これ、簡単なストーリーじゃないですか。
単純に考えれば、(臨床家の私の素直な解釈)
NSAIDS(非ステロイドの痛み止め)ではすぐに胸焼けが生じますね?
そういう人たちが数割おりますよ。
その理由は簡単。主にピロリ陰性の人たち、あるいは若い人達に起きますが、
胃酸で前庭部にびらん、浮腫が起きますから。
これはNSAIDSによって、粘膜内プロスタグランジンが低下したためです。
前庭部は動きが激しいから、他に比べると簡単にびらん、浮腫が生じます。
しかも狭いからその影響が出やすい。
まだ7日ぐらいだとすぐには前庭部から分泌するガストリンは減りません。
胃酸は胃体部とか穹窿部から出続けます。
一方浮腫で前庭部は蠕動不良になります。
だから胃酸は逆流します。
食道粘膜が刺激され、胸焼けが起こります。
たった7日では、こういう事が起きています。
ここまでで、「GERDだ!」というのはつまらない。
では7日以上経つとどうなるか。
ここからは私の経験談。
前庭部胃炎のおかげでガストリンが減る。
胃酸分泌が減る。
逆流も減ってきて、勝手に治ります。
案外みなさん大丈夫なのですよ。
むろん潰瘍になる人もおりますが、
全員にPPIですか?
それはどうでしょう。
NSAIDS+抗凝固薬ならばPPI推奨しますが。
以上、私見ですが、
たくさん患者さんを見ていますから、
こういう印象がある。
むろんある患者さんにはPPIを出すんです。それは後述の理由がある場合です。
リウマチの患者さんでNSAIDSによる胃障害が多いのは、血管障害というダブルパンチがあるからでしょう。そうしたリスクがはっきりしている場合、あるいは、ダイナミクスはこんなときも大活躍。
もちろん過去にNSAIDSを飲んで大出血、という患者さん。
むろん喫煙という最大の増悪因子もきちんと記録してあります。やめれば良いのですが。
そうした家族歴を記録してあると、今度は子々孫々にメリットがあります。
NSAIDSによる胃腸障害や、P450の代謝は当然家族歴が関係あるだろうからです。
むろんメンデルの法則に従うんでしょうが、こういう意味で電子カルテは重要です。
<まとめ>
NSAIDSによる胃腸障害を極めて真面目に研究するためには、
年齢別、家族歴別、ピロリの有無、萎縮の程度、ガストリン値(組織中、血清)、p450の考慮など、まずは母集団のセレクションが重要で、しかも長期に行わねば、大して意味がないと考えております。
個人的には、エコーで前庭部みりゃ良いじゃん、という結論なんですがそれを言っちゃあおしまいなので、言わないことにします。
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