2012/04/28

Mac OS X Lionの逆スクロールに慣れる方法

Mac OS X Lion にしたときに、一番びっくりするのがトラックパッドのスクロールの方向がSnow Leopard とは逆だったという事で、半年以上慣れませんでした。

でも、もともと iOS で、写真を見る時にトラックパッドを操作する方向と同じなのは知っていました。

UIを統一しただろうことは理解できます。Appleらしい。


ある日、「Webページも画像と同じ『映像』に過ぎない」と思った瞬間に慣れました。以後特に戸惑う事はありません。

私よりも沢山考えている人々はこちら→リンク

直感的に文字を画像として認識させ深くは理解させないようにする、という目論見はないと思いますが、スクロール量を多くさせ、より多くの広告表示を可能としたり、あまり細かく考えさせずに影響力を行使したいといった思惑があったりするのでしょうか。

2012/04/26

バックドア

バックドア(コンピューターの世界では不正に仕掛けられた侵入口、というような意味)、という言い方は適当では無いかもしれないのですが、「逃げ道」を用意することを常に心がけます。

通常はインフォームドコンセントの文書などで医者の逃げ道を沢山用意するのが普通なのですがここでの意味は逆で、患者さんの逃げ道を用意する、という意味です。

胃潰瘍でピロリ菌の除菌療法をする場合に、
「たとえ失敗しても、大丈夫なのです。なぜならば〜」と説明しておくこともひとつのバックドアの設置です。(例:二次除菌、三次除菌などバックアップの方法があること。除菌を失敗していてもサーベイランスをきちんと行えば問題のないこと。維持療法などを組み合わせる事により疾患のリスクも最小限に出来ること、など)

もしも患者さんが「〜しなければならない」という知識をテレビなどから得ていたとすれば、それを「ぶっ壊す」(乱暴な言葉で失礼)のは重要な仕事です。何しろ医学には"絶対"はないのです。「除菌はしなければならない」とか「逆流性食道炎の薬は一生でしょ?」などの間違ったメタ知識は取り敢えず「ぶっ壊す」のがバックドア作りの基本であります。

一度築いた家を直しながら増築するよりは、更地から家を建てる方が楽ではあるように、なんの知識にも染まっていない若い方の初診を診るのは大好きです。
残念ながらそうでない場合のほうがはるかに多い(どうしてみなさんテレビなんか見るかなあ)ので、取り敢えず患者さんの知識にバックドアを仕掛ける、という事が最初の外来での仕事になります。

そうすれば治療が理想通りに運ばないときであっても患者さんが心理的に追い詰められずにすむだろうと考えているのです。

しばしばそれを邪魔するのが「友人」の存在であります。「医者にかかれば?」というのは友人ではない、と私は個人的には思っています。本当の友人とは「私が連れていくからいっしょに行こう」と行ってくれる人の事です。これについては以前書きました。

2012/04/15

成功するやり方と、失敗しないやり方

何にでも成功する方法と、失敗する方法があります。
失敗する方法をとことん学んでいこうという学問があります。失敗学と言うそうです。

コンピューターの使い方、特にインターネットの危険性を学ぶには、
まずウイルスの作成方法を学ぶと良い、という類の議論があります。

一方でみなさんは成功者がどのようにキャリアを積み重ねてきたかという話も大好きでしょう。自己啓発本は売れていますもの。

でも、どの方法が成功してどれが失敗するかというのは、線引きが難しいと思います。

例えば大腸内視鏡ですけれど、
S状結腸という場所を通過していく時、上手な先生ですとプッシュ(押しこむ)を上手に使ってアルファループという状態を作ります。
ところが下手な先生は同じようにプッシュをしているのに、患者さんがひどく痛がります。
私はプッシュはしないで、細かい動作を繰り返して入れていくのですが少し時間がかかっていると思います。名人と呼ばれる先生方よりも少し平均時間はかかっているのではないかと思います。
でも初心者のやり方と、名人クラスのやり方が似ている、というのは何やら示唆的です。
中くらいの先生方には、プッシュは使いこなせないのかもしれません。

内視鏡のテクニックひとつだけを見ても、学ぶということは大変に難しいことのように思います。
いつからか私は、ロボットならばどうプログラミングして内視鏡をするか、という事を考えるようになりました。
ある方法に良いとか悪いなどの区分けはなるべくせずに、条件分岐をしようとしたのです。
(条件付けが難しくIf文とかCase文では書くことが困難なのです。期待値を計算して最適解となるような条件を選択する、という感じ)

つまり自分がロボットだと想定して、この場合はこう、この場合はこう、と条件をつけてそれに従って操作をすることにしたのです。
こういう事を繰り返していますと、まずは条件づけを作らねばならないために様々な試行錯誤を繰り返すことになります。そのため検査の密度が濃くなり自分にとっては良い事が多いのです。内視鏡の検査をしたときに、私の検査は情報量が多くなるのはこのためです。ところが例外事項がかなり積み上がるのです。いわゆる「ピットフォール」というものです。ロボットは例外が起きた時にエラーを吐き出して止まれば良いのでしょうが、人間の身体が相手ですので簡単に検査をやめるわけにもいきませんし、実際には頑張って上手く行く場合も多い。この「頑張って上手く行く」さえプログラムできれば、人間が要らなくなるわけでして、今は「どのように頑張ったのか、その根拠として利用した知識は何か」を意識して検査をすることにしています。

不毛です。バリエーションがありすぎて、これを教えることは出来るのでしょうか?

きっと先人も同じ努力をしたのだろう。その結果としての名人の手技なのだなあと、思います。

2012/04/04

elobixibat(A3309)に関するメモ

日本発のニュースって本当に(記者が理解してないから)わけわかんないので、こちらで調べる必要がある。

スウェーデン アルビレオ(AlbireoPharma)社の発表:リンク先
昨日のニュースリリース:リンク先
(味の素製薬が「エロビキシバット(Elobixibat)」導入)

elobixibat(A3309)について

回腸の胆汁酸トランスポーター(ileal bile acid transporter (IBAT or ASBT)を阻害する作用がある。これにより、大腸内での胆汁酸濃度が上昇する。胆汁酸は一種の油脂なので大腸内では便秘を抑制する方向に働くとのこと。

思い出す薬では高脂血症用薬のezetimibe(商品名ゼチーア)がある。これは副作用が下痢。小腸のNPC1L1を阻害してコレステロールの吸収を抑制する。

あと思い出すのがビタミンB5で、これも脂質低下作用と腸管刺激作用がある。

WikipediaからVitamin B5

Wikipediaからcholic acid











ビタミンB5も胆汁酸の吸収抑制で効果を発揮しているならば興味深いのだが。

胆汁酸の吸収を抑制すると何が起きるのか。
一次胆汁酸、二次胆汁酸。

肝毒性のある胆汁酸、発がん性のある胆汁酸もあると考えられるため、胆汁酸の吸収を抑制する場合には腸内細菌の正常化を同時に行う必要があるのではないか。そうでないと肝障害や、発がんの危険性が上がるのではないか。
太った人にはより効くかも知れないが、痩せた人(アジア人)の場合には胆汁酸の吸収を抑制することによって栄養障害を来す可能性がないかどうか。またコレステロール代謝に及ぼす影響を考慮する必要があろう。

2012/04/03

デジタルな人

肉は食べないとか、野菜は食べるとか、
そういう価値判断しか出来ない人に、

「1とか0で判断するのはやめましょうよ。デジタルな考え方ですよ。あなたはデジタルネイティブ」

などとその人にはわからないジョークを飛ばしますが、
デジタルネイティブがそうじゃない事を祈ります。

「お腹が弱い」を自称する方に多いのですが、
「あれはだめ、これはだめ、あれはいい、これはいい」でしか判断しない。

アレルギーはないのだから、「少し食べる」というような選択肢がないのか。
(お酒を飲む方も、「少しだけ飲む」という選択肢がないか方が多いようだけど)
いつか書いた()ように、「リスクをヘッジしたいなら、なんでも食べよ」が正解です。