2013/10/07

脅してきたら、それは専門家とは思わないほうが良い。

小林秀雄さんの「考えるヒント」の最初のエッセイは「常識」というもの。
当時ですら「機械化された生活の中、内部の理解できぬ機械に振り回される」というような表現がなされ、自分のわからぬ事は、すなわち一般人が常識の範疇で判断ができぬことは専門家へ委ねなければならなくなった、と嘆いているような書き方である。

ここで言う常識とは「人間の作った決まり事」である。
逆に考えると専門家の知識とは常識が通用しない領域の知識ということなのだろう。

そして私が扱う「医学」という分野は明らかに一般の人々の常識が通用しない。皆さんが自分で判断することは非常に難しく、我々専門家に委ねざるを得ない場合が多い。



みなさんから見れば、医者はどの医者も専門家であってすべて等しくうつるだろう。歯科医も鍼灸師も整体師も薬剤師もナースもみんな専門家である。常識の外なのだから、それらの人々の言うことが食い違っていたとしてもその正否を判断することなど出来るわけがないのだ。



それだけに、専門家の領域にいる人々が一般の人を脅すようなことをいうのは心して慎まねばならない。

「先生よくならないのですが」
「それは悪い病気かもしれないから内科にかかりなさい」

というのが悪い例である。(この専門家が自分では解決できない、ということだけが事実である)それだけで恐怖で三日三晩眠れぬ人もいるし、PTSDになる人すらいる。そして大抵の場合は自分の技量が劣っていて正解が見えていないだけなのだから始末が悪い。

正解は、

「先生よくならないのですが」
「今までの経過を書いた手紙を書きましたのでこれをもって内科に行き相談して欲しい」

ではないだろうか。



どんな資格であれ、専門家は専門家であり、一般の人たちの常識が通用しないところにいることを心せねばならない。相手はいつでも小林秀雄さんであるとは限らないのだから。

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