2010/12/31

日本が医療ツーリズムで成功するには

日本が医療ツーリズムで成功するには、日本しか出来ないことをしないとまずいだろう。



大腸のIIcとかLST-NGを見つけるのは日本のドクターが圧倒的に得意でしょう。

食道の表層癌を見つけるのは日本のドクターが圧倒的に得意でしょう。



たぶん上記が出来るのは医師の数として1000人未満でしょう。

胃癌は案外見つかるかも知れません。でもそれだけじゃあ魅力に乏しいです。

超音波下穿刺細胞診が発達していない日本は、シンガポールや香港に勝てないかも知れない。

なんでだめかというと保険制度が悪いです。リスクと医療費が見合わない。

日本には病院が損までしてリスクを取る検査がたっくさんあります。

専用機を使った超音波内視鏡なんて、やればやるほど赤字です。

早期膵臓癌見つかる良い検査なんですけれどねえ。

国がやるなって言ってるも同然なので、しょうがないです。

日本は薬剤と検査はどんどん高くなるんですけれど、手技に関しては本当に見捨ててきたから、お金のことそっちのけで研鑽を積んできた医師を除けば、医療ツーリズムで成功するほどのスキルはないと思います。要するに医者のグローバル化には失敗してるんです。

たぶん放射線診断は、コンピューター支援で診断しているアジア諸国にアドバンテージはないんじゃないだろうか。



医療ツーリズムで何をする気かは知りませんが、世界の顧客の目は厳しい。

日本で300万円なんていうドックが、その価値がないということはすぐにばれるでしょう。

言葉だけが先行していますけど、買い叩かれて失敗すると私は思います。

内視鏡分野はいけるかもしれません。中国・韓国のドクターは上手いので競争相手として厳しいです。ノウハウは秘密にしておきましょうかね。



治療での医療ツーリズムはいけると思います。外科治療の合併症は少ないですから。



診断にせよ、治療にせよ、合併症が起きたときの保障をする保険会社が登場するかどうか。

いちばん儲かるのは保険のはずですが、

保険会社が動かないということは、彼らはこの商売に芽がないと思っているのでしょう。



絵に書いた餅です。

2010/12/30

食道癌とソーシャルゲーム



ソーシャルゲームは立ち上げが勝負なんだそうだ。初日に何人ユーザーを獲得できるか。

かつて、インターネットでは早期参入~多くのシェア~利益総取りという理論がもてはやされたが、ソーシャルゲームではこれと同じ動きがユーザー側に認められる。すなわち、ソーシャルゲームを早くはじめる→自分の希望するIDをゲットできるし、ゲームも有利に進められる→ウマー。あるいは学校などではみんなと新しい場でコミュニケーション。テレビドラマをその日に見ておかないと仲間はずれにされるのと同じような感覚がソーシャルゲームにもあるようだ。AppleがはじめたPingだっけ、あれも48時間100万ユーザーと宣伝していたがすごく少ないと思った。すなわちソーシャルゲームとして捉えれば成功ではないと言える。だって新曲がPingで先に発売、などという「売り」がなかったし、せいぜい人気アーティストをフォローできるってぐらいだった。iTunesの利用者はFacebookほどではないかもしれないけれど、Facebookで成功するソーシャルゲームは初日400万ユーザーなどと言うのに比してあまりにもインパクトが小さい。

ところで医学でも当然同じような心理が市場(知識の市場)を支配している。すなわち新しい理論、あるいは新しい機器(モダリティ)に、①開発段階から何とかして割り込む、②①が無理だったときには発売ないしはオープンになったらすぐにそれに関して追随した論文を書いて「その道のオーソリティー」と呼ばれるようになる、というような戦略だ。それとは関係ないけれど日本国内だけを見るとまだ「海外の技術の紹介」だけでも成り立ってしまうので、「翻訳ブログでアフィリエイト収入」とあまり変わりがない。独自コンテンツを持つというのは研究者でも極めて難しい事だ。実際、「独創的な研究」として認められるためには本当に独創的である必要など無く、優秀な研究であれば良いので、すばやく追随できるだけでも優秀だと言える。

ファンクショナルMRI(fMRI)という新しい検査がある。日本人が開発に非常に深く関わっているにも関わらず、混合診療を禁止した保険制度が邪魔をしたとは思いたくないけれど、主に欧米でfMRIを使用した「恐らく医学には貢献しない、論文数を稼ぐための論文」が何百も一気にこの数年来登場している。脳の機能を見る検査だから一般マスコミ受けが良く、ニュースにも頻繁に登場した。柳の下にドジョウは何百もいるわけだ。論文が量産されることでますます天才レビューワーがこの世の中に必要になるという話はさておき、新しいものには飛びつけという風潮がどこの世界にもある事をおわかりいただくための例とした。

私個人はそうした競争から脱落した組に属していて、クリニックで父親を手伝っている。クリニックでは臨床に舞台を移して競争をしなければなりません。そこでクリニックならではの利点を利用する。すなわち投資の自由度。病院が臨床の医師に予算の権限を与えることは滅多にないと思いますからこれはアドバンテージです。みんなとは違うことに投資する。

電子カルテダイナミクスは安いのでそれ以外に投資できるという利点がある。と、ちょっと宣伝。

前置きはここまでにして、平成18年5月にオリンパスがCV-260SLという内視鏡画像プロセッサを発売し、これを待っていた私はすぐに借金、購入した。(実際にはリース)それ以前数年間学会で、NBI(狭帯域強調画像)という新しい内視鏡画像を見てきて、「これは解像度云々ではない価値がある」と思ったことと「やるなら早くしなければ意味が無い」と思ったのが導入の理由。

NBIを開発目的で保有していたがんセンターとか大学病院に自分がアドバンテージを持っているとすれば、本当の初診患者を全員NBI観察できる、という事につきる。全員に使ってみてはじめてわかる価値もあると思う。すべての上部内視鏡をNBI観察、毎日かなりの件数をこなすので経験数を稼ぎやすい。時間次第で大学の先生方には追いつけるだろうし、学会で発表される以上のノウハウも身につくだろうと考えたわけ。

次いでGIF-Q260Hという解像度の高い内視鏡も購入して日々目を鍛え続けた。と同時に学会で、どのような強調方法を使い、どのような色彩で観察し、どのような順番で写真を撮るのか、各施設のやり方を検討し取り入れてきた。比較的こうしたアンテナは発達している方だ。例えば構造強調はB5、色彩は1である。そして咽頭から食道はずっとNBIで観察していく。学会では通常観察A8、拡大観察B8で見ている施設が多いようだ。一方下部消化管を主に行なっている施設では拡大もA8のようである。上部内視鏡の医者は細かいことにこだわりすぎる嫌いはたしかにある。私がB5にしている理由も、人工的な強調で捨てられる情報を嫌うからだけれど、小さな差に過ぎないかも知れない。

食道癌は通常光では淡い発赤として見つかる。私はNBI導入以前から、必ず挿入時にほとんどの癌をルゴールなしで見つけてきた(むろん確認のためにルゴールは撒布する)という自負が強かったので最初2年は挿入時は通常光で、抜去時にNBIで観察してきた。しかし挿入時に空気を挿入しなながら観察する角度と、抜去時に引きながら挿入する角度とは異なっており、挿入時の方が若干観察に有利なように思う。柏病院で挿入時にNBIという記事を読んでからは以後、挿入時NBI、抜去時通常光としている。

スコープはやはりGIF-Q260Hがあると良い。これで慣れたあとだと、GIF-Q260を使っても良く見つかるようになる。同じbrownish areaでも見え方は異なるからである。GIF-Q260ならば構造強調はA5とかA7の方があっているかも知れない。

食道癌は飲酒者がなりやすい病気で、特にADH2(アルコールを分解する酵素)欠損で飲んだくれていれば、つまりアルコール依存症ならば発見率がときに2割にも達するという。2割とは驚きだが、たしかに母集団として非常に高リスクなので外来ではメインに飲むアルコール飲料の種類と、その割り方、過去のアルコールの飲み方、飲んだ時に顔に赤みが出るか、あるいは若い頃は飲んだら顔が赤くなったかどうか、熱いものをよく食べるか、家族歴、タバコの銘柄の推移、本数の推移を聞いている。

それらを一度一切忘れて観察を開始する。
そしてbrownish areaというよりも、IPCLの血管そのものが慣れてくると見える(強調がB5とかB7だと特に)のであるけれど、その変化を観察し、胃の観察が終了後抜去時に必要に応じてルゴールを撒布して再度確認という順番だ。以前淡い発赤として認識していたよりも、擬陽性は多くなるものの多くの発赤が見いだせることは事実で、これにルゴール撒布を組み合わせることでハイリスク群以外での食道粘膜内腫瘍の発見率も上昇させることが出来ている。

やはり慣れというのは有難いもので、NBI観察4年、GIF-Q260H導入2年ほどで最近特に食道粘膜内腫瘍の検出感度は上昇し、非常に強力な武器となってくれている。
新規モダリティにソーシャルゲーム的な飛びつき方をして、たまたまその恩恵に預かりましたという話です。

そして才能ある人は、そんな我々を簡単に追い越していくのです。みなさんが探すべきお医者さんはそういう才能の持ち主です。

2010/12/23

マッサージについて


医療行為としてのマッサージというのは、徒手的に身体に触れて治療を施すもののうち、筋肉に働きかけて主に血行をコントロールしたり、ストレッチングによる保護を行ったりする事を指しているのだろうと思っていました。
従ってやりようによっては筋肉の断裂、筋膜の損傷、内出血、浮腫、腱の損傷など種々の合併症を生じる事があり、たまには骨折が生じる事もあり、簡単にできる治療ではないなと感じます。もしもそれらの合併症が起きても整形外科に見せる患者さんは少ないようで、拝見するのは主治医の我々である事が多いのかもしれません。
ただここ数年、そのようなマッサージは陰をひそめつつあって、ソフトマッサージと呼ばれるような、筋肉にそれほど干渉しない(?)手技が広まりつつあるようです。それは合併症とそれに伴うトラブルを嫌うからでありましょう。
本来、医学的にマッサージが必要とされるのは、麻痺による筋肉の拘縮、疼痛を予防する目的が多いと思います。当然筋肉に働きかけるべきものです。したがって、ソフトマッサージと呼ばれるような手技の目的や効果については単なる「一時的な気持ちの良さ」なのだと理解します。治療か、と言われると微妙です。

一方例えば癌によるリンパ浮腫を予防・治療するための特殊なマッサージがあります。子宮癌の手術後や乳癌の手術後には、複数あるリンパ管の一部、あるいは全部を取り去るがために、リンパ液が足や手にたまってしまい非常につらい浮腫が生じる場合があります。その浮腫を、ほんの少し残ったリンパ管を通して体幹部に戻してあげる手技で、根気のいる仕事です。

ところで患者さんに伺っていると、いわゆるリンパマッサージには他にもいくつかあるようです。一つは全身のツボをマッサージによって刺激して行くようなものです。恐らく交感神経と副交感神経を交互に刺激するような印象で、大量の発汗があったり、下痢があったりすると患者さんは言います。それは厳密にはリンパ流には影響を与えないかもしれませんが、体液の出入りがある(発汗や下痢)ために、「淋巴」という名称を与えたのではないかと想像しています。普段あまり運動をする機会もない方には、そんなマッサージも新鮮なのかもしれません。
もうひとつは、これはインターネットでリンパマッサージを調べて行くとだんだん「そうじゃないかな?」と思い始め、確信を持っている事ですが、「ソフトマッサージ」のさらに弱いものを「リンパマッサージ」と呼んでいるらしいということ。テレビで顔のリンパマッサージなどと言っているものは同じです。この「リンパマッサージ」はデタラメ用語なので、あまり使って欲しい言葉ではありません。真皮ていどまでしか刺激しない弱い圧力で皮膚を「さする」ものは確かに全く合併症はなさそうで、患者さんからの文句は少ないに違いありません。しかも重要な点は、免許が要らない事です。マッサージの到達点(皮肉です)なのかもしれないと思った訳です。実際には、皮膚をなでてもリンパの流れが良くなるかどうかはわかりません。むしろ均一で弱い圧力をかけた方がよほど流れは良くなりそうです。とはいえ、馬鹿に出来ないなと思うのは、赤ちゃんにオイルマッサージをすると気持ち良さそうにしていますから、何らかのスキンシップ効果はあるんだろうということです。従って、この(偽)リンパマッサージも顧客のニーズを満たす可能性は十分あるのです。
問題は用語の混乱があることで、患者さんがリンパマッサージを受けたと言っても、私には皆目どのマッサージを受けたかどうかがわからないのです。

さて糖尿病の患者さんが例えば副交感神経を刺激するようなマッサージを受けてしまうと、低血糖が起きるリスクがあります。環境によっては皮膚疾患が増悪する可能性があります。あるいはお金のない患者さんがお金を搾り取られているのを拝見して心を痛める事があります。非常に扱いはデリケートですけれど、ときに私が介入したとしても気分を害さないでほしいと思います。

ところで乳腺炎の予防のマッサージはまた違います。これは最初に見たときに「!」と思いました。柔軟性のあるゴムチューブの中に脂肪のかすが詰まっている。そのかすをどうやって取りますか?という問題です。押し出しますか?いえ、皮膚ってのは押すと必ずその部分は浮腫が起きるんですよ。

私が上の「マッサージ」の項でなんとなく良い事を書かなかったのは、マッサージをすれば多かれ少なかれその部分にはまた浮腫が生じてしまうという事実です。

なので、乳腺を押してかすを絞り出すのは不正解です。周囲の浮腫で管が細くなり、ますますかすが詰まりやすくなるからです。正解はゴムチューブをうんと伸ばしてぱっと離す、です。ゴムチューブを伸ばすと内腔が狭くなってかすが細く長くなる。そこで元に瞬時に戻したら内腔の方が太くなりますからかすが移動しやすくなりますね。さらにそこに振動が生じますからこれで皮膚を圧迫する事なしにかすを乳頭方向へ移動させる事が可能になりますね。乳腺のマッサージはなにやら難しい事が書いてあったりしますが、この原理を理解しておけば大丈夫です。

話がいろいろ飛びましたけれど、マッサージと言ってもいろいろあるようで、ヒポクラテスの言う通り、なかなか奥が深いんじゃないかなあと。私なんて、良く腹部のエコーをしますけれど、調子が良くなってしまいまたエコーをやってくれなんていう患者さんが多くて閉口します。たぶんマッサージ効果なんでしょうね。ゼリー塗りますしね。エコーは集中力を要する検査で自分が消耗するので、患者さんから頼まれてもやりませんのでご了承ください。だいたい検査ってものは、こちらから患者さんに「必要なのでしてもよろしいですか?」ってお伺いをたてるものだと思っているので、患者さんからあれこれやるよう言われるのは元々好きではありません。

2010/12/20

完璧な仕事の準備


仕事をする以上、Quality Control (QC:質の維持)がもっとも重要な事だと思います。

これは大学院時代にテクニシャンのIさんの仕事を見ていて、以後考えていたこと。

彼女はラボのテクニシャンで、自分の仕事の評価をレポートにして上司に提出するんだけれど、その時に例えば実験のコントロール曲線がうまく描けるかとか、予期せぬデータが出ていないかとか、そういう統計学的な評価をしていたのを見て、医者もこういうQCの方法が出来ないかをずっと考えてきたわけ。

今の日本の医者のQCは馬鹿げたもの(点数を稼ぐなど)が多くて実際的ではありませんが、上部内視鏡では例えば

  1. 左右の梨状窩の観察が出来ているか。
  2. 食道上皮内癌の発見率。(特にハイリスク群で)
  3. 咽頭反射の確率と患者満足度。
  4. 胃の萎縮診断が正しいかどうか。(多数の検査をしていれば偏りがないかでわかる)
  5. 萎縮に応じた早期癌の発見率。
  6. 乳頭部の観察が出来ているか。

など様々な指標があり、それを自己評価すれば良いのです。

例えば萎縮がO-3であれば、早期癌発見率は2%維持できなかったらだめだとか、そういう縛りを自分に課すわけです。様々な場面で自分のQCを行う事、それが出来れば納得して医療行為が出来るのでそうなるよう電子カルテを駆使しているのです。

なるべく完璧な仕事をしたいのですが、では自分はどのように心がけているでしょうか。

良くスポーツ心理学では、納得のいく練習をすること、と言います。これだけの研鑽を積んできたのだから、自分は大丈夫だと自信を持つ、というような事。一方で、浅田真央選手は納得のいく練習をしてきても、それが上手くいかないこともある、と最近の自分を評価したそうです。世界のトップレベルの厳しさを垣間見るエピソードです。それは神の領域と言って良いでしょう。

我々の仕事はむろん人命がかかるわけですが、奇跡は毎回は起きないので、むしろ常に一定のレベルを保つにはどうしたらいいのか、を考えるわけです。オリンピック選手のように、最高の体調を管理するという事まで自分を追い詰めなくても良いのです。

むしろ、健康面精神面含めて最高のコンディションでないと自分の納得出来る仕事が出来ないと考えているのであれば、それはまだ自分が未熟であると私は考えました。ある程度悪いコンディションでも、平均的に良い仕事が出来ないか。

内視鏡においては

  1. なるべくワン・パターンの仕事をする。どんな患者でも同じような見方、写真のとり方をする。変なテクニックを駆使しない。
  2. 同じ事をするのでも、なるべく簡単にできるテクニックを常々工夫する。
  3. 時間に余裕をもたせる。患者が急かしても気にしない。
  4. 自分の限界を知っておく。
  5. やたらと質の良い仕事を患者にアピールしない。

というような事を実践しているつもりです。例えば、内視鏡時の鎮静は過去のナレッジ・ベースがあるのでかなり上手く量が決められます。胃内洗浄の時の器具の工夫もしています。時間は患者さんの都合より自分の都合を優先します。自分が例えば体調が悪いときでも、無用に働く必要がなければ内視鏡の質は高まるだろうと考えてのことです。最終的には「眼」に仕事をさせる事にすべてのリソースを集中できるよう、それ以外の事はなるべくワン・パターンにするのです。

やはりトレーニングが重要だろうと考えます。粘膜の異常を見逃さない眼は、やはり簡単には身につかないと思います。私の場合は癌研で膨大な数の症例を見せていただいたことがやはり大きい。1年いれば10年分の症例を経験出来るなあと思いました。頭脳以外の能力を駆使する仕事を「職人」と呼ぶのなら、内視鏡医はまさに職人だし、職人の仕事はその能力にいかに集中できる環境を作れるかどうかによって決まるだろうと思います。

今色々な仕事をしていて、なるべく高い次元でそれを行いたいという場合、それが職人的な仕事ならばまずは一番大事な「能力」をとことん鍛え上げてしまう。そうすれば、それ以外の事、たとえば体調がどうであろうとも、一定のレベルの仕事が出来るんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

2010/12/14

嘔吐下痢(ノロウイルスも含めて)について

<受診の心構え>どういう情報が必要か
<予防・拡散を阻止する話>
<治療の話>
<落とし穴>
<もう一つの落とし穴>感染後過敏性腸症候群
<セルフケアに関するTips>
<医者として困ること>院内に病気を持ち込む人々
<本当は改善したいこと>急性期疾患の予約診療

cc by Venn Diagram

この記事をノロウイルス関連で検索して読んでくださる皆さんは一番下の方を読みましょう。
一般的な胃腸炎の薀蓄を読んでおきたい方はこのままお進みください。(私のブログは基本的には外来でお話しする薀蓄をメモする場所です)

ノロウイルスは胃腸炎を起こす有名なウイルスです。そんな有名だったかなあ。

ノロウイルスが命名されたのは2002年だそうですから、私が医者になったのが1990年ごろなので知っているわけがないのです。小型球形ウイルスと呼んでいました。こいつの(名前の)広がり方と言ったら、すごいですね。席巻してる、という表現がぴったりです。ロタウイルスもたじたじです。

ただロタウイルスの症状の激しさ(私は小児科ではないので実際には診断したことがない)からすれば、ずっとましです。他に腸管アデノウイルスが胃腸炎を起こすウイルスとして知られています。

<もともと鵜川医院に嘔吐下痢でかかる方は少ない>
嘔吐・下痢で医院を受診する患者さんは当院では少ないのですが、その理由はわかっています。
1) 混んでいてすぐに対応することが困難であることを大抵の患者さんがわかって避けてくださっている。(すみません)
2) 遠くから受診した方を叱る。主に脱水の補正が必要なのに片道1時間以上かけて来ることのバカバカしさについて患者さんをたしなめる。他の件についても、当院は遠方からの患者さんを歓迎していません。
3) 本当に必要でない限り、頼んでも点滴をしてくれないという事を患者さんがわかっている。
4) 嘔吐・下痢は脱水がひどくなければ、自宅でなんとかなる事を普段教育している。(経口補水塩の作り方を教えてある)
5) たまたま当院で出している薬が予防・治療になっている。(胃腸科ですから)
6) 細菌性を考えたときに培養はするけれど、ウイルスに関しては検査をしない。(電話で「ノロウイルスは調べてくれるんですか?」という問い合わせがすごく多いので「検査キットは持っていません」と答えています。)

ノロかどうか確かめてもらいなさい、というトンデモ上司がいる会社がかなりあります。(会社としての方針ではなく個人の判断なのだろうと思いたい)不必要な受診が増えるだけですからやめてください。

小児科では1)包括医療である場合が多い、2)集団発生しやすいなどの理由でノロウイルスの迅速検査をする場合があると思います。

臨床的にはノロウイルスはそれ自身が致死的ではないので脱水を防ぐことが主な治療であり、むしろ拡散させない事が重要で、そのため来院しなくて済むならばその方が良い、と考えて普段指導を行っています。来院時にはむしろノロではない場合の方が重症化することが多いので気を付けています。

嘔吐・下痢で受診した際に、必要なのは細菌性なのか、ウイルス性なのか、それ以外(毒など)なのかを鑑別しなければなりません。従って、
1) 48時間以内に食べた物、飲んだ物すべて
2) 発熱の有無
3) 下痢の回数と性状、血便の有無
4) 血尿の有無
5) 腹痛の場所、程度、推移
くらいの情報は最初から用意していらっしゃらないといけません。

当院で診断した中には「シガテラ毒」なんていうのもあります。これを診断できたのは患者さんからの情報が緻密だったからというのが理由です。明らかに神経毒だろうと思われる下痢を大病院に紹介しても「アレルギー」とか診断されてしまうぐらい、こういう毒の診断は難しいのです。

患者さんから話したいのは、
1) こんなことはじめてです
2) みんな同じ物食べてるのに私だけ
という事らしいです。同情はいたしますが、情報の優先順位としては低いのでおっしゃるのは最後のほうで結構です。

ノロウイルスは食品にも普通に付着しているので、食べたものから推測するのはなかなか困難なのですけれども、少なくとも細菌性下痢を除外しなくちゃいけないから食べ物を聞いているわけです。


<予防・拡散を阻止する話>
診断はともかく、少ない量のウイルスや細菌ならば胃酸で無効化されるんじゃないかと思っています。特にノロウイルスは塩素系の消毒薬に弱いわけですから。それは余談として、子供さんの吐物の処理などをしているときにお母さんが容易に感染してしまい、お気の毒です。当方も無防備に吐物の処理をしますと、さすがに感染します。塩素系の漂白剤を染みこませた雑巾で、手袋を着用して、マスクをして処理なさるとよろしいのではないでしょうか。あとはドアノブや水栓なども同じように拭いたほうがよろしいでしょう。インフルエンザと異なりアルコール消毒が無効なので、石鹸できちんと手を洗わねばなりません。レストランなどでおしぼりが出てきますが、あれはどうなんでしょうか。何の意味もないように思います。手洗いで石鹸で手を洗っても自動水栓でもない、ドアも自動ではない、逆に危険な気がします。塩素系ではクレベリン(空間除菌、はうそですからだまされないようにしてください。あくまで塗った時に効く)という消毒薬が有名ですが、気になる方は手に入れておくと良いのでしょう。私は強酸性水でよく手を消毒しています。指で鼻や髪の毛をいじるのも良くない習慣です。少なくとも医療従事者は首から上を触るな、触ったら手を消毒しろと教育されてるはずですが、守っているでしょうか。
また、抗体はできにくいらしいので、「なったから大丈夫」などとは思わないことです。
スチームアイロンでじゅうたんなどを熱するのは非常に頭の良い方法ですね。
(ノロウイルスの経鼻ワクチンは治験中らしいです。2012年1月追記)

<治療の話>
予防の話はこのぐらいにして、ウイルス性の胃腸炎の基本は脱水の補正ですからそこらへんに情報は沢山転がっているはずです。
下痢が酷い場合にはナトリウム・カリウムが喪失し、嘔吐が酷い場合にはナトリウムの喪失が多くなり、失われた電解質と水分を口から入れるか点滴で入れるかを選択するのですが、私は前者を選ぶことがほとんどです。五苓散を使うのはエポックメイキングな出来事で、それらを駆使して診療を行っていた小児科の先生方を尊敬します。制吐剤としてドンペリドンなどがたいして効果が無い事は多くの臨床経験からわかっており、むしろ五苓散の方がすっきりと効く。もちろんこの辺りは色々な技がそれぞれの医師にあるのです。
ショックに陥るほどの脱水があればもちろん入院という事になります。
自宅で出来ることとしては経口補水塩を嘔吐しない程度(1回100cc以下)に飲んでおく、という事でしょう。五苓散は処方薬ではないから自宅に常備してあっても良い。私も市販の五苓散を2袋ぐらい自宅の救急箱に入れてあります。嘔吐が酷いときには白湯に溶かして飲むのです。
他院受診をしたが痛みが取れないという相談が結構あります。歩くと響くとか、押すと非常に痛いという場合には警戒すべき痛みですが、腹膜炎ではなくても腸が腫れて痛い場合も多い。そういう胃腸炎の痛みはお医者さんが出してくれる抗コリン薬(ブスコパン)では治らずなかなか頑固です。私は抗コリン薬は使わずに(抗コリン薬はむしろ制吐剤として使ったりする)、粘膜保護系の投薬をすることが多いのですけれど。それに制吐作用も期待してマイナートランキライザーを加えたりです。発熱は一日で落ち着くので、よほど脱水がひどい場合以外は熱は下げなくて良いと考えています。しかし痛みを止める効果も期待してアセトアミノフェンを使う場合もあります。

ウイルス性の場合勝手に治るといえば治る病気なので、治療の基本は整腸剤でよろしいと思います。

<落とし穴>
性病でもあるアメーバ赤痢、コレラ、キャンピロバクター腸炎、エルシニア腸炎、憩室炎、急性ヘリコバクター感染症などとの除外が難しい場合があります。経過がおかしい、4-5日で治ってくれない、という場合にはもう一度同じ先生に相談すべきでしょう。私自身は鑑別が難しいときにエコーを行います。慣れていればかなり精度良く鑑別することが出来ますが、一般的とは言えない方法です。

<もう一つの落とし穴>
感染性胃腸炎をきっかけにして過敏性腸症候群を発症してしまう場合や、後述しますが抗生物質を処方されたために抗生物質起因性腸炎を併発する場合があります。抗生物質の投与は可能な限り避けています。

<セルフケアに関するTips>
○整腸剤。
他院から流れてくる患者さんで圧倒的に多いのが、1)抗生物質を処方して整腸剤を処方しなかったために、胃腸炎は治ったのに以後ずっと下痢。2)細菌性胃腸炎だったらしく症状が増悪した。のふたつです。1)と2)の差は痛みの有無なので比較的簡単かもしれません。下痢が何日か続いたら腸内細菌は激減しますから補給せねばならないのです。割と基本だと思うのですが、処方されていないケースもちらほら。患者さんには「風邪引いたらヤクルト」と指導しますけど、他の医者から整腸剤を処方されなくてもなんとかなるだろうと思って言っているわけです。
○重症化を見逃さない。
発熱が持続する場合、下血、血尿、強い腹痛の持続があるときにはノロウイルスではないと思いますから、これは医者の出番だろうと思いますからすぐに病院へ。
○脱水を起こさないように。
水分のとり方については過去に書いたと思います。
○人それぞれのTipsがある。
あなたの体質にあわせて、こういう場合の対処法(医者を必要としない)を教える事こそが医者の真骨頂だとは思っています。知らない人には指導は出来ませんけれども。

<医者として困ること>
明らかに海外で感染してきたのに、検疫で申請しないで医者に飛び込んでくるのはルール違反です。赤痢やコレラなどを院内で撒き散らされたらかないません。必ずまず電話であちこちに相談することです。少なくとも飛び込み受診はお断りします。

<本当は改善したいこと>
あらかじめネット経由で病歴を取って病因を鑑別し、院内感染予防の措置をしつつ適切に院内へ患者さんを誘導し、医師はそれらを確かめるだけで適切に診断治療を行い、汚染された金銭のやりとりはせず電子マネーで支払いが行えるような世の中がはやく来ないかな。
私の準備は出来ているので、あとはみなさんのITリテラシーが上がるのを待つばかりです。

2010/11/21

人間ドックでピロリ菌陽性

人間ドックでピロリ菌が陽性だと言われたら、どうしたらいいかはその人間ドックに問い合わせるべきです。

なぜなら医師によって方針は様々で、あなたが受けた人間ドックの意見と私の意見が食い違うと、あなた自身が矛盾で途方に暮れるからで、それは避けたいからです。通常人間ドックには系列の病院があって、そこでピロリ菌の除菌治療を受けるか、相談しに来て欲しいという意思表示であるはずですから、そのようにするのが無難だと思います。

平成25年2月21日から、胃炎に対するピロリ菌除菌が保険適応になりました。しかし必ず上部内視鏡をしなければならないという決まりがあり、少しハードルが高いと感じる方もおられると思います。そしてどのような指導をするかはケース・バイ・ケースですから、やはり検査をした機関が責任をもって説明すべきです。










参考までに私の意見も聞いておきたい患者さんもおられるかもしれない。上記のような背景はご存じなくて当院に相談にいらっしゃる方ももおられます。そういう方へ私の意見を述べるのが今回の記事です。よろしい場合は以下にお進み下さい。








<ピロリ菌検査の信頼性について>

ピロリ菌を診断する施設は、その方法について検診者(検診を受けた方)に対して十分な情報を公開すべきです。

ピロリ菌陽性、陰性などといった定性的な表示方法は良くありません。
<例> 尿中ピロリ抗体(+)
血液や尿や唾液を検体として抗体を測定、便中の抗原を測定、呼気テスト、迅速ウレアーゼテスト、組織検査、培養など、どのような方法で行ったか、定量的な方法ならばその測定値も明記せねばならないと考えます。

もちろんそれぞれに信頼性の「癖」があるからです。

例えば抗体を測定する場合、感度が高い反面、過去の既往、あるいは抗原の交叉性により現在はヘリコバクター・ピロリ菌が居ないのに陽性と判定されたり、あるいは免疫寛容によってピロリ菌がいるのに陰性と判定される場合があります。

陰性なのに陽性と判定されるのも問題ですが、本当は陽性なのに陰性と判定されるケースがもっと問題です。こういう人々はもはや病院に受診するチャンスすら与えられないのであり、肝炎同様あとで悲劇をもたらしかねません。

そもそも私が内視鏡を重視するのは、その判定を確実にしたいからです。(平成25年2月より胃炎に対する除菌治療が可能になりましたが、内視鏡検査が必須となっています)内視鏡をしたときにはピロリ菌の有無、既往がかなりの精度でわかり、上記の検査のクオリティコントロールに寄与します。すなわち検査の間違いを内視鏡で修正することが可能です。私に内視鏡を受けていない患者さんを除菌したくない理由の大部分はそこにあります。

<いると仮定して話を続けます>

治療が100%安全で、100%成功するならば、どんどん治療を受けて欲しいです。

でも、そうではありません。

テレビで「除菌しなさい」と言うのは簡単。健診で言うのも簡単。保険も通っています。しかしやれやれ言うのは無責任でもあります。ワクチンとは副反応の発現率が違うのです。


保険適用外の自費診療となります(2013年から、公知申請によって適応が拡大され潰瘍がない場合でもピロリ菌除菌治療が保険適応になりました)しその副作用に対応するノウハウを持っている医療機関(当院の場合2000年11月1日より、毎年100人平均)は非常に限られています。肝障害、腎障害がある場合も注意が必要でしょう。その結果除菌治療の対象にならない。つまりスタートラインにすら立てない方がおられます。ペニシリンアレルギーがあっても除菌は可能ではありますが、自費診療になり、しかも除菌が出来る医療機関は少ないのです。

実際の除菌治療は、少数ながら副作用で困る人がいます。10-20%は失敗してしまいます。まずその可能性を最小にしたい。もしも副作用や不成功で困る人々がいらしても、その少なくない人達を最大限サポートしたいと考えるのが私の立場です。こうした身体と心のケアを行うのが(私にとって)大変なので、実は除菌をする私にもお金ではない相当の動機が必要となります。「健診で陽性だ」というだけでは私の心を動かさないのです。胃を見て、患者の背景を知り、「除菌をしておきたい」と思うことが私の動機になります。それは私の個人的な事情なので申し訳ないと思いますが、自分が内視鏡をしていない患者さんを除菌したくない理由の残りはそれなのです。

<除菌の動機>

胃癌のリスクを下げたい、というのが除菌の動機であるのかもしれません。ただ、アルコールや喫煙は、胃癌のみならず、食道癌、膵臓癌、大腸癌など私が診断に関わっている癌のリスクでもあります。除菌をするならば、アルコールも1合以下にしていただきたいし、喫煙もやめていただきたいです。(結局癌リスクがあるため経過観察をせねばならず自分の仕事が減らないからです。私の心情を理解してやめてくださる患者さんも多くいらっしゃって感謝です)

<具体的な方法>

胃の内視鏡は上記の理由から、私にとっては必須です。・・・ピロリ菌が現在いるのかいないのか、あるいは現在癌があるのかないのかを正確に診断せねばなりません。

したがって、もしも何か理由があって内視鏡を当院で受けたいなと思った場合にはどうぞいらっしゃってくださいと申し上げます。それが本来の私の仕事です。

内視鏡を受けた後の話を申し上げます。

1)潰瘍性病変、MALTリンパ腫、癌などがあれば、保険診療の範囲内(2012年現在)でそのままヘリコバクター・ピロリ菌の確定診断まで私の裁量で行います。2)何もなく萎縮のみ、しかし現在ピロリ菌は存在しそうだ・・・という場合に、患者さんが過度に心配することを避けたいことと、通常内視鏡をしただけでピロリ菌がいるとかいないとか言う医者はちょっと変わり者だと思われかねないという二つの理由で患者さんにはピロリ菌について何も申し上げないで終了する場合があります。むろん萎縮の度合いによって適切な経過観察については指示いたしますけれども。もしも患者さんからピロリ菌が心配だという申し出がある場合、その患者さんのリスクをあらゆる面から論じ、自費診療で治療をするかどうか患者さんと相談します。自治体によっては萎縮があるだけで保険適用となるという噂もありますが、神奈川県は違うようです。 は、ピロリ菌の確定診断を行って患者さんに除菌のメリット・デメリットをお話しし、除菌をいたします。メリット・デメリットを正しく理解して下さる患者さんや、副作用についての理解があやしい方がおられるのは、私にとってやや心理的負担ではあります。


<治療を成功させる工夫>

以下に留意しつつ除菌を行いますが、他の医療機関も同じようなものです。

1)たばこを吸わない方は成功率が高い。したがって、禁煙は必須です。そもそも除菌治療は胃潰瘍の再発抑制、発がん防止であります。禁煙が必須であるというのはどなたも理解してくださいます。

2)LG21を併用すると成功率は高いという報告あり。一日2個、7日使用します。除菌前2-3週間食べておくと良いそうです。

3)きちんと薬を飲むほど成功率は高い。ランサップ400を使用するのはコンプライアンスを重視したいためです。homo-EM群、hetero-EM群にはネキシウムを使用します。

4)他のお薬を併用して副作用が出にくくします。例えば整腸剤を併用します。


<除菌後の話>

1週間抗生物質を飲めば完了です。その後必要に応じて治療が少しの間続く場合もあります。

ピロリ菌は直後はほぼ死滅したようにみえます・・・ほんのわずか残った場合でも半年ぐらいは検出感度以下になってしまう。これが問題です。・・2ヶ月で判定する施設が多いのですが、「ぬかよろこび」が意外と多い。つまり2ヵ月後に「成功した」と言われ、しかし数年後に見ると「おかしいぞ?」となり測定するとまだいるという事になる。これが患者さんを落胆させる事を恐れます。

我々の除菌判定は必ず半年以上(通常は一年間)、あける。そして、経過観察の内視鏡を行い、目視でのダブルチェックを行って除菌成功確認を完璧に行おうと努力しています。

成功してしまえば以後、ピロリ菌が再感染することはまずありませんが、0.1%/年ぐらいの確率で再度新規感染しているようです。


<失敗したとき>

失敗した時こそ、心身のケアが必要です。二次除菌、三次除菌などの方法があることももちろん最初から伝えておくことが重要です。

しかし、失敗した、あるいはアレルギーでそもそも除菌ができないという人たちが心配するのはひたすら癌の事に違いありません。

その不安を取り除くために私共が工夫しているのが①正確で高度な診断技術を提供でき、その実績が確実であること、②患者さんが受けるのが苦にならない検査を提供できること、の二点です。除菌から取り残されてしまった患者さんたちがノイローゼにならないようにするには、ひたすら内視鏡による診断技術の向上が重要だろうと考えるのが私の立場です。


<成功したとき>

むろん将来も経過観察が必要である場合が多いだろうと思います。除菌をすればあとは内視鏡は受けなくて良い、というのならば良いのですがそうでないことを患者さんには理解していただく必要があります。

また、除菌後太りやすい体質に変化する人たちが一定数いるのは事実です。むろん禁煙の影響もあるでしょう。したがって事前にダイエットや運動を指導し、動脈硬化に起因する病気が増えないようにケアするのが医師として当然の責務だろうと考えます。この視点については学会も全く欠落していて私を落胆させています。胃がんだけが減れば良いのでしょうか。


以上、基本的な私の考え方を述べました。

将来、IgAを効率的に産生させるワクチンの製法が確立されれば、上記のような私のこだわり、工夫はすべて必要なくなるでしょう。そのような時代が早く訪れることを願います。実際の外来ではこれから派生してもっと多くの事を話すので患者さんは覚えきれないし、私は疲れてしまいます。ですから「除菌」と言って来院するのはできれば避けて欲しい事をお伝えすることがこの記事の目的です。

2010/11/16

足がつりやすい人

「足がつりやすい」
と患者さんが仰る。

「寝ている時とか、明け方ですか?」
と私が聞くと、そうだと仰います。

「つる」=筋肉の痙攣ですけれど、ご老人の場合運動しすぎた夜に起きることが多いようです。疲労は関係あるだろうと。それから筋肉の量が落ちたときにも起きやすいようです。もともとヒョロヒョロの人には無縁な症状みたい。電解質も少し関係あるだろうと。だから脱水なども良くないだろう。
それで芍薬甘草湯なんていう漢方薬を処方したりする。寝る前に飲むとすごく効いたりして患者さん大喜びです。内科医のキラーコンテンツと言っていい。細胞膜を安定化するんでしょうかねえ。だったら強力ミノファーゲンなんて効くんでしょうか。

43歳になったんです、私。なんと足がつったんです。寝ている時ね。
ちょっとショックでしたが、まあ考えて見れば「つる」という状態は過度の刺激を神経線維に与えなければ起きるはずないんです。で、思い返してみるとこんなポーズになっている。

こんなです。矢印見てください。つま先伸びてますね。まるでバレリーナみたいでしょう。明け方にこうやって背伸びしていたんですね。その瞬間に足がつっている事に私は気づいた。これじゃあつるの当たり前なんです。腓腹筋(ふくらはぎ)をおもいっきり収縮させているわけですから。
それで試しにアキレス腱を伸ばすようにしたんです。図を見てくださいね。
明け方に、「ふわ~あ」と身体を伸ばすときのポーズ。このときには踵は90度。アキレス腱を伸ばして、背伸びをします。
こうしますとね、全然足がつりません。

その事に気づいてから、患者さんに指導しました。

「足がつるんですが」

「夜中に背伸びするときにたぶんつま先を伸ばしてしまっているはず。逆に踵をしっかりと曲げて、アキレス腱を伸ばすように背伸びをしましょう。今実演するからちょっと見て」

と、上のポーズを見せる。

「あとは、さあ背伸びっていうとき、『つま先伸ばしちゃダメ!』って、思い出してね」

と指導します。これが結構効果がある。芍薬甘草湯使わないで済んじゃう。

こういう事に気づいた時には、年とってちょっと良かったかもね、って思います。さらにこうやってぼ~っと考えていると「早朝高血圧って、芍薬甘草湯で効くんじゃない?」とか変な考えが浮かんできて面白いわけです。

2010/10/22

潰瘍性大腸炎


かいようせいだいちょうえん【潰瘍性大腸炎】という病気をみなさんご存知でしょうか。
説明はこちらをクリック→難病情報センター

少し家族内発生もありまして、お嬢さんが罹患した後にお父さんが発症し…という事も経験します。
それは置いておいて年間何人も経験する病気です。

■慢性の下痢がある
■血液が混じるようになってきた
■なんだかゼリーのようのものも出る

という症状がある場合、この病気かな?と思って検査をします。


こういう症状が出る他の病気として、

「アメーバ赤痢」…これは日本では性行為感染症であることが多いのですが、海外渡航でも感染するようです。この病気があるときに肛門性交の有無も伺いますが、怒りだすと尚更疑われますから冷静に事実をお答え下さい。セクシャル・パートナーとピンポン感染されると困るのです。

「非特異的大腸炎」…潰瘍性大腸炎と確定できない、程度の軽い直腸の炎症がこう呼ばれることが多いです。

があります。腹痛があるとか、強い症状があったりするとクローン病とかベーチェット病なども考えます。いずれにせよ大腸内視鏡をしてしまえば多くの場合(少数の例外もある)診断は付くのですからあまり深くは考えません。


でも当院では潰瘍性大腸炎の治療はしないのです。上部消化管が専門だから。ただし緊急でない場合、最初から専門の先生に紹介せずに当院で最初の大腸検査をする場合があります。むろん患者さんには検査をするかどうか伺いますが結局当院で最初の検査を行う場合があります。

<その理由>
  1. 当院であれば緊急枠に融通を利かせて(時間外労働を私とナースがすれば良い)早く初回の検査が出来るでしょう。(潰瘍性大腸炎を疑わなければ大学と同じぐらい待たされますが) 
  2. 検査を怖がっている方が多いので、とりあえず私は優しいですし、苦痛が少ない当院の検査を経験していただいて悪い先入観を取ることが出来れば良いな、と思うからです。痛く無いということは穿孔も少ないという意味で、炎症の程度がわからない初回の検査では重要なことです。(下剤による前処置を安全に慎重に行うことも大切です) 
  3. 当院で初回の検査を受けて専門の先生にあとで受診するという形にしておけば、当院が患者さんのバックアップが出来るでしょう、将来。 
  4. 私が潰瘍性大腸炎について話すことで患者さんの心理的なショックを多少和らげることが出来るでしょう。 

私は上部内視鏡を専門と自称しています。一方大腸検査は岡本平次先生神長憲宏先生の手技をたくさん見る機会がありました。岡本先生は日本の第一人者だし、神長先生も日本を代表する名手です。お二人の検査は多少違うけれども本質は同じです。私は3年ぐらい見学しておりましたが何年も見続けるというのはずいぶんと贅沢な教育法です。今はハンズオンと言ってすぐに何でもやらせるのですね。しかし実習では慣れはするもののじっくり考えるということをしないので真髄にせまるという事が難しいのではないかと思います。(一方、平均的な医師を作るにはハンズオンは重要です)私は名手の検査をそれこそ千回は見たでしょう。なぜ名手は普通の医者と違うのかという事を論じさせたらうるさいです。患者さんから見たら同じでも、全然違うのですから。

師匠自慢はそこまでにして、「門前の小僧習わぬ経を読む」と言いますが、素人の患者さんから見れば名手と間違われる程度にはごまかして検査が出来るようになりました。だからだまされて患者さんがみえるのです。潰瘍性大腸炎は若い患者さんが多く、今後の人生で何回もこの検査を受けることになります。検査で苦痛があるのはお気の毒だし、しかも最初の検査で心理的なトラウマになっては大変です。ですからたまたま当院にいらしたのであれば、そして幸い緊急性がなければ、今後の治療の良い入り口になれれば良いなと考えて診療にあたっています。


さて検査の結果、潰瘍性大腸炎だとわかったとします。このとき私が話す要旨を以下に書きます。

今すでに職業を持っている人と、これから就職する学生さんでは少し人生のハードルの高さが違うかもしれません。これから就職する場合、他の人よりももっと頑張らないと不利な場合もあるからです。患者さんの学歴にあわせて少しアドバイスをする。また、患者さんにはこれから定期的に病院に通わなければならない事をまず明確に伝えます。(休みの日に外来に・・・と、治療を二番にしてしまうことを危惧します)

病状は人によって違うし、治療に対する反応も違います。しかし治療は日進月歩であって常に新しい治療の恩恵を受けて欲しいために経験豊富な専門の先生、しかも出来れば大学など大きな病院に紹介したほうが良いことを伝えます。むろん個人の先生でいい先生もおられます。個人的にはリスクは分散したいのです。少なくとも医者が病気になった、などと言うことに患者さんを巻き込みたくはないのです。個人に依存する性格の患者さんはしかしやがて大学を去って個人の先生にかかる場合はあります。それはそれで良いのです。

インターネットの検索はSEO対策という方法によって、出鱈目で危険な情報が飛び交っており気をつけるべきという事を伝えます。もしもあなたが不安になることが少しでも書いてあったり、あなたがこれで治るかもなどと思ったりしたら、両方とも書き手には無知ないし悪意があると思って良い。情報の根拠がきちんと書いてあるものにのみ注目すれば良いと説明します。そして分からないことがあればむしろ我々に聞いて欲しいということを述べます。例えば検索の仕方としては、Googleでは「潰瘍性大腸炎 site:ac.jp」と検索条件をつけますと、大学病院が発信する情報のみを受け取ることが出来ます。正しい情報とは例えばこんな論文です。

ところで病因について不思議に思われると思うけれども私はアトピー性皮膚炎と非常に類似した病態であろうという話をしています。実際内視鏡像は悪くなった時のアトピー性皮膚炎と似ているし、ヘルパーT細胞が悪さをするという点で共通しています。また細菌が増悪させるという点でも同様です。劇症型があるという点でも似ています。

患者さんが不安になるだろう情報としては、colitic cancer(あえてリンクは貼りません。まだ早い)の話が避けられないのです。これが潰瘍性大腸炎を語る上での最大のハードルなのだろうと思います。大腸の切除をいずれせねばならないのか。切除したときに性腺機能が保たれるのかなど、悩みは尽きなかろうと思います。しかしそうした選択をすべき時までに、心の成長を遂げ、医師と信頼関係を築いてほしいなと思って最初の説明をするのです。

2010/10/20

萎縮性胃炎2

萎縮性胃炎とは木村・竹本分類でC-2以上(C-2, C-3, O-1, O-2, O-3)を指します。

特にC-1、C-2、C-3は萎縮をRAC(regular arrangement of collecting venules)の有無で見るのが適当です。若い女性で貧血があり、RACが見えにくいが本当はC-1であるという患者さんの胃を、「萎縮性胃炎」と記載している医師はたくさん居ます。気をつけた方が良いです。血管透見で判断すると間違います。O-1、O-2、O-3になりますと、今度はHP陽性の場合RACはすっかり荒廃してしまっている場合が多いため、襞の有無で判定する方が診断のぶれは少なかろうと思います。空気を入れすぎて全部O-3にしてはなりませんが。

重要な事:C-1とC-2以上には大きな壁がある。C-2とC-3にはある程度壁がある。O-1とO-2にはある程度壁がある。壁というのは発癌率に関してですが、つまりC-3とO-1は混同していてもかまいません。O-2とO-3も混同してかまわない。統計でOpenとClosedにわけるのはC-3とO-1の性質が似ており有意差が出にくいためにお勧めしません。

ついでに「HP陽性の印象」とか「除菌後の印象」という記載も行います。特に患者さんはHP除菌の既往歴を外来では言わない事が多いのですが、内視鏡所見で見ると一目瞭然ですから、「あなたは除菌をいつなさいましたか?」と質問をします。だいたいあっています。微妙だなという場合は確かにありますが、微妙だったら「いる」としておけば大丈夫だと思います。例外は20歳以下の子供とか、PPI投与中、H2RA投与中でしょうか。あるいはNSAIDS投与中とかアルコール多飲、タバコを吸っている場合もだまされることがあります。まあ、それでも肉眼的な判断の方が呼気テストの偽陰性で安心しているよりもはるかに有益だとは思っておりますが。

除菌後のC-2です。RACは見えません。
除菌後のC-2です。胃体中部にはRACが見えてきました。
この小さな発赤は少し判断を迷わせる。
除菌後のC-2です。胃体上部に発赤があってHPの有無が紛らわしい所見です。(この症例はアルコール+)
ここで表層性胃炎と呼ぶとHP陽性の表層性胃炎と紛らわしく、私は病名をつけない。
別の症例。ぎりぎりC-2ぐらいの所見。RACがところどころ破壊。やはり除菌後です。男性はわかりやすい。
RACは破壊されている。これだけでHP陽性と断定できるかというと難しい。
こういう発赤、あと浮腫があると、HP陽性かな?という感じ。C-2かC-3か迷うがその時の雰囲気で決める。
C-2とした。
かなりの発赤がありますね。HP陽性なんだなあという所見。
RACが胃角に見えるからC-1、しかも女性。でもうるさいこというと、Spottyに白い斑点がある。
こういうのは急性胃炎の痕だったり、NSAIDSのびらんの痕だったりもする。
周囲にHP陽性の所見もないし、過去に感染があったようなエピソードもなく、C-1とした。

一見して女性。小さな白いスポットがある。絶対C-1?と言われると困る。
しかし臨床的にはHP陰性を強調したいためにC-1と記載するだろう。
こんな感じで、ひとりひとり臨床と絡め合わせて診断していくけれども、難しいのがNSAIDSによる胃炎後ぐらいで、ピロリ菌感染の影響を除菌前、除菌後に言及しつつ記載するのは木村・竹本分類が圧倒的に便利。

除菌後特有の発赤
何年か経つと徐々に落ち着く

2010/10/15

GOTよりGPTが高かったら異常

同じ医局の坂口先生は肝臓の専門家です。(今は平塚市民病院だと思います)
先生が「GPTがGOTより高かったら、それは肝障害だよね」って仰ったのが忘れられません。

確かにGOT16、GPT10くらいが正常で、GOT20、GPT24だと必ず何か理由があります。
例えば栄養の取り過ぎとかウイルス感染とか薬剤性の上昇とかアルコールです。

当院ではGPT39までが正常値だったはずですが、B型肝炎でGPT30超えたら核酸アナログの適応ですから、全然39は正常ではありません。





というのが前振りです。

私が「検査結果は持ってこられましたか?」とお聞きしたときに、

「正常でした」と答えるのはやめていただけませんか?より深くあなたを診察するためのささやかなお願いです。

2010/10/07

リスクの細分化が医師のストレスをモチベーションに変化させる話

今日は田園都市線が停電で遅れてしまい、私は少し遅れて検査室に入りました。

「お、除菌後だね」と私が言います。画面には患者さんの胃の前庭部(出口のそば)が映っていました。私は除菌後かどうかは高確率でわかるのです。

今日の検査はT医師担当で、内視鏡医としてはまだひよこちゃんですが、それでも世間一般のレベルからすれば立派なものです。私はT医師の後ろに立ってあれやこれや思ったことを言う係です。

患者さんのカルテにはしかし、ピロリ菌を除菌しただなんて一言も書いてありませんが、私はそんな事実は全く気にせず検査が終わった患者さんに聞きました。「いつ除菌をなさったの?」

患者さんは「2年前かな…」と仰いました。T医師は少し驚いた様子で「いきなり除菌後と言いましたがどうしてですか?」と聞きました。良い質問です。

「前庭部にまず浮腫がない。そして淡い発赤のこういう散在の仕方は除菌後特有だ。一見して『きれいだな』という印象。むろん前庭部だけで決めるわけじゃないけれど、その他の部分に特徴があらわれているか、最後は総合的に判断するわけだけれどどうしてそれが重要かわかるかい?」

「わかりません」と彼は答えました。私は常々「ピロリ菌がいるかどうか、木村分類で背景粘膜を目で診断するのが内視鏡の基本」と言っています。その理由を話さねばなりません。

「君は検査をする時に『癌を見逃しちゃいけない』と思って検査をしていないかい?ところどころで私はそういう印象を受けたけれども」と私は言いました。彼はそうだと答えました。



以下、私の話。

まず高分化腺癌。これはね、絶対に見逃さない。見逃すはずがないと思って検査はするべきです。
5mmあればまあ確実にわかると思っていい。それ以下のもモチベーション次第で見つかるでしょう。
だから全然プレッシャーを感じる必要はないでしょ。
高分化腺癌が出て来やすいのはピロリ菌が現在陽性あるいは過去に陽性だった人ね。
むろん木村分類で萎縮度が進行するほどリスクは高い。アルコールや塩分、タバコによってそのリスクはさらに上昇する。でもまあ、見逃さないから。
全くその範疇にない人に高文化腺癌があっても「おかしいな」とは思うから。
(見逃す場合があったとしても、以上のような高リスク群の人は毎年内視鏡をしていれば、毎年見つかるチャンスがあるので大丈夫)
リスクをしっかり見分けることで、プレッシャーは軽減されるわけ。

じゃあ、ピロリ菌がいないなってわかったとするでしょう。除菌後は腺癌は少なくなるのはわかってる。これだけでずいぶんプレッシャーが軽くならない?
逆に、低リスクの人たちから癌を見つけたらウルトラCでしょ。うれしいでしょ。
自分の仕事のプレッシャーを、「ここで癌見つけたら自分すごくない?」っていうモチベーションに変化させるわけ。リスクがやや低い人を見つけたらそれこそ「やってやろう!」ってファイトがわいて来ない?
自分はわいて来る。
リスクをしっかりと見分けることによってプレッシャーがモチベーションに変化するのね。これすごく良い話でしょ。
ポストピロリ時代になって、除菌後の胃癌の形態もだんだんわかってきているから尚更大丈夫。もちろん沢山の症例を見る必要があるから積極的に学会やカンファランスに参加して勉強していないと自信はどこかに行ってしまうよ。

これでプレッシャーの2/3は解決できた。
あとはピロリ菌がいて、高リスクでっていう人の低分化腺癌をね、ちまちまと見つけりゃ良いわけ。
褪色の陥凹を主に見つければ良いんだから、そんなに大変じゃない。
ただね、全部癌なんじゃない?って思うような胃粘膜ってあるでしょう。しかも除菌が失敗したりして。知らないか。あるんだよ、そういう粘膜が。本当に汗かくほどのプレッシャーがかかる時があるとしたらそういう粘膜。そういう時はとにかく何か見つけて次につなげる。例えば腺腫を見つけてね、それでまた次回詳しく見る。その繰り返し。とにかく怪しいけどわかんないって時には検査をそのままでは終わらせない。そういう地道な努力が結局は報われるわけ。

そう考えるとプレッシャーなんかなくなって、あとはモチベーションしか残らない。
自分は癌を見落としたらどうしようなんて、考えたこともない。昔は考えたけれど。
ピロリ菌がいるかどうか、背景粘膜がどうか、それをきちんと捉える目を持てば、診断において医者は開放された状態になるわけ。だから早くそれを見分けられるようになりなさいって指導してるんです。わかりましたか?

2010/10/06

社会人になって、のどから風邪を引きたくない人が実行すべき事

のどからの風邪の定義モドキ

風邪のウイルス、例えばライノウイルスなどは空気中に飛沫として漂って(ぷかぷか浮かんで)いたり、あるいはあなたが触る色々な場所に付着していたりするのでしょう。それは主に人から人への感染だと思う。それがのどの粘膜に付着したときに、のどの粘膜とウイルスの表面とが親和性(くっつきやすい)があると、そこからウイルスが侵入して増殖をはじめます。これがのどの風邪です。

風邪にかかりにくい人がいる。私が思うに、のどの粘膜の表面の性状が風邪のウイルスと(ミクロの世界ですよ)くっつきにくい人がいるのがひとつめ、のどの粘膜はIgAという抗体が守ってくれるのですが、たまたま幼い頃に引いた風邪の種類が良くてスーパー抗体(広く色々な種類の風邪に効く抗体)を持っていて、のどへの付着を防いでくれるのがふたつめ、というような理由によると思います。

<風邪にかかりやすいとはどういうことか>

ひとつの理由はウイルスに暴露されやすい環境にいる事です。例えば銀行員都市伝説かも知れません)。ただ社会生活を営む以上、ウイルスに暴露されないことは困難です。大学で風邪が流行ったりするのは、ちょうど年齢が若いことと、感染防御に対する意識が欠けるという事が重なるからでしょう。従って啓発は重要であり、たとえばインフルエンザの防御に関しては京都大学の保健室のホームページは良くできています。ちなみに慶応大学の保健室のホームページはこちらです。両方とも良くできていますが、みなさんのニーズを満たしているのかどうか。ポータル(表玄関)としての出来は今ひとつかもしれません。こういう隙を見つけたら、むしろみなさんが役立つ番(例えば新しいホームページを提案する)ですから頑張って下さい。

ふたつめの理由はウイルスがのどにアプローチしやすい理由があることです。
手洗いはちゃんとしてありますか?ジュースの回しのみをしていませんか?おはしを共有したりしていませんか?普段鼻呼吸をしていますか?おしゃべりに一生懸命になりすぎると鼻呼吸を忘れてしまいますよ。鼻はちゃんと通っていますか?(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎などがないですか?)寝ているときに口を開けていませんか?通常、ライノウイルスは33度以上ではあまり増殖しないのだそうです。従って口です~す~息をしている方が粘膜の温度が下がるのではないかと思いますし、実際口呼吸をしている人の方がのどを痛めやすいと思います。もともとのどを保護している粘液が乾いて荒れやすい、そこに病原菌が付着したりウイルスが感染しやすいという理由があるのだと思います。

みっつめの理由は(すでに上にお示ししたような)免疫反応には個人差があって、例えばもっているIgAが多少不利であったり、唾液が少なかったり、あるいはあまりご飯を噛まない人でそのために唾液が相対的に少なかったりという理由があるのかもしれません。

<風邪の予防は出来るのか>

口からウイルスが入らなければ良いのですから、あちこちに触った手でものを食べたりしない、鼻をほじったりしない、ましてや爪を噛んだりしないなどの注意は最低限必要です。手はいつも洗っておきましょう。飛沫に関しては避けようがないと思いますけれど、空調の方向に注意しなるべく教室内では風下に座らないなど気をつけると良いかも知れません。ウイルスに暴露されてから15分以内ならば「塩水によるうがい」で感染予防ができるらしいですから、まめなうがいは効果があるでしょう。

<なぜお休みの日に熱が出るのか?潜伏期間を逆算するといつも水曜日あたりに感染しているのか?>

風邪を引いても交感神経系が興奮していると症状が出ない、気づかない、ということは日常茶飯事なのかもしれません。風邪の引きかけに麻黄湯、葛根湯という処方はエフェドリンを使用して交感神経系を興奮させておくという処方なのでしょう。これがお休みで副交感神経系が優位になりますと症状が出やすいのかもしれません。

<他にないの?>

なんだ、これだけか、と思うでしょう。
人により少し対処方法を変えますが、大体このくらい地道です。一次予防なんてものは。

では個別にどんなアドバイスをすることがあるのでしょうか。過去を振り返って、そして自分の経験からいくつか書いておくことにします。効いたよ、効かないよ、教えて下さい。

■マウスピースは効果がある場合がある。
口を開けて寝てしまうタイプの人には効果のある方法がこれです。実際自分も入れて寝ていた時期があります。口が渇かなくて良かったですよ。
■鼻づまりを治す。
鼻づまりがある人なら、耳鼻科に行けばムコダイン・オノンぐらいは処方して下さるかもしれません。判断は専門の先生にお任せしますが。(注:抗ヒスタミン剤出されまくって、逆効果だった人も)
■イソジンうがいぐすりは避けた方が無難。
塩水の方が確実です。もともとのどが乾いて荒れている場合はそれを悪化させるので止めた方がよろしいです。http://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(05)00258-8/abstract
■ガムデンタルリンスノンアルコールタイプは効く。
イソジン同様、アルコール入りのマウスウォッシュは全部使ってはいけません。自分が使ってみて一番良かったのがこれです。ナイトなど余計な付加価値をつけた商品もありますが、オリジナルがベスト。
■エキナセアは効いた。
エキナセア入りのお茶などが売っていて、そんなに高価ではないけれど、効いた気がしました。どうしてかは知らない。
■カテキンとかプロポリスは自分はだめだった。
吸着作用のせいか、のどがかさかさしちゃってだめでした。プロポリスはのどがさらに荒れた気になって自分はだめでした。殺菌作用はあるはずなんですが。
■マヌカハニーは効いた。ハチミツも効く。
自分は効きましたね。高いけれど、マヌカハニー。でも偽物もあるかもしれないなあ。
■亜鉛は効いた気がする。
アメリカに良くあるんですが、風邪に亜鉛のサプリメント飲むんですよね。まあ過剰な免疫反応を抑制するだけかも知れないけれど。
■ビタミン類は効いたかどうか、わからない。
もともとビタミン慣れしてるせいか、自分には効果不明。ドリンク剤は中のカフェイン頼みですが、極量近く入っているエナジードリンクと、葛根湯などを組み合わせるのは大変危険だと思いますね。吐き気があったら過量投与です。
■ミントなどハーブ類は効く。
咳も止まりますしね。エッセンシャルオイル吸いすぎるとのど乾きますけれど。
■ヴェポライザーはもってます。
ヴェポライザーって吸入器の事。電機屋さんで売ってますよ。結構やってます。
■ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏は好きです。
漢方薬なんですけれどね、麻黄湯とか葛根湯も使いますけれど、のどが痛いときには結構これです。
漢方薬局でも買えますが、「高価な」薬ですよ。
■鼻うがいも好きです。
鼻咽腔炎というのがあって、のどのちょっと上、鼻の裏側あたりが痛いときにはこれが効きますね。
塩水でうがいして下さいね。

とまあ、全部じゃないんですがリストにしてみました。
神経症的に多いですね!自分でもあきれました。
しかし、アメリカに留学している間、風邪で医者なんか行けないわけで、自分で研究してやってみた結果がこれです。市販の薬を入れてませんが、抗ヒスタミン薬が大嫌いなので私はお勧めしません。鎮痛・解熱薬は市販のもので良いと思います。抗ヒスタミン薬が入ってない風邪薬として有名なものは改源でしょうか。

ご参考になれば幸いです。

2010/10/04

二つの脳

「下腹部の痛み」を訴える患者さんが来院された時、下腹部のどこがどう痛いのか、という事をヒントにしながら考えるのですけれど、たくさんの病気がありすぎて最初は忘れているものも多いのです。

膀胱と膀胱周囲(前立腺を含めて)が原因である場合。
血管が原因である場合。
筋肉や骨が原因である場合。
子宮や子宮付属器が原因である場合。
小腸が原因である場合。
結腸・直腸が原因である場合。
それ以外の原因。

それらを思い出させてくれるのが自分にとっては超音波検査で、見ているうちにやっと色々な鑑別診断が頭の中に浮かんできます。こう書くと頼りない医者なのですが、本当に自分で検査をしなければ診断できないという情け無さであります。

このところ下腹部痛といえばS状結腸の痛みが連続していたので、患者さんの病歴を聞きながら病気を絞り込んでいこうとしてもどうも絞りきれ無い違和感を持っていたところが、実は痛がっているのは右だった、というオチでずっこけてしまいました。

触ればすぐに「あ~あ~」とわかるのですが、どうも「下腹部痛」と患者さんが仰ったのでそれを真ん中だと思い込んでしまったのは失敗でした。そんな事も、お腹を触ると明らかになりますので診察は取り敢えず全員やっとけ、と思います。

右だとわかり、一ヶ月も持続すると聞けばキャンピロバクター腸炎だとかの鑑別診断が思い浮かんで、あるいはベーチェットかもしれませんけれども、まあ原発性硬化性胆管炎だって良いわけですが、腸結核だってありますよ、ずいぶん色々でますね…、とにかく回盲部に炎症が起きる疾患も鑑別診断に入れれば良いわけですっきりしてきます。

さて、患者さんから一生懸命お話を聞くわけですが、これをカルテに書いたら一度忘れることにしています。
なぜかといいますと私が重要視しているのは「頭を真っ白にして得られた超音波所見が病歴と矛盾しないこと」だからです。なにも考えない状態で、「あれ?回盲部が浮腫んでないか?」と思うことと、上記の鑑別診断が矛盾しないとき、なるべく連想せずに別々の経路で同じ疾患が思い浮かんだときに自分としては診断がより強固になると感じるからです。

変な話ですが、一人の患者さんを自分の中の二人の医師が見て、別の診方で同じ結論が出れば良し、出なければ合議制、というような思考回路を使います。

意識してそうしているのではなく、私はいい加減なものですからあんまり考えておりませんで、検査の前に、それまで考えていたことを忘れてしまうからそういう事ができるのかも知れません。

三歩歩くとものを忘れてしまうニワトリ脳も、こういう時には役立つというものです。




検査が得意な先生というのは多かれ少なかれこのような思考をしているのではないか、と思います。答え合わせを無意識に繰り返しクオリティコントロールをしているのではないでしょうか。

2010/10/01

自分の常識を疑うべき時

こういう論文があるんですな。

「内視鏡の前には水を飲むべきか、ミルクを飲むべきか」

これを例えば日本の医者に見せてみる。

「あはは連中は何を言ってるんだ。検査の前にミルクだって?」

こういう反応をしてしまう人がいるかもしれません。居たとしたら私は落胆しますよ、という話をレジデントの先生に昨日していた。

当院では昔っから内視鏡の日は水分摂取必須です。水分摂取可、ではなくて必須。

バリウムの検査の時にはバリウムが薄くなる、胃カメラは吸引が出来ないため胃の中に水があると一部撮影できないという理由で飲水不可としていた古き伝統を引きずったまま、未だに内視鏡前に飲水不可という施設があるようです。当院の院長は内視鏡学のパイオニアと言える人物ですが、最初の頃から飲水可としていたそうです。(胃カメラからファイバースコープになったときに、吸引装置がついたため)

飲水不可にしてしまうと、脱水で血液が濃縮するために内視鏡時のいやな合併症である心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上昇する事がまず懸念されます。それだけにおいても、水分摂取はするべきなのです。他にも種々の理由があります。

世界的には内視鏡前には普通に水分はとっても良いという事になっている。だから「ミルクはどうなの?」という議論が出てくるのです。

したがって、「検査の前に絶飲食が普通」という間違った考えを持っていたりすると、「水?ましてやミルクだって?」とびっくりしてしまい、それでこの論文の存在意義に異議を唱えるかもしれないなと思ったのです。

自分の常識から二段階ずれたことを言う人がいるな?と感じたときには、それは自分の常識が一段階ずれているかもしれない、と疑うべき時だと思います。

当院では内視鏡時には水よりもスポーツドリンクを推奨しています。お茶やウーロン茶は推奨しません。

ところでミルクを飲んだらどうなるでしょうか。正常な胃なら、数時間前に飲んでも実は検査に影響はありません。正常な胃なら、です。つまり、正常でない胃に興味を持っている私はミルクを飲むことは推奨していません。

2010/09/26

第10回ダイナミクス全国大会



今、病院・医院にはコンピューター(PC)を利用したインフォメーション・テクノロジー(IT)が不可欠になりつつあります。
私がまだ中学生の頃、父(当院の院長)はPARAM-K2というデータベースを利用し患者管理をはじめておりました。
30年ぶり、などという患者さんのデータが呼び出せるのもPCおよびITのおかげで、その恩恵を十分感じています。
当院はIT第二世代という強みがあります。父の5万人以上のデータを私が受け継ぐことで、麻酔とその効果、あるいは胃粘膜と発癌といったバイアスのないデータが手元に存在します。

そういう環境で育った私がPCやITに弱いわけがなく、むしろ医師という人間の限界を通り越した記憶力を駆使せねばならぬ商売だからこそ、衰える記憶力、計算力、判断力の代わりにPC、ITに助けてもらうという姿勢は必須だという哲学で今まで生きてきました。若い頃の優れた記憶、計算力をPC、ITに蓄え、それに壮年期からの経験と、父からの経験を加える。

業者、あるいは他の医師が蓄えた知識を利用するのも良いのですが、自分の若い頃の能力を蓄えるという意味でPCを活用したい。ITリテラシーがあるかないかで、医師の将来は大きく変化してしまう可能性は残念ながらあります。案外若い医師のITリテラシーは低い。もう少し積極的にPCを活用すべきでしょう。

というような哲学にぴたりとあったのが「ダイナミクス」という電子カルテで、使用して5年になります。

むろん業界最安という値段に惹かれるユーザーも多いのかも知れませんが、自分の医療知識を10年後に活用したい、あるいは次世代に継承したいという哲学をお持ちの先生にはこれ以外の選択肢はないでしょう。

さて、病院での医療にこのダイナミクス哲学が入り込んだら、医療のパラダイムシフトが起こるかもしれません。
患者をまたいだ横断的な観察、治療を、Google Analytics的データマイニングを武器として行う。

そんな時代に将来なっても尚、ダイナミクス内のデータは生き続けるでしょう。

患者さん一人ひとりには、あなたを今診ているのはあなたのためではなく、あなたの一族のためなんですといつも申し上げておりますが、それはすでに日々の診療で現実のものとなっています。

そんな電子カルテ・ダイナミクスを活用しようという研究会がありまして、その分科会の司会などを行うために近江の国まで行ってきました。
きれいな場所です。

2010/09/25

午後から晴れました。

たまには鵜川医院の紹介

医院としてはめずらしく、
診察室から大きなガラス窓を通して裏庭が見えます。
裏庭と言っても、実は伯父の家です。
借景。
この風景が良いと、
褒めてくださる方がおられます。
患者さんを待たせても、
怒る方がおられないのは、
自然のおかげでしょうか。



柿は樹齢100年を超えています。
ただ、消毒を怠ったので今年は全滅です。


立派な竹です。
タケノコの季節には
食べ過ぎてお腹がガスで苦しくなります。



お彼岸には少し遅れましたが、
たくさんの曼珠沙華が咲いています。
もうすぐ赤とんぼが飛び始めます。

お隣には日比多神社があり、
子宝安産の神様です。

私は手が小さく、指が細く、
産科に向いていると言われていましたが、
産科になっておけば
最強だったでしょうか。

2010/09/17

たぶんもうひとつ、ある

統計よりも「1人のストーリー」が有効な理由

という記事を読みました。

「1人のストーリー」が悲惨さを訴える「数字」よりも一人の人間に訴えかけるのは、「見える犠牲効果」(identifiable victim effect)と称する行動が理由だそうです。人間が慈善行為を施そうとするときには論理的かつ実利的な計算よりも、目の前の物事に対する同情がその根拠となりやすい事と同義だと言うのです。

人間は誰しも数字よりも実例が大好きで、これは医者も例外ではありません。

でも果たして実例が大好きな理由はそれが数字よりもより情緒に訴えかけるからだけなのでしょうか。私はそれだけではないと思うのです。

例えば上記の記事で実例としてあげられているチリの鉱山を例にとります。彼らを助けることと、パキスタンの水害で人々を救済することとは、いったいどう違うのでしょうか。私は、コストとリターンの問題に帰結するように思います。鉱山の人々を助けるために、様々な新しいテクノロジーが投入されます。そのコストと、得られる様々なデータや経験値、あるいは宣伝効果などのリターンを比較してみたときに、より小さな規模でそれが行われる方がリスクが小さくリターンが大きいと人間は考えるのかも知れないと思ったのです。自分が何か慈善を行ったときに、誰しも知らず知らずのうちにリターンを期待する。これが「1人のストーリー」を優先してしまう根源的な理由なのかも知れないと。

私が上部内視鏡検査を行ったとき、患者さん本人の利益を考えますと「また来年もお受けください」と言うのが親切かもしれません。しかし当院で胃癌がより沢山見つかるためには、ピロリ菌がいない人々の受診を恣意的に少なくする必要があります。したがって肉眼的に容易に見分けが付くピロリ菌陰性の人々には、内視鏡をあまり受けなくても良いのだという事を伝えております。それらの人々が食道癌になったりGISTやカルチノイドに罹患する可能性はゼロではもちろんないのですが、それでも期待値を計算すれば私の指導が正しいのです。罹患率が一桁違う疾患ですので、現時点では胃癌にフォーカスするのが正しいのです。誰にでも「毎年」というのは、とうてい論理的とは言えません。それは経済です。

リソースが足りない社会では、この論理性がかなり重要です。
目の前の命を全力でなんとかするというのは、確かに小説的ではありますが、材料の在庫なども冷静に計算しながらリソースを最適に分配(節約することではない)できるかどうかが優れた医師の第一条件であろうと思いますし、若い先生にはその感覚を養って欲しいと思うのです。

それからもうひとつ、
上の記事では「1人1人を特定できないほど多くの被害者が出ているときにこそ、われわれは余計に思いやりの心を働かせる必要がある」と述べているのですが、例えば自分の慈善が他の人々のそれと相まってどのように役立っているかフィードバックするシステムがあれば、わざわざ難しい事を教える必要が無くなるでしょう。
私は大きな災害により大きな慈善が集まらないのは「報道が、災害の規模の大きさばかりを取り上げ、個人レベルの悲劇を伝えないのが原因」という考えは、悲惨さばかりを訴えて鬱々のなっているこの国の報道を見るに賛成が出来ないのです。

2010/09/14

目玉おやじは近眼だ。たぶん

この面白い画像で思い出した、むかし書いた(2007年頃)文章を引っ張り出してきました。


あと、近視の遺伝子が特定されたという記事もありましたし。

で、この研究者たちが近視の原因は「成長の異常だろう」と言うんですね。同意。
遺伝素因だけでは発症せず環境に左右される病気はほとんどが、成長の異常と言っておけば正しい。

近視もおそらくそうです。遺伝子が特定され、私の見解がこれで崩されたかな?と思ったらまだまだ大丈夫でした。

2007年、私は近視の原因に気がついてしまったかもしれません。
Wikipediaの記事に書いてないことを書こうと思います。
文献的根拠はないが、理には適っている。
そして実験的根拠はたぶんみなさんが最近実践しているはず。
すなわち、目をきょろきょろ動かすと一瞬目が見えるようになる、それです。

クリックすると拡大されますかね…


ここで上の図をご覧下さい。眼球の周りには目を動かす動眼筋(4本+1本)が付着しています。

ここから、通常とは逆の事を言いますよ。近視トレーニングなどと言っている人たちとは逆の事を言いますよ。
目を良く動かす人は、動眼筋が発達して眼球をより後方にひっぱることになります。(A)
そして、動眼筋が弱い人は眼球を後方にひっぱることが出来ず、眼球が長軸方向にだんだんと伸びていく(伸びやすい人が恐らく近視の保因者)ことになります。(つまりa’がだんだん長くなる)(B)

近視トレーニングの人たちは、近くばかりを見ていると動眼筋が緊張し…と言いますがこれは間違いです。近くを見ているとき、眼球はたいていほぼ中心を見ており、別に筋肉は緊張しませんから。しかも緊張したら近視の人は眼球が短くなることになる。しかし実際には近視の人たちは眼球が長くなってしまいます。むろん、締め付け具合が違って眼球が長くなるっていうんだったら説明は正しい。しかし彼らはそう説明はしていない。つまり彼らは何も理解していない。言葉遊びをしているだけです。


結論:動眼筋が眼球を緊張で保持できず、a’が長くなった状態がすなわち、近視の眼球です。
これは上記の「成長の異常」とは矛盾しません。

この概念はかなりの事実を上手く説明が出来ます。
遺伝説でいうところの、発達上の問題から眼球の奥行きが若干延長されの部分がそう。まさに動眼筋の発達が、眼球の奥行きに影響すると考えます。結合組織が弱ければ眼球は延長しやすくなるのでしょう。

そして、この説が完璧なのは以下の風説を上手く説明できてしまう事。 

  1. 眼鏡をかけると近視が進む
    • 迷信ではない。眼鏡をかけると、眼球の動きが制限されるため、ますます動眼筋が萎縮する。このため眼球の奥行きは延長するのである。
  2. テレビを見すぎて近視になった
    • TVの見過ぎ、テレビゲームのし過ぎ、あるいはPCの使い過ぎで近視になるという事がよく言われるが、眼球を全く動かさないので、近視が増悪する可能性がある。
  3. 勉強をしすぎると近視になる
    • 集中しすぎれば、その通り。私のように集中しない人間は近眼にはならない。


状況証拠からは私の仮説は完璧です。それならば…

小学生は眼球をキョロキョロさせる子の方が近視になりにくい・・・私です。
動体視力を鍛えている子供は近視になりにくい・・・たぶん本当。

自然が多ければ自然と眼球を多く動かすことになる。決して遠くを見ることが良いということではないと思うのです。一般的に視力回復トレーニングとされているものは、眼球運動を刺激しているだけですが、彼らのわけわからない理論よりは私の考え方の方がよほどきれいに説明すると思います。
子供にメガネを作るときには、なるべく面積の大きなメガネを選んで眼球運動を制限しないようにしてあげたい。そう思いましたが今の子供のメガネは「ファッション優先」なんだそうです。何を考えているのでしょう。私は子供には大人用のOakleyのメガネにしました。これが一番視界が広かったからです。

さて、真面目な話をすると、強度近視の原因は眼軸の延長であるとされ、この原因としては網膜内ドーパミンの欠如、VIPの増加が指摘されていました。REM睡眠中は激しい眼球運動が網膜内ドーパミンを増加するとされており、この点からも眼球運動を刺激することは長期的に見ても近視を予防できるだろうと考えます。2012年5月5日号のLancet誌(The Lancet, Vol. 379 No. 9827 pp 1739-1748)では、屋外での活動の低下が網膜内ドーパミンの欠如を促したのではないかという推測がなされています。眼球内ドーパミンは光刺激で増加するという論文は散見されますが、屋内での強い光線と、屋外でのそれがどう違うのかという説明がクリアではありません。緯度が高いほど近視かというとそうではありませんし。屋外での活動が鍵ならば、光の強さと同様に眼球運動も重要だと、私は考えます。




遠視はまた別です。水晶体が凸レンズとして十分に機能せず、厚くならないので網膜上に焦点を合わせられなくなる状態。まさに現在老眼進行中の自分の感覚としては「毛様体筋に力入らね~」あるいは「水晶体硬~(老人に限る)」です。むろんレンズで矯正するのが子供の場合は重要なのですが、ちょっとした老眼の場合に目薬でなんとかなるんじゃないか・・・などと考えます。





そして動眼筋のない目玉おやじは近眼なんです。たぶんね。

2010/09/08

となりのとなり

日比多神社トナリ鵜川医院鵜川邦夫です。

当院のトナリは日比多神社という子宝安産祈願をする神社なので、お参りのついでにいらっしゃる方もおられますが、市内にはいくつか同じ名前の神社がありますので、混同されることが多いようです。

説明を追加
だいたい左に書いたような感じで、本当にトナリにあります。



今日バスに乗っていました。バスっていうのは両側につり革につかままっている人がいたら、あと一人通るのがやっとの隙間しかありません。ですからバス停で止まるたびに、通れるようによける必要があります。

たいてい毎日うまく行くわけです。

でも、今日はうまくいかなかったのです。
の男性が一カ所からどうしても動かない。
彼にしては「動けない」のだと思います。左下の図をみてください。

彼のとなりの男性()が気付いて一歩下がれば良かったのかも知れません。しかしとなりの男性が動けない状況に気づけなかった。
彼のとなりのとなりの方が出たいのに出られない。

人はとなりは見られるが、となりのとなりは見られない…

たった一歩下がるだけで皆楽に通れたかも知れないのに、となりのとなりがどうなっているかまで、気づかない。そのためにバスの中ではなにやら怪しい雰囲気で押し合いへし合い。

私は身体が細いので、そのあと上手に通り抜けましたけれど、後ろのほうから眺めていて「みんながんばれ~」って思いました。
ちょうどこんな状況になっているとき、頭の中に、
「となりのとなり」っていう言葉が浮かんできて頭から離れようとしない。

「となりの芝生は青く見える」って言うけど、
「となりのとなりはどうなのよ」って。
じゃあ、「となりのとなりのとなりは?」って。

これ、となりが無限になると公衆衛生って事になるんですね。
あ、医学では。

無限とはいかなくても例えばある人の胃が赤い。さっき見た胃より赤いかな。その前の胃とは同じくらいかな。・・・・それを続けると胃カメラのような主観的な検査であっても客観性が出てくるような「気がする」



「となりのとなりのトトロ」だったら、めちゃくちゃ客観的にトトロを見られるかも知れない、とか。
「となりのとなりのとなりのとなりのトトロ」くらいだったら、私にも会えるかも知れない、とか。
「となりのとなりのとなりのとなりのとなりのお姉さん」だったら、それはすっかり他人だし。

色々思いまして。非常に有意義だった。

客観性を失って、困っておられる患者さんは多いと思うんです。大抵はごく身近なところと比較して良くない、と落ち込んでいたりする。そういうときにとなりのとなりが見えるようになれば良いなあ、と思ってあれこれお話することが多いわけです。

Twitterってあるじゃないですか。私は、T0NARIなんですけども。
この中に、RTってあるんですね。Retweetっていうのかな。誰かの発言を引用するっていうマークです。これは誰かが引用した誰かの発言って事で、それを見ても「へー」ぐらいで、それほど心に衝撃を受けない。
これって「となりのとなり」なんですね。
となりはうらやましいけど、となりのとなりだったらうらやましくないし、何言われても悔しくないや、みたいな。
そういうゆるいコミュニケーションツールなんじゃないかって。
思いますね。悪くない。

2010/09/03

しちゃだめ、と、しなさい

今日患者さんに話したんですけど、

「食べ過ぎちゃいけません」

などという、制限する指導が出来るっていうのは、とても医者としては楽なんですね、って。

言うのは簡単、出来なくても責任はないし、第一患者さんは制限しなくちゃいけないほどに、生命的には機能的な異常がない。それが将来破綻を来すかどうかは別として。

しかし一方で難しい指導があって、

例えばMCVが高くてアルブミンが低くて、ああ、肉を食べてないなあという患者さんに、

「お肉を食べなさい」と指導したいわけですが、

これ、患者さんの嗜好との対決をしなくちゃいけない、また、指導通りにしたときの諸症状に対応(予想を含めて)しなくちゃならない、そして結果を医者が保証しなくちゃいけないという意味で、困難を極めるわけです。

どうも安直だ、という理由で指導というと「しちゃだめ」「しちゃだめ」に偏りやすいというのは、医者の場合だけでなく、子供の教育などでもいっしょですよね。

というと、患者さんは納得していた。

「~しなさい」と一方的に言うだけでなく、本当に出来るようにサポートする指導というのは、例えば消化管に機能異常が出現した場合の重要な治療方法の一つなのですけれど、患者さんのインテリジェンスも必要とされるなかなか奥深い世界。

医者というとすぐに「塩分制限」に示されるように「制限」という言葉が大好きなんだけれど、そんな言葉を発していたら自分が滅入ってしまう。一日に「しちゃだめ」と「しなさい」がほぼ互角に口から出るように、なんとなく意識するようにしているわけです。

その方が雰囲気としては前向きですし。自分が明るくなりますし。

Jet データベース (MDB) のバックアップについて

Superdyn ML にて定期的にやりとりされる話題ではありますが、特にOSのテクノロジーについては進歩がないのでメモ程度にまとめておきます。

■大前提
マイクロソフト社は、Jet Database EngineをMicrosoft SQL Sever Desktop Engine (MSDE)にいずれ置き換えたいと思っている。
ただし、その割にはフロントエンドとしてのMicrosoft Accessは進化していない。Accessの最大かつ、唯一の特徴で、Wordに実装されるべきなのに未だ実装されていない「印刷条件の記憶」は、Access2007で一旦反古にされそうになったくらい。

■MDBファイルが壊れないバックアップ方法は、VSSを使う方法だ。
VSSとはMicrosoftのVolume Shadow Copy Serviceの事。使用中のファイルであっても一瞬安全に入出力をロックして壊れないようにバックアップ出来るテクノロジーだ。このAPIを直接我々がいじる方法は私は見つけていない。しかし商用のバックアップソフト、例えばAcronis True ImageはこのAPIを使っているようだ。したがって、これらの商用ソフトを細かくチューンアップして、MDBファイルのタイムスタンプを記録しておけば、ストレスがないだろう。

■RAIDの意味のなさ
MDBをバックアップするそもそもの理由は、データの不整合が起きたときに元に戻すことが出来るようにである。しかしRAIDを使用中は、データの不整合は両方のファイルに起きる。そう、律儀に両方壊れるのだ。だからRAIDは意味がない。

■しかし、ユーザーがそれほど神経質でない場合は、定期的なバッチファイルによるバックアップで十分だ。
WSHを使うも良し、バッチファイルを使うも良し、手作業で行うも良し、拙作CompMDBを使うも良し。
実は手作業で行うというのはフールプルーフとしては有用だ。自動化させるとどんどん自分が馬鹿になる事を経験しているユーザーは、手作業でのバックアップにこだわるべきかも知れない。

■最適化はどうするか。
レセプト作成時に特にインデックスが肥大化する。レセプト作成時は基本的には他ユーザーは接続しない運用が良く、必然的にそれが最適化に良いタイミングだ。レセプト作成時に最適化をするのはお勧めです。CompMDBは自動で最適化してくれる。

■トラブル時の書き戻しは考慮してあるのか。
トラブルが起きたとき、どのバックアップまでさかのぼるか、トライアンドエラーで素早く調査する必要があろう。それがすぐ出来るのは拙作CompMDB以外には見当たらない。

■クエリを使ったデータベースの多重化も良い方法ではあるし、datadyna.mdbの分割も一法ではあるが。
バージョンアップに対応するのが面倒で、今はやめてしまったが、受付テーブルを別mdbにするのは有効だし、患者~テーブル群、診療~テーブル群を定期的に二重化したデータベースに書き出す方法も悪くはないと思う。

■ただしMSDEないし、他のDatabase Engineに進化した場合、これらの努力は意味がなくなる。
いつまでJet Database Engineの寿命があるかわからないので、自分も根本的にいじる事のコストとベネフィットを考えて、手を出せずにいるし、そもそも・・・

■良いコンピューターを使っていれば、MDBファイルなんて、壊れない。
値段は張るけれど、良いPCを使い始めてからは、MDBファイルが壊れたことなんて、ない。これが結論だ。

2010/08/30

リスクを分散する

多くの「健康食品」なるものに対して私は必ずしも肯定的ではありません。
例えば「スーパー○○」なる健康食品を3食欠かさないという患者さんに対して、私が話すことは、


例えば普段召し上がっている食品は、なるべく多くの種類を食べなさいと指導されますね。
それは食品によるリスクを回避するという点でも正しい考えです。
特定の栄養素ばかりを取った場合、それが害になる場合もあります。
あるいは、ある食品に後になって毒素が混入していたという場合にも、多くは摂らない事によってその危険性を回避できると考えます。

なぜ医者が西洋薬を使いたがるかという一つの理由はトラッキングの容易さからです。
後になってそれが害をなすとわかった場合、さかのぼって患者さんを追跡しやすいこと。
あるいは成分が単一であるために、作用を理解しやすい事も理由のひとつです。(各メーカーによって基材の違いがあるために、問題が生じたときの解決はやや複雑です)

従って、どこの誰が作ったのかわからない(多くの健康食品は転売を繰り返され、オリジンが良くわからなくなっています。一部のメーカーは除きます)それらの健康食品を大量に服用を繰り返すことは、リスク回避という視点からすれば間違いです。むろん大量に飲んでいただいた方が相手方としては助かります。安定供給しなくても良い。害があってもいつでも逃げられるなどのメリットがあります。


多くの高齢者は栄養が確かに偏っており、サプリメントが必要な場合もありますが、その場合であっても食品と同様、薬だからと信用せず消費者側でリスク回避することが必要だと考えます。
実際にはリスク回避するのが難しいかもしれませんが、その時には主治医の先生は利害と関係ない位置にいるという意味で良きアドバイザーかも知れません。

2010/08/28

NERDという概念には異を唱えたい

どんなほ乳類でも、相当量胃液が逆流するのが普通の事であるのに、それを疾患概念とすることには私は異を唱えたい。

むしろ下部食道過敏症であるとか、下部食道括約筋(LES)収縮異常と言った概念の方が当てはまるのではないか。

また、下部食道について意思統一された観察方法があるわけでもない。例えば切歯列からの距離であるとか、呼気時、吸気時、深吸気時などの情報なしに画像だけで云々言う事は自分には賛同しかねる。
その時の抗コリン剤の使用不使用、鎮静の有無、あるいは基礎疾患、体格なども重要であろうし。

ただ、やたらと細かくなるのは日本的でよろしくない。しかも海外では深鎮静での内視鏡が普通で深吸気での胃食道接合部観察などとても望めまい。もっと簡単な方法がないかを考えていた。

ところで逆流を見るだけならば、腹部超音波でかなり観察が可能だ。
ちょうど食道胃接合部は肝左葉の直下にあり見やすいためである。そして食道粘膜の厚み、あるいはびらんの有無は気泡の有無により間接的に知ることが可能であり、しかも唾を嚥下させれば当然LESはその瞬間弛緩するわけで(弛緩しなければ異常)、機能観察も可能なのである。

これも実際には個人的な技なのであって、まったく細かくて日本的でよろしくはないが、少なくとも情報が少ないだけに内視鏡よりは簡単であるし、医者が3人よれば3つの意見が出て結論が出ないけれども、医師以外が関与する検査については意思統一がはかられやすいかもしれないなどとも思っている。

ともかくも、いわゆるNERDと診断される患者群を相手にしたときに私がまずすることは、
○いったい患者さんが何に困っているのか、頭を冷静にしてもう一度考えてみよう。
という事である。

胃酸の逆流が本当に原因である場合に、それは
1)胃酸が細胞間を通って、カプサイシン受容体を直接刺激する。
2)胃酸が粘膜を刺激して下部食道平滑筋を刺激し痙攣が生じ、それがカプサイシン受容体を刺激する。
という二つの経路が考えられる。

そのときの治療法はいくつかあって、
1)胃酸分泌を抑制する。
2)胃酸逆流を抑制する。(LES弛緩が必ずしも重要ではないと考える)
3)食道粘膜を保護してしまう。
4)下部食道平滑筋が痙攣しないようにする。
などである。

患者に応じてそれぞれバリエーションがあるから、とてもとても複雑だけれども少なくとも内視鏡時にある程度上記のヒントが得られるというのがポイントだ。

言いたいことは、私が患者さんから得ている情報というのは、結構機能的なものが多い。視覚的診断なのだけれど、機能を見る、という事を重要視している。

どうも今までの経験上、各個人に対して、多くのパラメーターが存在しすぎる。
FD、IBSもそうだけれど、天気予報同様にこれらのパラメーターを正しくシミュレーターで計算してもらえるようになるまでは、疾患モデルをもっとシンプルにする必要がある。
臨床の現場では常に、「この人のパラメーターはこれとこれで…」などと考えているのです。
まだ出口は見えません。

2010/08/17

こういう情報が欲しい

患者さんには、現病歴の他に、家族歴、既往歴、嗜好品、アレルギーなどを聞きますが、コンピューターのトラブルの時にサポートする人間はこういう事を知りたがっています。

1)ハブはどのメーカーのなんという製品を使っていますか。アライドテレシスじゃなかったら、それは金属筐体ですか、ファン内蔵ですか、電源内蔵ですか、何ポートでいくらぐらいの製品ですか。最後に電源を入れたのはいつですか。
2)ケーブルはカテゴリーいくつですか。まさか自作ではないですね。安物のケーブルや薄いケーブルは使っていませんか。
3)PCのネットワークインターフェースはインテル製ですか。ブロードコム製ですか。インテルのユーティリティでネットワーク診断は出来ますか。デバイスドライバのリンク速度タブの中に診断ボタンがあります。4)ハブには無停電電源装置をつないでありますね。
5)OSとOfficeのバージョンを教えて下さい。
6)Microsoft Updateか、管理者バージョンのアップデートファイルを使って最新版にしてありますか。
7)アンチウイルスソフトないしはセキュリティスイートは使っていますか。使っていたら商品名を教えて下さい。
8)インストールしてあるプリンタを教えて下さい。プリンタドライバは最新ですか。
9)ディスプレイドライバは最新ですか。

さて質問をどうぞ。

これを患者さんに置き換えるとこうなります。

1)今までに病院に行ったことはありますか、お産や風邪も含めて。あるならばそれらの記録はありますか。あればそれを見せて下さい。なければなるべく詳しく教えて下さい。
2)今までに検診、ないしは血液検査などを受けたことがありますか。あるならばそれらの記録を見せて下さい。たくさんあってもかまいません。「異常が無かった」という答えは受け付けられません。なんの検査を「していないか」までも拝見するからです。病院なんて急にかかるに決まっているものですからそれらの結果は普段まとめておいてください。結果がもらえないならばそれは「他の医院にかからないで欲しい」というサインですから、どんな場合でもまずその医院におかかり下さい。
3)今までの投薬記録を教えて下さい。お薬手帳をお持ちの場合は過去のものもお持ち下さい。
4)ご家族(第三親等ぐらいまで)の病気について、死因とは関係ない場合も含めて細かく教えて下さると幸いです。
5)アレルギーの記録もあればお教え下さい。
6)今日の問題について主治医の先生には相談しましたか?

では今回の症状についてお教え下さい。

おそらくリサイクルされない


どうせならキャップに顔を書いて欲しかった・・・
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2010/07/30

クリックと同じ原理

ある検査で予約関係の間違いが起きた。
違う検査を予約されてしまったのであった。
5名しか入れない枠だから、そこには入れない。でも別の検査の予約枠にその人の名前はあるのだ。
しかし本人はその自覚はないのだ。
「私は今日この検査の予約をしたはずですが?」
あなたの間違いだ、と言えるかもしれないのだが、ここは慎重さが必要で患者さんが間違ったと断言するのは危険だ。


なぜこんなミスが起きたのか。
予約を受けるときの言葉遣いを再現してもらい、原因がわかった。
患者さんはBという検査の予約をしたい。
ところが予約を受ける職員が、「Aという検査ののご予約ですね?」と聞いてしまったようである。
実はBという検査は電話で予約が出来ないわけで、選択肢はAしかないのだけれど、だからといって、最初に「Aの予約ですね?」と聞くのは良くない。
いきおいでハイと答えることは当然想定されるから。


「相手にハイ、イイエで答えさせる質問は間違いが生じやすいから、特に予約などの現場で使うべきではありません」と注意をしました。


医者が患者さんに質問をするときにも、なるべく「ハイ、イイエ」と答えさせる質問をしてはいけません。
例えば「タバコを吸いますか?」という質問ですら、「吸っているタバコの銘柄を教えて下さい」と聞くぐらいでなければならない。

家族歴に関しては患者さんはとてもいい加減だから、「癌になったご家族はいらっしゃいますか?」などと聞いて「イイエ」と言われたらジ・エンドである。「ご両親はお元気ですか?」から始めて丁寧に聞かねばならぬ。

現病歴についても同様である。「何か生ものを食べましたか?」「イイエ」でジ・エンドである。患者さんは直近の食べものしか想定していない。

既往歴については「病気をしたことがありますか?」ではだめだ。「病院・医院・あるいは歯科医院にこの1年で何回ぐらい行きましたか?この3年ではどうでしょう。入院をしたことがありますか?」このぐらいでちょうど良いのだ。患者さんに簡単に答えさせてはならぬ。正しい診断を得るためには正しい質問の仕方をせねばならない。


逆に簡単にすませようとおもえば、「ハイ・イイエ」式の問題を用意すれば良い。
「あなたはなんとか病」などと不安をあおるアンケートのほとんどはこれである。わざとミスを多くすることでその病気に該当する患者を増やそうというマーケティング上のテクニックである。騙されてはならない。


医療のミスの原因はあらゆるところに潜んでいるが、人を思考停止に陥れる「ハイ、イイエ」には注意が必要である。

当院の現場(丁寧に話を聞く)を見て、「問診票で良いんじゃない?同じじゃない?」と評した方がいる。しかし当院にも問診票はあるのだ。そしてその目的は別にある。当院の問診票はいい加減に答えると間違えるという罠が用意してある。
このくらいのフールプルーフは医療においては当然用意すべきである。
さらに院内の構造にもそうした仕掛けがいくつかある。開かないドアなどはわざと用意してあるのである。チェックサムのようなものである。


クリックを多用するプログラムがあるとする。
初心者に優しいプログラムである。
ところが困ったことに、こうしたプログラムの使用者は、「自分の使い方は間違ってない」と言い張ることが結構あるのだ。

それを逆手にとれば、間違えて欲しくない部分には別の動作原理を使用する、というような工夫が出来る。


追記:上記のような医療面接のテクニックは「開かれた質問」「閉ざされた質問」として習うらしい。簡単に答えられる閉ざされた質問にはわざとひっかけ問題を入れてそれを患者プロファイリングに利用する、というのは医療面接のテクニックでは習うのだろうか。

2010/07/28

だから患者さんを痛がらせてはならない

この記事を読んで欲しい。興味深い事が書いてある。

拷問は無実の人を「疑わしく見える」ようにする効果がある(GIGAZINE)

一部を抜粋してみます。


女性は「自白」することはありませんが、氷水に手をつける拷問に対し「無頓着」と「泣きながら苦痛を訴える」の2パターンの反応を使い分けました。女性に会った被験者は女性が苦痛を表した時ほど罪が重いと評価し、女性に会うことはなかった被験者は女性が苦痛を表さなかった時ほど罪が重いと評価しました。
被疑者が拷問を受ける様子をその場で聞かされたのではなく、過去の拷問の様子の録音を聞いただけの被験者は、被疑者が苦痛の声を上げるほど「疑わしくなく」感じたそうです。


目の前で拷問で苦しんでいる人を見たとき、その傍観者である自分は加害者の共犯者だと自らを判断する。このためその行為を正当化するために、苦しんでいる人が「悪い」人であると判断しようとするのではないかと研究者らは推測しているという。

患者さんが病気で苦しんでいるときに、医師は加害者ではないにも関わらず罪の意識を感じることは良くあることです。例えば目の前に二人患者さんがいたとして、その時に、痛い痛いと叫んでいる患者さんよりも、ただ脂汗をだらだらと流して顔面蒼白となっている人を優先して診てしまうとすれば、それは確かにトリアージとう観点から見て血圧が下がっている方が優先なので正解なのでしょうけれど、くみし易い相手を選んでしまうという心理的な影響がもしかしたらないとは言えません。正直言うと私は痛い痛いと言う人は苦手です。(無表情の人はもっと苦手ですが)それは私の心を突き刺すからです。痛くなくても痛いと口をついて出てくる人はいるのです。「痛いの?」と聞くと「いえ」と答えたりするのです。「痛い」の大安売りをする人です。私は少々むなしく感じます。子供に注射を打つとき、泣く子供と、泣かない子供では、泣かない子を「いい子だ」と言いますが、大人に関してもその印象を持ってしまいます。表現に誇張が入る事を計算に入れることは物事をより複雑にします。おそらくそれが嫌だという心理もあると思います。私は自分が痛みの共犯者と自らを判断しないために必要な思考回路の「一手間」を嫌がっているのだろうと分析しています。

痛い痛いと叫ぶ人を目の前にすると、未熟な医師の場合、「患者さんが悪い」みたいに言う人もいます。例えば内視鏡検査で患者さんが苦しんだとする。その時に怒る医者っていますよね。彼らは未熟なのですが、似たような心理状態かも知れません。

それではなかなか良い患者-医師関係が築けません。

もともと痛がっている場合は別ですが、医師は検査や治療において患者さんを苦しませてはならない。これは単なるヒューマニズムではありません。加害者としての自分を正当化するために自分が患者さんに対して攻撃的になってしまうことは避けねばなりません。まずそれを心しておかなければなりません。注射ひとつ、患者さんが痛く感じないように努力しなければなりません。

正しく患者さんを評価するためには、痛みという余計なバイアスを取り除いてやることが必要な条件なのではないかと思うのです。

患者さんは患者さんで、痛い痛いと演技をするのはやめねばなりません。素直に痛い、のは良いのですが、演技的に痛がることはあなたのためにならないと言うことです。むろん相手は人格者の医師で、あなたを受容してくれるでしょうが、そうでない医師もいるかもしれません。ですから客観的に痛みを訴えるに越したことはありません。そうすればあなたの病気は正しく評価されると思うのです。

2010/07/24

細菌性下痢

下痢にも色々あるのですが、生水を飲んでおなかを壊して以来ずっと水様便で食欲もなく体重も減ってきた・・・などと言えば細菌性の下痢だろうと考えます。

胃液が1リットル、胆汁+膵液=消化液が1リットル、小腸から10リットルぐらいの分泌が毎日あると言います。コレラではそれらが一切吸収できなくなります。だから下手すれば一日目で12リットルの下痢があって、その日のうちに死んでしまうでしょう。だからコロリ=コレラです。

一日10行(ぎょう=下痢はこう数えます)の下痢があったとしても、一回100mlくらいとすれば、せいぜい1リットルの液体が出て行くだけでして、11リットルは小腸+大腸で吸収されているというわけです。全然余裕です。何とかなるんじゃないか、と思うわけです。

むろん脱水の評価には別の方法がちゃんとありまして、身体の10%の水分が失われるとど~だこ~だって。それはちゃんとやるにせよ、10行とかいうと患者さんがびびりまくりですので、「大丈夫だよ」と伝えるためにこういう話をするわけです。むろん神経質な人にはこういう話はだめでしょうね。最初のコロリが出てきた時点で恐れおののいてしまい、落ちを聞いてくれません。神経質な人には結論を最初に言うこと。「大丈夫、これは薬で治ります」ってね。

胃液ばかり吐いたときには、H+とかCl-が喪失するわけですが、小腸からの分泌物が下痢として出て行くとなりますと、Na+とかK+とかの喪失がバカにならないわけです。血液検査ですぐに喪失量が算定できるかと言いますと、喪失した電解質が血液中に反映するにはタイムラグがあるわけでして、そればっかり信用するとエライ目にあいます。例えば胃で大出血した、なんてときに血液で血の濃さを測定したらHb14g/dlだから大丈夫です!(キリッ・・・みたいなお馬鹿な研修医だってひょっとしたら世の中に居るかも知れません。1リットル出血したら、その1リットルが間質液で完全に置換された状態ではじめて血液検査では11g/dlとかに下がったりするわけです。電解質でもそういう事が起きますので、血液検査ばかりしてるんじゃなくて大体予想で電解質を補正するのが良いのでしょう。

そういうのはエライ人が経口補水塩ってのを考えて下さってますので、それを利用してしまいます。
血液ってのはNa+が140mEqの濃度で入っています。10%の食塩水のNa+がだいたい1700mEqだってんですね。下痢便ってのは30mEqとかそんなもんでしょう。するとまあ、0.2%ぐらいの食塩を考えておけば良いって事ですね。K+はどうかっていうと、喪失してしまうんですが実際にはK+は体内プールがものすごく大きいんですね。だからK+をとって血圧を下げようとかいうのは本当になんちゃって科学もいいところなんでして、それでK+をとりますと下痢がひどくなったりしますので(蠕動を亢進させてしまう)、それでWHOの言う「経口補水塩」が正しいって事になります。

http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/health_inf/info/fruitjuice.html

市販品でOS-1ってのがありまして便利なんですが、例えばスポーツドリンク(ポカリスエットとか)に500mlあたり1gの食塩を加えて飲んでも良いですよ、なんて話もします。ただ、これでは炭水化物が濃すぎるわけで、ひどい下痢の場合はもう少し薄めたいところです。

表. WHO(世界保健機関)・UNICEFが推奨する経口補液の組成(含有成分)
重量g/L浸透圧mmol/L
塩化ナトリウム2.6ナトリウム75
グルコース、無水物13.5塩素65
塩化カリウム1.5グルコース75
クエン酸三ナトリウム、二水和物2.9カリウム20
クエン酸10
総計20.5総計245
上記の横浜市のサイトから引用させていただきました。例えばポカリスエットは糖分が100mlあたり6.7g含まれており、上記の経口補液(ORS)より相当濃いです。しかし上記補液は発展途上国でコレラなどの重篤な感染に使用されることから鑑みて、もう少し症状が軽い場合にはスポーツドリンク+塩でいけるだろうとの判断をしています。

そういった背景があって、患者さんには例えばこんな指導をします。

1)500mlあたり1gの塩を加えたスポーツドリンク(ポカリスエットはスポーツドリンクの中では糖分が最も濃いほうなので半分に薄めても良いし、アクエリアスや生協のスポーツドリンクならだいたいそのままで良いのですが、人工甘味料のスクラロースなどが添加されている場合には下痢する人もおられるため注意が必要かもしれません)を用意する。少し高いのですが市販のOS-1を用意してもよいし、自分で作っても良い。
2)一口20mlを3分間隔で飲んでも時間当たり600mlの水分が補給できることを知ること。むろん吐いている場合は別である。ストローや「すいのみ」で飲むと空気を嚥下しにくいので良い。一気に水分を飲むと下痢をする。
3)下痢の反復では腸内細菌が極めて減っていることを知ること。これを元に戻すことを目標としたい。すなわち投薬には整腸剤が含まれ、それは下痢の治癒後もしばらく投与される。
4)飲水、下痢のバランスが取れてきた場合、栄養補給を考える段階である。ゼリードリンク、流動食、カロリーメイト、栄養剤などの補給を考慮しても良い。(病状によります:すなわちこの判断が適確に出来るほど回復は早く、それが出来ない人は入院も考慮せざるを得ない場合があります)
5)原因を調べるのも重要で、大腸菌以外にもカンピロバクター、サルモネラ、アメーバなど、鑑別する疾患は多い。培養はしておいて、私の判断で抗生物質を投与します。症状やエコー所見によって原因菌の想像がつく場合もあります。
6)むろん手洗いは励行。
7)下血、血尿、高熱の持続は悪い兆候であるから、ただちに救急病院に受診の事。

さて、下痢をしているときに遠くから(当院には一時間以上かけて来院する患者さんが多い)来院するのはやめてください。
あなたにとって悪いことです。

2010/07/17

内視鏡を行う意味

内視鏡を行う意味は色々あるでしょうけれど、
例えばある患者さんの胃がC-1であったとする。
(HP陽性のC-1があるので、一応過去の写真はチラ見する)

未来のある時点で患者さんが来院され症状を聞いたときに、
鑑別診断をかなり絞り込むことが出来るという意味で重宝です。
少なくとも胃癌、AGMLやNSAID潰瘍を除く胃潰瘍は最後に考える鑑別診断になるから。
しかもAGMLやNSAID潰瘍は病歴からすぐにわかるから。
よりすばやく根拠のある予測を患者さんに提供できることになります。

むろん過去の事もわかります。
食べ物の嗜好の事とか、普段の便通なども上部内視鏡からわかる場合がある。
当然飲んでいる薬などもです。
除菌してあるかどうかは言われなくてもわかります。

その中には、問診で聞き忘れている情報もあるので内視鏡をしておいて良かったと思うことは多くあります。

などと書くと、そして普段それを公言するのでまるで占い師のようだと言われますが、うさんくさいところまでそっくりだと思います。

とりあえず内視鏡の記録は木村・竹本分類で萎縮を記載し、それに付随所見として除菌未・除菌済を書けば一番将来役に立つ。第二に、使用した薬剤と咽頭反射の程度を書いておくと良い。「びらん性胃炎」だの「表層性胃炎」だの、「grade記載のない逆流性食道炎」だのは、どうでも良い所見です。
本来、胃透視でも萎縮はわかるのにそれを記載しないのは一種のネグレクトだと思います。困った問題です。

2010/07/12

便秘下痢交代

便秘と下痢を繰り返してしまう・・・という場合に、大腸に異常がある事はまれですが、大腸検査が必要になる場合もあるでしょう。それで異常が無かった場合、以下のように説明をします。
(他にも星の数ほどパターンがありますが、ほんの一例を示します)


緊張などのきっかけ

交感神経が興奮

大腸の動きが止まる=便秘になる

便がたまってくるとしかし次第に大腸内の圧力が上がって、やがて痛くなる

圧力が閾値を超えると急に排便がはじまってついには下痢をしてしまう

また便秘になる
(これを繰り返してしまう)

緊張して大腸の動きがゆっくりになってしまうのを、一生懸命動かす薬を開発しているのが製薬メーカー。
しかし、限界まで我慢して圧力が閾値を超える、という部分を緩和してやれば痛みはないわけで。
つまり便が硬くならないようにすれば、閾値が下がってある程度たまれば便通が出現する、と考えれば良いでしょう。

便はやわらかく、しかしやわらかすぎず、そして量を多く、という方向へ。

旅行のときや、ストレスがあるときには整腸剤+便をやわらかくする薬を併用したり、水分をたくさんとったりすると良い。

このような排便習慣であってもポリープとは関係がないのだから安心することもとても重要です。

2010/07/10

骨盤内癒着

他院で大腸内視鏡が入らなかった、という人の内視鏡をしますと、
ほとんどが骨盤内にS状結腸のどこかが固定されているケースです。
私が苦手なのは腸管と腸管が癒着しているケースですけれど、これは滅多にない。

骨盤は臼状の空間ですけれど、この中には膀胱と(女性器と)直腸しかなくて、骨盤と大腸がついていても、それが原因でイレウスになったりはしない。だから「癒着がある」と表現はしますが、患者さんは心配しなくて良いわけです。

最初90度左にひねって入ると、骨盤の背側に沿ってスコープが進むことになり、ここから右に回転させながらスコープを引き、そのまま内腔が追従してくる場合には骨盤内癒着があっても簡単に入ると確信できます。この場合初心者に任せても確実に盲腸まで到達できます。むろん短い腸の場合、この操作が必要がない事も多くて、その場合は当然すいすいと到達できます。

さて、一定の割合で追随してこないのですが、このときには骨盤内癒着があり、しかもそれが自然ではない場所、という事になります。この時には基本的にαループを作るために左回転で入ると良いでしょう。そして癒着を超える前から一回、二回と短縮を試みると患者さんは痛がらないでしょう。目の前の襞が妙にひきつれている場合は、逆αが適当かも知れません。その場合は普通に入って左回転で短縮を試みます。

S状結腸はこのように簡単です。この人は難しい、とすぐにわかるのでお勧めの手技です。難しい人をどうやって入れるのかは、そりゃ、実力なのですが、簡単なのに入らない、時間がかかる、というのはもったいないことです。

2010/06/20

無量寿

今朝NHKラジオ第二で、「無量寿」という言葉を聞きました。

人がなぜ「死にたくない」とか「長生きしたい」と言うのかーーその、「死に切れない思い」というのは永遠なるもの(無量寿)に出会っていないからではないか。

(したがって宗教者は神の永遠性を信者に提示するのだ、という風に論旨を持っていくわけです。本日のラジオでもそうでした。神の永遠性を信じれば救われる、と)

宗教の話はおいておいて、永続性のあるもの、無論宇宙は終わるわけですが、そんな何十億年も先の話ではなく、とりあえず百年ならば百年、あるいはそれ以上永続するものに自分が関わることが出来たとしたら、確かに人は満足するかも知れないなあ、とラジオを聞きながら思ったわけです。

ここで重要なことは、「永遠なるものに出会うだけで、人は救われる」という論旨だと思ったのです。

例えば芸術家で、「何かを残したい」と強く思う人がいたとします。まあしかし、それは人としては欲がちと深いと思います。もともと芸術家というのは欲が深くないとできない商売だから、それで良いのです。でもそれを万人に当てはめると罠にはまる。学者が「歴史に残る論文を書かねばならない」だとか、思うのは、思うのは良いとしても、少なくともそれが達成されないからと行って、「死に切れない」というほど思いつめることは一般の人(特にリタイアした老人では。若い人は別です)はないのだろうな、と思ったわけです。

例えば、数学の勉強をしていると、これは神様が作っただろうという永遠の世界を覗き込むことが可能です。一般に、勉学を突き詰めていきますと、調和のとれた美しい世界を垣間見ることが出来ます。そういう永遠の世界を見ますと、思うことは、自分がやらなくてもいずれ真実は明かされるだろうと言う安心感です。この安心感と言うのは重要で、私はもともと祖母や母の影響で、あまり「死」というものに対して執着がないわけですが、「いつ死んでも本望」という心持ちになるわけです。勉強って言うのはとても重要だ、と思うひとつの理由はそれです。

むろんそこに欲があって構わない訳で、「自分が発見するんだ!」という熱烈な欲求を満たすために日々頑張ることはいいことですが、おそらく途中で死んでしまってもその人が化けて出るって事はないんじゃないかと、思います。永遠の世界を、その人は見たわけですから。

で、「死にたくない」とか「長生きしたい」という人に、永遠なるものを見せる事ができれば、たぶんその方は満足して成仏してくださるんじゃないかと思ったわけです。

そう思えば、例えば子供の成長した頼もしい姿を見ることは、ひとつの永続性(むろんせいぜい数十年の)を見出したことと同じです。親が死にそうになっても、「大丈夫だよ、ついているから」と子どもが言ったら、なんだかとても安心して死ねそうな気がしてきました。家族って言うのは良いですね。

人間だれしも老いと直面して生きねばならないのですが、その頃には頭がまわらなくて、学問の美しさなんて理解できなくなってしまい、今は生に執着していない私ですが、その頃には学問的に不安になって執着しているかもしれません。その時には家族や友人に救われたりって事もあるのでしょう。

そろそろ落ちを用意しなくちゃいけません。というよりも、長くなって飽きてしまいました。

ラジオを聞いたときに、私が真っ先に、「ああ、だからみんな『息子さんは医者になるんですか?』って聞くのかなあ」と思ったのです。患者さんは、私に永続性をたぶん求めている。知っている人はたぶん、私の母の家が古い医者の家系だということはわかってるんでしょう。そして父と私とは性格は違うけれども、医療哲学は似通っています。当院は、父と私、ランダムに患者さんに相対しますが、ほとんど方針にぶれがありません。これは親子でやっている医院としてはちょっと珍しいかも知れません。やってる事は現代医学なんだけれど、なにか別のものを私に求めているのじゃないかと言う気がしました。祖父が生前、「医者の世襲は結構重要」という話をしていました。医者というのは古来はパトロン探し、そしてパトロンのノブレス・オブリージュの手足となって働く職能であるというような事を聞いていました。そういう事がわからん連中が医者になるのはたまらんと祖父は言っていましたが、私にはよく意味がわかりませんでした。今も世襲じゃなくて良いじゃないかと思いますし、父は一言だって私に医者になれなんて言わなかった。

しかし、もしも患者さんが、特にみな死と隣合わせなわけですから、我々に永続性を見たいのであれば、それはそうかもしれないと思いました。ですから、『息子さんは医者になるんですか?』って聞かれたら『なりますよ、たぶん』と答えれば、相手は成仏してくださるかも、知れないと思ったのです。

2010/06/15

細菌ブーム

当院では昔から細菌ブームでありまして、とにかく人間を守るのは善玉菌であると。

私が子供の頃、40年近く前になりますが、院長(私の父:当時40歳くらい)は私に痛み止めを渡すときには必ず「胃腸を保護するために」と整腸剤の袋も渡したものです。長年そうでしたから、医学部に入りまして、痛み止めは胃を荒らすと習ったときに、「ひょっとして整腸剤は違うんじゃないか?」などと思ったりしたわけですが、しかし実は胃の保護剤こそほとんどNSAIDS潰瘍には効かないという事実がわかってくるにつけ、やっぱり整腸剤は良かったんじゃないか?などと今更思うわけです。

乳酸が胃酸分泌をコントロールする、などというソースの見つかりにくい話もあります。便利なので、根拠がはっきりしないままネタにしていますが、そのうちちゃんと調べようと思っています。

ところで乳酸菌は胃酸で死んでしまって届かないから云々という話がありますが、あれは半分本当で半分嘘です。「届かない」と断言している人は、金儲けが好きなのか、愚かなのかどちらかだと思います。世の中はなんでも確率統計に支配されておりまして、胃酸にさらされたとしてもそれで乳酸菌が死ぬとは限らないわけです。しかも、液体というものは胃の通過スピードは恐ろしく早いものであります。収縮した胃であれば、30秒もあれば液体は十二指腸に通過していくわけであります。バリウムの検査で、ブスコパンを使わなければあっという間に流れて行くことからも明らかであります。いずれにせよ、飲めば何でもある程度効くわけです。

だんだん話が支離滅裂になってきましたが、100種類以上の細菌、100兆個と言われますけれども、それらのバランスが重要であります。むろんその殆どは大腸に存在するわけでありますけれども、口腔内とか食道とか、小腸にもあるでしょうし、副鼻腔の中とか、皮膚とかにも当然存在するわけであります。

赤ちゃんのうんちは乳酸菌が多いわけですけれど、お母さんから自然に受け渡されるものです。コアラの離乳食は母親のうんち「バップ」で、草食動物にとって極めて重要な消化のための腸内細菌を子供に受け渡します。人間の場合、消化には腸内細菌は関わらないはずですから、きれいにした乳首やお母さんの手にわずかに付着した細菌が赤ちゃんの中に入るのでしょう。それが乳酸菌なのですから、実によく出来ていると思います。しかし抗生物質でしばしば細菌叢は破壊されますから、そのたびに正常に戻さねばなりません。抗生物質とともに整腸剤を処方するのはこういう訳があるのです。母親が糠漬けを作っておいてくれれば完璧でありまして、それを食べると元に戻るはずだなあなどと考えるわけです。

細菌ブームはまだまだ始まったばかりで、今は大腸に関して多少嘘を含んだ情報が飛び交っているだけですけれども、機能性の様々な細菌はこれからも市場に登場するでしょう。

口腔内常在菌LS-1という商品がありますが、私は好んでおります。口の中の悪玉菌の多さと言ったら、人間はまだましで、動物ではひどいものでして。咬創の治りにくさは最悪です。その口腔内に目をつけたというのはすばらしく、口内炎の方、虫歯がある方、口臭で悩む方などに勧めています。以前は冷蔵品でありまして、発売されてあっという間にドラッグストアから姿を消してしまいました。現在も細々とネットで販売しておりまして、手にいれるのに少し敷居は高いものの、おすすめ出来る商品であります。

皮膚に関しても当然善玉菌がおりまして、次のブームは皮膚だろうなと思っています。細菌同士が成長をコントロールする仕組みも最近Natureに発表されました。

整腸剤もいくつか種類がありまして、当院では何種類か並行して使っておりましたが、患者さんの評判がだんだん収斂していくもので、現在は2種類使用しています。かつてラックビーという優れた製品がありましたが、現在は手に入らないのがやや残念です。

整腸剤は次の場合には積極的に使用します。胃切除後、高度の萎縮性胃炎、下痢の後、抗生物質使用時、使用後、胃腸炎、便通異常、腹満感。

未熟児に整腸剤を投与すると死亡率が低下した、という論文も最近発表されました。単なるブームでは終わらない、重要な事象であろうと考えます。

2010/06/05

検査後の排尿困難

胃カメラの検査で、事前に緑内障の有無、あるいは前立腺肥大による排尿困難の有無を伺います。
現在では、過去の同様な検査に比較して「抗コリン薬」というお薬をほんの少量しか使わないために、おそらくほとんど眼圧や排尿には影響しないのではないかとも思いますが、過去に様々な事例が報告されたでしょうからそれに従って、緑内障があったり排尿困難があるときに、抗コリン薬の使用について配慮しております。

ただ、患者さんの中には排尿が悪いことを検査をするまで自覚しておられない方もおられるでしょう。問診を行い配慮していたとしても、抗コリン薬を普通通り使用し、それによって尿が出にくくなってしまう事は理論上はあり得るわけです。そのときに、一時的に細い管を使用して排尿していただいたと仮定しますと、しかしその細い管を通した尿道はあとで浮腫んでしまうでしょうしすっきりとはしないでしょうから、どのようにケアするのがベストなのだろうかと考え込んでしまうわけです。

ところが幸い何万人か拝見していて、検査後に細い管を使用せねばならなかったという事例が一件もありません。それは何故なのかを考えることにします。

1)静脈注射で抗コリン薬を使うから
  当院は上部内視鏡ではアトロピンを0.1mg~0.3mg(0.2A~0.6A)使用します。脈拍に大きな変化も出ず、しかし唾液は止めてくれ、また鎮静したときの血圧の維持はしてくれるちょうど良い量であろうと考えます。しかも静脈注射なので代謝も速い。
下部内視鏡では必要に応じてブスコパンを3mg~20mg(1/8A~1A:ほとんど1/4Aで済みます)使用します。脈拍を70~90程度に維持する事を目標にしています。尿閉がある、閉塞隅角緑内障だという場合にはグルカゴン0.2mg~0.4mg(0.2A~0.4A)を使用します。いずれも代謝が速いようです。

2)少量だから
上に示したように、少ししか使いません。

それでも検査後に「尿が出ない、おなかが痛い」と訴える患者さんはたまにおられるのです。
そのときにはエコーをするとわかりますが、ある程度尿はたまっているものの、高度ではない場合が多く、そして重要なのは非常にガスや便がたまっていることがわかります。
慌てず浣腸をいたしますと速やかに排便され、そして排便後にきちんと排尿もされます。腹痛が取れてお顔もにこやかです。

検査後に尿が出ないと聞いた場合にあわてて細い管を入れて云々と処置をしてしまう前に、ガスが出ているか、便がたまっていないかを確認することがとても重要ではないかと思っております。

2010/05/21

消化剤を使う局面

消化剤が何をするかというと、食べ物を消化します。当たり前ですが。

例えば糖尿病があるときに、
消化剤は血糖を低下させる場合がある、
と聞いたらどう思いますか。

アルバイトで糖尿病外来をしていたときに、
患者さんを400-500人診ていたと思うんですが、
(ちなみに私は糖尿病の事は、教科書は読みましたけれど、
実際の臨床はできません。医者不足のピンチヒッターとして
診ていただけです。糖尿病には専門スタッフが多数必要ですから、
当院では糖尿病診療は行いません)
糖尿病性神経症がある人の血糖コントロールがずいぶんと
難しいなと思ったのです。それは胃の排泄障害だと思うんですが。

食事を食べてもスムーズに消化されない。
血糖降下剤を飲んでいる、ないしはインスリンを注射しても、しばらく食事が胃にとどまったり、あるいは大量に小腸に流れ込んだりする。
低血糖と、反応性高血糖を繰り返してしまい、とても血糖が不安定になるのです。

それで当時は、モチリンというホルモンと同等の働きをする
エリスロマイシンを使って胃を動かすとか、
三環系抗うつ薬を使うと良いなどの報告があったのですが、
使うには少し抵抗がありますよね。保険適応もないし。

そこで患者さんに消化剤を投与してみました。
これならば保険適応もあります。消化不良症ですから、明らかに。

入院していただいて一日中モニタリングしたわけではないのですが、
低血糖発作は減るし、ヘモグロビンA1cは改善するし、
全く無効という人もおりますが、使ってみた印象としては良かったです。

考えてみれば、
糖尿病の場合は慢性膵炎が背景に存在することもあって、
それに対しても有効なのでしょう。

消化剤は、胃内で食物を分解するので糖尿病性神経症があっても消化スピードが安定し、その結果良好な血糖コントロールを得やすくなった、という報告をするほどには私は熱心ではなかったです。

モチリンと言えば、グレリンが思い出されます。
食欲がない、食欲がない、と言ってる人の中には、胃の萎縮が木村分類のO-3の人がおられますが、グレリンが分泌されていないのかしら、などと考えます。

消化剤には他にガスを減らす効果もありますが、逆に刺激が少なくなって便秘を訴える場合もあります。総合的に考えてから投与するのが吉。

消化剤にもいろいろな味、剤型があって、それらを使い分けることも大切です。

消化器の薬というのは、味と剤型は大切だと考えています。いろいろなバラエティがあった方がうれしい。私が先発品を開発するメーカーでしたら、錠剤の形を星型にしたりして、ジェネリック薬品へ流れるのを防げないかなあなんて考えたりしますし、私がジェネリック薬品のメーカーでしたら、なんとしても飲みやすく、間違えにくい薬の開発に血道をあげると思います。