世界中で色々な学会が行われていますが、学会と言うのは枝葉末節の中にアイディアの萌芽があるもので、主流の発表は誰でも見るから面白くはないと感じます。しかし昨今の学会はポスター発表がデジタルと称されるものになり、数少ないモニターで限定された時間に発表されるのですべてをチェックするのは無理で(抄録と実際とはかなり違うのに)ますますつまらないものになりました。
とはいえとりあえずニュースサイトでもチェックしておくか、ということで
ACG2015(アメリカ消化器病学会とでも訳すべきか)の内容が紹介されていましたのでご紹介。
バレット食道がんのリスク
Mayo Clinicからバレット食道の生検でlow-grade dysplasiaがあると、ない人より8倍バレット癌発症のリスクが高いとの発表があったようです。
LSBEの生検はジャンボバイオプシー鉗子で4方向2cm毎だったと思います。最低8か所は生検するんでしょう。
1)すごい(真似できない)
すごく出血するんでしょうけれど、それが止まるまで待つという根性
2)くやしい(コスト的に日本じゃ無理)
8か所16か所の生検のコスト、30分以上かかるだろう検査のコストは2万円ぐらいじゃ賄えないです。
3)戦略がちゃんとあるなあ
それでdysplasiaが見つかったらラジオ波焼灼するという流れです。アメリカでは良い成績のラジオ波ですがヨーロッパではそうでもない、という点で検証は必要ですけれども診断して終わりじゃないところが偉い。
糞便移植に関する初めての二重盲検試験
ブロンクスとロードアイランドでの糞便移植の二重盲検トライアルが行われ、ブロンクスでは無効、ロードアイランドでは有効との結果が出ています。
糞便移植は難治性のC.difficile感染症に対して劇的な効果があるとの評判ですが、ブロンクス症例は経過が長いせいで治癒に至ることが出来なかったのではないかと考察されています。泥沼にはまる前に、より早期に移植したほうが良いのではと述べられています。
EMR(電子的医療データ)の活用:従来より高いハザード比に
電子カルテデータを解析した研究です。 The Humedica Electronic Medical Record SmartFile database の解析によると、便秘で来院した患者さんからは、虚血性腸炎、憩室炎、大腸がん、他の胃腸のがんが今まで言われているよりもはるかに高いハザード比であった(5-7倍)という事でした。
憩室炎も虚血性腸炎も便秘の患者からしか発生しないって感じはありますけれど、こういうデータが出てくるのは良い事じゃないか、と思います。
はじめての大腸内視鏡検査は大切
社会的な実験も発表されています。
「はじめてのおつかい」ならぬ、「はじめての大腸内視鏡」というテーマで低所得者にフォーカスして大腸内視鏡を行った研究では、98%の患者さんがきちんと来院して検査を受けた。ほぼ全員人生最初の検査です。男女とも6割の患者に大腸ポリープがあり、男性では4割、女性では3割に腺腫があった。(従来は男性4割、女性2割だと思うのでそれより確率が高い)
便潜血で介入していってもせいぜい4割程度しかきちんと受診してくれない事を考えるとこうした介入も意義がある事です。
大腸内視鏡検査は一回受けると「また受けたい」と言う確率が高い検査だけれど、最初の一回目がもっとも重要なので、人生最初の検査を60歳ぐらいまでに済ませておいてほしいと切に思います。
まだまだあるんですけれど、こちらからは以上です。
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