2013/08/21

方法はともかく、まず受けてみよう

胃がん検診に、レントゲンを推奨という結果を見てあれこれ言及している方がおられますが、過去のエビデンスから考えれば当然の結果が得られただけです。
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/igan_evidence130730.pdf

現在のレントゲンでの検診での問題点として、
1)ピロリ菌感染者の激減により過去ほど寿命をのばす効果を期待できない
2)適切に写真が読まれていない
3)被曝の問題が若干ある
4)検診後の虚血性腸炎などの合併症が高齢化に伴い増えてきた印象がある
などが挙げられます。

一方で全例内視鏡というのはナンセンスなわけです。
どうせ全員受けないだろう、という考えだから内視鏡検診が成り立つわけで、本当に全例でしたらリソースが足りません。受診率が低いことを見越して検診を行うのは私には受け入れがたい。
ではABC検診はどうかというと、10-20年ぐらいは有効かもしれませんが、GISTや進行食道癌、ピロリ菌非感染胃癌が見つけられないという問題もあるわけです。ピロリ菌非感染時代に生き残る検診とは言えないのです。

しかしその前にかなりの人々が検診を受けていない、という大問題があります。
例えば社会保険加入者の家族の多くは受けません。忙しい自営業者は受けません。
そして(もしも検診で引っかかってしまうと)最終的に行われる内視鏡検査が苦しいから、という理由で受けない人も多いに違いないのです。
これをなんとかせねばならない。
そういう意味でABC検診の簡便さや、それ以後に連なるピロリ菌除菌までの一連の流れは現代(今後10年程度)にはマッチするかもしれません。とはいえ、ABC検診も内視鏡リソースを圧迫する傾向がありますのでその解決にはもう少し工夫が必要になるでしょう。







さて、ピロリ菌非感染時代になると、胃がん検診は他の先進国同様に無くなる可能性も高いと思いますが、仮に存続するとして、GISTやらピロリ菌非感染胃癌やら、食道癌やらを見落としなく見つけつつも現在ある問題点を回避する必要があります。
その解決法として、
1)保湿成分を内包した新しいバリウム製剤を開発し、術後に下剤を飲まなくてもいいようにする。
2)進行癌を見つければ良いので、写真の枚数を少なくしてしまう。二重造影法にこだわるのをやめる。
3)読影はコンピューターで行う。
などとするのはどうでしょう。

もう一つの提案は、検診を1年区切りとはせずに、2年、3年、5年で区切って受診率を出す事です。
今は1年区切りなので、受診率が低いとなると「検診を受けそうな人」に絨毯爆撃のようにお誘いの手紙を送るというような事が自治体で行われています。しかしそれは疾患の発見率を上げないばかりか、偽陽性ばかりが増える結果となりはしないかと危惧します。そこで例えば現在1年で受診率40%をノルマとしているのであれば、2年で60%のノルマ、3年で70%、5年で80%にする。すると見かけではなくて、実質的に受診率が上昇するため疾患の発見率が増えるだろう。その方が公衆衛生には貢献するのではないか、と思うのです。

そしてやはり大切なのは、最後の砦である内視鏡を楽に出来るようにする、という事なのかもしれません。内視鏡は自分一人が上手くてもしょうがないのです。




伊勢原市の方については個別に相談してください。その方にあった方法(費用と効果のバランスおよびその人の年齢・リスクを考慮した)をお教えできます。
遠い将来:超音波やテラヘルツ波などを用いた安価で信頼性の高い、もちろん診断はすべてロボットやコンピューターを使用しますが、そうした検診が登場することを期待しています。

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