2015/04/14

IBS(過敏性腸症候群)

過敏性腸症候群を考える際に、患者さんひとりひとりに対して自分が持っている生理学、解剖学の知識を総動員して様々な因子がそれぞれどのように重ねあわさっているのかフーリエ変換を行うわけです。人間の頭脳は聴覚においてはフーリエ変換をアナログ回路で実現しているわけですから、こうした思考も当然可能なのではないか。したがってそこから導き出される処方は全員異なるというわけです。

精神的な因子が最も周波数が---

~周波数と言う言葉がおかしければ他の言葉を使いたいところですが思いつきません。このような病態に与える因子と言うのはリズムを持っている事が多いのです。だからフーリエ変換、という言葉を上で使っているのです。~

最も周波数が不安定です。これをコントロールして残りの因子を見えやすくするために海外ではまず抗うつ薬を使ってしまうという発想が出てきたのは全く不思議ではありません。実際効果があるのですから。しかし私の場合は精神的な因子を最後のほうに考えることにしています。これは海外とは真逆の発想だと言えると思いますが、別の方法で介入をしているので本質的には同じことをしている可能性はあります。

さて残りの因子はそれぞれの周波数を持っておりそれらはあまり極端に揺れ動くという事はないでしょう。

胆汁分泌とその成分の個人差
膵液分泌とその成分の個人差
小腸での水分のin/out
胃内pH
小腸各部分の腸内細菌とpH、粘性
大腸各部分の腸内細菌とpH、粘性
腸管リンパ球の構成や非特異的な炎症
C. difficile、原虫、寄生虫など病原性をもつ感染症*
胃・小腸・大腸それぞれでのペースメーカーの動作
胃・小腸・大腸それぞれの平滑筋の発達と柔軟性
部分的にペースメーカーに従わない部分の存在
物理的な屈曲や狭窄・憩室などの形態的因子*
腸内圧上昇とPeptide Y、セロトニンなどの腸管ホルモンの放出
胃・結腸反射とその強さの個人差
月経
アルコールやたばこなどの嗜好品
アレルギー
特異的な糖や油の消化障害
食事の薬理作用
血流障害の有無(漢方薬などによる静脈血栓症など*)
直腸の形態
匂いに対する過敏性
甲状腺など各種ホルモン分泌
室温・体温

*IBSの診断の前に除外されるべきだが除外しきれないものは当然ある

今ぱっと思い浮かぶのがこの位ですが、症状を分解していってそれぞれの因子がどのくらい関与するのかを想像し、シミュレーションをし、投薬をし、フィードバックを受け、精度を上げていく、というのが外来で行っている事です、難しく言えば。

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