2016/12/13

NASH NAFLD のインパクト

残念ながら現代の20歳代、30歳代、40歳代の腹部超音波検査において
脂肪肝
が多すぎるので、気分が落ち込むほどです。

むろん母集団が偏っているのは承知しています。
それでも見る症例見る症例すべてが脂肪肝であったらどうでしょう。
何やら危機感を抱かざるを得ないのではないでしょうか。

むろん日本人男性はだいたいが脂肪肝です。
いや、肝硬変に近い人も多い。
アルコール性が多く、病態の理解は難しくはありませんでした。
そして治療の道筋も見えていました。
それは禁酒です。

しかしアルコールを飲む男性は減ってきて、現在直面しているのは非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、そしてそれに隠れている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という問題です。もちろん女性にも多い。

いったいその中からどれほどの肝がんが出現するのかはわかりません。未体験ゾーンです。
しかし無視できないほどの症例数になる可能性があります。
困ったことに背景に脂肪肝があると早期の肝がんはわかりません。今のところ。

obeticholic acid (Ocaliva, Intercept Pharmaceuticals) という薬が治験中です。これは胆汁酸アナログで、おそらく抗酸化作用があるのではないか。PPARα、PPARγアゴニストであるelafibranor (GFT505, Genfit)も治験中です。これは抗炎症作用があるはずです。PPARαアゴニストとしてはフィブラート製剤があります。PPARγアゴニストとしては糖尿病治療薬であるピオグリタゾンがあります。どちらもNASHに効果があります。ピオグリタゾンは良い薬ですが食事を食べ過ぎると太る(New Engl J Med. 2010;362:1675-1685)、ナトリウム蓄積作用があるなど患者の理解力に依存するという悩ましい薬です。フィブラート製剤はスタチンと併用しにくいという難しさがあります。

メトフォルミンは残念ながら効果がありません。(JAMA. 2011;305:1659-1668).
ビタミンEについては長期使用が前立腺がんや心血管イベントの増加が懸念されています。
スタチンは一定の効果があるかもしれません。

他の治療も用意されています。吸引デバイス(AspireAssist, Aspire Bariatrics)というものがあって、胃にチューブを留置して、食べたものを管から吸い取るという、もう本当に、誰しもが考えていたけれどやらなかったデバイスすらFDAを通過しました。(Gastroenterology. 2013;145:1245–52.e1-5) もう、なりふりかまっていられないのです。Revita Fractyl という、十二指腸をバイパスするデバイスもあります。高インスリン血症を抑制するのです。マグネットを2個使うと、小腸にバイパスを作ることが出来ることをご存知でしょうか。この原理を使用して空腸から回腸にショートカットを作るというデバイスもあります(Gastroenterology. 2016:150:S232)。胃の中に風船を膨らますのは有名ですが、1年しかもたない、もうだめだ、みたいな風潮はありますね。あとは内視鏡的な縮胃術。他には外科的な減量手術(Bariatric surgery)があります。アメリカでは年間20万人が受けるそうです。(!)

治らない、という状態を目の前にしているのは大変なストレスですから、こうしたなりふり構わぬ治療が行われる気持ちは良くわかり、それが日本でも20年後に現実になるかと思うと逃げ出したい気持ちになります。

良い身体のシェイプを作りましょう、みなさん。


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