2008/12/17

Functional Dyspepsia と、 PPI

ROME II で定義された Functional dyspepsia を満たす患者さんはほとんどいません。
まず、12カ月のうち12週という定義ですが、そんな症状をいちいち記録している人がおりません。しかし丁寧に問診をして期間を決定する事は可能です。実際には Functional dyspepsiaと診断する事が重要なのではなく患者さんの苦しみをとる方が重要なのにいきなりこの定義を最初に持ってくるのは間違いだと思います。仮に100歩ゆずってこの条件を満たしたとして次の器質的疾患の部分で壁にあたってしまいます。
すなわち私が内視鏡をするときには舌、歯並びあたりから観察を始めますが、のどのリンパ節、咽頭の粘膜、喉頭、そして食道入口部の固さやら、glycogenic acanthosisの様子、食道の蛇行の仕方やら蠕動の具合、入ったときの水分の存在、粘液とその正常、ああここまで書いて疲れてしまいましたが、仮に何も症状を聞かないで内視鏡をしたとしても、細かく細かく所見を見る事で問題点がわかり、おのずと症状が当たってしまう事がかなりあるのです。こうして機能が内視鏡所見に反映してくる場合には、それは器質的疾患ではないと私には断言できなくなってしまい、例えば萎縮がない人には酸分泌抑制薬を使ってみたりするなど、戦略を立てる事が充分可能であることから、それらはFunctional dyspepsiaではないという事になってしまいます。
次の問題は過敏性腸症候群と完全に切り離してしまった事です。上腹部愁訴を持つうち多くの人で便通にも異常があります。胃に限定してfunctionの障害がある事自体が珍しいのです。

これでは臨床家が困ってしまうのは当然かもしれません。

そこでROME IIIなわけですが、便通の異常があっても良い事になりました。これは当然なのですが、消化管機能異常が、もうわけがわからないくらい細分化されていってしまっています。参考URL

本当にわけがわからない状態なのですが、この ROME III の中に"digestion"という言葉が一切出てこない事に注意してください。

消化管の機能はなんですか?

digestion(消化)なんです。当然です。ROME IIIが話し合われたのは、2006年にLos Angelesで行われたdigestive disease week (DDW)ですが、消化管の大きな問題を話し合うときに「消化」について一切検討されずにどんどん話があさっての方向へ向かっているのを見ますと、とても心配になってしまうのです。

PPIの話がどこかに行ってしまいましたね。

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