾向が強くなり、「あれもだめこれもだめ」と言いだす人がいます。その場合には、もう少しニュートラルに考えるようにアドバイスできます。


暖かく見守っていますが、
「何を食べたら良いのですか?」
と成果だけを要求する人が一番多いのは事実です。


こういうのって、「大学病院は研修医が多いから嫌だ」っていう患者さんと似ている気がします。
そもそも研修医だとみなさんが思っているのは大抵は研修医ではありません。もう少し上の立場の医師です。もしかするとすでに専門医かもしれない。

大きな病院には沢山の先生がおられますが、患者さんは、自分が先生とあわないなと思った時に相手を「若い」「研修医」などと形容しがちなのです。そして若い先生を避けたいと思うようになります。2)でしめしたような心理です。医師の選択について、もう少しニュートラルに考え直すようにアドバイスすることが出来ます。


若い先生が多いのであればそれは人気の病院なのですから実力はお墨付きなので安心してかかれば良いのに、と思います。
「実験台になる」も本当ではありませんし。みなさんがおかかりになっても実験台になるという事はありません。


何か愚痴のようになってしまいましたが、元に戻します。


おなかに限らず自分の症状についていろいろ考える人が多いのですけれど、
その解釈についてはだんだん偏ってくることが多く、
それをニュートラルな状態に戻す、というのが医者の仕事かなあと思っています。


メリー・クリスマス

2013/12/23

NFCかQRコードか

患者さんに心電図や血液のデータ、レントゲン、エコー、内視鏡写真、そして私が書いたサマリーを安全に、瞬時に、患者さんを煩わせずに電子的に渡したい。そういうことが可能でしょうか。

USBメモリ:物理的な接続があるのでだめですが、情報の取り扱い方についてのパイロットスタディは出来るでしょう。しかしそれならば形にこだわらず、情報が保存できるメモリがあるデバイスならばなんでも良い。USBメモリ、という形にこだわるのは愚かです。

NFC+Bluetooth:ペアリングをNFCで行いBluetoothで通信をするというのはやや現実的ですが、患者さんがそのデバイスを持っていなければならないという欠点があります。

NFC+Wi-Fi:ペアリングをNFCで行うと煩雑な手続きを簡略化することができるし、Bluetoothよりもスピードが現実的です。

どの業者も自分がイニシアティブを取りたいのです。患者さんが受けている医療を個人情報抜きでも知ることが出来ればそれは大きなビジネスチャンスだからです。競争は熾烈になるだろうと思います。使えなさそうな技術が普及しそうになったときは邪魔しようと思っています。例えばICカードの中に患者さんの医療データを入れるというのは容量、スピードともに非現実的です。クラウドも面白いのですが、24時間稼働はしないでしょうし、やはりローカルに皆さん自分でデータを二重化しておくほうが安全でしょう。

電子カルテダイナミクスでは赤外線を使って患者さんにテキスト情報をお渡しするソフトウェアがありました。現在はQRコードを用いて情報をお渡しするソフトウェアがあります。まずはそれらの活用をするのが現実的ではないかと思い、現在いくつかのソフトウェアを開発しています。

(株)ダイナミクス社が提供しているソフトをご紹介します。
まずは Candy for Android
そして Candy for iPhone

これは、電子お薬手帳です。
私は現在、当院の院内処方だけでなく、他の医院の処方も管理出来るように入力出来るようにカスタマイズしている最中です。もうしばらくお待ち下さい。電子お薬手帳の便利さは緊急時に実感出来ます。最近でも経験がありました。ひどい薬疹の方の原因薬剤がわかったのも、薬歴がコンピューターで管理されていたからでした。めったに薬疹を起こさないお薬で、手作業での管理では盲点になったことでしょう。

他には自分の医療関連の基本情報をあらかじめ入力しておくソフトを開発しています。それを医療機関に持って行って読み取ってもらうと、いろいろな問診が簡単に済むというものです。
ウイルス感染が怖いので、USBメモリ、メール、CD-ROM、すべての電子データを医療機関は嫌がって受け付けてくれません。その点QRコードはウイルス感染の危険がないと言えるのでこれに基本情報を入れておくのは有用かもしれないと考えているのです。

これらはAndroidとiOSにしか提供出来ませんので、重要な情報はQRコードを印刷してお薬手帳に貼ってしまう、という方法も考えています。電子化は大変大切です。ミスを防ぐことが出来ますから。

身体は一つしかないので、頑張りますがいつ出来るかわかりません。

別に外来で3時間も待たせてしまうのはこういう仕事をしているからではありませんよ。難しい患者さんが来るからです。その人々がせめて他院でのお薬を手帳で整理し、他院や検診の血液検査を整理し、主治医がサマリーをちゃんと作っておいてさえくれれば、確実に待ち時間は半分になるんじゃないかと思います。初診の方がそうなってくれないといけないので、当院の患者さんに私のソフトが普及してもどうしようもありません。私がソフトを作るのは私が将来楽をしたいから。だから今、頑張っています。

2013/12/12

竜涎香が抹香鯨の体内でしか出来ない理由

友人から紹介された「調香師の手帖(ノオト)」を読み直した。
二回目なのにどうも内容を全く覚えていなくて、「ああ面白い」ともう一度感心しながら読み終えた。これはどうも自分の記憶力もそろそろ下り坂だぞ、とわかって「銃・病原菌・鉄」の二回目を読み始めたところだ。マクニールの世界史なんて、まだ表紙しか読んでいないのにもう読んだ気になっているので、本当は「銃・病原菌・鉄」もまだ読んでいないのかもしれない。

調香師のノオト、のノオトは、オリエンタル・ノートとか、グリーン・ノートなどと言う香りの呼び方とかけている。とりあえずジャンパトゥのJOYっていう高価な香水が天然のジャスミンの香りなんだっていうのを覚えておけば良いのかもしれないけれど、どうしても普段の仕事が仕事なので、うんこの匂いのスカトールも薄めるといい匂いとか、そういうネタばかり頭に入ってくるのはしょうがないのだ。

竜涎香はマッコウクジラの体内に出来る。とてつもなく高価な香料だ。

そして高価な天然香料も材料の成り立ちを知るとぎょっとするものもある。竜涎香(龍涎香:りゅうぜんこう アンバーグリス)がそれ。だってクジラの消化管の中で食べかすが発酵して固まったもので、糞便みたいなものだ。そして竜涎香は香りの分類でいうとアニマル・ノートという事になる。

麝香(じゃこう)と並ぶ高価な天然香料の代表格、竜涎香を作るのはクジラの中でもマッコウクジラだけ。
なぜマッコウクジラだけ?不思議に思わないだろうか。

なぜクジラでもマッコウクジラなのだろう?

竜涎香は胃石のように消化管で出来る石で、大きいものでは160kgもあるという。
マッコウクジラが消化しきれなかった食べ物が消化管内で固まったものらしい。
時々マッコウクジラが吐き出すが、あるいはそれが原因でイレウスになって死ぬこともあるという。
吐き出したもの、あるいは病死したマッコウクジラのそれが海流にのって海岸へ漂着すれば、それは1kg200万円で取引される竜涎香だ。
マッコウクジラの肉質は油っこく食べられないそうだけれど、かつては良質の油や、あるいは竜涎香採取のために捕獲されていた。

Mother and baby sperm whale

マッコウクジラだけに出来る理由を探した。
直接の答えはなかったけれど、推測は簡単だった。
哺乳類の消化管の長さを比べた表がWikipediaで見つかり、マッコウクジラは地球上の生物でダントツの1位。消化管が300m近くあって長いから。

消化管が圧倒的に長い

地球上で第2位であるシロナガスクジラですら140m程度だそうだから圧倒的。クジラ類の中ではイカなどを捕食する特異的なクジラだから、消化に時間がかかるので長くなるのだろう。(他のクジラはオキアミとかプランクトンとかを食べる)
ダイオウイカと戦うのはマッコウクジラでなくてはならない。そういう絵があるように記憶しているけれど、ちゃんと意味があるのだ。モビーディックはもちろんマッコウクジラだ。

特異的に長い消化管だからこそ竜涎香が出来やすい環境なのだろう。食べたものが消化しにくいもので、かつ発酵で成分が変化して粘調になりくっついてやがて石化していくのだ。



先日、クジラのお腹をつっつくと爆発する動画がネットにながれていたけれど、
見た瞬間、「あ、マッコウクジラに違いない」と思った。

動画で腹に穴をあける人は「やるぞ、やるぞ」とすべてがわかっているような動作をしているので結果をもちろん知っていたに違いない。
死んで何日か経つと発酵して産生されたメタンなどで腹が爆発するのは恐らく珍しいことではない。
それが起きやすいのは当然消化管が一番長いマッコウクジラだ。

あの動画の後日談は知らないけれど、きっと竜涎香を探したのだろう。大変な苦労だと思うけれど、1kgでも見つかれば元は取れるのだから自分なら頑張って探す。

マッコウクジラは神秘のクジラだ

マッコウクジラは不思議なクジラだ。深海に適応し、潜水病にならず、その秘密は英名の"sperm whale"に暗示されている精液様の頭部の油やそこに分布する血管にあるらしいが詳細は明らかになっていないとのこと。(油は極性が少なく、水に比較すると10倍ほど気体が溶けやすいという記述をインターネット上に認める。これが急に減圧した時の空気塞栓を予防する秘密だと想像するのは易しいが細かい挙動に関してはよくわからないという事であろう)

Ocean Cleanupプロジェクトは竜涎香を沢山発見出来るかもしれない

Boyan Slatという青年が提唱した"The Ocean Cleanup Project"という、海のプラスチックゴミをきれいにしようという運動があるのだけれど、これは竜涎香探しにおあつらえ向きの発明だ。
興味をもって見守りたい。


竜涎香を日本の海岸で探したい人はこちら→竜涎香「浮かぶ金塊」を探そう
身体の中で出来る石を人類は珍重するお話はこちら→胆石のできやすい人

2013/11/14

jQueryでデータベースから動的にボタンを生成してかつイベントを付与する。

やり方簡単に探せないのでメモ やっと動いた

Monacaのサンプルから派生
あらかじめデータベース内に
質問 答え
が入っている。
答えは
"はい、いいえ、わからない"
とか
"ある、ない"
などいろいろあるので、事前にボタンの数も決まってはいない。

    // 問い合わせ成功時のコールバック
    //
    function querySuccess(tx, results) {
        var len = results.rows.length;
        window.alert("データベースには " + len + " 行あります。");
  //ボタンにシリアルナンバーつける。ccとする。
        var cc = 0;
        for (var i=0; i  //もとのHTMLには用意しておく。そこに足していく感じ。
  //質問をまず記入
            $("#add").append(results.rows.item(i).QUESTION + "
");
  //データが0文字の場合にエラーが起きるので回避 二つ以上答えがあるデータを選ぶ
            var s = results.rows.item(i).ANSWER
            var pos = results.rows.item(i).ANSWER.search("、")
            if(pos>0){
                var ss = s.split("、");
                for (j in ss) {
                    var bt = "button" + cc
                    var bt2 = "#button" + cc
                    $('#add').append($(''));
                    //イベントをバインド。変数が$()の中に入ってるのがミソ
         //あとでどのボタンが押されたか、valueをセットしておかないとわからない。重要
         //このevent.data.valueもここで使う分にはエラーが起きないようだ
                    $(bt2).on("click", { value : bt }, function(event) {
                        alert(event.data.value);
                        $('#add').append( event.data.value );
                    });
                    cc++
                }
                $("#add").append("
")
            }
       
        }    
    }

これでデータベースから質問、答えを動的に生成できて、かつどのボタンが押されたかがわかった。
ここにいろいろコードを付加していけば、自由に拡張が出来る問診票が作成できる。
データベースの例はこんな感じ。
    function executeQuery(tx) {
        //質問が入ったテーブル構造です。
        tx.executeSql('DROP TABLE IF EXISTS QuestionnaireTable');
        tx.executeSql('CREATE TABLE IF NOT EXISTS QuestionnaireTable (QUESTION_CODE unique, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION)');
        //定義完了
        tx.executeSql('INSERT INTO QuestionnaireTable (QUESTION_CODE, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION) VALUES ("9N716","既往歴1(脳血管疾患)","1:はい、2:いいえ","")');
        tx.executeSql('INSERT INTO QuestionnaireTable (QUESTION_CODE, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION) VALUES ("9N721","既往歴2(心血管疾患)","1:はい、2:いいえ","")');
        tx.executeSql('INSERT INTO QuestionnaireTable (QUESTION_CODE, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION) VALUES ("9N726","既往歴3(腎不全・人工透析)","1:はい、2:いいえ","")');
        tx.executeSql('INSERT INTO QuestionnaireTable (QUESTION_CODE, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION) VALUES ("9N731","貧血といわれたことがある","1:はい、2:いいえ","")');
        tx.executeSql('INSERT INTO QuestionnaireTable (QUESTION_CODE, QUESTION, ANSWER, DESCRIPTION) VALUES ("9N736","現在、たばこを習慣的に吸っている","1:はい、2:いいえ","")');
   }


2013/11/10

香川県のチキンマックナゲットは(やや)ヘルシー

ミシシッピ大の教授ら、という人がアメリカファストフードチェーンのチキンナゲットが脂肪が多いじゃないか、という事を手順がかかる理屈をこねて発表したというニュースがありました。
そもそも正直に半分以上が脂肪ですよ、とちゃんとファストフードチェーンのホームページには書いてある事で、彼らの批判は素直に心に響かない。でも少なくともミシシッピ大の教授らって「チキンってヘルシー、素敵!」って思ってるんだという事は良くわかりました。いやいや衣がついてるわけだからその考えは単純すぎないか。

ただし、調べていると面白いことがありました。


  1. 日本のマクドナルドではチキンマックナゲット、うどん県だけ違うらしい。
    2013/10/6時点で、15ピース300g(うどん県以外)で840Kcal、脂質は56.7gとあります。うどん県だけは264gで705Kcal、脂質が41.4gでした。(脂質の割合が少なくてちょっぴりヘルシーです)
  2. アメリカのマクドナルドではPDFになっていて、しかも縦横が逆で見にくくて。法律でもあるんでしょうか。2013/10/6時点で20ピース323gが940Kcal、脂質が59gで脂肪からのカロリー(Calories from Fat)が530g(有効数字2桁で表示されている雰囲気ですが他のものは四捨五入されているのにこれだけは切り捨てになっていました。面白いです)
  3. バーガーキング(合衆国)のもPDFですが、これは見やすかったです。
    2013/10/6時点で20ピース350gが950Kcal、脂質が57gで脂肪からのカロリー(Calories from Fat)が510gとなっています。
  4. ウェンディーズはPDFは合衆国居住者のみ公開のようです。2013/10/6時点で10ピースの重量は書いていません。(!)450Kcalで脂質30g、270Kcalとの情報が得られました。そしてある種の印象操作が行われています。すなわち、食物繊維と蛋白質がきわめて強調されていることです。

背景が野菜であることにも注目しています。
注)それぞれソースは含みません。

これらからわかったことは、

  1. 日本の法律では"Calories from Fat"(脂質によるカロリー)という表示は義務となっていないようだ。これでは消費者は何もわかるまい。
  2. アメリカではどうもそういう表示をすべし、となっているようだ。ただし、これでもまだ不足に思う。

「全体のカロリーのうち、脂質のカロリーが占める割合がどのくらいか」
を表示すると、もっと感覚的に、
「うわ、オイリー」というのがわかるのではないか。

ということで、うどん県以外のチキンマックナゲットは61%、うどん県では53%が脂質でした。

ちなみにミシシッピ大の教授という人に教えてあげたいこと。たぶんアメリカの方が大好きな「テンプーラ」もシーフードだからヘルシーと思ってらっしゃるかもしれませんが、エビのてんぷらをこのサイトで覗いてみるとサラダ油の占めるカロリー43%で、いい勝負です。

2013/11/03

日柄もの

おそらく2005年ころから使い始めた言葉があります。40前になってはじめて覚えた日本語です。

診察の最後のあたりで患者さんが、「日柄ものですかねえ」と仰る。
私は最初その言葉がわからず、しかし「日」「日柄」という時間を意味する言葉が含まれているので「そのうち治る」という意味だろうと思い、
「そう思いますよ」と申し上げる。
すると患者さんはがっかりするのではなく、むしろニコニコとしてお帰りになる。
こういう会話を何度も何度も繰り返しました。

ある日、高齢の方に「これは日柄ものです」と言ってみた。
すると患者さんはほっとしたような顔になり、「そうですか、良かったです」と言う。
「そのうち良くなる」という言葉とは表情が違う。

おそらくポジティブな意味なのだろうと思い、以後は自然に軽快するだろう、という意味で安心させたいときに使うようにしています。乱用は避けています。高齢の方が良くお使いになりますが、伊勢原だけの言葉ではないらしい。(参照記事

65歳より若い方にはほとんど通じず、「そのうち良くなりますよ」などと言いますがどうもよろしくない。「この医者め、いい加減なことを」という表情になります。「時間が最高の良薬ですね」というとなんだかキザっぽい。それにそう言うとただ寝ている人がいて、それではどんどん悪くなる。心をポジティブにして、できる限り身体を動かし、普通の生活をしなさい、という意味が「日柄もの」には含まれている。「必ず良くなるから頑張ろう」というようなおまじない、言葉の魔法がかかっている気がするのです。65歳以下には何でも理詰めで説明する必要があって、全く面白くない。もちろんそれ以上の年齢でも「日柄もの」という言葉がわからない方の場合には説明は難渋します。そういう言葉が世代間で失われているのはちょっと悲しくも思います。

柿が赤くなると医者は青くなる。
柿は糖度が20度もあるので血糖が上がった人もいます。
また、柿の渋でイレウスになった人がいました。
伊勢原の柿は美味しいんです。
でも食べ過ぎてはいけません。
桃栗三年柿八年、
この柿の木は樹齢100年を越えているらしい。
胃腸の病気でもリハビリテーションという概念はあると思っています。
病気になれば機能を失う、ある機能はリハビリテーションにより回復しますから適切な時期にリハビリテーションをはじめる必要があるのです。「日柄もの」はポジティブの加減が良い塩梅で、理解できるかできないかでずいぶん患者さんの人生も違ってくるのかもしれません。

2013/10/29

チーズは血圧を下げる(棒)

「チーズは血圧を下げる」などという嘘もまたメタ知識のひとつです。

ある患者さんが「テレビでやってたので毎日二食はチーズ食べています」とニッコニコでご報告。

美味しいものだからマイブームになっちゃって止めさせるのに3ヶ月もかかってしまいましたがその間に3kgも体重が増えて平均血圧も10mmHgほど上昇しました。テレビ局なんとかして下さい。

こういう嘘を思いつく人はどういう発想なのかを考えてみましょう。

私は別のメタ知識を思い出しました。

「チーズは片頭痛を誘発する」

ははーん、と思った方は私の仲間。そう、片頭痛を誘発するとされる食べ物には血管を広げる作用があるよ、とされているものが多いのです。

血管がしまると高血圧、血管がひらくと片頭痛、という事に気づいてしまえば、片頭痛に悪いものは高血圧には良いもの、という発想が可能です。

では片頭痛を誘発するかもしれないとされる食べ物には何があるでしょうか。

・チェダー、エメンタール、カマンベールなどの熟成チーズ
・チョコレート
・マリネや発酵食品
・亜硝酸塩や硝酸塩が含まれている食品(ベーコン、ホットドッグ)
・MSG(醤油、肉専用調味料、味塩)
・サワークリーム、ピーナッツバター、サワーブレッド、そら豆、サヤエンドウ、レーズン、パパイヤ、アボカド、赤い梅、柑橘類などなど
・そして玉ねぎ
(http://www.headaches.org/から抜粋してきました)

あとは上に書いてある食べ物から、それっぽいものを、

「血圧が下がる」と売りだせばOKです。

簡単でしょう?

註:「(棒)」というのはネットスラングで、本気ではない、という感情を表す時に使う表現だそうです。日本語も進化しますね。


2013/10/27

60兆個

人間を構成する細胞の数は60兆個、とされています。

1gあたり1億個の細胞、という知識から導かれています。ただ、それだけのことです。覚えやすいので覚えておくと良いです。


人間の中の微生物の数はどのくらいでしょうか。

微生物(この場合細菌)は1gあたり1000億個、とされています。細菌1個の重さはざっくりと細胞の1000分の1です。覚えやすいですね。うんちを全部かきあつめると1000gと言われていますから、1000億x1000で100兆個です。

こういうのはフェルミ推定って言いますね。将来は正確に数える人が出てくると思います。

他に知っておくと便利なのは、脳と肝臓の重さは一緒で1.5kgという知識でしょうか。


人間の血管の総延長は10万kmなんだそうです。本当でしょうか。

これを計算するにはまず血液の量を考えます。体重の7%ですから4.2kgです。毛細血管の太さを考えましょう。5-10μmです。7.5μmとして話を進めましょう。
ところで細胞の直径って100分の1mm、つまり10μmぐらいです。え?毛細血管の方が細いじゃないかって?正解。白血球は毛細血管の中はアメーバのように進むんです。だから5μmだって良いんですよ。
7.5μmの断面積はいくつぐらいでしょう。3.75 x 3.75 x 3.14  = 44.2μm^2
ふふ、なんかそれらしい数字が出てきましたよ!

4.2kgの血液の比重をざっくり1としましょうか。
1L = (10cm)^3 = (100mm) ^ 3 = (100000μm)^3 = 10^15μm^3
4.2L / 44.2 μm^2 = 4.2 x (10^15) μm^3 / 44.2μm^2 ≒ 1 x 10^14 μm = 1 x 10^11 mm = 1 x 10^8 m = 1 x 10^5km = 10万キロメートル

ほらね。こうやって計算しているんですよ。別に正確に測ったわけじゃないんです。
全部フェルミ推定。

ちなみに小腸の粘膜を全部広げるとテニスコート一面になる(200平米)というのはどうでしょう。
さっき一つの細胞の大きさが10μmと言いました。小腸の絨毛は一層なんですね。
200m^2 / 100μm^2 = 200 x (10^12) ^ μm^2 / 100μm^2 = 2 x 10^12個
細胞は1億個で1gだから、小腸上皮の細胞を全部かきあつめると200gという事になります。
結構妥当な数字です。これが1週間ですべて置き換わるわけです。小腸の粘膜のターンオーバーは1週間とされているのです。
腸の垢(死んだ細胞)は毎日50gと言われています。
何にも食べなくてもうんちは50gは作られる、という事です。
50gx7日間で350g。大腸とか胃も含むわけだから、まあそんなにおかしな数字じゃないですよね。

こうしてフェルミ推定で全部つながってるわけです。

ところで毛細血管の細胞って結構ひらべってくて大きいです。例外的に10μmよりもはるかに大きいんです。1 x 10^14 μmを10μmで割ってから1億で割ると1x10^3g、つまり人間の血管を全部集めると1kgって事になってしまいますが、実際には10μmよりもはるかに血管は大きいので数百g以下と言うことになるでしょう。やはり計算はあうのです。

計算はとても苦手なのですが、たぶんこれでよろしいのではないかと思います。

さて脳細胞の数は1.5兆個もあるのでしょうか?数百億?数%?
その数はどうやって求めたのでしょうか?これは小さな断片から神経細胞、グリア細胞、間質のその他の細胞をカウントして、その比からざっくりと求めたのだと思います。

脳のうち活動しているのは数%だという話がありますね。私はそれはもっともらしい嘘だと思います。なぜなら神経のシナプスには抑制をかけるための神経終末がほとんどです。これは解剖学でならいました。それは当然のことで、神経はただの電子回路ですから、基本的に抑制かけておかないとてんかん発作起こすだけです。普段はかなり抑制かかった状態で正確にいろいろな判断を下しています。ところが何かをひらめいたりした後だけは抑制がはずれるのだと思います。だって考える必要がなくなりますから。それは大きな神経活動として記録されます。天才では神経活動が活発だとか、普段数%しか脳神経は活動しないとか言うのは抑制系のニューロンをちゃんと観測できていないという事だと思います。

2013/10/21

胃癌と逆流性食道炎がトレードオフだっていう話

「どうして胸焼けするんでしょう」という問いに、

「ピロリ菌がいないからですね」と答える。

一日に何度もある会話です。



それは実際事実であって、ピロリ菌がいない人は胃酸分泌が多いですから、胸焼けだってしやすいのです。



「ピロリ菌がいないって事は胃癌にはなりにくい運命だということでありまして、しかし胸焼けはしやすいんです。神様って意地悪ですよね。でも胸焼けで食道癌になる日本人ってほとんどいらっしゃいませんよ。だから医者的には神様はあなたに微笑んでいる、と思います。良かったですね」

「あ、そうなんですか」

「そこで胸焼けをしない方法を考えましょうっていうのが医者の役目でして、生理学とか解剖学とか薬理学とか、あなたに指導するために難しいことを一生懸命勉強してありますから、あなたにあった方法をこれから探そうかな、ってところです」

「私は逆流性食道炎なんでしょうか」

「逆流性食道炎という言葉がひとり歩きしていて好ましくはありません。哺乳類は全部と言ってよいほど逆流性食道炎があると思いますけれどね。胃酸が逆流しない動物っていないですから。それを病気として捉えるか、状態として捉えるかの違いはあると思います。あなたは逆流性食道炎ではあるが、それは病気とは私は思いませんよ」

「はあ」



無用な不安感は症状を増悪させます。いろいろな広告のおかげで、その内容が理解できない人達は逆流性食道炎に対して非常に不安を強く持っています。それらの人々にある種のメタ知識を植え付けてニュートラルな状態までます持っていくのが治療の出発点です。

2013/10/08

対話

同じく小林秀雄さんの「考えるヒント」の二番目のエッセイは「プラトンの『国家』」というタイトル。

プラトンの「国家」という著作の対話編はソクラテスと対する人々の対話という形がとられているのだけれども、これが議論ともディベートとも違う不思議な雰囲気をなしている。

現代では「対話」がおろそかにされてはいないか。医者もずいぶん偉そうにものをいう。「なんとかは治療するな」「いや治療しろ」などと自分の意見の応酬である。それは主張であって、議論でもディベートでもない。では医者と患者で議論やディベートは成立するのか、否。診察室での会話はこの「対話」という表現が一番しっくりと来る。

医学は絶対ではなくて常に疑問が沢山ある。そして一番たくさんの疑問を抱えているのは患者さんではなくて医者本人である。

対話らしい会話になるだけでも良い時代になったと言えるかもしれない。
「はいお薬を出します」というような一方的な言葉に対して、
「お薬を使わずに治療は可能でしょうか」などという疑問を医師に投げかけることが出来ただろうか。

そこからは対話がはじまる。
「なぜお薬を使わずにと思うのか」
「お薬は体に悪いと聞きました」
「『お薬』が体に悪いと主張している人がいることは知っている。しかしその『お薬』が今回の『お薬』と同じものとは限らぬし、そもそも『悪い』とはいったいどういう事なのか、それすらも人により違うのだ。あなたはお薬が体に悪いという主張を聞いた時にその具体例についてひとつひとつ理解する必要があり、それが理解出来ぬ場合はある程度は専門家に委ねる必要が出てくるのではないかと思うがそれが理解はできますか?」
「それはわかります」

それでも結局副作用が起きる可能性からは人間は逃れられない。
納得してリスクをとるか、とらないか、それは選択である。
医師にどこまで委ねるか、というのも選択である。
つまり医療を受けるというのは選択なのだ、という事が理解できれば一応対話は終了とする。

対話にはどういう意味があるのか。



ソクラテスのやり方は基本的には相手の主張に疑問を呈することからはじまる。

「君は疑いで人をしびれさせる電気ウナギににている」と言われるとソクラテスは

「たしかにそうだ、しかし電気ウナギは自分で自分をしびれさせているだろう。私がそうするのは私の心が様々な疑いで一杯だからだ」と答える。

人間は一度死ぬと疑問をすっかり忘れてしまいまた生まれ変わってまた人生をやり直すわけだけれども、ソクラテスは少しだけ前世を覚えている、と彼は暗喩しているのだと小林秀雄は書いているけれどそうだろうかなあ。ただ、疑問を忘れない、というのは大切な事だ。

私の知り合いでこのソクラテスを地で行く先生がおられるのだけれど、しばしばそこの患者さんが当院に迷いネコのように来院される。要するに疑問が解決しないので来ました、というのだ。いやはや。私はその先生との対話を楽しむべきだ、と思うのだけれども。

ただ疑問ばかりではついていけない人が多いのは当然で、先に私が考えに考え抜いて普段から自分の解釈なり、妥協点なりを用意してはいる。いわゆる「テンプレ」っていうものだ。その「テンプレ」が他院とは違う、という事は確かだろう。



インターネットは対話が行いにくいメディアだ。

何と言っても会話よりも反応速度が遅い。これは良いようでいて、主張のゆらぎが少なくなる、もちろんゆらぐ人もいるのだが、逆にそのゆらぎを楽しまずに揚げ足をとることに使う狡猾な人間がいるために全く対話にはならないのだ。

ソクラテスの洞窟の比喩で示されるように真実は我々には見えない。見えないなりに対話をもって疑問を少し残しておくこと。それは人生の楽しみだ。

疑問は死んだら忘れてしまう。いろいろなアイディアが再発明されるそもそもの根源がそこにある。
でも疑問を忘れない人工知能が出来たら、もしかしたら人間は少し進歩するのかもしれない。

2013/10/07

脅してきたら、それは専門家とは思わないほうが良い。

小林秀雄さんの「考えるヒント」の最初のエッセイは「常識」というもの。
当時ですら「機械化された生活の中、内部の理解できぬ機械に振り回される」というような表現がなされ、自分のわからぬ事は、すなわち一般人が常識の範疇で判断ができぬことは専門家へ委ねなければならなくなった、と嘆いているような書き方である。

ここで言う常識とは「人間の作った決まり事」である。
逆に考えると専門家の知識とは常識が通用しない領域の知識ということなのだろう。

そして私が扱う「医学」という分野は明らかに一般の人々の常識が通用しない。皆さんが自分で判断することは非常に難しく、我々専門家に委ねざるを得ない場合が多い。



みなさんから見れば、医者はどの医者も専門家であってすべて等しくうつるだろう。歯科医も鍼灸師も整体師も薬剤師もナースもみんな専門家である。常識の外なのだから、それらの人々の言うことが食い違っていたとしてもその正否を判断することなど出来るわけがないのだ。



それだけに、専門家の領域にいる人々が一般の人を脅すようなことをいうのは心して慎まねばならない。

「先生よくならないのですが」
「それは悪い病気かもしれないから内科にかかりなさい」

というのが悪い例である。(この専門家が自分では解決できない、ということだけが事実である)それだけで恐怖で三日三晩眠れぬ人もいるし、PTSDになる人すらいる。そして大抵の場合は自分の技量が劣っていて正解が見えていないだけなのだから始末が悪い。

正解は、

「先生よくならないのですが」
「今までの経過を書いた手紙を書きましたのでこれをもって内科に行き相談して欲しい」

ではないだろうか。



どんな資格であれ、専門家は専門家であり、一般の人たちの常識が通用しないところにいることを心せねばならない。相手はいつでも小林秀雄さんであるとは限らないのだから。

回虫症?


肝臓内にこういう石灰化を認めたことはないか?
私は何度かあるが。

こういう門脈に沿った石灰化は回虫症の既往なのかもしれない。はっきりとしてはいないが回虫症の既往がある。


これは別の症例。この方は回虫の病歴がはっきりしている。

回虫は門脈経由で侵入するが見つかれば駆虫薬をのまされるから肺に達する前に死んでしまい、このような石灰化を残すのかもしれない。

あまり教科書には載っていないので書きました。Ascaris といいますが、検索しないことをおすすめしたい。

前庭部の胃壁をみる


前庭部の胃壁を見て、7mm以上は「肥厚あり」とする、と書いたが蠕動による収縮はその限りではないとも書いた。これは実例だ。
左、7mmを超えている。この状態で異常、と思うなかれ。
しばらく待てばこの通り。ちなみに右の写真では十二指腸球部の一部も見えている。
再現性を持たせるため、大動脈を長軸方向に捉えておくと良いだろう。
この肝臓はfatty liverだ。少し胃を強調したいため、やや明るめに調整してある。
フォーカスはやや深めで良い。

ある程度高齢者でこうした状態の胃の所見を認めると違和感を感ずるかもしれない。
しかし高齢でも萎縮のない胃ではこういう所見になる。逆流性食道炎の治療を受けている人々はこれに該当する場合が多いだろうと思う。

2013/10/04

幽門の位置と瀑状胃

超音波で胃を見ると、幽門の位置は通常は正中か正中よりも右側にあります。
けれどもそれが正中より左側に存在する場合がある。その場合に瀑状胃かもしれない、と私は思います。(もちろんあとで内視鏡で確かめますし事前に答えがわかっていることもあります)

「瀑状胃とはなんだ」に対する答えは胃の回転(内臓は胎児の時にくるりと回転しつつ形が成長していくのです)が少し違うということだと思いますが、そのひとつの証左なのかもしれないなと思いながら観察します。

何を言っているのか全くわからないかもしれませんが、自分でも何を言っているのか良くわかりません。エコーを行っている時に、
1)必ず幽門の場所はわかりますから、まずは幽門を認識できるようにトレーニングしてください。
2)それが出来ると十二指腸潰瘍やアニサキスの診断は簡単になるのですが、少し上級編として胃の形態の異常を考えられるようになるでしょう。胃の萎縮の有無も慣れるとわかるようになりますので大変便利です。エコーも内視鏡も両方できる医者というのは便利な存在ではあります。




応用としては、
左季肋部や左背部の、食後ないし食事中の違和感を瀑状胃の方は訴える場合があります。幽門が正中よりもやや左かな、と思ったら食事が素直に前庭部に入っていかない可能性が考えられます。証明するには実際食べてもらってエコーをすればよろしい。
胃を膨らませることで変形が整復されて症状が取れる場合があります。従って、違和感を感じつつもしっかりと食べるように指導すべき場合もあるのです。



瀑状胃の成立については理由が良くわかりません。先ほど回転の異常ではないか、と書いたのですが胃の小網の短縮が生じているのかもしれません。例えば肥満患者の一部で小網に脂肪が蓄積し柔軟性が失われると考えるとつじつまが合うためですし、非常にやせていても瀑状胃の方がおられるのは別の理由(例えば炎症)で小網が短縮したと考えれば良いのです。潰瘍瘢痕がないにもかかわらず、長年の経過観察中に瀑状胃となる例がまれにありますが、この仮説は良くそれを説明してくれます。一方、分娩後の女性に瀑状胃を認めることがあり、これは単に胃が進行方向に向かって時計回りに回転しただけでもそうなるのかもしれないとも考えます。この瀑状胃はリバーシブルでやがて直ったりします。

2013/09/26

専門用語と婉曲表現

少なくとも自分の場合、
専門用語や英語を患者さんに対して使うときには、
それは婉曲表現のつもりです。


「がん」と発音される言葉には、「癌」と「がん」とがありますし、患者さんの受ける感覚も様々でしょう。「悪性腫瘍」「悪性新生物」などといった言葉を使うと必然的にその言葉に対して注釈をせざるを得ない。だからこれが婉曲表現になるという事です。

麻薬系の鎮痛薬を「オピオイド」と表現する。麻薬という言葉に対してあまり良い印象を持っていない患者さんに対して有効な表現です。


医者の説明がわかりにくい事を、専門用語や英語のせいにする場合があります。
ですが私はその考え方には反対です。
「わざと」専門用語や英語を使う。そしてその言葉の解説をすることによって正しく、しかし柔らかく患者さんに事実を説明することが可能だと考えています。

2013/09/23

「金のうんこ」 便移植の時代がやってきた


便移植はC. difficileという細菌の治療目的で行われてきた治療です。
英語では fecal microbiota transplantation 略して FMT と呼ばれます。日本語では糞便移植でしょうか。

2009年のQMJに載った論文を頼りにさかのぼっていきます。
Faecal transplant for recurrent Clostridium difficile-associated diarrhoea: a UK case series
A.A. MacConnachie, R. Fox, D.R. Kennedy and R.A. Seaton
From the Infection Unit, Brownlee Centre, Gartnavel General Hospital, Glasgow, UK
QJM (2009) 102 (11): 781-784.


便注入は1958年に最初の報告があるそうですが、
1984年のこの報告を紹介します。
Relapsing Clostridium difficile enterocolitis cured by rectal infusion of normal faeces.
Schwan A, Sjolin S, Trottestam U, Aronsson B.
Scand J Infect Dis 1984;16:211-15.

これはクロストリジウムディフィシルという非常に苦労する腸管感染症の患者さんに普通の便を注腸したところ良くなった、という報告です。

はるかに時間が飛んで2000年、この報告があります。
Treatment of recurrent Clostridium difficile-associated diarrhea by administration of donated stool directly through a colonoscope.
Persky SE, Brandt LJ.
Am J Gastroenterol 2000;95:3283-5.

これは大腸内視鏡で普通の便を注入する報告です。注腸よりもさらに奥から入れてみるというアイディア。

そして2003年、とうとう上から入れてみようというアイディアが登場します。
Recurrent Clostridium difficile colitis: case series involving 18 patients treated with donor stool administered via a nasogastric tube.
Aas J, Gessert CE, Bakken JS.
CID 2003;36:580-5.

Transplant(移植)という洒落た言葉を使ったのは2009年のQMJ論文がおそらく最初で、途中でJAMAかBMJかなにかに載った気がしますが、NEJMで抗生物質よりも効果があるという結論になり注目を浴びました。今後標準的な治療になるのではないか、と思います。
Duodenal Infusion of Donor Feces for Recurrent Clostridium difficile
van Nood E, Vrieze A, Nieuwdorp M, Fuentes S, Zoetendal EG, de Vos WM, Visser CE, Kuijper EJ, Bartelsman JF, Tijssen JG, Speelman P, Dijkgraaf MG, Keller JJ (16 Jan 2013). 
N Engl J Med: 130116140046009. doi:10.1056/NEJMoa1205037. PMID 23323867.

1958年~2013年という気の長くなるような時間をかけて、全くお金のかからない治療が脚光を浴びる様子を見るのは感無量であります。

最近私の行っている大学でもこの治療が行われましたが、倫理委員会で、「本当に大丈夫なのか?」と若干のやりとりが行われたと伺いました。その効果が非常に高くてみな驚愕した、という事です。

おそるおそる、という感じで日本でも広がっていくだろうと思います。最初は影響が少ないように家族からの移植、という形で行われるのかもしれません。




腸内細菌叢は複雑で、クロストリジウム属はすべて悪玉かというとそうでもありません。
私は複数の整腸剤を目的ごとに使い分けますが、現在発売されている整腸剤には限界があります。最近東京大学が多くの種類を混ぜた細菌カクテルが有効であることをNatureに報告し、注目しています。(リンク

パーキンソンなどの神経疾患に効果があるだろうという報告もありますし、脂肪肝などにも行われる時代は来るかもしれません。現在は食品関係者でサルモネラや病原大腸菌保菌者は(治療にかなりの時間がかかり、その間仕事が出来ないため)非常に肩身の狭い思いをせねばならないのですが、一気に解決する可能性もあるのです。

一番効果のあるうんこは「金のうんこ」として珍重されるのかもしれない、などと不謹慎にも考えるのでありました。



クロストリジウム属や大腸菌は入らないものの、手作りの糠漬けの中には「金の糠漬け」があるかもしれないんですよ、というお話は外来でしています。(だからおなかの強い人がつくった糠漬けをもらってきなさい、と言うのです)
細かく刻んで食べてください、と申し上げておりますが、日本独自のこのユニークなお漬物は、日本人の健康を守ってきたと言えるかもしれません、高血圧と引き換えに。
一方他国から移入されたポピュラーなお漬物に関しては、それでは調子が良くなった患者さんを聞いたことはありません。


良い事ばかりではありません。糞便移植ではサイトメガロウイルス感染やノロウイルス感染が報告されています。例えばNEJMに載った論文では潰瘍性大腸炎の患者が自分の子供の糞便を食べ、そしてサイトメガロウイルス腸炎を発症しています。子供は非常に多くがサイトメガロウイルスに感染しているので、少し考えれば当然の結果なのですが。

ドナーに求められる条件として、(UNCのプロトコルによる)
1)性的にアクティブすぎない人
2)薬物使用がない人
2)刺青を6か月以内に入れていない人
3)投獄されていない人
4)既知の伝染病がない人
5)炎症性腸疾患や消化管癌の病歴がない人
6)メタボリックシンドロームがない人
7)過去3ヶ月に化学療法、抗生物質の投与を受けていない人

糞便中の病原性大腸菌、サルモネラ、チフス、カンピロバクター、ノロウイルス、ロタウイルス、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどが検査されます。
それ以外は以下のようになっています。


HEVがないし、H. pyloriもないので日本向きではないのは明らかです。
LFTsとはliver function testsの事です。(ALT, ALT, ALP, T-Bilなど)
考えに考え抜いてプロトコルは作らねばなりませんね。

2013/09/21

上部内視鏡で機能的な異常をどう捉えるか

1)丁寧な問診の情報
2)一旦それを忘れてから内視鏡検査
3)その場で1)2)をすり合わせつつ病態を理解
4)治療とフィードバック
5)超音波を利用した多角的な病態の理解

これを1万例以上繰り返します。

観察項目(胃と十二指腸)
1)萎縮
木村・竹本分類を基本。後壁優位の萎縮であったり、まだら萎縮であったり、細かく捉えるといろいろなパターンがあるがあくまで木村分類が重要。萎縮が胃酸分泌、ガストリン分泌、蠕動に与える影響を考慮する。HPの有無もほぼわかるので当然考慮にいれる。
2)胃酸分泌抑制薬の効き具合の判定方法(あくまで私見)
胃底腺ポリープの増え具合、大きくなり具合
粘膜の白いひびわれ模様
粘液のねばり
十二指腸球部の異所性胃粘膜の発赤
3)胃の蠕動の強さ
各部位の発赤
4)消化の情報
十二指腸内への脂肪滴の残り方
5)胆のう機能の情報
胆汁逆流
6)受け入れ反射の有無
空気を入れたときの反応
7)LESの様子
深呼吸のときの伸び具合
げっぷの様子など

これはごく一部ですが、機能的な情報を上部内視鏡で収集しながらどんな薬を使おうか、どんな指導をしようかと考える。

1)消化はやや時間がかかっているタイプ
2)油をきっとあまり食べてない
3)あまり胃痙攣のような痛みは起こしていないようだ
4)胃酸分泌は適正で多すぎるほどではない
5)受け入れ反射もある
6)胆汁逆流がなく極端な胆嚢機能異常はないかもしれない
7)昨日はアルコールを飲んだな

などと考えながら、です。
決めつけは良くない。
注意深い指導と治療。
フィードバックを受けながら修正。

現状のEBMにはフィードバック項目はほとんどない。
私が目指すのはもう一段階進んだEBMで、
複雑な条件分岐付きの治療です。
内視鏡ファイリングを自分で開発してみてこの膨大な情報をどう活用しようか、
と10年以上考えていますが答えは見つかりません。
少なくともMinimalでStandardなTerminologyでは表現できない世界がある。
エコーなどもっと複雑なのです。

ひとつ考えられるのは、内視鏡の展開図です。
コンピューターで3次元を2次元におそらくマッピングが出来る。
3D-CT、バーチャル内視鏡ではすでにポピュラーな方法ですが、
これを応用すると内視鏡の精度は飛躍的に高められる可能性はある、と考えています。

2013/09/16

構造計算

建物には「構造計算」というものがあります。これを人体に応用してみたい。
本当はパシフィック・リムのイェーガーの計算書を手に入れたいところですが、
デルトロ監督とは友人ではないのでしょうがない。

建物にかかる力としては、
1)固定荷重:これは体重に相当します。
2)積載荷重:体重以外の重量、服や荷物の重さに相当します。
3)積雪荷重:髪の毛の重さみたいなもんですが、私の場合考えなくて良いでしょう。ドラァグクイーンなら計算に入れます。
4)風荷重:人間ならほとんど考えなくて良いでしょう。ボルトのように風と戦う人間ならば別です。
5)地震荷重:ダンサーならば必須項目。
6)その他:土圧や水圧は今回は考えぬこととします。
が考えられます。

しかし人間やイェーガーが建物と違うのは動くことで、
7)動作の速度、慣性モーメント
がさらに加わります。車やクレーン車の強度計算を参考にしたほうが良かったかもしれない。

自分で車検を取るときにはこの強度・剛性測定をしなければならない場合があるので知っていても損ではないかもしれません。(→リンク)車体各部を実際に動かして、その時に生じるわずかなひずみを測定するのです。各部にかかる応力や、その部位の強度がわかります。

さて、同じ質量の短い棒と長い棒とを用意して、それを倒した時の事を考えます。するとその慣性モーメントは長さの二乗に比例します。家の構造計算でも、運動が加わった場合でも、長さや高さは大きな要素で、その長さが長いほど大きな強度や剛性が必要です。人間の場合にも同様で170cm以上の人の方が骨折が起きやすいという論文があるのです。(169cm以上の人の大腿骨頸部骨折のリスクは159cm以下の人の3.16倍 Epidemiology 11, 2: 214-219, 2000)ちなみに成人後に10kg以上の体重増加のある人々は逆のオッズ(0.35)であったとのことでこれも興味を引きました。

さて、骨の強度と剛性はなにで決まるかと考えますと当然骨量だけで決まるものではありません。骨の解剖を考えますと間質の蛋白質とその結びつきの強度も大変に重要です。そして構造そのもの(ハニカム構造であったりしますが)の破たんの有無、中心部と周辺部の密度の差なども関与するでしょう。それを測定するのは骨だけでなく、窒素の密度であったり、そしてもっとも重要なのが実際の剛性の測定です。ある程度の力を加えたときの形態のほんの僅かの変化を測定することでその骨の真の強さが測定できます。

体重の変化も、遺伝も、身長も、体重も測定せずに、誤差の大きな方法(骨密度、と呼ばれるものです)とわずかの血液検査で大雑把に将来を予測するのは構いませんが、それではイェーガーはいつまでたっても建造できないのではありませんか。

骨の中には重力加速度計が存在し、加速度を明確にキャッチし造骨の命令を出します。そのセンサーに明確な指令を与えるための運動療法を処方せねばなりません。また必要なアミノ酸があり、ライフスタイルを把握しつつ適宜指導をせねばなりません。カルシウムの過剰な投与は動脈硬化を促進し有害であることはすでにわかっているので安易なサプリメント服用には警鐘をならす必要があります。患者の身長や体重の変化は重要です。建物は鉄骨だけで作られるものではありません。その他の構造物、筋肉や腱、あるいは運動を命令する小脳、それぞれへ総合的なアプローチをするのが骨折を予防する臨床の未来の姿であろうと考えております。

骨量に注目しすぎるのはその未来を曇らせるから嫌なのです。
海外では木でできた美しい高層建築があり、世界最古の木造高層建築、五重塔が存在する日本にはない。そういう状況になるのが嫌なのです。

2013/09/13

ふらつく (dizziness)

「ふらつく」には "vertigo" と "dizziness" とがあり、今回は "dizziness" について。

dizziness は脳内のジャイロセンサーのうち上下方向の加速度を検出するセンサーが実際とは違った信号を送ることにより感ずる違和感の事だと理解している。エレベーターで感ずる感覚に似たようなものだ。

それに最も影響をあたえるのは血圧の変化(微分)であると理解する。

数秒以内の血圧の変化に影響を与えるのは末梢血管の収縮であって、心拍出量の変化よりも変化のスピードが速い。

起立性低血圧として診断されるには臥位から座位にして10mmHg以上の血圧低下、とされるわけだけれど、病的な範疇には入らないのだけれど姿勢の変化に応じて血圧が変化しやすい人々がdizzinessを訴えやすい、という事に決めている。

そしてその変化に与えるパラメーターとして大きいのが筋肉量の低下であると考えている。

特に足の筋肉のポンプ作用は重要であると考えており、足がやせてしまったような人はdizzinessを多く訴える。

ハイヒールを履くと筋肉は緊張するわけだから血圧が安定しやすく、女性がヒールの高い靴を履いてきた、というのはそういった実用的な意味もあるのではないか、と思ったりもする。

むろん、血管の柔軟性の欠如は血圧の微分を大きくしやすくそれもdizzinessの原因にはなるだろうが、それは不可逆的な変化であってそれを議論しても何も生み出さない。「だからこの健康食品を」という事になるのだが、効かないし、それを言うのは「お金を儲けたい人々」に任せることとする。

ところでdizzinessを訴える人には、足を太くするように指導する。

女子高生の時の自分の足を思い出すともっとパンパンに張っていた人がほとんどであるはずだ。足の腱膜はかなり固い組織である。高校時代に作られたその腱膜はストッキングのように足の表面を覆っているけれど、筋肉が落ちたときに柔軟に収縮してくれるわけでは残念ながらないようだ。したがって足の筋肉が落ちてくると筋肉を支える腱膜が余った状態になってその隙間に水がたまったりしやすくなるし、血液の還流が悪いので血圧も変動しやすくなる、と説明している。そこに元のように筋肉を形成してやればむくみも取れるし、ポンプ作用で血液が還流してくるから血圧が安定するのでdizzinessを感じにくくなるだろう。ある程度ヒールの高い靴も効果はあるだろう、と説明する。

具体的には膝のお皿の10cm上の周囲径を測定しておいて、それが増加するようにスクワットやランジの指導をする。プロテインが必要になる場合もある。回数は人それぞれだが、負荷は与えねばならぬ。森光子さん最強説をとなえている。

足だけでなく全身の筋肉があったほうが当然良い。

こうした指導を整形外科の先生方が本気でなさった場合には我々内科は抗ずるすべがなく、仕事の大部分をとられてしまうだろう。

2013/09/07

結果の時代

私が大学院時代に教わった手法ですが、コンピューターへの結果の入力方法について。

同じ結果を2名に入力させる。
結果が一致すればOK、不一致ならば差し戻す。

臨床研究には多額の研究費用がかかるという事でしたが、こういう手間がかかるならしょうがあるまいと納得していたのです。が、実際にはそういう場面に出くわしたことはまだない。

ところでそれではいけないわけで、人為的なミスが起きぬような方法を考えねばならない。各種モニターからの入力もすべて自動で行われるべき、という立場です。内視鏡におけるモニター類もすべてセンターコンソールに集中して画像とともに記録されるべき、と主張してきましたが全く無視されて現在に至ります。自分で開発できるのですが面倒ですし、しませんでした。

主観的な検査についてはMinimal Standard Terminologyで記述法が定義されていることが多いのですが、これがなかなか難物です。同じものの表現方法が何通りもある。

電子カルテは岐路に立たされています。オーダリング情報はしっかりと統一されている、しかし結果についてはわざとうやむやに記述されていた。これは色々な思惑があっての事だと理解します。しかしそれではいけない、という機運が出てきている。これは正常な事です。

以前、インシデントは自動に記述されるべき、と主張しましたが医療のアウトカムについても同様に自動で記述されるべき、と考える立場です。その代わり結果については一定の免責も規定されるべき、と思います。

未来学者のアルビン・トフラーが無用知識という概念を提唱していると坂井さんのブログで知りました。現代の法律はコンピューターが自然言語解析を用いて精査し、矛盾を指摘したり出来る時代にすでになっているかもしれない、などと思いました。法律の一部も一種、無用知識化している印象があるのです。

医療の記録は無用知識が最も多くなるだろう分野ですが、その中から矛盾を発見したり、法則性を発見するのはもはや人間ではなくてコンピューターなのかもしれないと思います。

2013/08/30

プロファイリングみたいな

保険証は情報の塊です。

転職すると、保険証が変わります。退職してもそうですが。
年度の途中だと、家族に行くべき通知が行き渡らず検診が抜けていることが多いです。
そもそも組合員家族の検診に不熱心な健康保険組合もあります。

ですから患者さんが初診で来た時、保険証の発行日、どこの保険組合か、本人か家族か、
世帯主は誰か、そういう情報で患者さんのバックグラウンドを把握するようにしています。

例えば社会保険家族の保険証を持っていて、年度の途中で更新されていたとする。
すると年に一度の特定健診は受けていない可能性はあります。また、胃の検診や便潜血検査は疎かになっている可能性も高いのです。

初診の際には、お話を聞いて、今までの病院の受診歴や、検診の結果なども拝見しますから、そういう情報もどうせ明らかになります。保険情報からそこまで深読みする必要はないのかもしれません。

けれども患者さんの話を聞きつつすばやく診断までの道筋をデザインしなければならないので、わかるものは一応すべて情報として役立てる、というポリシーでおります。

そういう私が、お薬手帳を持ってきてください、とか検診の結果を生の状態で持ってきてください、という。

それはただ薬歴を作りたいというような単純な理由ではない、ということは想像がつくだろうと思います。実際、本当にいろいろな事がわかります。

2013/08/25

病気はセキュリティホールをついて侵入する

医者にかかるときにはお薬手帳と検診などの血液検査の過去の記録をすべて持ってこなければならない、と指導して早◯◯年。一向に患者さんに浸透しませんが、そうしているうちにスマートデバイスがみなさんに行動をすべてライフログとして記録するでしょうから、私の徒労もあと10年以内に終わると見ています。楽しみです。(個人情報保護法の正しい解釈がネックかなあとは思います)

これらは何に使うかというと、みなさんの人生でのセキュリティホールを見出すために他なりません。

結論)病気は人のセキュリティホールをついて侵入してくるものが多いです。

アルコールやタバコ、麻薬や覚せい剤はセキュリティホールです。貧困もそうです。
ワクチンは地域住民の一定以上が打ちますと地域としてセキュリティが強固になり敵の侵入を許さないという特徴があります。ワクチンを打たない人は打った人に守られているという事になります。人の流動はセキュリティホールになります。ワクチンを打たない人の移動には特に気をつける必要があります。
偏った医療はセキュリティホールになります。専門性の高い医療を受けている人にそうしたセキュリティホールが存在する場合があります。
風邪で気軽に受診してしまう日本のスタイルはかえって風邪を蔓延させる可能性があります。これもセキュリティホールです。
抗生物質の誤った使用はセキュリティホールになります。特に地域の医師がこぞって特定の抗生物質を使う傾向があると大きな穴になります。
薬の飲み合わせについて到底正しくチェックされている状況ではありません。これは薬剤師の権限がまだ制限されていることや、彼らの仕事のチェック機構がないことに起因しているかもしれません。お薬手帳を分冊するような、患者さん自らが作るセキュリティホールもあります。
必要な検診が行われていない場合があります。過剰な検診でかえって害をなす場合もあります。



一人の医師に頼ろうというような患者さんの心理自体も大きなセキュリティホールです。

2013/08/21

方法はともかく、まず受けてみよう

胃がん検診に、レントゲンを推奨という結果を見てあれこれ言及している方がおられますが、過去のエビデンスから考えれば当然の結果が得られただけです。
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/igan_evidence130730.pdf

現在のレントゲンでの検診での問題点として、
1)ピロリ菌感染者の激減により過去ほど寿命をのばす効果を期待できない
2)適切に写真が読まれていない
3)被曝の問題が若干ある
4)検診後の虚血性腸炎などの合併症が高齢化に伴い増えてきた印象がある
などが挙げられます。

一方で全例内視鏡というのはナンセンスなわけです。
どうせ全員受けないだろう、という考えだから内視鏡検診が成り立つわけで、本当に全例でしたらリソースが足りません。受診率が低いことを見越して検診を行うのは私には受け入れがたい。
ではABC検診はどうかというと、10-20年ぐらいは有効かもしれませんが、GISTや進行食道癌、ピロリ菌非感染胃癌が見つけられないという問題もあるわけです。ピロリ菌非感染時代に生き残る検診とは言えないのです。

しかしその前にかなりの人々が検診を受けていない、という大問題があります。
例えば社会保険加入者の家族の多くは受けません。忙しい自営業者は受けません。
そして(もしも検診で引っかかってしまうと)最終的に行われる内視鏡検査が苦しいから、という理由で受けない人も多いに違いないのです。
これをなんとかせねばならない。
そういう意味でABC検診の簡便さや、それ以後に連なるピロリ菌除菌までの一連の流れは現代(今後10年程度)にはマッチするかもしれません。とはいえ、ABC検診も内視鏡リソースを圧迫する傾向がありますのでその解決にはもう少し工夫が必要になるでしょう。







さて、ピロリ菌非感染時代になると、胃がん検診は他の先進国同様に無くなる可能性も高いと思いますが、仮に存続するとして、GISTやらピロリ菌非感染胃癌やら、食道癌やらを見落としなく見つけつつも現在ある問題点を回避する必要があります。
その解決法として、
1)保湿成分を内包した新しいバリウム製剤を開発し、術後に下剤を飲まなくてもいいようにする。
2)進行癌を見つければ良いので、写真の枚数を少なくしてしまう。二重造影法にこだわるのをやめる。
3)読影はコンピューターで行う。
などとするのはどうでしょう。

もう一つの提案は、検診を1年区切りとはせずに、2年、3年、5年で区切って受診率を出す事です。
今は1年区切りなので、受診率が低いとなると「検診を受けそうな人」に絨毯爆撃のようにお誘いの手紙を送るというような事が自治体で行われています。しかしそれは疾患の発見率を上げないばかりか、偽陽性ばかりが増える結果となりはしないかと危惧します。そこで例えば現在1年で受診率40%をノルマとしているのであれば、2年で60%のノルマ、3年で70%、5年で80%にする。すると見かけではなくて、実質的に受診率が上昇するため疾患の発見率が増えるだろう。その方が公衆衛生には貢献するのではないか、と思うのです。

そしてやはり大切なのは、最後の砦である内視鏡を楽に出来るようにする、という事なのかもしれません。内視鏡は自分一人が上手くてもしょうがないのです。




伊勢原市の方については個別に相談してください。その方にあった方法(費用と効果のバランスおよびその人の年齢・リスクを考慮した)をお教えできます。
遠い将来:超音波やテラヘルツ波などを用いた安価で信頼性の高い、もちろん診断はすべてロボットやコンピューターを使用しますが、そうした検診が登場することを期待しています。

2013/08/11

薬が効かない

人が出した処方を見ていると、
「こんな全部入りないだろ」
と思う事があります。

そんな処方では、私の単純な脳では、患者さんが「効果がない」と言った時に
どう効かないのか理解を超えてしまうからです。オーバーフローとも言います。
自分には出来ない処方です。

3種類で閉口し、5種類超えるともうだめで、
「一旦すべてお休みしてみて…」と患者さんに提案してしまう事があります。
一種の敗北感であります。

私がいわゆる「漢方薬」に手を出さない理由は、漢方薬の売られているエキス剤そのものが合剤でありまして、上述したところの「全部入り」であるからです。したがって私のような考え方ではオーバーフローしてしまう。
メタ知識を積み重ねるというような別の論理が必要になってきます。
それが理解できて時々「なるほどな」と思う場合があります。
証と言う考え方は実に理に適っていると思うのです。混乱を避けるという意味で。

しかし取りあえず「漢方薬のエキス剤」も一種類、として扱っております。

3種類ぐらいまででしたら、他院から「効かない」と受診された時にこう提案します。
薬A、薬B、薬Cがあるとします。

現在はAxBxCという組み合わせで飲んでおられる。
これを
AxB
BxC
AxC
という組み合わせに変更して一週間ずつお試しいただいて、
症状に変化がないかどうかを見てもらう。
そうするとひとつの薬が効果を相殺してしまうために効かない場合に、
薬を減らした方が効く、という事があるのです。
さらにシンプルに
A
B
C
単独でお試しいただくこともあります。

4種類ですとこうなります。
AxBxCxDという組み合わせで飲んでおられると、
AxBxC
AxBxD
AxCxD
BxCxD
となり、さらにもう一つ抜くとすると
AxB
AxC
AxD
BxC
BxD
CxD
という組み合わせでお試しいただくことになります。

お薬を抜いてみる場合には、それほど膨大な組み合わせにはならないのですが、
それでも試すには時間がかかります。
こうした理由で他院でお薬が増えてしまった症例を診るのは苦手です。増やした先生がどうして増やしたのか、お薬手帳で手に取るようにわかる場合があり、この場合には少々楽です。
ですからお薬手帳すらもたない患者さんが受診されると我々から「おうちからとっていらっしゃい」と言われるわけです。

では薬は一種類からだんだん増やした方が良いのでしょうか。
必ずそうすべきなのでしょうか。
そうでないから医学は難しいのです。
漢方薬が一定の効果があることからわかるように、組み合わせには組み合わせの利点もまたあるのです。
経験上、そして生理学や薬理学などから考慮すると5種類の薬が今は必要だ、と思う場合は当然あるのです。

ただ、全然効果がないと患者さんが言う場合に、
「引いてみる」という発想がある医師とない医師がいることに気づいておられる皆さんも多いのではないでしょうか。
その発想がない医師は、生理学だとか薬理学よりもメタ知識を優先して医療をしている、そう思う場合があります。EBMの意外な落とし穴もそこにあるのです。EBMは組み合わせに対応できるほどまだ洗練されてはいないのです。そこをICTで解決しようというのがひとつの夢ではあります。

さらに患者さんのインテリジェンスと気分(ムード)が実際には因子として加わってきます。
周期的にムードが変化する患者さんは一定数おられ、しかも周期が年単位だったりします。
「薬が効く」「効かない」の訴えが安定しないことや、自分での工夫をしない、薬の淘汰のようなことが生活のなかで起きないのが特徴なのである程度「ムードが影響しているな」というのはわかるのですが、そういう方への干渉、介入は大変に難しいのです。
薬が効かない方の中には一定数そういう方々がおられます。

一方で全く誤診であるという場合もあるのです。それは診断がまず間違っている、という意味です。

本来、薬が効かないという場合には、上記のように「投薬があっていない」「患者さんのムード」「診断の間違い」の三点を基本にして考え直すのが基本ですが、そこに時間とコスト、医療リソースの無駄遣いがないかどうかのバランスを加味します。

2013/08/06

残便感、と言う名のゴースト

「残便感」は「テネスムス」とも言います。直腸がんや潰瘍性大腸炎の症状として有名かもしれません。

「のどがつまる感じ」と共に、患者さんが頑固に理解してくれない症状のひとつです。

今日はそれをなんとか説明しようと思って、図を書いてみました。


これは便の入っていない状態での直腸~肛門の断面のつもりで書いています。
肛門にうっ血もない、正常な状態です。


青いボールは大便のつもりです。排便直前の状態だと理解してください。
排便がする、っと行きますと正常な状態にまたもどって終わりです。
しかし排便に苦労するとどうでしょう。
1)便が硬かった。
2)便が少ないのに、もっと出るはずだと思って息んでしまう。
3)便が柔らかすぎて、何度も何度も出そうとしてしまう。


するとだんだんうっ血が起きて浮腫んできます。
赤い部分がそうですけれども、排便直後に子供さんではまずそういう事はありませんが、肛門が逸脱して飛び出たままなかなか戻らない状態に陥ります。ここで「ただしいお尻の拭き方」という記事で書いたように、きちんとケアすればそれ以上は悪化しませんけれどさらに息み続けるとどうなるでしょうか。


直腸の平滑筋は一生懸命収縮しようとした挙句、かなり肥厚ししわもよります。そして粘膜の浮腫も増悪してかなりのボリュームになります。そこにまだ大便があるかのような感覚が生じます。図は強い筋緊張を表現してみました。もちろん肛門の浮腫もまた違和感の原因になるのです。こうなると気持ちが悪くてしょうがない。下剤を増やしてみたり浣腸してみたりいろいろするのですが、状況は悪化するばかりです。

「先生、いつも便が残っています」
「本当に残っているなら浣腸したら出るはずでしょう?」
「あんまり出ません。上の方に残っているんでしょうか?」
「それはまた別の症状が出ますので肛門の違和感の原因は違いますよ。原因は息みすぎによる浮腫みなどですよ。便が残っているように感じてもそれは便ではなくて、幽霊みたいなものです。そこには何もないんです」
「下剤を増やしてみたんですが、出ないんです」
「柔らかくしたり、大腸を刺激すれば、便の量自体はもっと少なくなるし、息む回数がふえるだけだから症状が悪化してしまいますよ」
「レシカルボン坐薬は少し良いみたいです」
「いいところに気づきましたね。二酸化炭素で直腸を膨らますことは症状を改善してくれますね」
「座薬も使っていいんでしょうか」
「むくみを取る目的で使うのは良いでしょうね」
「下剤はどうしましょうか」
「減らすのが良いのではないでしょうか。今便が柔らかいのであれば、腸内で十分に便が発酵している時間もないのでしょう。それでは十分な量の便にはなりません。便を増やすためには不溶性の繊維はだめですよ。ごぼうなんかはだめですね。水溶性の繊維質は大目に。油もある程度とらないとだめですよ」
「便秘するのは怖いです。痛くならないでしょうか」
「実際その恐怖があるからどんどん下剤を増やす方がおられるのですが、どこでバランスをとるかという事が重要なので、1日1回の便に必ずしもこだわらない方が良いです。きめ細かく、先手をとりつつ調節できれば良いのですが、あなたはある程度観察力があるから平気でしょう」

以上はもともと便秘で、便通をやや柔らかくしすぎた方に対する指導の一例でした。

お尻のトラブルは結構多いみたいです。神奈川県内にはその道で超有名な病院があるのですが、その病院の先生方の指導を患者さん経由で拝聴すると「うーんさすが」と思います。

2013/07/31

本当の情報を探すには

いろいろな健康の情報があって、大抵嘘ばっかりですが、
私がどう読むかというのを簡単に書きますと、

ある程度の文章を選択して反転させる。
(コピペ、パクリを検索するためにある程度長く選択すると良い)

反転させたら右クリックして、
Googleで「・・・」を検索(S)を選ぶ。(Chromeの場合)

すると別タブで検索結果が表示されるのでコピペ、パクリ、元ネタなどのヒントがないかどうかをチェックする。これを何度も何度も繰り返す。

大抵は元ネタがあって、ははん、こうやって切り貼りをしているな、と楽しめば良いです。

ゆらぎやすい表現の用語を探す。
例えば「合成添加物」という名称は様々なバリエーションが存在し、それ自体は正式な名称ではないようだ。
これも反転させて検索すれば良いが、よりきっちりやりたいときには、
「site:go.jp」
を加えて検索すればその用語のゆらぎがわかる。
科学的な文章では、用語には必ず定義が存在するけれど、表現にゆらぎのある用語を使っている場合にはその内容も信用されにくくなるのは当然のことだ。
「胃ポリープです」というような曖昧な表現を使う医者を、このブログの読者は信頼しないでしょう?それと同じです。

時間があればキーワードをGoogle Scholarで検索する。

私の方からは以上です。

2013/07/27

医者に関する口コミについて

プロの料理人は100皿作ったら、100皿美味しいものを作るのでしょう。

プロの医師が100人診たとして、「良かったな」と思うのは30人もいれば上等でしょう。あとは後悔だらけです。

幸い人間の病気というのは放っておいてもかなり治ってしまうので7割の失敗は隠蔽されてしまいます。それでも失敗は失敗と言えます。

ほとんどの場合、結果だけで見れば大失敗には終わらないので、当たり障りの無い事をしていれば医者は良い評判を得るでしょう。そのような背景がありますから、医者に関する口コミは、あの占い師は当たる、と同程度の信頼度しかないと思います。根拠のほとんどが偶然に依存しますので。

内視鏡のように単純に「痛いか痛くないか」で患者さんが判断するような検査はなお混乱します。医師の本当の実力は「痛いか痛くないか」というような次元とは別の次元に存在しますので。もちろん苦痛がない検査を提供するのは最低条件だと思います。しかしそれ以上に正しく所見を読めるかどうかが大切なのですが、みなさんにはそれを判断する拠り所はないわけです。

それでも口コミは重要だと思う人が多いかもしれませんので私の意見を述べます。私は口コミ情報には少なくとも投稿者の住所は入れるべきだと思います。口コミを投稿する人の住所が医療機関から遠い場合にはその口コミを信用するべきではない。遠くから受診するというのはかなりのでたらめなバイアスがかかりますから。

2013/07/24

メンソールタバコは禁止してください

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130724-OYT1T00476.htm

 【ユマ(米アリゾナ州)=中島達雄】米食品医薬品局(FDA)は23日、メントール入りたばこは通常のたばこより中毒になりやすく、禁煙しにくいとの評価結果をまとめた。
 メントール入りたばこの販売禁止も含めた規制導入を視野に、米国で意見募集を始めた。

ということです。

さすがアメリカ、と思います。
オバマさん、諦めておりません。

http://blog.ukawaiin.com/2010/04/blog-post_14.html


私以前に、「合衆国でメンソールタバコ規制へ」という記事を書きました。

メンソールタバコを吸っている、というだけで患者背景としては重要な情報としているほどです。

日本では一向にその気配がありませんが、私は日本の現状に呆れつつも今後も定期的にこの問題についてはブログに書こうかな、と思います。

メンソールのタバコを吸っているグループは、そもそもタバコを吸うのに耐える呼吸機能、消化機能を持たない人々です。悲劇です。

医療における下請け、孫請け構造

どこの下請けも一緒かもしれませんが、
医療における下請けの場合には下請けのほうが医学レベルは高い事が多いです。
むしろ契約元の事前の評価が不十分なためにしばしば問題を起こす場合がありますが、最初から下請けに任せておけばあまり問題はなかったと言うケースも多いです。

医学が他の領域と違うかもしれないのはマネジメント能力も下請けのほうが優れていることが多いので、患者さんは下請け、孫請けの先生に鞍替えしたほうが得する場合が多いかもしれません。

よく患者さんから、「あの先生が直接診てくださらなかった」との感想をいただきますが、私が言うのは「良かったですね」の一言です。

2013/07/12

ここはテストに出ますよ!

私の横で関係なく行われていた会話なのですが、なるほどと思ったのでメモ。

「私、この範囲出ると思ったのに、テストに出なかった」

「大事なのは教科書でしょ、まずこっちをしっかり勉強でしょ」

「え、だって先生はプリントがテストに出るって言ってたもん」

「そう言わなきゃ、プリントを勉強してくれないでしょ。前回も先生同じパターンだったでしょ」

「あそっかー」

「って、昨日何度も言ったでしょ」



先生の、ここはテストに出ますよ!は確かに+αを勉強させるための一言ですよね。

しばらく学校に通っていないから忘れていました。

+αだけを勉強しちゃう子、ってどの世界にもいますよね。

医者には結構多いんですよ。

2013/07/09

ヨーグルトとぬか漬けと納豆

ビオスリーという整腸剤があって、ラクトミン(乳酸菌)(Streptococcus faecalis) 酪酸菌(Clostridium butyricum) 糖化菌(Bacillus mesentericus)の3つが入っている。酪酸菌はミヤBMにも入っている。糖化菌は納豆菌と似ている。なんだか万能薬な気がするのでこれをメインで使っていますが、整腸剤っていうのは患者さんにより反応が違いますので注意を要します。

ところでヨーグルト全盛ですけれど、個人的にはヨーグルトを沢山食べている人の大腸は洗浄が大変だったりしてあんまり好きではないのです。なんだかベタベタしている。ビオスリー飲んでいるときれいなのだから、乳酸菌が悪いわけではないんでしょう。乳成分が悪さするのかどうか、わかりませんが。あくまで個人的な印象を述べただけですから責めないで下さいね。そういう印象を持つ人は500gとか平気で食べるんですから。そんなに山ほどヨーグルトを食べて大腸が健康になった気でいるのはどうかな、と思っています。牛乳だけを山ほど飲んでいる人はあんまり患者さんでは見たことがないから良くわかりません。自分にあう整腸剤があったらそれを飲んでいる方が良いのでは?などと思ったりはします。

適当にいろいろな細菌が口から入れば良いと思います。過度な発酵が起きないようにするのは咀嚼が最も重要だとは思っています。あとは胃酸も大切で、胃酸である程度殺菌される事は腸内細菌の恒常性を保つには大切なのではなかろうかとも考えています。PPIを飲んでいる患者さんや萎縮が高度な患者さんではしたがって、便通の事をよく聞いていますけれど私の意図はわかっていただけていないと思います。

乳酸菌は微好気性だからぬか漬けなんて、ちょっと染み込んでいるんでしょうかね。だったら胃酸で死なずに腸に届きやすくてなおさら素晴らしいじゃないか。糠に付ける前に野菜を冷凍にして細胞壁破壊しておいたりするとどうなんでしょうか。もっと良いぬか漬けにならないでしょうか。
ぬか漬けには、混ぜる人の手に付いている常在菌が供給されますが、毎日ぬかを混ぜて、塩分を濃くして、微好気状態にしておくと大腸菌とかウェルシュ菌は増えずに抑制されていて、うまいこと乳酸菌が増えてくる。おそらく混ぜる人のうんちの乳酸菌と同じ組成なわけでして、できることならばいいうんちを作っている人のぬか漬けが良いんじゃないかと思ったりします。

という話をしましたら、頭脳明晰で一番尊敬しているある先生が、「ああ、うちの商店街でめっちゃ売れてる八百屋さんのぬか漬けはたぶんそれだわ」と仰っておられました。

便の移植、っていうのはコアラがもともとやってますし、C. difficileの治療のためにやりますが(Nature Medicineって雑誌にも出たみたい)、日本じゃもともとやってたという事で、それと引き換えに高血圧になってしまったってことでしょうか。

ヨーグルトは自作するとどうかっていうと、どんどんコンタミネーションが起きて、素人さんが作っているとやがて大腸菌が増えてしまいます。まだカスピ海ヨーグルトの種菌が売っていなかった頃に、何年も継代した結果とんでもない状態になった自作ヨーグルトを飲んでおられた方がおられてびっくりしたことがあります。全くとろみがないそれはカスピ海ヨーグルトではないよ。大腸の中も偽膜のような物質だらけで大変でした。

納豆は大豆が原料、というのもなかなかのもので、それが食物繊維の供給元にもなる。これも大発明ではないか、と思います。ちょっと理解が難しいのだけれど、通常はネバネバっていうのはメタン産生菌なんかも出します。ネバネバが健康にいいとか嘘ばっかりなので注意したほうが良いです。納豆のネバネバは悪くはないと思うけれど、通常は腸内細菌のネバネバってのは悪玉菌が増えている状態、って解釈できますから。

ヨーグルトをdisっているわけではないですが、なんでも食べ過ぎは良くないわけでして。
もちろんぬか漬けもその塩分量から敬遠されがちで。
結局指導するのはなかなか大変で、「整腸剤出しときますねー」になってしまう。

だいたい清潔なものばかり食べ過ぎて、細菌が供給されていないというような問題もありまして、現代ではいかに腸内細菌の恒常性を保つかというのはなかなか重大な問題であるように思っておりますが、なかなか複雑で、またノーベル賞がもらえるわけでも儲かるわけでもない基礎研究にお金が回らないからそんなに進歩しているわけでもない。(お金がまわりはじめたので、そこそこいい加減な研究がめちゃくちゃでてきた2016年追記)そこにいい加減な連中がつけこみ易い隙が生まれています。

私も腸内細菌ネタは自分の飯の種であることは事実で、そういういい加減な連中の一人かもしれない。

あなたの街の商店街に、おなかのめっちゃ強い八百屋さんがおられて、その方がぬか漬けを作って売ってくれれば良いですね、という話です。

2013/07/08

こういう腹痛・下痢がある

下痢腹痛が主訴の比較的若い女性の大腸内視鏡をしたときに、

1)RSを超えたあたりで軽く骨盤壁と大腸とがくっついているらしく、簡単にアルファループは作らせてはくれないし、そもそも動かない。
2)で、直線的に入れようとするのもなかなか難しい。
3)結局左回転で小さなアルファループを作ってからライトターンショートニングで直線にする、を数回繰り返さないとSDに到達しない。
4)挿入に15分以上かかってしまう。
5)大腸検査は痛くないよ、と言ってしまった手前、焦る私。
6)下剤を飲んだらすぐに透明になっているのに、便が残っていたりする。
7)S状結腸より奥の方は結構大腸が拡張蛇行している。

というようなことを経験することがあります。

骨盤内では大腸が癒着していてもそれがイレウスの原因にはなりにくいので、実生活には問題はありません。癒着はどうして起きたのかと問われるとわからないけれども、腹腔内で出血などがあってそれが糊の役目をしたのでしょうか。

でも癒着がある部分で少し便が通りにくいからこそ、下剤をかけても便が上のほうに残っているのでしょう。普段は普通に通っていても、どういう加減か屈曲が強くなってしまうと通らない。そしてそこを通そうとすると大腸の内圧を上げざるを得ず、勢い余って一気に出てしまうので腹痛・下痢になってしまうのではあるまいか。

痛みが月に一回、排卵と月経の間ぐらいだったりすることがあります。その時期は腸も少し浮腫気味になるのかもねえ、というような話をしてお茶を濁します。(見たわけじゃないが、経験上そういう女性が多い)

自分が専門家だったら腹腔鏡で見てみたいところだけれどそれも能わず、そういう時期には繊維質、特に根菜類は食べないこと、調子の悪い時期にガスコン+ビオスリー、あるいはそれに塩類下剤を加えること、などを指導しています。下痢なのに、下剤を出すわけです。

2013/07/07

「はじめて」を追体験してみよう

むかしむかしの記事が最近またはてブに登場して、もう一度読み直しました。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0925/high43.htm

「ポップカルチャー」という言葉で彼が表現したのは、
「勉強するよりも作っちゃった方がはやい」という世界。

車輪は再発明せよ、は現代の合言葉のようになっていますけれど、
なかなかそれでは遅々として世の中は進まない、と彼は嘆いているのでしょう。

アラン・ケイは決して気軽に
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」
The best way to predict the future is to invent it
と言ったわけではなくて、

それが出来る才能の持ち主が才能に溺れることなく、過去を勉強して
車輪の再発明をすることな全く新しい概念を提唱して乗り越えて行け、
と言ったのではないかと今ではわかります。

彼は全世界何十億人の中の数百人に向けてこの言葉を訴えたかったのではないか。

私が医学関連で何かを思いついて「これはナイスアイディアだ」と思った時に、
きちんと勉強しなおすとたいてい1950年代にすでにアイディアは出ていたりする。
文献検索は1960年代後半からしかコンピューターに入っていないことが多いのですが、
苦労して検索すれば先人の輝かしい業績が必ずあるものです。
それは自分の無能さを思い知らされることだから、
勉強することなど馬鹿らしいと思う事は今でも良くあります。

勉強はそうした虚しさを感じさせるけれども、
同時に発見した人の「!」を追体験できる機会でもあります。

勉強には落胆と喜びとがあるように感じています。
自分はしかし選ばれた人間ではないので、本来は喜びだけを感じるべき人間であろうと思います。
がんばって勉強したいと思います。

ところで二酸化炭素内視鏡についてレクチャーしてきました。
(第13回日本実地医科消化器内視鏡研究会・会長 増山仁徳先生、座長 南康平先生)
そして私が目論んだのは、聴衆のみなさんが「二酸化炭素を応用した先人たちのはじめての感動」の追体験が出来れば良いなという事でありました。


もともとマンニトールを使用した腸管洗浄は可燃性ガスを産生してしまい、腸管内でエレクトロサージャリーをする際に爆発する可能性があります。その危険をさけるため窒素や二酸化炭素などの不燃性ガスを硬性内視鏡での手術に用いたのは1950年代と非常に古い話です。1968年にポリペクトミーが発明され、1970年代は盛んにポリペクトミーが行われだした時期のようで、不燃性ガスを使うと安全だという認識が欧米で広がりだしていたようです。最初、二酸化炭素は防爆目的で使われていたのです。


1974年にはシカゴのロジャースらからの最初の報告があって、10例のポリペクトミーを二酸化炭素内視鏡下で行って安全であったと述べていますがこの時に腹満感の軽減もメリットだ、と記述しています。これが見つけうる限りは最初の報告です。


1980年ころ、有名なロンドンのセントマークス病院Dr.Williamsが来日され「二酸化炭素を使った注腸バリウムは安全で楽である」と発表されたのを私の父が聞きました。父は英語が大変得意な人なのでDr.Williamsに「内視鏡ではどうか」と質問をしたそうなのですが、Dr.Williamsは「もちろん楽である」とお答えになったそうです。すなわち、このころDr.Williamsは「二酸化炭素を使った内視鏡は楽だ」という認識を確実にお持ちだったと思います。セントマークス病院に留学された先生は何人か存じ上げておりますが、その頃の歴史についてご存知の方はおられませんでしたし、二酸化炭素内視鏡について言及された記憶もありませんので確実ではありませんが、おそらくDr.Williamsは未来が確実に見えていた方なのだろうと思います。そして父が日本で二酸化炭素内視鏡をスタートしたのは1982年の事でした。
調べてみるともともと防爆目的で二酸化炭素や窒素を使う為の送水タンクはオリンパスのカタログに記載されていたため、半ば拍子抜けした形でボンベを内視鏡装置に装着して内視鏡をはじめたところその効果に驚いて、以後はずっと注腸バリウムや内視鏡ではもっぱら父は二酸化炭素を用いておりました。したがって私が医者になった1990年には二酸化炭素内視鏡しか目にしていない、という事になりました。

ところが実際には爆発的な普及にはいたらなかった。不燃性ガスであるという事がその理由ではないだろうと思います。それはなぜか。


炭酸ガスボンベは法律で緑に塗るように決まっています。私も最近知ったのですが、ミドボン、ミドボン、と呼ばれています。みどりのぼんべだからミドボンなのだそうです。どうも巷では、ビールが大好きな人が自宅でビアガーデンをやろう、などというときにこのミドボンを使う、というような事が昔から行われているようなのです。また工業用にはそれ以上に広く使われておりまして鋳造用、中和用、冷却用などきわめて応用範囲の広いものなので興味のある方は調べてみてください。


医療用炭酸ガスは、その口金がすばやく交換できるように工夫されている点と法定点検が3年に1度と、他の5年に比較すると少し間隔が短い事がありますが中身は工業用と同じで石油の精製をするときの副産物であります。7kg(10L)入り、2.2kg(3L)入りが一般的でありまして、当院では7kgを使用しておりますがポータビリティーを考えると2.2kg入りが便利かもしれません。ただし、リフィルは両方ともほとんど値段が変わらないようなのでお得なのは7kg入り、という事になります。
残りの炭酸ガスの量を推測するには、ボンベの重さをはかるのが一番良いのですが現実的ではありません。そこでボンベ内の圧力を測定します。
炭酸ガスの圧力ですが、気化した炭酸ガスは摂氏20度では56気圧程度になります。
今は圧力にはパスカルという単位が用いられ、1気圧は1013ヘクトパスカルであることはみなさんご存知だと思います。すると減圧弁のゲージには5.67MPaと表示されておりますが室温によって随分違いますので、夏は高く、冬は低いということになります。季節感を感じることが出来、なかなか風流です。だいたい5、と覚えてください。
私どもが使う7kgタイプのボンベには最初3500L相当の二酸化炭素が入っておりますが、上の図を見ていただくとわかるでしょうか、液体が中に残っている限りは圧力は微動だに変化はしません。しかし中の液体が無くなると急に圧力が低下し始めます。そこではじめて「あ、もうすぐだな?」とわかるのです。2.2kgタイプですと圧が下がり始めたときにできるのはせいぜい数人ですので気を付けてください。


父が1982年ごろに二酸化炭素で内視鏡をはじめたと申しましたけれど、1984年には先ほどのDr.Williamsが二酸化炭素は苦痛が少ない、という事にフォーカスしたはじめての論文をお書きになっておられます。(論文を書く、というのは大変な事です)

これが防爆目的から、安全で楽な内視鏡へ、という転換点であります。
全く偶然とは思えないのですが、1984年はEMRの発明の年です。
1968年のポリペクトミーの発明が防爆目的での二酸化炭素使用を後押ししたように、EMRの発明は安全で楽な内視鏡への転換とほぼ同時期に起きました。そして実はESDの発明の時期と、後ほど述べる二酸化炭素送気装置の発明がまたリンクしているのです。

実に、実に、興味深い事です。


1986年に、先ほどのシカゴのロジャース先生とほど近いイリノイ州、ファオサワーディ先生から二酸化炭素内視鏡が、イリノイ州ですら10分の1ぐらいの病院にしか普及していない現況を嘆く報告が出ています。これと同じ号にDr.Williamsのコメントが載っているのですけれどこのような記述があります。
1)二酸化炭素用のボタンが使いにくい
2)送気送水とガスとの切り替えが煩雑だ
3)オリンパスやフジノンの機器の開発はどうなっているのだ
というような内容です。

専用ボタンを使わなければならない、というような思い込みは普及の障害であったという可能性は否定できませんが、しばらく足踏み状態となりました。

一方鵜川医院では専用ボタンを使わずに(二酸化炭素が漏れることは気にせずに)「簡単簡単♪」と気軽に内視鏡のトレーニングを受けている私の姿があったというわけです。


さてよくある質問として何人ぐらいできる?いくらかかる?というものがあります。
7kgボンベ3500Lですから、1分2L使うとして1700分検査ができます。実測すると100名ぐらいで交換なので一人17分ぐらい使っているのでしょうか。2.2kgボンベですとその1/3ぐらいです。値段は7kgボンベのリフィルに3200円支払っているのですが、これは小さいボンベでもほとんど同じなので大きいボンベでは一人30円、小さいものではその3倍ぐらいかかるのでしょう。しかし術後に全く訴えがないために、回復室でのナースの仕事は激減します。この人的コストを考えると安すぎる、というのが実感であります。


またボンベがいくつ必要か?という質問があります。
当院は1台の内視鏡ですが4本。1本2万5千円ぐらいで高くはありません。2本なくなったところで充填していただく、の繰り返しとなっています。
2.2kgのボンベの場合には6本ないし8本用意すれば良いと思います。もちろん1万円しないのでもっと用意しても構わないと思います。入手性の悪い地域は少し多めに用意した方が良いのかもしれません。


さて1986年に「機械がないから普及しないのだ」と言われて約15年、2002年にはじめて商用の二酸化炭素供給装置が登場しています。カナダからの報告で前向き研究が行われました。この年はあちこちから前向き研究が報告されています。これはオリンパスECRと言って、イギリスのオリンパスが作ったようです。かなり大きな機械ですね。2002年にはそのような報告がいくつかあって、有名なクリーブランドクリニックからも論文が発表されています。


日本ではどうか、2003年に渡辺七六先生から、2004年ごろには国立がんセンターより学会での報告がみられます。TOSCAの登場もありました。私がいた癌研も有明病院にうつった2005年、上司の高橋寛先生のご判断で二酸化炭素内視鏡を導入しました。そのころウォータープリーズも作ったのです。やるなら上部も全例やろうということで健診センターは全例二酸化炭素になりました。喜んだのはナースで、「ストマからのガス抜きをしなくても良い!」と興奮気味に報告してくれたことが強く印象に残っています。便利だったのは流量計で、今までは気圧を0.2とか0.3気圧にしていたのですが実際にはスコープで流量が変わってしまうので経験が必要でした。しかし流量計によって2L固定などとするのが楽で便利になりました。また三方活栓を用いるアイディアも癌研のスタッフによるものです。


オリンパスUCRですが、「簡単にすべし」という高いハードルを良く超えてきた、と思います。もともと二酸化炭素専用送ガス送水ボタンにはボタンを押していない時にガスの圧力が上昇してしまうという問題点がありました。これは気体すべてが持つ性質で、それが1986年ごろの欧米の先生方の不満につながったであろうと思います。専用ボタンを使用した時のUCRの挙動は想像なのですが、おそらくこうなっていると思います。(上の図を参照)送気ボタンから手を放すと二酸化炭素の圧力は上がってしまうのですが、それが上がらないように一定に保つように調節をするのだろうと思います。
一方で、普通の送気送水ボタンを使いますと常にガスは漏れ出すわけですが圧力はほぼ一定であり使い心地は良いです。減圧弁を使っている場合には専用送ガス送水ボタンを使うという選択肢はないと考えています。


富士フィルムもオリンパス同様に送気装置を用意していますが、添付文書をみると設計や専用ボタンを使った時の挙動はほぼ同じであろうと想像しています。


Pentaxはどうかと言いますと、もともとY字型の送気チューブが標準添付なのだそうです。従って減圧弁経由でチューブを接続すればすぐに使う事が出来るという事。
Pentaxは南米などでシェアが高いと聞いていますが、案外現実的な判断なのかもしれません。南米での二酸化炭素内視鏡の普及は意識改革のみで良いのかもしれません。


色々な先生とお話しする機会があり、こういう話を伺いました。有名な病院なのですが、二酸化炭素内視鏡が楽であることに感激した院長先生が30Lボンベを2台接続して集中配管としてしまったそうです。そして片方が空になったところで自動的に切り替えるようになっているそうです。なんと先進的な!

さて具体的に当院の方法を申し上げますと、7kgボンベに減圧弁を装着し、それに三方活栓をつけてON/OFFできるようにしています。それを専用送水タンクにつなげています。
上部内視鏡の場合はそのまま、下部内視鏡の場合には最初はOFFにしておいてウォータープリーズを使って挿入し、盲腸に到達したら送気をOFFにし、二酸化炭素をONにして観察を開始します。挿入時は体位変換はほとんどしないのですが、観察時には体位変換を行う事が多いのはおそらく二酸化炭素を節約しようという心理が働いているのかな、と思っています。


二酸化炭素内視鏡は大変有効で、下部内視鏡や治療内視鏡のみならず、一般医家にもっともっと普及してほしい方法ですが、少し気を付けるべきことがあります。
その一つは送気ボタンと送ガス装置が連動していないために、光源の送気はOFFにせねばならないということです。
また20度で56気圧、5.68MPaなのですが、これが下がり始めたときにあと何人、と意識せねばならない事です。
いくら楽だからと言って、際限なく送気すれば患者さんが痛がることはあると思います。
減圧弁を使用している場合にはバルブの閉め忘れには注意していただきたいと思います。

二酸化炭素内視鏡との出会いは人それぞれだろうと思いますが、みなさんの第一歩はいかがでしょう。
私のように、「気が付いたらそこに二酸化炭素があった」というような人間は、過去を勉強することでしかその追体験は出来ません。追体験が出来ないと、二酸化炭素内視鏡が有効であるとか、普及させようというようなモチベーションもわかないのです。

癌研の若い先生方、藤が丘病院の若い先生方は私と全く同じ立場であるはずです。しかしそれが当たり前だと思ってしまう事は良くありません。他の病院で二酸化炭素内視鏡がなかったら、是非導入してもらおう、そういったモチベーションを持っていただくためにこの記事を書きました。



2013/06/22

こういう雑談をします

内視鏡の説明の時に、魅力的な雑談をするのが医者の芸であり、患者さんのバックグラウンドを知っている故に占い師の領域を完全に侵してしまう事となります。申し訳ないとは思うのですが一種の特権ですのでお許し頂きたいと思う。

そしてこの写真を見ていただきたい。



いつも内視鏡をするときにはこのように声帯を見ながら挿入していきます。
患者さんは苦しいかって?
いえいえ、患者さんの意識はありますが、きちんと麻酔がかかっているから苦しくはないのです。

そしてあとで写真をみせつつご説明しますが、
内視鏡でこの声帯を見た時に私は、
「あなたは歌が上手いはず」
という。

これは占い師の話法です。

「いいえ、私は歌いません」あるいは「歌が下手なのです」と答えられれば、
「魅力的な声が出るはずなのに勿体無い」と答えれば良いのです。
でも、悪い気はしないでしょう?

歌が好きな方ならば大喜びするに違いありません。

私が「歌が上手いはず」と言うのはしかし根拠のないおべんちゃらではないのです。
ある程度の確信をもって私は「あなたは歌が上手なのではないか」と言う。
それはなぜなのでしょうか。

いろいろな職業の方の検査をしますが、その中にはプロ歌手も含まれます。
そして彼らの声帯は実に立派だなあとある日気づいたのです。

以後、歌が好きかどうかを患者さんから聞き、声帯の所見とあわせみると以下のような印象を持つに至りました。

1)ある程度の年齢になっても声帯が萎縮してこない人がいる。
2)タバコはもちろんアウトだが、声を出す職業の人の中にはかなり萎縮している人が多い。
3)しかしプロ歌手はボイストレーニングをつんでいるおかげか、萎縮していない人がほとんどだ。
4)ボイストレーニングとはいったいなんなんだ。少なくとも声帯を酷使せずに大きな声を出すトレーニングのようだ。
5)声の高い、低いはある程度声帯の長さに左右されるらしい。
6)しかし、声帯を強い力で閉じることが出来る人は高い声が出せるようだ。

ある程度の内視鏡経験でわかったことは、ボイストレーニングは重要らしい、という事でした。

たまたま歌が好きな人でありますと、そこから話が広がっていきます。
医者という芸事の面白さは、そうした一瞬にあります。

2013/06/09

小腸に常在菌はいるのか?

学生時代、小腸には常在菌はいないような事を習った記憶があるため、小腸の常在菌云々を最近になって突然言われてもどうも釈然としません。

疑問:常在菌がいるならば小腸ガスが全員にないのはおかしい。

小腸内には多量の糖分が存在するので常在菌がいるときには相当の発酵が生じガスが発生してしかるべきです。たとえ小腸に絨毛がいかに発達していようとも、二酸化炭素以外のガスが発生すれば、例えばメタンや水素が発生すればそれがレントゲン等で見えるはずです。

ただし、少しイレウス気味になっただけで小腸ガスが発生するところを見ると、少量の常在菌は当然のことながらいるのでしょう。

疑問:おそらく、微量の常在菌が存在するのであろう。では常在菌の恒常性はどのように保たれるのだろうか。

小腸内を食事はダイナミックに通過していくので、常在菌が住み着くとすれば絨毛の合間に付着する、という程度のものなのでしょう。そして濃い胆汁酸や膵液の存在下で生存が可能な仕組みがあるのに違いありません。そのような種類の菌は限定されているのでしょう。

疑問:なぜ小腸の常在菌が重要なのか。

経験的に、家畜に抗生物質を投与すると太ることが知られています。家畜に抗生物質を投与するのは感染防御のためというよりは、むしろ商品価値を高めるためのものと解釈しています。炎症性腸疾患や小腸憩室のような慢性の炎症があると、痩せていても脂肪肝になることがわかっています。このように、ある種の腸内細菌はメタボを抑制しているらしく、逆にその細菌が住みにくい、悪玉菌が多いような状況ではメタボは進行する、といった事がわかっていましたが最近徐々に証明されています。

何に気を付けなければならないか。

小腸の常在菌には未解明の問題が多いため、嘘をついてもなかなか見破りにくいという問題があります。免疫療法の黎明期がそうであったように、粗悪な医療は医療の発展を阻害しかねません。常在菌についてわかったことを言うような人がいたら気を付けましょう。

当院では何を気を付けてきたか。

例えばPPIでの心血管イベントの増加が、果たしてチトクロームP450のみで解決できるのか。ここまで読んで勘の良い方ならば私の考えていることは理解できるでしょう。私の考えが浅はかであれば是非指摘してほしい。
日頃の臨床での投薬は患者さんの全身状態を深く深く考えるところからスタートします。

2013/06/07

「教科書的な知識」とメタ化

メタ化:この言葉を良く私はブログで使用します。物事を事実ではなく、抽象的に理解する事を「メタ化」と呼んでいます。「○○は身体に良い」と言うような知識をメタ知識、と呼びます。





「その知識は常識だ」
「それは教科書的な知識だ」

と、教える側が言ってしまう場合があると思うのですが、
それを自ら戒めるべきなのではないか、と実習に来た学生さんに話していたのです。

「胸部レントゲンをどう読む?」
と質問をしたときに彼が答えられなかったのでそういう話になったのです。

学生さんには私が習った胸部レントゲンのEDBCAを説明しました。
あるいは他のソースに「胸部レントゲンのABC」というものもあります。
どちらも覚えやすいのでたまに小ネタとして話します。
(撮影条件をまずは語るべきですが)

「人に教えやすい」ということこそメタ知識の特徴です。マスコミはメタ化を利用して意図的に視聴者をコントロールさえできます。
すぐれた教科書は網羅的であるか、あるいは上手に知識がメタ化されているのが特徴だと考えています。
英語で書かれた教科書は私のような非ネイティブでもわかりやすい良い本が多いと感じますがその理由のひとつとしてメタ化がうまいのではないか。
読者が多いので当然なのでしょうけれど、非常に役立つ(人にも教えやすい)知識が多いから、英語の教科書(あるいはその訳本)は是非参考にして欲しい、と彼には申し上げました。

胸部レントゲンのEDBCAは「周囲から写真を読むこと」という概念が貫かれている良い読み方だと個人的には思います。実は胃や食道の所見も「周囲から読む」のが誤診をしない基本です。

Extra thoracic(胸郭外を読む、骨軟部組織、腹部頸部などもここに含みます)
Diaphragm
Central shadow(縦隔と心臓を含みます)
Bronchus
Airway

というのが私が習った胸部レントゲンの"EDBCA"です。習ったのが学生時代ですからずいぶん長い間忘れずに頭に留まっている良いメタ知識だと思います。

他にインターネットで見つけたABCには、

Airway
Bone
Cardiac
Diaphragm
E&F-equal (lung) fields
Gastric bubble
Hilum (and mediastinum)

Airway (midline, patent)
Bones (eg, fractures, lytic lesions)
Cardiac silhouette size
Diaphragm (eg, flat or elevated hemidiaphragm)
Edges (borders) of the heart (to rule out lingular and left middle lobe pneumonia or infiltrates)
Fields (lung fields well inflated; no effusions, infiltrates, or nodules noted)
Gastric bubble (present, obscured, absent)
Hilum (nodes, masses)
Instrumentation (eg, lines, tubes)

というものがありました。日本人には少し量が多いかも知れないな、と感じます。
でも参考にはなりますね。

医師の知識は他の職業における知識とは性格が異なるかも知れません。弟子に教え伝えることがすべての医師の義務であるとヒポクラテスの誓いに記されている事からわかるように、「教科書を読んでおけ」と言うような教育の形態はおそらく正しくはない。教える側には教科書的な知識のメタ化および、それまで自分が積み上げてきた知識から得られたメタ知識を弟子に伝えることが求められるのではあるまいか。一方教えられたことをただ実行するだけの能力の持ち主では医師は務まりません。「教えてくれ」というような態度の学生はすでにその条件を満たしてはいませんから、学生にも相当の努力が求められるでしょう。そして新たなメタ知識を獲得していくべきなのです。

と言うような事を話しました。

その(知識のメタ化の)練習は「勉強会」なのであろう、と話しました。医学において「勉強する」事は将来「教える」事をすでに要求されています。勉強としては非常にハードルが高いけれども、人に教えるつもりで勉強する(メタ化する)と知識が身につくし、逆に友人からメタ知識を教えてもらう事によって膨大な領域の知識を効率よく吸収することが出来る。

自分が将来開業などをするとすべての知識が要求されるが、ちゃんと出来るかどうかが心配だ、と学生さんは言いましたけれども、今自分が診療しているすべての知識は専門分野をのぞけば学生時代に身につけてしまったもので、それが通用しているのだから心配することはないのです。



学生さんには、「是非後輩に伝えて欲しい優れたメタ知識」を伝えたい。そのひとつは胃粘膜萎縮の木村・竹本分類です。

科学的な思考には、ときにメタ知識は邪魔になってしまう事がありますが、メタ化の練習をしておくことで、「これはつかえる」「これはつかえない」と判断することが出来るようになるはずです。医学の勉強とはそういうものだし、それが出来ると勉強はずいぶん効率的になります。(以前、法律家に聞いた司法試験の勉強の仕方も全く同じでした。記憶力ではないそうです)


2013/06/04

質問や説明に妨げとなる思い込みについて

外来では患者さんの思い込み、先入観がしばしば医療の妨げになります。

代表的な、毎日出会う先入観としては、以下のものがあります。

1)今までずっと大丈夫だったのだから、今度も大丈夫だ。
 サプリメントや薬の副作用、食べ物のアレルギーを突き止めるための問診を邪魔します。
 長く飲んでいるから大丈夫だ、いつもは平気だから大丈夫だという思い込みは間違いです。

2)他の人が大丈夫なのだからそれは原因ではない。
 同じものを食べた人は大丈夫だから食事が原因ではないはずだと決めつけて内容を全然話してくれないことがしばしばです。




会話というのは、シリアル(連続的)に情報をやり取りするコミュニケーションですから、順番に一定の重みづけをしてしまう傾向があることを否定は出来ません。
しかしある程度複雑な情報を収集するためには、一度情報を受け取って頭の中で整理しなおさねば正しい理解はできません。頭の良い人と会話をしていると、数分前の会話を引用しながらの複雑なものになります。それによって深いコミュニケーションが出来るのですが、普通はそうはいきません。したがって図を使ったりしてコミュニケーションの助けとするのが普通です。

こうした反応をする人々は、普段複雑なコミュニケーションには不慣れなのかもしれません。そこで自分で重要だと思う事だけを話そうとしてしまう。しかしそれでは正確な情報は収集しにくいのです。

そこでこうした工夫をします。

全く脈絡のない順番で質問していくのです。アルコールを飲みますか、という質問を前の方にしてしまうとそれが原因だと医者が考えているのだと勘違いして、「私は飲みません!」などと怒り出す人さえいるので気を付けたほうが良いのです。普段は朝何時ごろ起きますか?通勤は電車ですか?など当たりさわりのない質問をしてみたり、昨日の食事はなんですか?と聞くかわりに、一昨日何か食べたか思い出せますか?などと記憶力クイズのような質問の仕方をしたりです。





医師が先入観をもって質問しているのではないか、と思われてしまう事は避けたいのです。
そして情報にフィルターをかけてしまう患者さんほど、そう思う傾向は強いと感じます。
面倒なコミュニケーションスキルなのですが、普段の外来で気を付けていることの一つです。

2013/05/29

ヨーグルトの選び方

あくまで経験からきている話なのですけれども、
ヨーグルトはどう選んだら良いのですか?という質問にこう答えています。

便が軟らかい人は、古い商品(発売が古い商品)を選んだ方がトラブルが少ない。
便が硬い人は、新しい商品から試してみると良い。

「新発売のあれ食べたら下痢した」
のご報告が結構あるのです。
そのご報告をしてくださるのが元々軟便の方が多く。

ちなみに、ヨーグルトを食べるぐらいならば、
整腸剤の方がローカロリーで、安いので、私は整腸剤派。
整腸剤もおなじ傾向があって、新しい商品ほど便秘の人にあっている印象です。
マーケティングの変化なのでしょうか。



P.S.
腸内細菌でも、上行結腸、下行結腸、直腸のそれは組成が違うのだと言います。
カゼイ菌は直腸に住む、という報告を読んだことがあります。あの会社は私は結構信用しているので、直腸にトラブルがある人にはプロバイオティクスとしてあれを勧めたりすることはあります。

2013/05/19

二酸化炭素を利用した内視鏡-はじめの一歩-

第13回日本実地医家消化器内視鏡研究会
ランチョンセミナー2で講演します。

「二酸化炭素を利用した内視鏡はじめの一歩」

演者:鵜川邦夫(鵜川医院)

「二酸化炭素内視鏡が良さそうだとわかっていても、どうすれば良いのかわからない」という声が聞かれる。

当院は20年以上にわたって内視鏡時に二酸化炭素を用いている。

もともと防爆目的で不燃性ガスを送気するために送水タンクや専用ボタンは用意されていたのでそれを利用していただけである。当院での経験については2007年に論文として発表している。

癌研有明病院ではUCR®発売以前に導入し、そのメリットを享受している。以後も多くの医院・病院での導入に際してアドバイスをしてきた経験から最初に躓きがちな点について述べる。

  1. 二酸化炭素のボンベは酸素を買うのと同じ要領で購入する。医療用炭酸ガスと工業用炭酸ガスの違いは金具だけであり、医療用のボンベは簡易に交換できるような工夫がされている。3.4Lと10Lが一般的で、3.4Lを採用している医療機関が多い。ボンベや炭酸ガスは高価ではない。(地域によって値段や入手性に差があるのは事実)
  2. 減圧弁を自分で用意すれば(酸素の業者が数万円で制作してくれる)細かい流量の調節が可能であるが、一般的にはオリンパスの場合UCR®を、富士フィルムの場合GW-1を購入すれば良い。両社とも30万円程度であるがメリットを考えるとその価値は十分にある。ペンタックスは昔からY字チューブが標準添付されており、減圧弁あるいは流量計から直接つなげれば良い。
  3. 専用ボタンにこだわる必要はなく、通常の送気ボタンで構わない。むしろ細かい流量調節を行う術者はそれを好む傾向がある。二酸化炭素が漏れるのでボンベの交換頻度が増すが、極端に違うわけではない。当院での一例あたりのコストを計算するとノウハウがあるため30円以下であるけれど、概ね100円以下、と考えて構わない。
  4. 購入の予算よりも、術後のケアが楽になることのメリットの方がはるかに大きい。
  5. 安全性について、読んでおくべき文献を提示する。
  6. ボンベの替え時について最初は戸惑うかもしれない(UCR®に表示されるのは「供給圧」であって、「残量」ではない)ので、その原理と読み方について説明する。

2013/05/11

意外と重要な大腸内視鏡前処置の話

一定レベルの医師にかかれば、苦痛がないのが内視鏡検査です。
施設によって差はない、と言っても大げさではないかもしれません。
(自分は上手な先生しか知り合いがいないのでそう思うのかもしれないけれども)

しかし、前処置の方法は施設によってだいぶ違います。
こだわり方もそれぞれでしょう。

「無痛x大腸内視鏡」で検索してみるととてもおもしろいのですが、
同じ事ばかり書いてあってすぐ飽きてしまいまいました。
それよりもどういう前処置をしているかのほうが、自分としては気になります。

医師を選ぶのではなくて、どういう前処置をしているかで医師を選ぶ患者さんも増えて来ました。

電話をかけてきて「先生、錠剤で前処置をして検査をしている病院に紹介して下さい」と。

わざわざ探してさしあげる義理はないので、

「ビジクリア、というお薬だと思います。他に新しい下剤としてはモビプレップというのがあります。電話をかけて、お使いかどうか聞いてみてはどうでしょう」

とアドバイスすることにしています。

こういう電話、前回書きましたが、医者から情報を引き出すのに大失敗している一例です。自ら選択肢をせばめているのですね。

2L飲む下剤で味の点で評判が悪いのはいわゆるPEG製剤なのですが、
(海外ではこういう感じです。イメージ戦略に必死・・・かな?)
味が非常に硬い、と言いますか、飲みにくいのです。

しかし下剤はそれだけではありません。テレビで宣伝している方法以外にも沢山あるのです。

それをどう工夫して飲みやすくし、どの点で妥協しているかは施設によって異なります。
自分が尊敬する先生方は、検査が上手なのは当然で、このあたりのこだわりもすばらしい。
ただ、そういう情報はなかなか皆さんでは得られないと思います。

貴重なリソースとして、日本消化器内視鏡技師会のプログラムがあります。
患者さんのために工夫する熱意、はこうした発表の中にぎゅっと詰まっているのではないでしょうか。私でしたら「無痛x内視鏡」で検索したりしないで、このプログラムを丹念に読んで、「この施設はすばらしい」と思ったところに受診します。

2013/05/06

60歳

大腸がん検診の新ガイドライン(アメリカの)では、

60歳未満で大腸がん罹患の家族(親、子、ないしは兄弟:アメリカではFirst degree relativesと言われ、遺伝子を50%共有している間柄)が一人いる場合、あるいは年齢関わらず二人いる場合・・・・・には40歳、ないしはその家族の罹患年齢から10年さかのぼって最初の大腸内視鏡を受けなさい(その後も5年に一度は内視鏡を受けるなど、念入りなフォロー)。あるいは60歳以上で親兄弟に大腸がんになった家族がいる場合、ないしSecond degree relatives(遺伝子を25%共有している伯父・伯母、祖父母など)に大腸がん患者が二人以上いる場合には50歳時点で一回大腸内視鏡検査を受けなさい(以後は通常通りのフォロー)、という項目が設けられました。複雑ですけれどわかりますか?ひとりだけ大腸がんの親戚(親、兄弟以外)がいる場合には普通のスクリーニングで良いとされています。
(当方の過去の記事→こちら

例:親が55歳で大腸がんと診断された場合、その兄弟、子供は40歳時点で大腸内視鏡を受けるべきである。45歳で親が大腸がんと診断されたら、35歳で大腸内視鏡を受けるべきである。

この大腸がんは進行がんを想定してるのでしょうけれど、早期がんであってもこのガイドライン通りで良いだろうと思います。HNPCC遺伝子を持つ患者さんはかなり多いのです。大腸の早期がんをフォローしていると10年経ってからもう一つ大腸がんが出てくることはざらにあります。やはり60歳未満発症の患者さんです。

60歳の規定があるのは大腸がんのみですけれど、遺伝に関係のある癌として、
大腸以外に、甲状腺、乳腺、卵巣、子宮体部、噴門部、尿管、膀胱などがありまして、
やはり60歳未満発症かどうかは重要なのかもしれません。患者さんの家族歴を聞く際には、
「癌になった方がいるかどうか、そして癌と診断された年齢」
を必ず聞くことにしています。
そして大腸がんと診断された患者さんには、「兄弟が大腸内視鏡を受けているか確認をお願いします」と説明しています。
他のあらゆる癌についてもご兄弟やお子さんのスクリーニングの仕方をアドバイスします。

逆に、やけに癌を心配している患者さんの中には、
80歳の高齢で診断された親の癌にこだわっている方が少なからずおられるため、
「それはおそらく遺伝関係ない」と説明しておりますが、確固たる根拠はありません。

2013/05/02

StarbucksカードとTully'sカード

以前、みなさんが持っておられるおサイフケータイや、SUICA、PASMOなどを鵜川医院の診察券にするというシステムを作りました。もう3年以上前の事です。プログラムを作るのは簡単だったのですが、

いくつかの事情があってお蔵入りしました。
1)市販されているFelicaリーダーは、駅の改札口のリーダーのようにレスポンスが速くない。
2)ご老人には普及していない。
3)「自分のところの診察券を患者さんに持たせることが一種のマーケティングじゃないか、どうしてあえてFelicaで共通化する必要がある?」と医師の皆さんに意見された。

そして未だに鵜川医院の診察券をみなさんにお持ちいただいております。確かに役立つことがありまして、例えば意識不明で病院に運ばれた方が私どもの診察券を持っておられて、問い合わせがある、という事がございます。医療機関の診察券はマーケティング以上のポテンシャルは持っているようです。

ところでコーヒーは胃には悪くありません。コーヒーが胃に悪い、という論文はすべて1983年以前のものです。ピロリ菌の発見以前にはどうも悪役であったと考えますが、現在では逆に癌が少ないのではないか、などと言われます。実際どうかはともかく、胃潰瘍があるからと言ってコーヒーを飲まないでください、というようなことは申しません。調子に応じて召し上がればよろしいのです。

タリーズというコーヒーショップは伊藤園でしたか。スターバックスはシアトル発のコーヒーショップだったと記憶しておりますが、両方にプリペイドカードがあります。

スターバックスカードタリーズカードは少し違うのですが、どちらかというと前者が好きです。なぜかを書きます。

スターバックスカードタリーズプリペイドカード
クレジットカードサイズクレジットカードサイズ
磁気カード/バーコード磁気カード/バーコード
多彩なデザインデザインは1種類
10円単位でチャージ最低1000円からチャージ
自宅でチャージできる自宅でチャージできない
ドリンクの割引はない        ドリンクは1杯10円引き           
現金/クレジットカードでチャージ現金のみチャージ
特典:たまにカードに5000円チャージすると
一杯無料だったりする
オリジナルグッズ
オートチャージ
残高移行が出来る
特典:オリジナルグッズ
両カードとも個人情報は、収集されないと思います。どこかの黄色と青のカードとは違い。
スターバックスカードはプリペイドカード特有の「残高が無駄になる」を極力避けられるように工夫されているのが気に入っています。例えば残高が200円あるときに、あと160円チャージしてドリンクを飲んでチャージを0円に出来る、というところが違います。残高移行も出来る事も併せて多彩なデザインがある、という事が生きてくると思います。あ、良いデザインだな、と思った時にそのカードをパスケースに入れるという別の楽しみがありますから。
ドリンク1杯10円引き、は2%~3%に過ぎない上に、常に中途半端な残高が残るので全く得した感じがしないし、カードのデザインが楽しくないので軍配は完全にスターバックスにあげています。

当院の診察券は最近もう一度Felicaにしたいなと思っているのですが、なにか楽しい工夫があれば、スターバックスカード形式でも良いかもしれないとも思いました。沢山の絵柄を用意して、自由に変更したりできたら楽しいと思います。AppleのPassbookに対応させようかとも思ったのですが、とりあえず面倒なので誰かがやってからにします。

2013/04/30

ピロリ菌除菌の時に気をつけていること色々

以下羅列(思い出した順に書いています)

1)副作用対策:
下痢対策:レベニンSとかビオフェルミンRとか。除菌後にビオスリーとか。ヤクルトとか。
口内違和感対策:もともと歯周病がひどい人要注意とか、シェーグレンなど唾液が少ない人要注意とか。対策としてはデンタルフロスなど口腔内ケア一般、場合によってはビタミンB2、B6とか。
出血性腸炎:エコーでは腸管が非常に腫れていて、菌交代というよりもアレルギーである印象。レベニンSなどは予防になるかどうかはわからない。頻度は0.1%程度。入院しなくて済んだ症例では、ステロイドあるいは抗ヒスタミン薬+整腸剤で対処した。
蕁麻疹:1%。5日~7日めに出現。ひどい場合はステロイドで対策。軽い場合は抗ヒスタミン剤で対応。除菌成功例が多いのがせめてもの救い。
菌交代:日和見感染など、抵抗力の弱い人は気をつけた方が良いかもしれない。(New)
2)禁煙
絶対必要と考えている。除菌中だけでも禁煙した方が成功率が高い気がする。(データなし)
3)飲酒
フラジールでは禁酒。他はどうなんだろうか。
4)LG21
除菌後も延々と飲み続ける人、食べ続ける人がいるから注意。除菌前と除菌中には試しているが、前向き試験ではないので、効果についてはデータなし。
5)除菌後の肥満
対策は必要
6)除菌後の高鉄血症
肝炎が悪化することあり、注意している。
7)コンプライアンス
薬の飲み方がやや難しいし、実際間違って飲む人がいるのでパッケージになっているランサップは助かるが、homoEM、heteroEM群はどうするんだ、という話。各社パッケージにするする言う割には未だ出てこない。
8)腎機能・肝機能
クレアチニンが高い症例ではどうするんだ、という症例の蓄積がまだ不足。
9)年齢
高齢者での除菌のメリットと、副作用が生じた時のデメリットについての前向き試験はまだない。個別の対応は本当に難しい。
10)ペニシリンアレルギー
がある場合の除菌を保険がカバーしないのはどう考えてもおかしい。三次除菌をカバーしていないのもおかしい。
11)除菌が終わってもフォローが必要であることを理解していても来院しない患者さんは未だ多い。当院が予約しづらかったり遠かったり混んでいたり、という問題はあるだろう。
12)再感染は1000人に1人程度は毎年いるようだ。除菌したら終わり、というわけではない。
13)他院でピロリ菌陰性とされていても本当は陽性、という場合はあるから、油断しないこと。

2013/04/27

良い情報を引き出すには曖昧さが重要かと

我々は患者さんが知り得ない情報にアクセスしやすい立場にあるのは事実です。したがって患者さんは自由に我々に質問していただいて構いません。しかし、



患者さんから日頃質問を受けるときに思います。

検索エンジンに入力するかのように、自分の希望する医療を指定して、「名医を教えて下さい」という質問が多いのですが、それは検索エンジン+私の主観以上の情報はありませんからつまらないです。



「大腸検査って苦しいんでしょ、それは嫌だから無痛で出来る先生を探して下さい」という質問をする方がおられますが、
「無痛x大腸内視鏡x場所」で調べれば良く、患者さんが自分で検索する以上の情報は私は持ち合わせていません。



ところが、「大腸検査って苦しいんですか?」という質問ならば違います。
「どうでしょう、人によるんじゃないでしょうか」と答えるでしょう。
「人による、とは患者?医者?」
「どちらも、ですね。でも基本的には一定レベルの医師にかかればほとんどの方が苦痛のない検査を受けられたはずです。『大腸検査は苦しい』の意味するところは一定レベルの医師にかかっていないか、患者側の問題で非常に困難な検査であったか、あるいは両方か、という場合があるということです」
「では私はどうでしょう」
「あなたはわかりませんが、55歳以下の方では患者側が原因で苦労すると言う事はよほどの事がないとない。したがって年齢やあなたの既往歴から考えると一定レベルの医師にかかれば問題なかろうと思います」
「先生の考える一定レベルってなんですか?」
「それは・・・」

というのが質問上手な方との会話です。ここで一定レベル、という言葉を2回用いていますが、一定レベル=平均レベルではない、という事には注意が必要かと思います。ここから一定レベルの意味や、そうした医師を探し出すための方法を引き出す事に患者さんは成功しているのです。

質問をするときに、「大腸検査=苦しい」というような雑なメタ知識を前提にしますとコミュニケーションが崩壊してしまいます。また、自分の希望やゴールを細かく設定しすぎていてもだめです。何か情報を引き出したい時には曖昧さも重要な要素ではないかと思います。

2013/04/18

不安をもつ人々

高いリスクと高いリスクとを比較してその狭間で悩む、というのが私の理解できる「不安感」です。

例を挙げると、解離性大動脈りゅう(手術しないと時期はわからないが命に関わる)があり、そして手術の成功率が70%(慢性期の手術で、高齢などいろいろなリスクが積み重なってそういう説明になったことがありました)と言われた、というような場合です。これはどちらにせよリスクが高いわけで、それはそれは不安だと思います。



ところがコレステロールが高いことに対してHMG-CoA還元酵素阻害薬を勧められたが、薬で副作用が出たらどうしよう、みたいなことで不安になっている人がおられます。
薬を飲んで年間2000人に1人の心血管イベントを予防できる、というような話です。飲んだって飲まなくたって、1999人にはあまり関係のないような。薬の副作用も同じような確率でしょう、あるいはもっともっと低い。飲まないことのリスクは軽微だし、飲むことのリスクも軽微。これで悩んで不安になってしまう、という例が外来では多い。ローリスクローリターンの事例で悩むのは時間がもったいないと思います。

不安になってしまう人は、おそらく危険の見積もりが正しく出来ていないと思います。危険に関してなのですが、年間で1%以上イベントが生じるだろうと見積もられる場合にはある程度危険はある、と自分は考えております。0.1%くらいで微妙。それ以下だとコスト的には見合わないことが多い。そうした危険性を患者個々に加減して判断することを内科医は自然にやっているわけです。

我々が「心配しないで良い」というのはそういう背景があることを知っていただきたい。アクチュアリーほど頭が良くないので、それをなかなか言葉や数字にして説明できない事をご了承いただきたいと思います。

2013/03/31

機能的な異常のEBMには背景の細かい分析が不可避

題名の通りです。

なぜモサプリドを一律に逆流性食道炎に使ってはならないかの答えがここにあるのです。
(添付文書では適応症は慢性胃炎による胸焼けなどとなっています。なぜ逆流性食道炎がないのかを考えてください)



逆流性食道炎と呼ばれる病態の背景には、

1)胃の委縮の度合いとピロリ菌の有無
2)体重
3)性別
4)排便習慣
5)嗜好品
6)使用薬剤
7)体格や胃の形状
8)遺伝子の差

などが存在し、それにより投薬した時の結果は異なります。
これらを無視して治験を行ってもうまくはいかないのです。

便秘の新薬がなかなか出てこない、あるいは出ても売れない理由は同じではないでしょうか。


FD(機能性医症)、IBS(過敏性腸症候群)でも同様に背景を重要視しています。
もっともこれら二つの病名はほとんど使わないのですけれども。




そしてこれらの解決には、

1)ライフログ
2)高度な統計処理
3)ビッグデータの活用

が大切です。
つまり解決するのは医者ではなくて、数学の出来る科学者なのでしょう。
今は私の脳内コンピューターが大雑把なシミュレーションをしているに過ぎないのです。

2013/03/03

痛み物質

痛み物質(発痛物質)というものがあり、これが神経終末を刺激することにより、「痛い」と感じます。

カリウムイオン、水素イオン、アセチルコリン、ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、ATPなど、消化管に豊富に存在するそれらは、炎症が全くない状態であっても過度の緊張や、伸張、一時的な虚血などで神経終末を刺激することがあり、それが腹痛の原因となり得ます。

胃や食道の痛みは、カプサイシン受容体を介して感じているとされています。その受容体は粘膜の下の筋層にあります。その証拠に、胃や食道の内部を傷つけても痛みを感ずるという事はありません。カプサイシン受容体の名前の通り、トウガラシは神経にもしも触れれば胃が痛くなるはずですが、実際には食べても痛くなったりはしませんね?それは受容体が筋層にあるからです。
炎症が筋層に及んだり、あるいは筋肉の緊張があまりにも強い状態となったり、虚血状態になったり、あるい細胞間の隙間をイオンが浸み込んだりして刺激をした時にはじめて痛むのです。

「胃が荒れたから痛む」というのは医者が使う一種の方便です。一般の方にはカプサイシン受容体が間接的に刺激され痛みを感ずる事を説明しても直感的にはわかりにくいけれど、皮膚がただれると痛みを感ずるように、荒れた胃の内腔の写真を見せれば「痛そうだな」とすぐにわかった気になってくれるから多用される表現です。

毎月150人の内視鏡をして、そのうち除菌が必要な消化性潰瘍は平均して10人です。胃癌は1-2人。食道癌は1人以下です。半数以上はピロリ菌がいない人です。荒れていない胃は若い方の一部をのぞいてほとんどありません。残りの138人に「痛み」をどう説明すれば良いのでしょうか。

「胃が荒れてますから」と説明すれば30秒で済み、ほかの患者さんの待ち時間が短くなりそうですけれど、それでは嘘をついている気になってしまう。もちろん中には筋層まで明らかに炎症が及んでいる粘膜の方は数人はおられますから彼らに対する説明はそれで正しいのでしょう。しかしそれ以外の方には、「痛みと内視鏡所見とはそれほど関連がないのだ」という事を理解していただかないといけません。

その理由として、「胃の荒れ=胃の病気=痛み」と関連付けてしまうと、胃が痛むたびに心配してしまい、「検査をして欲しい」と言いかねないこと。つまり検査過剰になりやすいこと。次に、「痛みがないから大丈夫だろう」と、胃癌の高リスクなのに検査を受けない人が出てくること。痛みに対して臨機応変に対処ができないこと。間違ったメタ知識を他人に教えかねないこと。などが挙げられます。

ウイリアムボーマン医師が100年以上前にすでに報告していることですが、強いストレス状態では胃の出口~十二指腸の血流がかなり低下します。これだけで、長く正座をしたときに血流が不足して足が痛むのと同様に、胃が痛むことは不思議ではありません。その時にてのひらで静脈圧以上の軽い圧迫を加えるとおそらく静脈還流が良くなりますし、じんわり温めることで血流の改善が期待されます。また、例えば胃体部の筋肉が収縮して前庭部に圧力を与えていたとすると、てのひらでの圧迫によって圧力は分散させるでしょう。いろいろな理由で、「てのひらで心窩部をやさしくおさえると胃の痛みはとれる」のです。

上記はほんの一例で、痛みの理由は人それぞれですが、胃の中には何か名残を残してくれることが多い。私が内視鏡検査をするときにはその名残を一生懸命探します。例えば前庭部に周辺部浮腫を伴うびらんが多発していると、「ああ、前庭部の蠕動がかなり強いのかな?」とか、「何か粘膜防御を阻害する薬を飲んでいるのかな?」などと想像します。もしも症状があるならば、例えばミントティーは効果があるかしら?などと患者さんと相談したりもするのです。ミントティーはカルシウムチャンネルを阻害して、胃の出口の動きを少し緩やかにしてくれるからです。

痛みの話の導入を少し書きました。私も痛み物質の話は読んでも忘れる、読んでも忘れる、の繰り返しでなんとなく理解しているに過ぎませんが、「痛み」というものを、「荒れている」というような大雑把なとらえ方をするのはやめて、もう少し基礎から捉えなおしたときに、患者さんひとりひとりに即した治療が可能になる、と私は考えているのです。

検査をして「異常がありません」と説明した時に、「異常がないなら、いいです」と帰ろうとする人々が半数以上おられます。その方々にも同じように時間をかけて説明をするのはやや虚しい行為ではありますが、それも人生。

2013/03/02

40歳からの便潜血検査

便潜血という検査があります。大便の中にわずかな血液が混じっているかどうかを調べるのです。
人間の大腸の粘膜は脆弱(弱い)で、多かれ少なかれ出血はあるものです。
したがって、正常の大腸であっても「陽性」と判断される場合はあります。

老人保健事業によって1992年から40歳以上の男女を対象に便潜血検査が日本では行われており、これは海外より少し早い年齢です。(海外では50~55歳以上が対象になっていることが多い)

さて、陽性と判断される人数なのですが、大雑把に上位2~10%以内に入っている事ではないかと思います。カットオフ値は各施設で違い、40ng/mlとしてみたり50ng/mlとしてみたりいろいろだと思うのですが、例えばNEJMのこの論文は、陽性者が9.8%ぐらいとしています。

そもそも大腸癌は毎年10万人あたり96.1人(こちらにデータあり)が罹患し発見される癌です。
だいたい0.1%です。二次検診に受診した人のうち、1~2%に癌が見つかればそれはなかなか優秀です。そうしたければ、二次検診へは0.1%の50倍から100倍の人数をまわせば良いという事になる。カットオフ値を上位5%とするいうのはそんなに根拠のない数字でもありません。

ここで、いつも裂痔で出血していたり、大腸炎で出血したりする人は無視して、
少なめに見積もって毎年3%の普通の人がランダムに検査に引っかかってしまうというモデルを考えてみます。そこで、40歳から64歳までの25年間、一度も便潜血検査で陽性にならない、という可能性を計算してみます。

計算式は、
(0.97^25)です。すると答えは0.47となります。大雑把な計算ですが、ほぼ半数の方は65歳までに必ず1回は全大腸内視鏡検査を受ける羽目になる、という事です。

全大腸検査を一生のうち1回でも受けると、左方結腸癌の7割は、癌になる前にポリープの状態で切除されてしまい予防される、というカナダの統計があります。(あらゆる検査の中で、検査を受けることで癌の直接の予防になるのは大腸内視鏡だけです)

65歳までに、理由がなくても、大腸内視鏡検査を受けることは公衆衛生に貢献すると考える人達がいますけれども恐らく便潜血検査でも同じような事をしているのです。

ちなみに便潜血検査を500円として、それを25年行いますと12500円。それで半分の方が陽性になって20000円強の大腸検査をお受けになる。大雑把に考えると、一人当たりのコストは((12500 x 2) + 20000) / 2 = 22500円/25年という事になります。

それならば、最初から65歳までに20000円強の大腸内視鏡検査を全員に行えば、コストは同じ、さらに、対象者が50%から100%に広がるので公衆衛生に貢献するかも知れません。



私は、便潜血検査を40歳からまじめに毎年受ける事はとても良いことだと考えています。ただし途中でさぼったり、陽性になっても検査にいかないような人々にはその役割は果たせないため、彼らは大腸内視鏡検査を受けるべきだと思います。ただし、その時の費用負担をどうするかなどクリアせねばならない問題はあると思います。

ちなみに親あるいは兄弟に大腸癌の方がおられる方は大腸内視鏡検査の対象者です。