2010/03/17

バレット癌の予防〜ラジオ波焼灼

バレット癌・・日本では馴染みのない病気です。

1)バレット癌は、胃と食道の境目に炎症が生じた結果粘膜が変化して生まれたバレット上皮由来の癌です。
2)ヨーロッパでは食道がんの半数以上を占めます。日本もヨーロッパも食道がんは1000人に1人の頻度で生じますが、日本はほとんどが扁平上皮癌です。日本で発生する食道がんはほとんどがアルコール摂取に起因します。タバコも危険因子です。
3)一方欧米では食道がんの半数はバレット癌、すなわち食道腺癌です。ピロリ菌がいないから多いのだ、というのは説明になりません。日本でもピロリ菌が居ない人は十分沢山いるのにこの差はどうしたことでしょうか。
4)発癌には特定の遺伝子の変異が必要だと言うことが最近わかっています。この変異が日本人には少ないと予測されています。以前から家族歴が重要とされていましたが、それが証明された形です。
5)食道炎の症状が強い人達は、バレット癌のリスクが高いとされています。
6)個人的な経験ではやはりアルコールとタバコは危険因子だと思います。

日本では10000人に1人というような稀な癌であるために、どのように危険因子を突き止めて、それを絞り込むのか、という研究が待たれているわけです。なにしろ、バレット上皮がある人を全員組織検査をして癌の有無を毎年検査すると、ひとりの癌を見つけるために何千万年、何億円というコストがかかり、全く割に合わないからです。

ところが、こうした努力を吹っ飛ばしてしまうインパクトの仕事が昨年発表され、医者はみな拍子抜けをしてしまいました。

それが、
「バレット上皮のラジオ波焼灼」
です。

ラジオ波焼灼は肝臓がんの治療にも使われていますが、比較的取り扱いのやさしい方法と言えます。電極からラジオ波が発生するとじんわりと組織が焼けていきますが焼け焦げて電気抵抗が大きくなりますとそれ以上は焼けないので自動的に治療が終了する、というような手軽さです。風船に放射状に取り付けた電極を、食道下部に設置してラジオ波を出すようにしますと、自動的に一定の時間をかけて上皮が壊死します。

これによって上皮で起きていた遺伝子レベルの変異がいったんすべてリセットされてしまいます!細胞異型が全くない場所からまた粘膜の再生が生じてきますから。
これにより発癌は阻止されてしまうのです。

この拍子抜けするほど簡単な手技により、バレット癌が予防出来そうだと言う論文が昨年出ましたので、これからはその検証段階と言う事になります。恐らくラジオ波では筋層にあるカプサイシン受容体も破壊してしまいます。ですからもしかしたら、逆流性食道炎の不快な症状も一切無くなるのかも知れません。

なんともコロンブスの卵のような方法ですが、やたらと名人芸を競いたがる某国に比べると、目の付けどころが違うなあと、全力で嫉妬心を覚えます。

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