注目する同機となったのが、シガテラ毒(Ciguatoxin)による中毒を外来で診断(実際には疑診であり確定ではない)したことです。
参考:Wikipediaによる、「シガトキシン」
シガテラ毒では、ドライアイス・センセーションという特異的な症状があって、それが診断を容易にします。
水に手をつけるとまるでドライアイスのように冷たく(痛く)感じてしまう。結果としては痛くて水に手をつけることが出来ない。水で手を洗うことすら出来ないという症状です。
むろん最初は下痢・嘔吐・体のしびれなどを訴えますので他の中毒と鑑別はし辛いのですが。
大きな有機化合物である、このシガトキシンを生合成することは不可能とされていたそうです。この生合成に成功し奇跡の仕事を成し遂げたのは日本人で、平間正博先生をはじめとするグループです。(プレスリリース)
シガトキシンに関してはその研究に日本人が深く関わっており、小説が二つも三つも書けそうなほど感動的なストーリーなのですが、それはきっとみなさんの目に誰かから発表されて触れることがあるでしょうから今回はそれは避け、むしろ私が気になった、シガテラ毒による中毒の症状の話をします。
それが、「だるさ」です。
実は伏線になったもうひとつの食中毒があります。
それは山菜による食中毒でしたが、非常に神経症状が当初強く、そしてだるさが何ヶ月も続いた・・・。
残念ながら専門医により「アレルギーでしょう」とお墨付きをいただいてそれ以上の検査が出来なかった事が残念ですが、今でも私はそれは神経毒であったと信じています。
そしてその症状と良く似た症例を外来で見たときに、神経毒じゃないかと思い検索、シガテラ毒に行きあたったのですから、私はGoogleに頭が上がりません。
そしてシガテラ毒による中毒も、どうしようもない「だるさ」が何ヶ月、時には一年以上も続きます。
その症状が慢性疲労症候群にそっくりだったわけです。
シガテラ毒は、前述のように非常に大きな分子です。これが神経のナトリウムチャンネルに結合して神経の過敏症状を来します。恐らく当初の過敏症状がおきたあと、チャンネルにシガテラ毒が結合しっぱなしになるので、興奮に何らかの変化が起きるに違いありません。こうした大きな分子は一度体に入れば分解は困難。あとは化学的にナトリウムチャンネルから遊離するのを待つしかないのです。この期間が数カ月から一年というわけです。
シガテラ毒には治療がありません。唯一の治療は、食べたらすぐにマンニトールという薬で強制的に利尿する、というものです。これは大分子がナトリウムチャンネルに結合する前になるべく多く排出してしまおうというアイディアだろうと考えます。ハワイでの民間療法では、強制的に浣腸するというシガテラ毒の治療法があります。これもアイディアとしては同じです。どちらにせよ、一度ナトリウムチャンネルに結合したシガテラ毒を引き離す術はないのです。
慢性疲労症候群には、いろいろな病因が考えられていますが、私はナトリウムチャンネルの機能不全だと思っています。例えば何かがきっかけでちょうどナトリウムチャンネルのリガンドになるような抗体が産生されてしまう、などです。
シガテラ毒が、慢性疲労症候群患者では高率に陽性になるという事です。これは取りも直さずナトリウムチャンネルに結合する何か(シガテラ毒とは限らない)が、慢性疲労症候群の原因であろう事を示す傍証のように感じています。しかしながら、シガテラ毒の研究には予算がつかないらしく、あまり成果が出ておりません。むしろ、シガテラ毒が色々なサイトカインのmRNA産生を促すんだよ、みたいな違う方向に行ってます。あんなデカイ毒が細胞内に影響を及ぼすには何かのチャンネル経由でしょう。そこを飛ばしてmRNAを議論しても結論は何も出ないんじゃないかと思います。
BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)でちょうど、
XMRVというウイルスが慢性疲労症候群の病因とは言えないらしい
という論文が出たので、上の話を思い出しました。(そもそもScienceで出た「とうとうXMRVが病因じゃないか?」という論文に対する反論)
それが、「だるさ」です。
実は伏線になったもうひとつの食中毒があります。
それは山菜による食中毒でしたが、非常に神経症状が当初強く、そしてだるさが何ヶ月も続いた・・・。
残念ながら専門医により「アレルギーでしょう」とお墨付きをいただいてそれ以上の検査が出来なかった事が残念ですが、今でも私はそれは神経毒であったと信じています。
そしてその症状と良く似た症例を外来で見たときに、神経毒じゃないかと思い検索、シガテラ毒に行きあたったのですから、私はGoogleに頭が上がりません。
そしてシガテラ毒による中毒も、どうしようもない「だるさ」が何ヶ月、時には一年以上も続きます。
その症状が慢性疲労症候群にそっくりだったわけです。
シガテラ毒は、前述のように非常に大きな分子です。これが神経のナトリウムチャンネルに結合して神経の過敏症状を来します。恐らく当初の過敏症状がおきたあと、チャンネルにシガテラ毒が結合しっぱなしになるので、興奮に何らかの変化が起きるに違いありません。こうした大きな分子は一度体に入れば分解は困難。あとは化学的にナトリウムチャンネルから遊離するのを待つしかないのです。この期間が数カ月から一年というわけです。
シガテラ毒には治療がありません。唯一の治療は、食べたらすぐにマンニトールという薬で強制的に利尿する、というものです。これは大分子がナトリウムチャンネルに結合する前になるべく多く排出してしまおうというアイディアだろうと考えます。ハワイでの民間療法では、強制的に浣腸するというシガテラ毒の治療法があります。これもアイディアとしては同じです。どちらにせよ、一度ナトリウムチャンネルに結合したシガテラ毒を引き離す術はないのです。
慢性疲労症候群には、いろいろな病因が考えられていますが、私はナトリウムチャンネルの機能不全だと思っています。例えば何かがきっかけでちょうどナトリウムチャンネルのリガンドになるような抗体が産生されてしまう、などです。
シガテラ毒が、慢性疲労症候群患者では高率に陽性になるという事です。これは取りも直さずナトリウムチャンネルに結合する何か(シガテラ毒とは限らない)が、慢性疲労症候群の原因であろう事を示す傍証のように感じています。しかしながら、シガテラ毒の研究には予算がつかないらしく、あまり成果が出ておりません。むしろ、シガテラ毒が色々なサイトカインのmRNA産生を促すんだよ、みたいな違う方向に行ってます。あんなデカイ毒が細胞内に影響を及ぼすには何かのチャンネル経由でしょう。そこを飛ばしてmRNAを議論しても結論は何も出ないんじゃないかと思います。
BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)でちょうど、
XMRVというウイルスが慢性疲労症候群の病因とは言えないらしい
という論文が出たので、上の話を思い出しました。(そもそもScienceで出た「とうとうXMRVが病因じゃないか?」という論文に対する反論)
難しすぎて、わけがわかりません。
魚を食べて痺れた、などという場合にはとりあえずマンニトールで利尿、という選択肢も考えておいた方が良いのではと思います。非常にポピュラーな中毒です。
初めまして。
返信削除とてもわかりやすい解説をありがとうございます。
最近魚突きをはじめたので、シガテラ毒が心配で、
色々検索していてたどり着きました。
シガテラの可能性がある魚って、美味しい魚がかなり含まれていて、煮ても焼いてもダメなので、
症状と、少しでも症状を軽くする方法を知っておく必要があるなと思いました。
ありがとうございました☆
あんさま
返信削除一般的に、肉料理は子羊や子牛など、若いほうが珍重されますね。
ところが魚料理は、大きければ大きいほど美味いと珍重される場合があります。
古魚、老魚は、釣りなどでしか手に入らない貴重な味ですよね。
シガテラは蓄積される毒ですから、老魚に多い。
したがって、市場で流通する魚よりは、趣味でつったり、高級店で出される魚の方がハイリスクだという事になるでしょう。
最初の症状は嘔気嘔吐です。この時に「あ、シガテラだ」と思い当たる魚があったら必ず医師に申告をお願いします。沖縄や九州の先生ならばすぐにわかってくださると思います。