内視鏡中に
■この前の写真を見たいな
■今、どの部分の写真を撮っているのかコメントを入れておきたい
■生検の番号を入れておきたい
などの要求を満たすファイリングシステムが見つかりません。学会発表で見たことはあるけれど、製品になって出てきません。
しょうがなく作ったのがEndoDB2で、このシステムはタッチパネル液晶を使わないと本来の実力を発揮できません。なにしろ内視鏡中の右手は不潔ですから、マウスの操作が出来ない。なので、感圧式のタッチパネルを用いて、削った割り箸などを右手で持って触るのが無難だろうと。
今まではそれだけで10万もするのでお勧めしていませんでしたが、KOHJINSHAのミニPCの登場で少し変化の兆しが見えてきました。49800円でタッチパネル付きのPCですから。ASUSもEee Topというのを登場させますし、楽しみです。
7インチのディスプレイはあまりにも小さく、やはり辛いです。しかしタッチパネルは便利だし、某企業系病院から「ン万円」しか絶対に出せないと言われて今システムを組んでいるのですが、普通にシステムを組みますと私が自腹を切る羽目になるのでそれだけはどうしても避けたく、なんとしてでもこのミニPCを用いたシステムを成功させねばと思っています。
チューニング次第で画質もなんとかなりましたし。
細かい仕様、チューニングなどについてはまた後述する事とします。
2009/02/23
2009/02/21
生理食塩水を作ろう
セクション:
お知らせ
注意:脱水の治療目的に使用する経口補水液(経口補水塩)を調べよう、と思って間違って開いてしまった方は、こちらのリンクへお進みください。
目や鼻にしみる事がない、体液と同じ濃さの食塩水を「生理食塩水」と言い、便利なので良く我々は医療現場で使います。
例えば傷や身体の中の洗浄に使いますし、脱水になったときの点滴などの中身は生理食塩水です。
実は500ccの生理食塩水のボトルは定価が121円(2010/8/9現在、大塚製薬)しかしません。厳重な管理の元製造されて、偉そうに鎮座ましましている点滴のボトルも、洗浄用のボトルも、みなさんが飲んでいる500ccのペットボトルのジュース、しかもディスカウントストアで買う値段とほぼ同じです。
この生理食塩水は「うがい」ですとか、花粉症で目や鼻を洗いたいときにも便利だし、傷口を洗うにも便利なので作り方を覚えておくと良いです。体液と浸透圧が同じなので刺激が少なく、しみたりしないのです。
用意するものは、500ccのペットボトル(キャップつき)、それから食塩です。アンデスの赤い塩などを使ってももちろん良いのですが、もったいないので安い食塩をお勧めします。
ペットボトルはあらかじめよく洗っておきます。ペットボトルに、キャップ半分~一杯弱の食塩を入れます。これに水道水を入れて良く振り溶かしましょう。ペットボトルのキャップにすりきりいっぱいの塩を入れて重さを測定したところ5gでしたので、一杯弱だと4.5g。それを500ccのお水に溶かすと0.9%の食塩水が出来上がります。この0.9%の食塩水の事を生理食塩水と呼ぶのです。(追記:2010/8/9 実測すると8gであったとのご報告をいただいて私も測定してみました。最近ペットボトルの薄さが変わったなあと思っておりましたら、キャップも変わっておりますね。より薄く、大きくなっているような・・・。十六茶のキャップで測定したところ、ご報告通り8gであり、スクリューが途絶える高さでちょうど5gであるようです。ご報告ありがとうございました)
少しだけ鋭い人は「キャップのスクリューの隙間に塩が充填されているのかいないのかわからない状態で重量を測定しているだろうからそれが正確なのだろうか」と思うでしょう。その通りですが、いい加減で良いのです。濃度だって0.8%だろうが、0.85%だろうが0.95%だろうが、それで天地がひっくり返るわけでもないし、厚生労働省に変な書類を出して許可を取るようなものでもないので適当で良いと思います。
作り置きは出来ませんので、必要なときに作ってください。そして体温とほぼ同じ温度にするのが良いです。
お風呂に入るときにペットボトルを浴槽に入れておきますと、良い具合に温まります。これでうがいをしたり目を洗ったりするととても気持ちが良いのでお勧めです。「鼻うがい」も個人的には好きですが、全員にお勧めするものではありません。
女性が顔を洗うときにも生理食塩水で洗えばもっときれいになるのに、と思う事があります。
少なくとも私がエステサロンを開業したら、それを売りにするでしょう。
colon tree.jpg Kunio Ukawa 2008 |
例えば傷や身体の中の洗浄に使いますし、脱水になったときの点滴などの中身は生理食塩水です。
実は500ccの生理食塩水のボトルは定価が121円(2010/8/9現在、大塚製薬)しかしません。厳重な管理の元製造されて、偉そうに鎮座ましましている点滴のボトルも、洗浄用のボトルも、みなさんが飲んでいる500ccのペットボトルのジュース、しかもディスカウントストアで買う値段とほぼ同じです。
この生理食塩水は「うがい」ですとか、花粉症で目や鼻を洗いたいときにも便利だし、傷口を洗うにも便利なので作り方を覚えておくと良いです。体液と浸透圧が同じなので刺激が少なく、しみたりしないのです。
用意するものは、500ccのペットボトル(キャップつき)、それから食塩です。アンデスの赤い塩などを使ってももちろん良いのですが、もったいないので安い食塩をお勧めします。
ペットボトルはあらかじめよく洗っておきます。ペットボトルに、キャップ半分~一杯弱の食塩を入れます。これに水道水を入れて良く振り溶かしましょう。
少しだけ鋭い人は「キャップのスクリューの隙間に塩が充填されているのかいないのかわからない状態で重量を測定しているだろうからそれが正確なのだろうか」と思うでしょう。その通りですが、いい加減で良いのです。濃度だって0.8%だろうが、0.85%だろうが0.95%だろうが、それで天地がひっくり返るわけでもないし、厚生労働省に変な書類を出して許可を取るようなものでもないので適当で良いと思います。
作り置きは出来ませんので、必要なときに作ってください。そして体温とほぼ同じ温度にするのが良いです。
お風呂に入るときにペットボトルを浴槽に入れておきますと、良い具合に温まります。これでうがいをしたり目を洗ったりするととても気持ちが良いのでお勧めです。「鼻うがい」も個人的には好きですが、全員にお勧めするものではありません。
女性が顔を洗うときにも生理食塩水で洗えばもっときれいになるのに、と思う事があります。
少なくとも私がエステサロンを開業したら、それを売りにするでしょう。
2009/02/16
内視鏡と射程距離とNBI、および胃腺腫
前回(といってもずいぶん前かもしれませんが)、内視鏡でIHb分布を見ることで、胃腺腫と腸上皮化生を鑑別するのをお見せしました。これは白色の病変が比較的認識しやすい場合には便利な方法です。ここからわかるのは、胃腺腫の表面は白色調に見えたとしても比較的血流が豊富だという事です。
今回は、胃腺腫がわかっているのになかなか見つかりづらい場合NBIが便利という話です。
この写真のちょうど真ん中ぐらいに胃腺腫があるはずだと思って見ているのですが、どうもはっきりしないまま写真を撮っています。以前の方がはっきりと白色の病変が見えたはずです。わからないまま検査を進め、また前庭部に戻ってきたところでNBIにモードを変えます。
すると中央部に茶色の領域が見えました。これが腺腫です。そこで同部位をじっくり見ると、見えてきました。
同じ白色といってもほんのわずか黄色調の領域が見えます。少し陥凹している印象で、辺縁がぎざぎざしています。そこでインジゴカルミン染色をしてみます。
これで全体像が見えました。ここですぐに拡大内視鏡に切り替え、必要があれば超音波内視鏡を行い、病変の評価を行うことができればカッコいいのですが、当院ではここまでが限界です。
なぜNBIで腺腫が見つけやすいのでしょうか。
NBIがない場合、光源をあえて暗くして接近して観察してみると言う方法はどうでしょう。これも観察者の注意を惹起すると言う点で優れていると思います。
さて、接近して観察するときには見落としが怖いでしょう。自由自在に射程距離を変化させて観察できるNBIは非常に安心できるのですが、これがない場合、どのようにして見落としをコントロールすれば良いのでしょう。
熟練、というのは簡単な解決法ですが、QCの事を本気で考えたとき「熟練」という言葉ほど抽象的でいい加減な言葉はありません。
お勧めしたいのは粘膜を洗うことです。粘膜を洗っているともちろん粘液に隠れた病変がよく見えるのですが、私がメリットだと思っているのは自然と前後壁を良く見るし、粘膜に接近して、しかも余すところなく見ることができる点です。洗っていない部分がすぐにわかるので、「ああ、ここは見ていなかったな」という事が観察者には一目瞭然なのです。内視鏡検査のQCは非常に重要なのですが、観察者に気づかせずに、また観察者の熟練とは関係なく有用な手段となるのが、
NBI、および粘膜の洗浄
の二つであるという事をここでは訴えたいと思います。
粘膜の洗浄をする場合、フォルテグロウメディカルから発売されている粘膜洗浄装置をお勧めします。
十分な流量が確保でき、どのような内視鏡にでも使え、院内感染にも十分配慮しているという点で優れていると思います。
今回は、胃腺腫がわかっているのになかなか見つかりづらい場合NBIが便利という話です。
この写真のちょうど真ん中ぐらいに胃腺腫があるはずだと思って見ているのですが、どうもはっきりしないまま写真を撮っています。以前の方がはっきりと白色の病変が見えたはずです。わからないまま検査を進め、また前庭部に戻ってきたところでNBIにモードを変えます。
すると中央部に茶色の領域が見えました。これが腺腫です。そこで同部位をじっくり見ると、見えてきました。
同じ白色といってもほんのわずか黄色調の領域が見えます。少し陥凹している印象で、辺縁がぎざぎざしています。そこでインジゴカルミン染色をしてみます。
これで全体像が見えました。ここですぐに拡大内視鏡に切り替え、必要があれば超音波内視鏡を行い、病変の評価を行うことができればカッコいいのですが、当院ではここまでが限界です。
なぜNBIで腺腫が見つけやすいのでしょうか。
- 表面が白色でも比較的表面の毛細血管が豊富な腺腫は、NBIで見ると茶色く目立ちます。これに対して腸上皮化生では表面の毛細血管は目立たないのでコントラストがはっきりしてきます。
- NBIには「射程距離」があります。非常に暗い光源なので数cm以上離れるとAGCがオンになっているにも関わらず見づらく、逆にAGCのおかげでノイジーで見るに耐えません。自然と射程距離内で見る事となり粘膜に接近しますから病変が見つけやすくなるのです。
NBIがない場合、光源をあえて暗くして接近して観察してみると言う方法はどうでしょう。これも観察者の注意を惹起すると言う点で優れていると思います。
さて、接近して観察するときには見落としが怖いでしょう。自由自在に射程距離を変化させて観察できるNBIは非常に安心できるのですが、これがない場合、どのようにして見落としをコントロールすれば良いのでしょう。
熟練、というのは簡単な解決法ですが、QCの事を本気で考えたとき「熟練」という言葉ほど抽象的でいい加減な言葉はありません。
お勧めしたいのは粘膜を洗うことです。粘膜を洗っているともちろん粘液に隠れた病変がよく見えるのですが、私がメリットだと思っているのは自然と前後壁を良く見るし、粘膜に接近して、しかも余すところなく見ることができる点です。洗っていない部分がすぐにわかるので、「ああ、ここは見ていなかったな」という事が観察者には一目瞭然なのです。内視鏡検査のQCは非常に重要なのですが、観察者に気づかせずに、また観察者の熟練とは関係なく有用な手段となるのが、
NBI、および粘膜の洗浄
の二つであるという事をここでは訴えたいと思います。
粘膜の洗浄をする場合、フォルテグロウメディカルから発売されている粘膜洗浄装置をお勧めします。
十分な流量が確保でき、どのような内視鏡にでも使え、院内感染にも十分配慮しているという点で優れていると思います。
2009/02/09
ウルトラCの処方
肝血管腫が消えてしまった話を書こうと思いましたが、思い出したことがあるのでウルトラCだと思った処方の事を書きます。
逆流性食道炎があるのに主治医からブスコパンを処方されている患者さんが居たのです。当然逆に増悪するだろうと考えて質問すると患者さんは「効果はある」と言います。この時に思い出したのは東海大学の元教授である三輪剛先生が以前仰っていた話です。(三輪先生じゃないかもしれません。間違えていたらごめんなさい)
「あの、ブスコパンっていう薬はあんまり効かないんですよ」
「ブスコパンは、注射は良いんだけど、経口だと非常に吸収が悪いので、蠕動は全く止まらない。でもね、なんか良い感じに胃の幽門が開くんですよ。だから胃の痛みが取れるんじゃないかな」
なるほどなあとこの時は納得していたのです。しかしその後さらにこんな事実を知ったのです。
「胸焼け症状は下部食道括約筋の痙攣である」という論文がある事を兵庫医大教授であるもうひとりの三輪先生、三輪洋人先生が講演で仰っておられたのです。
これを聞いたときに私は逆流性食道炎を完全に理解したと思いました。つじつまが合う症例を沢山経験していたからです。
痙攣を抑制する事が実はブスコパンが効く理由なのでしょうか。しかし先程経口ではあまりブスコパンは吸収されないと聞いたばかりです。
ブスコパンがLESの痙攣に対して効果がある、あるいは幽門を開くことによって逆流を防ぐ、果たしてどちらが本当なのでしょう。(ブスコパン同様の効果があるハーブとしてミントがあります。ミントは胸焼け、腹痛、下痢などに効果があります。平滑筋のカルシウムチャンネルを直接阻害するようです。故黒坂先生からいただいたペパーミントオイルを胃の蠕動抑制に使っていたことは以前に書いたかもしれません。これについての論文は癌研病院の比企先生がお書きになっています)
一方、内視鏡の時にブスコパンやアトロピンを投与すると、下部食道括約筋(LES)はどうなるでしょうか。どうも単純にLES圧が低下するわけではないような印象を得ています。(単純にブスコパンでLESが弛緩するわけではない)
矛盾するようないくつかの事象が存在しますが、少なくともその患者さんにとってブスコパンが効く事は真実です。常識をうち破るウルトラCの処方だと感動した覚えがあります。
以来、逆流性食道炎にはPPIという古くさい考えは捨てました。
逆流性食道炎らしい患者さんを拝見したときに、それこそ何百通りもの処方が可能ですが、イマジネーションを働かせて働かせて、自分なりの知恵をふり絞ります。
それでもまだ、ブスコパンを処方する勇気は私にはありません。
逆流性食道炎があるのに主治医からブスコパンを処方されている患者さんが居たのです。当然逆に増悪するだろうと考えて質問すると患者さんは「効果はある」と言います。この時に思い出したのは東海大学の元教授である三輪剛先生が以前仰っていた話です。(三輪先生じゃないかもしれません。間違えていたらごめんなさい)
「あの、ブスコパンっていう薬はあんまり効かないんですよ」
「ブスコパンは、注射は良いんだけど、経口だと非常に吸収が悪いので、蠕動は全く止まらない。でもね、なんか良い感じに胃の幽門が開くんですよ。だから胃の痛みが取れるんじゃないかな」
なるほどなあとこの時は納得していたのです。しかしその後さらにこんな事実を知ったのです。
「胸焼け症状は下部食道括約筋の痙攣である」という論文がある事を兵庫医大教授であるもうひとりの三輪先生、三輪洋人先生が講演で仰っておられたのです。
これを聞いたときに私は逆流性食道炎を完全に理解したと思いました。つじつまが合う症例を沢山経験していたからです。
痙攣を抑制する事が実はブスコパンが効く理由なのでしょうか。しかし先程経口ではあまりブスコパンは吸収されないと聞いたばかりです。
ブスコパンがLESの痙攣に対して効果がある、あるいは幽門を開くことによって逆流を防ぐ、果たしてどちらが本当なのでしょう。(ブスコパン同様の効果があるハーブとしてミントがあります。ミントは胸焼け、腹痛、下痢などに効果があります。平滑筋のカルシウムチャンネルを直接阻害するようです。故黒坂先生からいただいたペパーミントオイルを胃の蠕動抑制に使っていたことは以前に書いたかもしれません。これについての論文は癌研病院の比企先生がお書きになっています)
一方、内視鏡の時にブスコパンやアトロピンを投与すると、下部食道括約筋(LES)はどうなるでしょうか。どうも単純にLES圧が低下するわけではないような印象を得ています。(単純にブスコパンでLESが弛緩するわけではない)
矛盾するようないくつかの事象が存在しますが、少なくともその患者さんにとってブスコパンが効く事は真実です。常識をうち破るウルトラCの処方だと感動した覚えがあります。
以来、逆流性食道炎にはPPIという古くさい考えは捨てました。
逆流性食道炎らしい患者さんを拝見したときに、それこそ何百通りもの処方が可能ですが、イマジネーションを働かせて働かせて、自分なりの知恵をふり絞ります。
それでもまだ、ブスコパンを処方する勇気は私にはありません。
2009/02/06
絶食と胆泥
胆泥の出来ている人があまり食べないと思われる食べ物の一例 |
親戚が急性膵炎になってしまい、一週間程度の絶食が必要であった。そして退院した後も厳しく脂肪が制限された。軽い膵炎だったようで、CTやエコーでは変化はなかったようだが、退院後のチェックアップの意味もあり腹部超音波検査をしてみると胆嚢が緊満し、胆泥で満たされていたため驚くと同時に妙に納得してしまった。ずっと胆嚢が収縮する機会がなかったのであれば、当然の事であろう。(「お、言われた通りまじめに治療していたな?」と思ったのである)
そういえば、胆泥/胆石が出来る患者さんといえば、
1) 胃の術後・・・胆嚢が動かないから胆石が出来る
2) 糖尿病・・・自律神経障害+食事制限で胆嚢が動かないから胆石が出来る
3) やせた人・・・きっと食事を抜くのだろうし、脂肪も食べないのだろう。だから胆嚢が動かず胆石が出来る。
4) 太った人・・・古典的にはコレステロールリッチな食事をしている人には胆石が出来やすいとされている。(胆汁内のコレステロールもリッチになり結晶になりやすいから?)
と相場が決まっている。
家族歴も重要である。
このうち3)は胆嚢ポリープにも関わっているような気がする。胆嚢ポリープが出来ている人も、胆泥がある人も、たいていは「朝食を食べない」「食事を抜いても平気」「すぐ飽きるけどダイエットが好き」などのライフスタイルが共通するような印象を持っているし、肺炎をして2週間入院していた、などの病歴が直前にある事も多い。胆泥はコレステロールの細かい結晶で、これが壁面に付着しそれが核となって結晶が大きくなってくると胆嚢ポリープと呼ばれるのだろう。
だいたい、私自身が食事は抜いても全然平気、やせていて、でもコレステロールリッチな食事も好きと来ているから、胆嚢ポリープが出来るのも当然なのである。
胆泥はうまく胆嚢が収縮すれば自然に消える場合もあるけれど、そのまま結晶が成長して胆石になってしまうこともある。こうした細かい胆石がある時に、リンゴを毎日一個食べて2週間ぐらいしたらオリーブオイルを250ccほど飲めば全部消えてしまうと、昔ランセットで読んだことがある。リンゴに入っているリンゴ酸はウルソデオキシコール酸(UDCA)の様にふるまい、コレステロールの結晶を溶かしてくれるのだろう。素人が浅はかな知識で考案したダイエットは嫌いだけれど、リンゴダイエットが流行したときには、少なくとも胆石が出来ないダイエットだから、だまっていた。他のダイエットは胆泥やら胆石が出来る可能性がゼロではないので、実際プロスペクティブに観察してみたいものである。
胆石を溶かすといえば、細胞保存にも用いるDMSOをカテラン針で直接胆嚢に注射、というような論文を見たことがある。あっという間に溶けるのだろうけれど・・・自分には出来ません。
そういえば某高齢医師は粗食を勧めているが、なぜオリーブオイル30ccを毎朝飲むのか、「健康に良い」というだけで根拠を説明していなかったはずである。むろん必須脂肪酸の補給という意味もあろう。ご本人は気づいているのか知らないが、これは胆嚢を収縮させるためでもある。粗食には胆石が合併症としてつきものだけれど、それを予防するのである。30ccはなんとなく飲むのがはばかられると、それを嫌がってオリーブオイル以外を真似する素人がいるが、それは問題だと思う。
繰り返すけれど、多くのダイエットプログラムは種々の健康障害を生む。胆石は代表選手のひとつであるので留意しておいたほうが良い。
ちなみに親戚にはUDCA(商品名はウルソ)を投与したところ胆泥は溶解した。
膵炎で食事制限をするのは良いが、病態生理をよく考慮したほうが良い。もともと胆石性の膵炎だった場合にはそれほど変化をしない場合もあるし、人によっては急に胆石を形成し逆にこれが新たな膵炎のきっかけとなることさえあるのだ。
(2015/12/04追記)
抗生物質のセフトリアキソン(商品名ロセフィン)の副作用で偽胆石、というのが報告されていると教えていただきました。胆汁排泄されたセフトリアキソンがカルシウム塩を作るのだそうです。(胆汁中にカルシウムが多いのはイヌの胆石についてコメント欄において読者の方とのメッセージのやりとりがありますからなんとなくわかると思います)初期にしっかり胆嚢を収縮させれば可逆的だろうと思われます。
他に薬剤で胆石のリスクを上昇させるのはピル(可能性のみで疫学的には証明されていない)、クロフィブラート、オクトレオチド。肝動注化学療法は胆のう炎のリスク。エリスロマイシンとアンピシリンも胆のう炎を起こすことがあるようです。(Drug-Induced Gallbladder Disease, Drug Safety, January 1992, Volume 7, Issue 1, pp 32-45)
(201/02/23追記)
リバーフラッシュというのがあるらしいけれど、あれは本当に胆石を排出させているわけではない一種のまやかしだということは化学がわかる人なら理解はできますね?^^
むしろ憩室がある人には危険なのでは?
2009/02/04
内視鏡時の反射抑制に鎮咳剤は使えるか
ツムラ麦門冬湯の添付文書を読んでいたところ、サブスタンスPに基づく咳反射を抑制と書いてあった。
誤嚥しやすい患者さんに、唐がらしのカプサイシンを含んだ飴であるとか、胡椒を口に含んでいただくとサブスタンスPが増加し咽頭反射が出やすくなる。そのことにより誤嚥性肺炎を予防できるという。
降圧薬であるACE阻害薬はサブスタンスPを増加させるため咳反射が出現することが良く知られているがこれも却って誤嚥性肺炎の予防になるので投与を推奨する先生もおられる。私も好きだ。
ACE阻害薬発売当初、麦門冬湯を一緒に処方したこともあった事を思い出した。
内視鏡検査のときに、日本人は非常に受容性が高くほとんど反射が出ないことと、誤嚥性肺炎が起きやすいこととは恐らく関係があろう。
反射が強い人は記録を取っているけれど、以下のような特徴があろうか。
1) 萎縮がない(GERDやDUもそう)>萎縮がある
2) 香辛料を使う>香辛料は使わない
(ただし香辛料は全くだめ、苦手、という人は反射が強い)
3) 年齢が低い>年齢が高い
1)は酸がカプサイシン受容体を経由してサブスタンスPを増加させたり、炎症により過敏になっている可能性を考える。
2)は興味深く、最初中国人や韓国人の患者さんが非常に多くの鎮静剤を必要とすることから気付いたもの。香辛料を料理に使わない人ほど、受容性が高いような印象を持つ。
これはもともとサブスタンスPが高いため香辛料の刺激を許容できないと考える。
同じアジア人でも韓国や中国など香辛料を使う国の人ほど反射が強いのは、サブスタンスPが多く発現しているからではなかろうか。ただし全く香辛料を受付ないという人々はサブスタンスPが多いらしくて反射は強いようだ。
3)これは当然か。
関係ないがシンメトレルもドパミン経由でサブスタンスPを上昇させるから、反射が強くなるのだろうか。
喫煙者では反射が低下し、肺炎が重篤になることが多い。非メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性が高い。
一方咳反射のため普通のタバコは吸えない人がいる。ところが彼らはメンソールのタバコを吸う事はできる。これが大いに問題で、風邪をひいていてもタバコをやめないものだから気管支炎や肺炎となり重篤化する症例を、当院は消化器科であるにもかかわらず毎年数例経験する。メンソールのタバコを吸っている人は真に要注意なのである。メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性は低い可能性があるし、実際低い印象だ。
さて内視鏡検査の話。
当院は内視鏡の際に鎮静剤を使ってしまうからもともと反射とはあまり縁がない。一方経鼻内視鏡はひたすら反射を抑制するニーズから導入されているものである。しかし経鼻内視鏡にも限界がある事は間違いがなく、例えば表面麻酔薬であるキシロカインにも使用には許容量が定められているし、8%キシロカインスプレーにはアルコールが含まれているから禁忌となる人もいるだろう。大体味が良くないし。内視鏡の苦痛を抑える方法は他にないのか。
内視鏡が苦しい、という人々は「若い」「萎縮が少ない」など胃癌低リスクな人が多いのだけれど例外的に萎縮性胃炎が強いのに、あるいは喫煙者なのに、あるいは老人なのに反射が強い人々がいて難渋する場合がある。こうした背景を持つ人々は本来反射がなくて、鎮静剤を使わない内視鏡への受容性が高い。これらはイコール胃癌ハイリスクグループなのであるけれど、内視鏡を大抵は嫌がらずに受ける。だからこそ胃癌はちゃんと早期発見されてきたし、日本で鎮静剤を使わない内視鏡が問題視されなかった理由の一つだろうと思う。しかし例外的に反射が強い人々がいて内視鏡をどうしても受けられないために胃癌を見つけるチャンスを逃したり、反射が強いために噴門部の癌が見つからなかったりするのは気の毒だ。この人々は鎮静剤さえ使わなければ楽なのではないかと当院に訪れるわけだけれどももともと呼吸状態が悪かったり肥満が極端だったりあまりに高齢だったりして遠慮なく鎮静剤が使えるというわけではないのだ。「しょうがない」のではあるけれども、誰も解決しようとはおそらくしない取り残された人々に何かアプローチ出来ないだろうか。そうでないと自分の精神も安定しないわけである。
さてそこでやっと本題なのだけれど、このサブスタンスPを低下させる鎮咳剤を内視鏡の際に前処置として使うことは許容されるかどうかと言う事である。具体的な方法としては麦門冬湯でうがいをしてもらうとか、麦門冬湯を固めた氷をなめてもらうとか、のどあめも良いのかもしれないし、龍角散はどうかはわからないけれど効く可能性だってある。コデインだって効くのだろう、使う気はしないけれど。キシロカインに替わる麦門冬湯ゼリーなんてものが発売される事だって、将来ありえるかもしれない。
ベンゾジアゼピンだけでは反射が強い患者にオピオイドを臨床医は使うでしょう?あれはまさにこの原理の応用である。
そもそもなぜ麦門冬湯の添付文書を読んだのかと言うと、パーキンソニズムの人に使っても良いのかどうかを確認したかったからだ。サブスタンスPは抑制しても、ドーパミンを抑制するわけじゃなさそうなので使っても良いのだろうと言うのが結論だ。
誤嚥しやすい患者さんに、唐がらしのカプサイシンを含んだ飴であるとか、胡椒を口に含んでいただくとサブスタンスPが増加し咽頭反射が出やすくなる。そのことにより誤嚥性肺炎を予防できるという。
降圧薬であるACE阻害薬はサブスタンスPを増加させるため咳反射が出現することが良く知られているがこれも却って誤嚥性肺炎の予防になるので投与を推奨する先生もおられる。私も好きだ。
ACE阻害薬発売当初、麦門冬湯を一緒に処方したこともあった事を思い出した。
内視鏡検査のときに、日本人は非常に受容性が高くほとんど反射が出ないことと、誤嚥性肺炎が起きやすいこととは恐らく関係があろう。
反射が強い人は記録を取っているけれど、以下のような特徴があろうか。
1) 萎縮がない(GERDやDUもそう)>萎縮がある
2) 香辛料を使う>香辛料は使わない
(ただし香辛料は全くだめ、苦手、という人は反射が強い)
3) 年齢が低い>年齢が高い
1)は酸がカプサイシン受容体を経由してサブスタンスPを増加させたり、炎症により過敏になっている可能性を考える。
2)は興味深く、最初中国人や韓国人の患者さんが非常に多くの鎮静剤を必要とすることから気付いたもの。香辛料を料理に使わない人ほど、受容性が高いような印象を持つ。
これはもともとサブスタンスPが高いため香辛料の刺激を許容できないと考える。
同じアジア人でも韓国や中国など香辛料を使う国の人ほど反射が強いのは、サブスタンスPが多く発現しているからではなかろうか。ただし全く香辛料を受付ないという人々はサブスタンスPが多いらしくて反射は強いようだ。
3)これは当然か。
関係ないがシンメトレルもドパミン経由でサブスタンスPを上昇させるから、反射が強くなるのだろうか。
喫煙者では反射が低下し、肺炎が重篤になることが多い。非メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性が高い。
一方咳反射のため普通のタバコは吸えない人がいる。ところが彼らはメンソールのタバコを吸う事はできる。これが大いに問題で、風邪をひいていてもタバコをやめないものだから気管支炎や肺炎となり重篤化する症例を、当院は消化器科であるにもかかわらず毎年数例経験する。メンソールのタバコを吸っている人は真に要注意なのである。メンソール系のタバコを吸っている人々は内視鏡の受容性は低い可能性があるし、実際低い印象だ。
さて内視鏡検査の話。
当院は内視鏡の際に鎮静剤を使ってしまうからもともと反射とはあまり縁がない。一方経鼻内視鏡はひたすら反射を抑制するニーズから導入されているものである。しかし経鼻内視鏡にも限界がある事は間違いがなく、例えば表面麻酔薬であるキシロカインにも使用には許容量が定められているし、8%キシロカインスプレーにはアルコールが含まれているから禁忌となる人もいるだろう。大体味が良くないし。内視鏡の苦痛を抑える方法は他にないのか。
内視鏡が苦しい、という人々は「若い」「萎縮が少ない」など胃癌低リスクな人が多いのだけれど例外的に萎縮性胃炎が強いのに、あるいは喫煙者なのに、あるいは老人なのに反射が強い人々がいて難渋する場合がある。こうした背景を持つ人々は本来反射がなくて、鎮静剤を使わない内視鏡への受容性が高い。これらはイコール胃癌ハイリスクグループなのであるけれど、内視鏡を大抵は嫌がらずに受ける。だからこそ胃癌はちゃんと早期発見されてきたし、日本で鎮静剤を使わない内視鏡が問題視されなかった理由の一つだろうと思う。しかし例外的に反射が強い人々がいて内視鏡をどうしても受けられないために胃癌を見つけるチャンスを逃したり、反射が強いために噴門部の癌が見つからなかったりするのは気の毒だ。この人々は鎮静剤さえ使わなければ楽なのではないかと当院に訪れるわけだけれどももともと呼吸状態が悪かったり肥満が極端だったりあまりに高齢だったりして遠慮なく鎮静剤が使えるというわけではないのだ。「しょうがない」のではあるけれども、誰も解決しようとはおそらくしない取り残された人々に何かアプローチ出来ないだろうか。そうでないと自分の精神も安定しないわけである。
さてそこでやっと本題なのだけれど、このサブスタンスPを低下させる鎮咳剤を内視鏡の際に前処置として使うことは許容されるかどうかと言う事である。具体的な方法としては麦門冬湯でうがいをしてもらうとか、麦門冬湯を固めた氷をなめてもらうとか、のどあめも良いのかもしれないし、龍角散はどうかはわからないけれど効く可能性だってある。コデインだって効くのだろう、使う気はしないけれど。キシロカインに替わる麦門冬湯ゼリーなんてものが発売される事だって、将来ありえるかもしれない。
ベンゾジアゼピンだけでは反射が強い患者にオピオイドを臨床医は使うでしょう?あれはまさにこの原理の応用である。
そもそもなぜ麦門冬湯の添付文書を読んだのかと言うと、パーキンソニズムの人に使っても良いのかどうかを確認したかったからだ。サブスタンスPは抑制しても、ドーパミンを抑制するわけじゃなさそうなので使っても良いのだろうと言うのが結論だ。
登録:
投稿 (Atom)