幽門の由来を探したくて、宇田川玄真(膵臓の「膵」という国字を考えた人)で検索したら面白い書類が見つかりました。(「膵」という文字を巡って→リンクPDF)
ではターヘル・アナトミアとして知られるクルムス解剖書かと思ってこのリンクを眺めました。
すると189ページ(リンクでは219を指定する)に、
Pylorus of Janitor
Maag ontlafter of portier den Maag, alwaar
b. Een ronde Valvula, Klap-vlies, die
とあります。これを英語に訳すと、
Pylorus or Janitor
stomach emunctory or the stomach door, where
b. A round válvula, Folding fleece, which
となります。
Janitorはラテン語でドア(門)
Pylorusはギリシャ語で"gate guard"だそうで、胃と十二指腸の間の門番、という意味でしょう。
Pylorusはギリシャ語で"gate guard"だそうで、胃と十二指腸の間の門番、という意味でしょう。
ontlafterはなかなか大変でした。古語なのか、素直に検索できません。フランス語を経由することにしました。するとフランス語で émonctoireだ、という事がわかり、それを英語にするとどうも排出器官という意味らしい。なるほど。
では解体新書では幽門という言葉はあったのでしょうか。
解体新書を国会図書館デジタルで調べます。
こちらのリンクをご覧頂きましょう。
第三巻19ページに腸胃篇第二十というのがあります。
解体新書 |
あれ、幽門ではなくて、胃之下口 その形状は徳利口の如し のように書いてありますね。
原語にある、
b. A round válvula, Folding fleece, which
というのが良いですね。丸い小弁、折りたたまれたカーテン、みたいな意味でしょうか。
ピロルス:胃の排出口、出口、それは丸い小弁、折りたたまれたカーテンのようなもの。
というような意味でしょう。胃之下口 その形状は徳利口の如し、というのは実物を見ながらの杉田玄白の描写なのでしょう。リアル。
ピロルス:胃の排出口、出口、それは丸い小弁、折りたたまれたカーテンのようなもの。
というような意味でしょう。胃之下口 その形状は徳利口の如し、というのは実物を見ながらの杉田玄白の描写なのでしょう。リアル。
さて驚きました。
ターヘル・アナトミアを書いたクルムスは動いているのを見たのでしょうか。まさにそうなのですから。
ターヘル・アナトミアを書いたクルムスは動いているのを見たのでしょうか。まさにそうなのですから。
全く内視鏡を動かさずに撮影するとこんな感じで実にダイナミックに動くのが胃の幽門です。
みなさんが痛い痛い言うのもここを指し示している場合がおおい。
みなさんが痛い痛い言うのもここを指し示している場合がおおい。
どうしてこんなに小さな穴なのか、考えてみると面白いと思いますよ。
さて、「幽門」はどこから来たか。まだ調べられませんが、幽門は中国の解剖書にはその名前がすでに書かれています。1624年の類経図翼にはすでに幽門という字を見ることが出来ました。