2009/03/28

下剤は単独でなく、整腸剤と投与した方が良いと思う。

大腸内視鏡で直腸に入ったときに「腸内細菌叢」の乱れがはっきりとわかる。
学会の発表で、大腸内視鏡前3日間の整腸剤投与で粘膜が洗浄しやすくなるとの報告を見たが、有意差があることと、満足いくほどきれいになることとは違う。個人的には14日以上投与した方がきれいになると思う。

特に酸化マグネシウム単独の長期投与は大腸の内側に頑固な膜(硝子様の偽膜と形容したいような)を形成することがある。これに気づいてからは単独投与は避けているけれど、世の中ではまだまだ単独投与がなされているようだ。これは気をつけた方が良いだろうと思う。

塩類下剤だけでなく、大腸刺激性下剤を使用する場合でも整腸剤の役割は大きいように思われる。

一般的にヨーグルトは栄養豊富すぎるし、酸化マグネシウムとの同時投与はミルク・アルカリ症候群を避けたいのでおすすめ出来ず、ぬか漬けも塩分の関係でおすすめ出来ないのが辛い。結局整腸剤を適当に服用していただくのが良いと考えている。酸化マグネシウムは胃内で酸と拮抗的に働くだろうから、それで整腸剤が生きたまま大腸に届いてくれれば一石二鳥である。

ところでミルク・アルカリ症候群と少し関係があるが、胃粘膜萎縮のある患者さんはカルシウム吸収が悪く骨粗鬆症になりやすい。何か胃薬を処方しなければならない事態になり、どれを選ぼうか迷ったときに、ひょっとして水酸化アルミニウムゲルとか酸化マグネシウムを投与すればカルシウムが吸収しやすくなり骨が強くなるんじゃないか、などという気持ちを込めて選び投薬することがある。あくまで気持ちの問題である。

Aplio XG と、DICOM worklist

東芝のAplio XGが搬入されました。
早速CONQUESTと接続し、worklistを引き出せるかと思いきやダメでした。
仕様表がないので、搬入した方にもわからないようです。

接続ログをユーザーが出せる様にしてくれれば、問題がサーバーにあるのかぐらいはわかるとおもうのです。>東芝さん

CONQUESTのworklistサーバーはデフォルトのポート5678を共有して使っているようで、Aplio XGからのworklist queryはちゃんとCONQUESTに届いています。(新しいサーバーを用意したのですが、またしてもGUIでのMySQLインストールはトラブル続きでした。悔しいけれどデフォルトのままインストール。MySQLのインストールはコマンドラインが確実だと思う)

worklist テーブルでの指定方法ですが、ModalityはUS、AETはAplio XG側でワイルドカード指定してしまえば関係ありません。START DATEは当日の日付を。START TIME は0000以上、235900以下という設定。CONQUEST側ではエラーが起きていませんから、Aplio XGでworklistを受け取れていない様です。マニュアルを読むと、受付番号(Accession number)の内容によってはトラブルが起きることがあるから、サービスマンに相談を、という事でした。きっと何か仕様があるのでしょうから、ログぐらい見せて欲しいものです。(注:教えていただいたのですが、Accession numberはある程度の桁数がないとだめらしいです。私は最初から8桁の番号を用意していたのでエラーは出ませんでした)

worklistがつながらなければ、Aplio XGも高価なガラクタに過ぎません。そのぐらい、シームレスに臨床とつながる事と、旧態然としたスタンドアローンで行う検査との差は大きいのです。内視鏡のファイリング(当方が作ったEndoDB2がめっぽう速すぎて他のファイリングは使う気にはなれません)を使っているとそれを実感します。あまりその点に関して、メーカーは積極的ではないようです。結局つながった顛末は→コチラ

Aplio XG からは、PIMSメニューでStore DestinationをHDDからServerに変えれば、DICOMサーバーに画像は直接飛んで行き、スピードはHDDに書き込むのと変わらずだいたい一秒以下です。これもマニュアルは不親切でした。

ところでK-PACSとCONQUESTをつないだ場合、その画像の読み込みの遅さが気になります。Osirixではどうなるのか、今度試してみようと思います。
(→DICOMルーティングを教えていただきました。コメント欄をみなさま御覧ください)

ダイナミクスからworklistの編集は簡単です。→リンク

これ使えば、CRだろうがCTだろうがUSだろうがすべてオーダリングは完了します。

2009/03/25

IKEAと100均、駐車場

新百合ケ丘の駅前、川崎アートセンターの隣に医療複合施設が出来ました。(川崎アートセンターのホームページの写真、奥の5階建てのビルがそうです。鹿島建設が作っています)
3階、4階には聖マリアンナ医科大学のブレスト&イメージングセンターが入居しています。神奈川県内にこうした施設が出来るのはうれしい事です。最先端のPETセンターも良いですが、女性の通いやすいブレストセンターが出来る事の方が社会には貢献します。
さて、私(33期)の高校の先輩(24期)である福本学先生が院長を務める「新百合山手福本内科」はこのビルの2階、4月1日に開院です。おめでとうございます。福本学先生は内視鏡学がご専門で、名手酒井義浩教授の元で研鑽を積まれた先生ですからその実力たるや推して知るべしです。安心しておかかりになれます。乳腺疾患がある患者さんは消化管疾患の定期検査が必要ともなり、良い組み合わせではないかと思います。他のクリニックにはない特徴として、'Virtual colonoscopy' (お尻から二酸化炭素を注入しすぐにマルチスライスCTを撮影後、コンピューターで計算し直して3次元化し、大腸内視鏡の代用とするもの。欧米では大腸内視鏡に代わる検査法として定着するだろうと思われます。(私が監修したNCIブレティンの翻訳記事、「『バーチャル内視鏡』は大きなポリープを検出できる」をご覧ください)なぜならば欧米には大腸内視鏡の名手がほとんど育っていないからです。日本は岡本平次先生をはじめ、酒井先生など名手が多く技術の普及に尽くされましたから安楽に大腸内視鏡を行う事が出来る技術が育っているのは幸いです。ただし、名手が行っても入らない大腸は実際にありますのでこうした技術が用意されているというのは特記すべき事なのです。しかも福本先生がお使いの電子カルテは「ダイナミクス」です。

ダイナミクスは「医者にも患者にもデータが丸見えの電子カルテ」です。「医療データは信頼性がすべてですので改竄防止のため、当社規定の方法で保存し医師にも患者にも見せません」という大手の言い分をそのまま信用し、あるいは信用せずともついていかざるを得ない情報弱者の医療機関が多いのには閉口します。改竄防止には改竄防止サーバーをひとつ置けば済む事です。(これについては以前に書いています)実際には彼らの「改竄防止」という'Magic word'の裏には「なんとしてでも利権を守るぞ」という気持ちが見え隠れしています。ともかくそれのないダイナミクスに惹かれる医師が多いのは当然でしょう。

さて、長い前置きは終了して今日はIKEA港北の話です。IKEAというのはその内容よりもWallmartのごとく創業者がやたらとお金を儲けているという事が先に情報として入ってきたスウェーデンのホームセンターです。ですからビジネスモデルに興味がありました。ちょっと行ってみましたが、商品のデザイン自体はたいしたことがありません。普通です。普通であっても、デザインを前面に打ち出したことがコンセプトとして成功している好例と言えます。普通デザインというのは企業が商品にプラス値段の付加価値を与える役割を果たしています。しかし、IKEAの場合、デザインを商品に施すことで大幅なディスカウントをしていると感じさせることに成功しているのです。実際にはディスカウントしていないにも関わらず、デザインを施すことで普通の商品を安く感じさせるというコンセプトは良いと思います。また、デザインを施すことで商品のライフタイムサイクルが結構いい加減で良くなります。綿密な商品計画をたてて追加発注をして、などという事はせずに一回大量発注したら売り切って終了というのが基本コンセプトと見ました。デザインがあるからただのバーゲン品にならないのです。また、在庫処分の値段のつけ方もきわめて合理的です。定価150円の商品に29円などという値段がつけられているのは、在庫がコンピューターで管理され、在庫として保持しておくコスト、廃棄のコストまで考えてシミュレーションしてつけられた値段ではなかろうかと思います。また客を一方通行に歩ませる戦略、接客の少なさ、恐らく検品などしていないであろう割り切り方、そして初期不良の多さを10年保証として隠蔽する能力は大したものだと思います。実際どんなに検品をしても輸送で破損は起こるものです。ですから思い切って客に検品を任せてしまうというやり方は悪くないと思います。もう一つ感心したことは、ものの値段が非常に細かくつけられているということです。これは100円均一と同様に、客のコスト計算をある程度麻痺させます。セットで10000円というポップももちろん書いてあり安さを強調します。もちろんそれには組み合わせの妙があるわけです。IKEAが強いのも当然と思いました。大きな規格を決めておき、デザイナーには自由に作ってもらう。これはLEGOにも共通するコンセプトかと思います。

さて、話が戻りますが新百合ケ丘の医療施設です。メディカルモリノビルと言うそうですが、ビルの隣に駐車場があります。なぜ地下でないのかはわかりません。そこの駐車場料金は30分150円と書いてありました。私は不思議に思います。なぜ、20分100円でないのだろうかと。Timesという駐車場は料金が100円単位で成功していると思います。50円のお釣りを用意しなくて良いだけでずいぶん楽だと思います。また、100円単位の方が客の思考を麻痺させます。どうせ50円のお釣りを用意するのであれば大胆に10分50円とすべきでした。

IKEAに行った直後にメディカルモリノビルに行ったもので、こんな下らない事を思いました。

ところで新百合山手福本内科には私が開発した内視鏡ファイリング、EndoDB2を採用していただきました。ありがとうございました。

2009/03/24

SCシリーズの困った状況について(2)

KOHJINSHAのSCシリーズは結局、WindowsXP SP2にしたり、WindowsVistaにしてもデバイスドライバ問題は解決しませんでした。

チップセットがそもそも組込み用のもの(US15W)で、Windows用のINFファイルの整備の不具合が原因らしい。Intelのドライバアップデートに期待するべきではないかと思います。

たとえば他のPCでは、Express Card ポートは
Intel(R) 82801G (ICH7 Family) PCI Express Root Port - 27D4
などと表示されており、
これにカードを指してpci.sysというデバイスドライバでつながると、
Texas Instruments のXIO2200Aを搭載したEC/34 IEEE1394カードは
PCI 標準 PCI Express to PCI/PCI-X ブリッジとして認識されますが、
SCシリーズでは
Express Card ポートが、Intel 標準 PCI Port
となっているので、カードをつなげてもXIO2200Aは
当然のようにPCI 標準 PCI to PCI ブリッジとなってしまいます。
同じpci.sysというドライバなのですが動作しないのです。

しかし、Express Cardポートなのですから、これは間違いです。
IntelはSCシリーズのチップセット(US15W)に対して新ドライバを会員向けにすでに公開していますので、そのうち一般にも公開されると思います。

Express Card が正しく動作すれば、SCシリーズの活動の幅は広がります。
今これを直すにはハードウェアのデバイスIDを使用してINFファイルを作ってやるしかないのでしょうか。

2009/03/15

SCシリーズの困った状況について

KOHJINSHAのSC3WX06FSについてです。
Windows XP HOME SP3なのですが、これが曲者。
IEEE1394関係はデバイスドライバ全滅のようです。
せっかくのExpress Cardスロットが泣いています。

IntelのXIO2200Aに関しては標準PCIE-PCIブリッジとして認識されず、標準PCI-PCIブリッジとして認識され、このドライバの変更がどうしても出来ません。このためOHCI Compliant IEEE1394ドライバも導入されないのです。

対処方法として、SP2を導入しようかと思いましたがこれも一筋縄でいかなさそうです。
たとえばPanasonicのCF-W5では容易に起動するOSインストール用のフラッシュメモリが正常には起動してくれません。

今日はテストとして他OSを導入してみる予定です。
EndoDB2でIEEE1394経由でキャプチャする予定の先生のために頑張らねばなあ。
バックアップとして、中古のThinkPad X60 Tabletの出物があったので注文してしまいました。これにはIEEE1394がついていますので。MLCの安いSSDに換装しても相当使い物になるのではないでしょうか。
むしろそちらの方が楽しそうです。

今後は注目のHPのタブレットPCのテスト、ASUS Eee Top(ただしこれは拡張性がないのでアウトのような気がします。VESA用の穴、EC/34ぐらいつけておくべきでしょう)のテストを行っていく予定です。
個人的には電磁誘導式、感圧式併用のタブレット、ThinkPadが技術的にはすごいなと思っています。

2009/03/02

続発性骨粗鬆症がおろそかにされているようだ

胃の切除後に続発性骨粗鬆症になるのは有名な話で、ただ体重が10%~20%ほど標準体重より低いのが普通であるためか
Gut 1991;32:1303-1307; doi:10.1136/gut.32.11.1303
Osteopenia and osteomalacia after gastrectomy: interrelations between biochemical markers of bone remodelling, vitamin D metabolites, and bone histomorphometry.
のような論文はあるものの、あまり強調されていないような気がする。

Mindsで公開中の骨粗鬆症ガイドラインによれば、
続発性骨粗鬆症の中にももちろん胃切除後は含まれているもののその扱いは小さいように思う。
そしてその発症機序は、骨吸収促進型でも骨形成低下型でもなく、カルシウム吸収低下によるものだと考える。

Scand-J-Gastroenterol. 1997 Nov; 32(11): 1090-5
Osteoporosis after total gastrectomy. Results of a prospective, clinical study.
これは胃切除後5年のフォローをした研究で5年間では差は出てこない。

Calcified Tissue International 2000 Volume 66, Number 2: 119-122
Osteoporosis After Gastrectomy: Bone Mineral Density of Lumbar Spine Assessed by Dual-Energy X-ray Absorptiometry
これは5年後以上経った患者さんを見た研究で、BMDが0.70 g/cm2を骨粗鬆症と規定すると男性では18%が、女性では71%がそれと診断されるようである。それは胃の部分切除であっても全摘であっても差はなく、一方で術後20年以上では高率に骨粗鬆症と診断されるようである。

30年前から消化性潰瘍での胃切除は減ったとは言え、当時十二指腸で胃切除を受けた患者さんがスクリーニング検査で骨粗鬆症のチェックを受ける時期に入ったといえる。したがって、潜在的に胃切除後の続発性骨粗鬆症に罹患している患者さんは多いはず。もちろん癌サバイバーも多い。

このところ胃切除後の患者さんにエビス○やら、ビスフォスフォネートが処方されている例を良く見かける。血圧の初期診療では二次性高血圧の除外が重要であるように、骨粗鬆症のガイドラインでも総論の最初に
  • 診断マニュアルでは,第一義的には低骨量の存在を確認する。
  • ついで,低骨量をきたす疾患や続発性骨粗鬆症を除外する。
とはっきり書いてある。
続発性骨粗鬆症の除外をきちんとする必要がある(こんなに沢山ある)ことを強調する必要があると考えている。

ところで、萎縮性胃炎の有無によっても投薬は大きく違うはずである。
とりあえず治療、ではだめである。病的な骨量低下については患者背景を正しく理解し戦略をたてる必要があるのだ。