世の中変化したのは食生活で、かつては生鮭、生イカ、近海物のマグロなどなど、実に多彩な食材が原因となっていた胃アニサキス症ですが、最近はしめ鯖が原因となることがほとんどです。他の食材は生で流通することが少ないか、生で食べないのかもしれません。生鮭は今は流通することはほとんどなくて、養殖マスですからね。
http://blog.ukawaiin.com/2011/02/blog-post_25.html
にも書いたのですが、アニサキス症の診断と治療の流れを書いてみます。
夕食にしめ鯖を食べた方がいて、夜中に強烈にお腹が痛くなりました。
間欠的に痛くて、救急車を呼ぼうかどうか迷うほどでした。
なんとか我慢をして、いらっしゃいました。
痛くて朝ごはんは食べられなかったそうです。
今は多少は良い、とのことです。
「昨日は何を食べましたか?」
「しめ鯖です」
「じゃあエコーをしてみましょう」
ポイント:アニサキス症はエコーで診断が出来ます。
「おや、胃の厚さが11mmもありますね。これはアニサキス、しめ鯖の中の虫が胃に食いついてしまった所見です。お時間があれば内視鏡で取りましょう、お時間がなければお薬を使います」
「内視鏡をお願いします」
ポイント1:すぐに内視鏡が出来ない場合もあります。その場合にはお薬を使います。どういうお薬を使うかは後述します。
ポイント2:意識化鎮静で、二酸化炭素内視鏡を行います。むろん他の急性腹症という可能性もあるわけですから、二酸化炭素を選択しています。
ヒダが浮腫んで見えたらどこかに必ずアニサキスは隠れています。ほら、いましたよ。
生検鉗子で取ります。
でもこれで終わりじゃありませんよ。
ポイント:アニサキスに慣れている医師は、1匹じゃ済まないことを知っています。
ほら、もう1匹見つかりました。むろんこのあとも探しますが、2匹だけでした。そんなに簡単な検査ではありませんよ。
最後に、ファモチジン20mg、エピナスチン塩酸塩20mgを水に溶解したものを撒布し終了します。
ポイント:取ってすぐに痛みが改善しないことが多いことを知っているのは、アニサキスを取り慣れている医師です。H1RAとH2RAの組み合わせは経験上、最も速やかに症状を軽快させてくれます。
鑑別診断はAGML、Type4の胃癌です。絶対にそうじゃない、と確信している場合(直前で当院で内視鏡が済んでいる)には内視鏡をしないで治療する場合があります。
あいにく内視鏡をすることが出来ない場合にはH1RAとH2RAの組み合わせが良く症状を取ってくれます。1週間程度の投与で良いでしょう。
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