バックドア(コンピューターの世界では不正に仕掛けられた侵入口、というような意味)、という言い方は適当では無いかもしれないのですが、「逃げ道」を用意することを常に心がけます。
通常はインフォームドコンセントの文書などで医者の逃げ道を沢山用意するのが普通なのですがここでの意味は逆で、患者さんの逃げ道を用意する、という意味です。
胃潰瘍でピロリ菌の除菌療法をする場合に、
「たとえ失敗しても、大丈夫なのです。なぜならば〜」と説明しておくこともひとつのバックドアの設置です。(例:二次除菌、三次除菌などバックアップの方法があること。除菌を失敗していてもサーベイランスをきちんと行えば問題のないこと。維持療法などを組み合わせる事により疾患のリスクも最小限に出来ること、など)
もしも患者さんが「〜しなければならない」という知識をテレビなどから得ていたとすれば、それを「ぶっ壊す」(乱暴な言葉で失礼)のは重要な仕事です。何しろ医学には"絶対"はないのです。「除菌はしなければならない」とか「逆流性食道炎の薬は一生でしょ?」などの間違ったメタ知識は取り敢えず「ぶっ壊す」のがバックドア作りの基本であります。
一度築いた家を直しながら増築するよりは、更地から家を建てる方が楽ではあるように、なんの知識にも染まっていない若い方の初診を診るのは大好きです。
残念ながらそうでない場合のほうがはるかに多い(どうしてみなさんテレビなんか見るかなあ)ので、取り敢えず患者さんの知識にバックドアを仕掛ける、という事が最初の外来での仕事になります。
そうすれば治療が理想通りに運ばないときであっても患者さんが心理的に追い詰められずにすむだろうと考えているのです。
しばしばそれを邪魔するのが「友人」の存在であります。「医者にかかれば?」というのは友人ではない、と私は個人的には思っています。本当の友人とは「私が連れていくからいっしょに行こう」と行ってくれる人の事です。これについては以前書きました。
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