日本ではまだあまりポピュラーではない、しかし小耳に挟むところによれば「院内での怪我」など、訴訟に絡む可能性もあり、メディケア(健康保険)が医療費を払わないと宣言した28の事故をアメリカでは"Never events"と呼ぶそうです。
異物を体内に残した
空気塞栓
血液型不適合
尿道カテーテル感染
深部静脈血栓/肺塞栓(股関節、膝関節手術後)
外科創部感染
深い褥瘡
処置に伴なう怪我(例:電気ショックによる火傷)
血糖コントロール不良による症状(低血糖など)
外科でのミス(取り違えなど)
上記のように「弁解できない転帰」を指すそうで、異物や取り違えなど確かに弁解しようがありません。しかし一方で完全な予防が難しく一定の確率で生じうる、という大変問題のある事故も含まれます。例えば血糖コントロール不良の場合の創部感染やカテ感染を完全に予防するというのは理論的にも不可能です。
(したがってアメリカではミスや訴訟を見込んで高い医療費が設定される。それは当然の事でしょう。日本にはその悪循環を回避できる人材が少数ながらいると思います。ほんの僅かの希望ですが完全な医療のIT化に望みを託します)
(したがってアメリカではミスや訴訟を見込んで高い医療費が設定される。それは当然の事でしょう。日本にはその悪循環を回避できる人材が少数ながらいると思います。ほんの僅かの希望ですが完全な医療のIT化に望みを託します)
これらをどう押さえ込むか、が医療のかかえる問題です。むろんそれらに個別に対応して様々な工夫が行われて来ました。特に「ミスから学ぶ」という風潮が強い現代では検証がかなり行われています。本来は事故が起きる前に、日本人が得意な「こんなこともあろうかと」という対応を見せたいところですが、そのあたりの情報共有は完璧ではありません。
アメリカのニュースサイト(medscape)によれば一般にはmalpractice(医療ミス)として訴えられた場合に、医療側は
1) 限り有る資源、抑制された医療費が優先されるため、対応には限界がある。
2) 完全な予防は患者さんに非常な苦痛を強いる場合が多いので難しい。(例:転倒防止のための拘束など)
という主張をしつつ、合意点を探ると言う事になるそうです。いったん訴訟になりますと医者はあまり関与しません。訴訟が多いのでそれに参加してしまうと診療が出来ませんから他の患者さん達に非常に不利益です。それこそ命がいくつも失われ次なる訴訟問題につながるからかもしれません。また訴訟は専門家に任せてしまったほうが効率的です。
(再発防止、についてはマネジメントの問題になりますが、訴訟が多いのでよほどの事がない限りは「謝罪」とか「再発防止への取り組み」を原告が要求することはなくて金銭的な保障になっている印象でした。示談が多いです)
(再発防止、についてはマネジメントの問題になりますが、訴訟が多いのでよほどの事がない限りは「謝罪」とか「再発防止への取り組み」を原告が要求することはなくて金銭的な保障になっている印象でした。示談が多いです)
つまり実際malpracticeになりますと医師が関わるという事はありません。(日本は現在は違いますが、将来はアメリカ同様になるかもしれません)我々が出来るのは「こんなこともあろうかと」という部分に尽きるのだと、再確認した次第です。
日常診療でnever eventsはないに越したことはありませんが予防出来るものは予防し、生じた事故についても迅速に対処できるようにあらゆる事態に備えること。人工衛星イトカワの開発者のみなさんに負けぬようにしなければと思いを新たにする今日この頃。
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