2011/01/20

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)についての最近の知見

Medscape Gastroenterology
A Promising New Treatment Option for IBS
David A. Johnson, MD

要約(リンク先要会員登録)


IBSは北米人口の10-20%に存在する症状とされるが、病態が複雑で治療についての明快な回答が未だ得られていない。

最近注目を集めているのは腸内細菌叢:治療としてのプロバイオティクスが広く研究中である。
一方腸内細菌叢を変化させる抗生物質も治療法としては注目を集めている。rifaximinという非吸収性の抗生物質はかつて旅行者の下痢に使用され、現在は肝性脳症の治療に使用されている。NEJM2011/1/6号に掲載された二つのデータによって、非便秘型のIBS患者のうち9-10%の患者が抗生物質による治療に反応する事が明らかになった。(悪玉菌としてC. Difficile の関与も彼らは予測している)

この効果が一時的なのか、永続するのか、あるいは高価な治療費を誰が負担するのかなどの問題は残っている。

私の注釈

PPIの長期投与により腸内のC. Difficileが増加することが報告されております。何も考えず漫然と長期投与することに対して、警笛を鳴らしたいと思います。
過敏性腸症候群についてはこちらも御覧ください。
非便秘型過敏性腸症候群の病態のひとつとして、腸内細菌が確実に関連することがありそうだという事が証明されたことは一歩前進と言えます。

6 件のコメント:

  1. 論文でのIBSの定義では、CFSで器質性病変を除外、そして影響する抗生剤などの服用者も除外。
    しかし下痢型のIBSとしているものの中には、
    狭義のIBSとSIBOの 両方が混在していて、
    rifaximinの効果は作用機序から考え
    SIBO(小腸内細菌過剰繁殖)に限られるんじゃないかなとか。
    SIBOは、CFSでは分からないですもんね。


    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=16554709&ordinalpos=13&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum 

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  2. makoimai先生
    確かに小腸divの患者さんが入り込んでいる可能性はあるんです。(小腸divはSIBOのかなりの部分を占めるはず)
    小腸divは脂肪肝にも関与するなど欧米ではかなり注目されつつあるようですね。注目です。

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  3. 現在、IBSのガス型(機能性腹部膨満症)の研究は、どこまで進んでいるのでしょうか?

    教えていただけると幸いです。

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  4. 匿名様
    日本のWikipediaを見ますと確かにガス型、というのがありますね。
    でも私が理解するIBSにはガス型、というのはありません。英語版のWikipediaを見ていただくと、IBS-C, IBS-Dなどあり、これはRome-II基準によります。
    http://digestion.xqhospital.com.cn:8050/uploadfile/2008/11/19/20081119074513.pdf
    この中のC2 Functional Bloatingが機能性腹部膨満症に相当しますが、個人的には、このFunctional Bloatingにも、「発作的に急激にガスがたまってくるタイプ」や「常にガスがたまっているタイプ」など様々で、簡単に論ずることが出来ないように思います。
    残念ながら、IBSの一症状としてのガスと、スプルーのような病気(特に欧米で多いグルテンアレルギーでは、ガスの症状が強くなります)とも混同されやすく、理解の難しい病態ですね。
    自分が見た「これは本物だ」と思った症例は、ほんの数分で小腸ガスが発生してみるみる腹部が膨満する状態でした。あれは虚血や浮腫が急激に生じて、二酸化炭素の小腸での吸収が傷害されないと説明ができません。
    あまり新薬も出ておりませんで、新規の抗生物質が効果があるのではないか、(アミノグリコシド系だったと思いますが)という論文が昨年あたりに出ていると思います。
    恐らく当ブログをすみまで探しますと、そのような記載が見つかるはずですが、実際にはMEDLINEで文献検索をしてみましても、"flatulence"や、"functional broating"のキーワードではあまり文献が出てこないのが実情です。

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    1. 返信していただいて有難うございました。
      勉強になりました。

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    2. 患者さんそれぞれで病態は異なり、それに寄り添うようにして問題解決をはかるべく医師はトレーニングされています。
      そのようなトレーニングは主に入院患者さんとの深い付き合いの中で行われ、外来診療に発揮されます。医師は勉強量が多いのが普通で、毎回違う知識を仕入れている可能性がありますので、どうぞ良いコミュニケーションを外来でしていただけますと幸いに思います。

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