2箇所以上の医療機関を経由してから鵜川医院にたどり着く患者を多く診てきたので、いわゆるドクターショッピングを繰り返している人々に関して無数のパターンを観察してきた。すると患者の主張と医療の内容の齟齬が良く起きている。診断がcommon diseaseなら尚更である。
便秘を便秘だと言ってはならないような気がしている。医者に来る時点で本人は便秘だと思っていないことが多いから医師から便秘だと言われるとその時点で齟齬が起きる。
ドクターショッピング組の主張の多くは「ただの風邪と言われた」とか「ただの便秘と言われた」のが不満、という事である。おそらく前医である病院の先生方はそう断言してはいまい。しかし患者の理解の範疇にある病名を使った事でバイアスがかかり、メインの病名を聞き逃したり、除外診断を聞き逃したり、あるいは聞いたが忘れてしまった、という事が現実には多かろうと思う。
そこで「S状結腸の動きが悪くなった状態ですね」であるとか、「脾弯曲部にガスが貯留している状態でしょう」「それにより腹腔内圧が上昇し痛みが生じる可能性がありますね」といった言い方をする。中には勘の良い人がいて「それって要するに便秘ですか?」と聞くけれど、「そうとも言えるがそうとは限らない」と返答をする。患者が考える便秘が何なのかは不明であるし、間違った素人療治を誘導してしまう可能性がある。自分で診断出来ない患者はたいてい疾患概念を正しく理解していないから言葉が独り歩きする。
以上は一例であるがドクターショッパーの多くには疾患概念が理解できていないという根本的な問題がある。彼らの理解の範疇にない言葉を説明に使っておくことは医師の説明を患者に誤解させないという利点がある。
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