2009/12/12

食道は通常気管の左側にある

「うつ伏せ」により内視鏡挿入が劇的に容易になるという発表を以前行いました。
が、これは食道が通常気管の左側に存在するので、うつ伏せにして顔を左側に向ける事が内視鏡を楽に通過させるという仮説が前提でした。
事実、今まで何人甲状腺を見たか覚えていませんが、全員食道は気管の左側にあるのです。

ところが初めて気管の右側に食道が存在している例を観察しました。


赤い矢印が食道です。

この方は、「あなたには(私のこと)絶対に私ののどは通せまい」と豪語していらっしゃいまして、おもしろいなと最初は思ったのです。ずいぶん挑戦的なセリフですが、たまたま拝見したエコーで納得しまして、なるほどこれならば普通は内視鏡の挿入に難儀するに違いないと思ったのです。

普通、「他院では内視鏡挿入をあきらめた」というような症例はうつ伏せで挿入すれば簡単に入りますが、今回は右梨状窩から挿入しようと決めました。

video

非常にだらだらした動画で申し訳なく思います。私の挿入はウンでもなく、スンでもない、いつの間にか始まり、いつの間にか終わっている、起きているのに気付かせない、そういう内視鏡を上部でも下部でも理想としております。結果として非常に抑揚のない内視鏡となりますから若い先生には物足りないでしょう。結果としては拍子抜けするほど簡単で、なんの苦もなく通過していきました。ただ患者さんに試されただけのような気がします。通ったからって別に患者さんは感動した風でもありませんでしたし。

今回は偶然そうであったというだけで、あくまでも通常は左梨状窩からの挿入が正解です。ただ、こういう事もありますという報告でした。

2 件のコメント:

  1. 鵜川先生
    最近当Blogに行き当たり,拝読させていただいています.
    胃カメラについて少々以下お聞きしたいことがあるのですが,ご意見いただけないでしょうか.素人質問とは思いますが,よろしくお願いいたします.
    (1)梨状窩から食道に入るところで視界がなくなりますが,ここに発生するがんなどは見落とされるということはないのでしょうか.
    (2)通常は左梨状窩からの挿入ということですが,挿入と反対側の診断レベルが低下するということはないのでしょうか.
    (3)通常は左梨状窩が正解とのことですが,理由をご教授願えないでしょうか.

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    1. 良い質問だと思います。匿名様はお医者さん(内視鏡専門ではない)だという前提でお答えします。
      (1)について。神様の微笑みで見つかった、という話は聞きます。しかし見逃した、という話は聞かないのははぜか。きわめて珍しい事に加えて肛門管に癌が出来る場合と同様に、もともとスペースがゼロですから、小さな腫瘍でも明らかに症状が出るだろうと思われるからです。(そしておそらく先に耳鼻科に受診され、見つかるのでしょう)内視鏡をした場合、擦過により出血もするでしょうから、勘の良い先生ならわかるのではないでしょうか。とはいえ、いつも見逃さないように注意を払って観察しています。NBIにすると近接したものの焦点があうから血管が見えますからそれも利用します。しかし、本心では「ここに癌があっても自分は見逃すかもしれないなあ」です。スクリーニングではまず見ない癌だと思います。絶対に見逃したくない時には視野を犠牲にしてキャップをつけることです。
      (2)低下するだろうと思います。もともとこの部分の癌を見つけるのはウルトラCですが、D難度、E難度を目指すならば両方見るべきだし、可能な限り両方見るようにしていますよ。癌研の先生方は両方きっちり見ますね。全員見ようとすると患者さんは辛いので、数万人に1人以下の癌を見つけるために妥協をどこまでするか、です。常に心の中で葛藤があるのです。ちなみに抜くときにもテクニックを使って見るように努めます。
      (3)右だと誤嚥しますでしょう?右から入るときもありますが、通常は気管の左を食道が通っていきますし、左から入るのがスムーズです。

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