学生時代、小腸には常在菌はいないような事を習った記憶があるため、小腸の常在菌云々を最近になって突然言われてもどうも釈然としません。
疑問:常在菌がいるならば小腸ガスが全員にないのはおかしい。
小腸内には多量の糖分が存在するので常在菌がいるときには相当の発酵が生じガスが発生してしかるべきです。たとえ小腸に絨毛がいかに発達していようとも、二酸化炭素以外のガスが発生すれば、例えばメタンや水素が発生すればそれがレントゲン等で見えるはずです。
ただし、少しイレウス気味になっただけで小腸ガスが発生するところを見ると、少量の常在菌は当然のことながらいるのでしょう。
疑問:おそらく、微量の常在菌が存在するのであろう。では常在菌の恒常性はどのように保たれるのだろうか。
小腸内を食事はダイナミックに通過していくので、常在菌が住み着くとすれば絨毛の合間に付着する、という程度のものなのでしょう。そして濃い胆汁酸や膵液の存在下で生存が可能な仕組みがあるのに違いありません。そのような種類の菌は限定されているのでしょう。
疑問:なぜ小腸の常在菌が重要なのか。
経験的に、家畜に抗生物質を投与すると太ることが知られています。家畜に抗生物質を投与するのは感染防御のためというよりは、むしろ商品価値を高めるためのものと解釈しています。炎症性腸疾患や小腸憩室のような慢性の炎症があると、痩せていても脂肪肝になることがわかっています。このように、ある種の腸内細菌はメタボを抑制しているらしく、逆にその細菌が住みにくい、悪玉菌が多いような状況ではメタボは進行する、といった事がわかっていましたが最近徐々に証明されています。
何に気を付けなければならないか。
小腸の常在菌には未解明の問題が多いため、嘘をついてもなかなか見破りにくいという問題があります。免疫療法の黎明期がそうであったように、粗悪な医療は医療の発展を阻害しかねません。常在菌についてわかったことを言うような人がいたら気を付けましょう。
当院では何を気を付けてきたか。
例えばPPIでの心血管イベントの増加が、果たしてチトクロームP450のみで解決できるのか。ここまで読んで勘の良い方ならば私の考えていることは理解できるでしょう。私の考えが浅はかであれば是非指摘してほしい。
日頃の臨床での投薬は患者さんの全身状態を深く深く考えるところからスタートします。
0 件のコメント:
コメントを投稿