馬にはこの痛みが頻発するらしく、大変かわいそうに思います。
馬での仙痛は以下の様に分類されるそうです。
- 食べ過ぎによる[過食疝]:胃が膨張すると外側の壁の腹膜が緊張したり、また胃の平滑筋内のカプサイシンレセプターが刺激されますが、このような辛い痛みのことを言うのでしょう。当直をしていて担ぎ込まれてくる患者さんの半分はこれでした。通常は内視鏡をしても何もなく、内視鏡が終わったあとに「ああ、楽になった」と患者さんは言います。内視鏡が幽門を通過しそれを拡張することにより、胃内圧が減少し痛みが軽減するのでしょう。
- 腸の痙攣による[痙攣疝]:冷えたり、セロトニンが放出されたりすると腸が痙攣を起こして下痢をしますが、そのときの痛みでしょう。お風呂に入って温まると良いでしょう。
- 便秘による[便秘疝]:便秘が起きるとその部分で腸が拡張し内圧が上昇、あるいは強制的に通ろうとしてさらに蠕動が強くなりますます痛くなります。センナなどの下剤を、便秘をしているときに使うとさらに辛くなるのは当たり前です。
- ガスがたまることによる[風気疝]:便秘仙と同じですが、メタンや水素が刺激になって痛いのでしょう。蠕動が非常に盛んになり、辛いと思います。整腸剤で普段から整えておきましょう。
- 腸のねじれから来る[変位疝]:これはどうしようもない痛みです。すぐに病院に行きましょう。270度以上ねじれると、大変やばいです。水上健先生のおっしゃる「ねじれ腸」はむしろ風気疝に近い状態だと思います。
- 血栓から生じる[血栓疝]:馬では腸間膜動脈に寄生虫がいるそうですが、人間でこれが起きたら死を意味します。3時間以内に血栓溶解剤を使うか、手術をするか。いずれにせよ、カラードプラで診断がつかなければ終わりです。
- 寄生虫による[寄生疝]:鞭虫など、結構痛いものです。誤診されやすいですから、知識のある消化器内科医に受診してください。
おやおや、そうすると人間に一番多い、
「石の痛み」「管の痛み」は入っておりませんね。
これに加えて腸石での仙痛も多いと報告があるようですよ。
人間では仙痛といえば、「管の痛み」全般を指すと思います。(除外診断としては、神経~ANCESや帯状疱疹、筋肉~腸腰筋痛など、骨痛などがありますが、それらは今回飛ばします。現実の外来ではすべて考えます)
管とはすなわち、
1)腸管(食道・胃・十二指腸・空腸・回腸・結腸・直腸) これは上記で議論済みですが・・・
2)胆管
3)膵管
4)尿管
5)血管 これも上記に含まれています。
です。
人間の場合、痛みというと馬で言うそれらに加えて胆膵、尿管を考えれば良い訳です。
仙痛というのは辛いものですが、原因がわからないとなかなか痛みを取り除くのが困難です。最初は尿管、胆管、膵管、腸管、あるいは血管に何か異常がないかな?というのを検索します。そのうちで命に関わる管の状態を診断するのに役立つのが超音波検査です。超音波検査は最もクリティカルな結果となる上腸間膜動脈以外のあらゆる管の状態も良く観察できるので、診断に大活躍してくれ、動きまでリアルタイムに見えるのでCTでの診断よりも優れている側面があります。
除外すべき診断名が多すぎ、腹痛の理解は単純ではないのですが、例えば「今リアルタイムで被膜下で出血しているらしく、そのために子宮筋腫が痛い」などと言う、教科書には載ってないなあというようなものも、超音波検査の理解が深まるとわかるようにはなると思うので、腹痛を診断するにはやはりこのモダリティがおすすめでしょうか。
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