保険証は情報の塊です。
転職すると、保険証が変わります。退職してもそうですが。
年度の途中だと、家族に行くべき通知が行き渡らず検診が抜けていることが多いです。
そもそも組合員家族の検診に不熱心な健康保険組合もあります。
ですから患者さんが初診で来た時、保険証の発行日、どこの保険組合か、本人か家族か、
世帯主は誰か、そういう情報で患者さんのバックグラウンドを把握するようにしています。
例えば社会保険家族の保険証を持っていて、年度の途中で更新されていたとする。
すると年に一度の特定健診は受けていない可能性はあります。また、胃の検診や便潜血検査は疎かになっている可能性も高いのです。
初診の際には、お話を聞いて、今までの病院の受診歴や、検診の結果なども拝見しますから、そういう情報もどうせ明らかになります。保険情報からそこまで深読みする必要はないのかもしれません。
けれども患者さんの話を聞きつつすばやく診断までの道筋をデザインしなければならないので、わかるものは一応すべて情報として役立てる、というポリシーでおります。
そういう私が、お薬手帳を持ってきてください、とか検診の結果を生の状態で持ってきてください、という。
それはただ薬歴を作りたいというような単純な理由ではない、ということは想像がつくだろうと思います。実際、本当にいろいろな事がわかります。
2013/08/25
病気はセキュリティホールをついて侵入する
医者にかかるときにはお薬手帳と検診などの血液検査の過去の記録をすべて持ってこなければならない、と指導して早◯◯年。一向に患者さんに浸透しませんが、そうしているうちにスマートデバイスがみなさんに行動をすべてライフログとして記録するでしょうから、私の徒労もあと10年以内に終わると見ています。楽しみです。(個人情報保護法の正しい解釈がネックかなあとは思います)
これらは何に使うかというと、みなさんの人生でのセキュリティホールを見出すために他なりません。
結論)病気は人のセキュリティホールをついて侵入してくるものが多いです。
アルコールやタバコ、麻薬や覚せい剤はセキュリティホールです。貧困もそうです。
ワクチンは地域住民の一定以上が打ちますと地域としてセキュリティが強固になり敵の侵入を許さないという特徴があります。ワクチンを打たない人は打った人に守られているという事になります。人の流動はセキュリティホールになります。ワクチンを打たない人の移動には特に気をつける必要があります。
偏った医療はセキュリティホールになります。専門性の高い医療を受けている人にそうしたセキュリティホールが存在する場合があります。
風邪で気軽に受診してしまう日本のスタイルはかえって風邪を蔓延させる可能性があります。これもセキュリティホールです。
抗生物質の誤った使用はセキュリティホールになります。特に地域の医師がこぞって特定の抗生物質を使う傾向があると大きな穴になります。
薬の飲み合わせについて到底正しくチェックされている状況ではありません。これは薬剤師の権限がまだ制限されていることや、彼らの仕事のチェック機構がないことに起因しているかもしれません。お薬手帳を分冊するような、患者さん自らが作るセキュリティホールもあります。
必要な検診が行われていない場合があります。過剰な検診でかえって害をなす場合もあります。
一人の医師に頼ろうというような患者さんの心理自体も大きなセキュリティホールです。
これらは何に使うかというと、みなさんの人生でのセキュリティホールを見出すために他なりません。
結論)病気は人のセキュリティホールをついて侵入してくるものが多いです。
アルコールやタバコ、麻薬や覚せい剤はセキュリティホールです。貧困もそうです。
ワクチンは地域住民の一定以上が打ちますと地域としてセキュリティが強固になり敵の侵入を許さないという特徴があります。ワクチンを打たない人は打った人に守られているという事になります。人の流動はセキュリティホールになります。ワクチンを打たない人の移動には特に気をつける必要があります。
偏った医療はセキュリティホールになります。専門性の高い医療を受けている人にそうしたセキュリティホールが存在する場合があります。
風邪で気軽に受診してしまう日本のスタイルはかえって風邪を蔓延させる可能性があります。これもセキュリティホールです。
抗生物質の誤った使用はセキュリティホールになります。特に地域の医師がこぞって特定の抗生物質を使う傾向があると大きな穴になります。
薬の飲み合わせについて到底正しくチェックされている状況ではありません。これは薬剤師の権限がまだ制限されていることや、彼らの仕事のチェック機構がないことに起因しているかもしれません。お薬手帳を分冊するような、患者さん自らが作るセキュリティホールもあります。
必要な検診が行われていない場合があります。過剰な検診でかえって害をなす場合もあります。
一人の医師に頼ろうというような患者さんの心理自体も大きなセキュリティホールです。
2013/08/21
方法はともかく、まず受けてみよう
胃がん検診に、レントゲンを推奨という結果を見てあれこれ言及している方がおられますが、過去のエビデンスから考えれば当然の結果が得られただけです。
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/igan_evidence130730.pdf
現在のレントゲンでの検診での問題点として、
1)ピロリ菌感染者の激減により過去ほど寿命をのばす効果を期待できない
2)適切に写真が読まれていない
3)被曝の問題が若干ある
4)検診後の虚血性腸炎などの合併症が高齢化に伴い増えてきた印象がある
などが挙げられます。
一方で全例内視鏡というのはナンセンスなわけです。
どうせ全員受けないだろう、という考えだから内視鏡検診が成り立つわけで、本当に全例でしたらリソースが足りません。受診率が低いことを見越して検診を行うのは私には受け入れがたい。
ではABC検診はどうかというと、10-20年ぐらいは有効かもしれませんが、GISTや進行食道癌、ピロリ菌非感染胃癌が見つけられないという問題もあるわけです。ピロリ菌非感染時代に生き残る検診とは言えないのです。
しかしその前にかなりの人々が検診を受けていない、という大問題があります。
例えば社会保険加入者の家族の多くは受けません。忙しい自営業者は受けません。
そして(もしも検診で引っかかってしまうと)最終的に行われる内視鏡検査が苦しいから、という理由で受けない人も多いに違いないのです。
これをなんとかせねばならない。
そういう意味でABC検診の簡便さや、それ以後に連なるピロリ菌除菌までの一連の流れは現代(今後10年程度)にはマッチするかもしれません。とはいえ、ABC検診も内視鏡リソースを圧迫する傾向がありますのでその解決にはもう少し工夫が必要になるでしょう。
さて、ピロリ菌非感染時代になると、胃がん検診は他の先進国同様に無くなる可能性も高いと思いますが、仮に存続するとして、GISTやらピロリ菌非感染胃癌やら、食道癌やらを見落としなく見つけつつも現在ある問題点を回避する必要があります。
その解決法として、
1)保湿成分を内包した新しいバリウム製剤を開発し、術後に下剤を飲まなくてもいいようにする。
2)進行癌を見つければ良いので、写真の枚数を少なくしてしまう。二重造影法にこだわるのをやめる。
3)読影はコンピューターで行う。
などとするのはどうでしょう。
もう一つの提案は、検診を1年区切りとはせずに、2年、3年、5年で区切って受診率を出す事です。
今は1年区切りなので、受診率が低いとなると「検診を受けそうな人」に絨毯爆撃のようにお誘いの手紙を送るというような事が自治体で行われています。しかしそれは疾患の発見率を上げないばかりか、偽陽性ばかりが増える結果となりはしないかと危惧します。そこで例えば現在1年で受診率40%をノルマとしているのであれば、2年で60%のノルマ、3年で70%、5年で80%にする。すると見かけではなくて、実質的に受診率が上昇するため疾患の発見率が増えるだろう。その方が公衆衛生には貢献するのではないか、と思うのです。
そしてやはり大切なのは、最後の砦である内視鏡を楽に出来るようにする、という事なのかもしれません。内視鏡は自分一人が上手くてもしょうがないのです。
伊勢原市の方については個別に相談してください。その方にあった方法(費用と効果のバランスおよびその人の年齢・リスクを考慮した)をお教えできます。
遠い将来:超音波やテラヘルツ波などを用いた安価で信頼性の高い、もちろん診断はすべてロボットやコンピューターを使用しますが、そうした検診が登場することを期待しています。
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/igan_evidence130730.pdf
現在のレントゲンでの検診での問題点として、
1)ピロリ菌感染者の激減により過去ほど寿命をのばす効果を期待できない
2)適切に写真が読まれていない
3)被曝の問題が若干ある
4)検診後の虚血性腸炎などの合併症が高齢化に伴い増えてきた印象がある
などが挙げられます。
一方で全例内視鏡というのはナンセンスなわけです。
どうせ全員受けないだろう、という考えだから内視鏡検診が成り立つわけで、本当に全例でしたらリソースが足りません。受診率が低いことを見越して検診を行うのは私には受け入れがたい。
ではABC検診はどうかというと、10-20年ぐらいは有効かもしれませんが、GISTや進行食道癌、ピロリ菌非感染胃癌が見つけられないという問題もあるわけです。ピロリ菌非感染時代に生き残る検診とは言えないのです。
しかしその前にかなりの人々が検診を受けていない、という大問題があります。
例えば社会保険加入者の家族の多くは受けません。忙しい自営業者は受けません。
そして(もしも検診で引っかかってしまうと)最終的に行われる内視鏡検査が苦しいから、という理由で受けない人も多いに違いないのです。
これをなんとかせねばならない。
そういう意味でABC検診の簡便さや、それ以後に連なるピロリ菌除菌までの一連の流れは現代(今後10年程度)にはマッチするかもしれません。とはいえ、ABC検診も内視鏡リソースを圧迫する傾向がありますのでその解決にはもう少し工夫が必要になるでしょう。
さて、ピロリ菌非感染時代になると、胃がん検診は他の先進国同様に無くなる可能性も高いと思いますが、仮に存続するとして、GISTやらピロリ菌非感染胃癌やら、食道癌やらを見落としなく見つけつつも現在ある問題点を回避する必要があります。
その解決法として、
1)保湿成分を内包した新しいバリウム製剤を開発し、術後に下剤を飲まなくてもいいようにする。
2)進行癌を見つければ良いので、写真の枚数を少なくしてしまう。二重造影法にこだわるのをやめる。
3)読影はコンピューターで行う。
などとするのはどうでしょう。
もう一つの提案は、検診を1年区切りとはせずに、2年、3年、5年で区切って受診率を出す事です。
今は1年区切りなので、受診率が低いとなると「検診を受けそうな人」に絨毯爆撃のようにお誘いの手紙を送るというような事が自治体で行われています。しかしそれは疾患の発見率を上げないばかりか、偽陽性ばかりが増える結果となりはしないかと危惧します。そこで例えば現在1年で受診率40%をノルマとしているのであれば、2年で60%のノルマ、3年で70%、5年で80%にする。すると見かけではなくて、実質的に受診率が上昇するため疾患の発見率が増えるだろう。その方が公衆衛生には貢献するのではないか、と思うのです。
そしてやはり大切なのは、最後の砦である内視鏡を楽に出来るようにする、という事なのかもしれません。内視鏡は自分一人が上手くてもしょうがないのです。
伊勢原市の方については個別に相談してください。その方にあった方法(費用と効果のバランスおよびその人の年齢・リスクを考慮した)をお教えできます。
遠い将来:超音波やテラヘルツ波などを用いた安価で信頼性の高い、もちろん診断はすべてロボットやコンピューターを使用しますが、そうした検診が登場することを期待しています。
2013/08/11
薬が効かない
人が出した処方を見ていると、
「こんな全部入りないだろ」
と思う事があります。
そんな処方では、私の単純な脳では、患者さんが「効果がない」と言った時に
どう効かないのか理解を超えてしまうからです。オーバーフローとも言います。
自分には出来ない処方です。
3種類で閉口し、5種類超えるともうだめで、
「一旦すべてお休みしてみて…」と患者さんに提案してしまう事があります。
一種の敗北感であります。
私がいわゆる「漢方薬」に手を出さない理由は、漢方薬の売られているエキス剤そのものが合剤でありまして、上述したところの「全部入り」であるからです。したがって私のような考え方ではオーバーフローしてしまう。
メタ知識を積み重ねるというような別の論理が必要になってきます。
それが理解できて時々「なるほどな」と思う場合があります。
証と言う考え方は実に理に適っていると思うのです。混乱を避けるという意味で。
しかし取りあえず「漢方薬のエキス剤」も一種類、として扱っております。
3種類ぐらいまででしたら、他院から「効かない」と受診された時にこう提案します。
薬A、薬B、薬Cがあるとします。
現在はAxBxCという組み合わせで飲んでおられる。
これを
AxB
BxC
AxC
という組み合わせに変更して一週間ずつお試しいただいて、
症状に変化がないかどうかを見てもらう。
そうするとひとつの薬が効果を相殺してしまうために効かない場合に、
薬を減らした方が効く、という事があるのです。
さらにシンプルに
A
B
C
単独でお試しいただくこともあります。
4種類ですとこうなります。
AxBxCxDという組み合わせで飲んでおられると、
AxBxC
AxBxD
AxCxD
BxCxD
となり、さらにもう一つ抜くとすると
AxB
AxC
AxD
BxC
BxD
CxD
という組み合わせでお試しいただくことになります。
お薬を抜いてみる場合には、それほど膨大な組み合わせにはならないのですが、
それでも試すには時間がかかります。
こうした理由で他院でお薬が増えてしまった症例を診るのは苦手です。増やした先生がどうして増やしたのか、お薬手帳で手に取るようにわかる場合があり、この場合には少々楽です。
ですからお薬手帳すらもたない患者さんが受診されると我々から「おうちからとっていらっしゃい」と言われるわけです。
では薬は一種類からだんだん増やした方が良いのでしょうか。
必ずそうすべきなのでしょうか。
そうでないから医学は難しいのです。
漢方薬が一定の効果があることからわかるように、組み合わせには組み合わせの利点もまたあるのです。
経験上、そして生理学や薬理学などから考慮すると5種類の薬が今は必要だ、と思う場合は当然あるのです。
ただ、全然効果がないと患者さんが言う場合に、
「引いてみる」という発想がある医師とない医師がいることに気づいておられる皆さんも多いのではないでしょうか。
その発想がない医師は、生理学だとか薬理学よりもメタ知識を優先して医療をしている、そう思う場合があります。EBMの意外な落とし穴もそこにあるのです。EBMは組み合わせに対応できるほどまだ洗練されてはいないのです。そこをICTで解決しようというのがひとつの夢ではあります。
さらに患者さんのインテリジェンスと気分(ムード)が実際には因子として加わってきます。
周期的にムードが変化する患者さんは一定数おられ、しかも周期が年単位だったりします。
「薬が効く」「効かない」の訴えが安定しないことや、自分での工夫をしない、薬の淘汰のようなことが生活のなかで起きないのが特徴なのである程度「ムードが影響しているな」というのはわかるのですが、そういう方への干渉、介入は大変に難しいのです。
薬が効かない方の中には一定数そういう方々がおられます。
一方で全く誤診であるという場合もあるのです。それは診断がまず間違っている、という意味です。
本来、薬が効かないという場合には、上記のように「投薬があっていない」「患者さんのムード」「診断の間違い」の三点を基本にして考え直すのが基本ですが、そこに時間とコスト、医療リソースの無駄遣いがないかどうかのバランスを加味します。
「こんな全部入りないだろ」
と思う事があります。
そんな処方では、私の単純な脳では、患者さんが「効果がない」と言った時に
どう効かないのか理解を超えてしまうからです。オーバーフローとも言います。
自分には出来ない処方です。
3種類で閉口し、5種類超えるともうだめで、
「一旦すべてお休みしてみて…」と患者さんに提案してしまう事があります。
一種の敗北感であります。
私がいわゆる「漢方薬」に手を出さない理由は、漢方薬の売られているエキス剤そのものが合剤でありまして、上述したところの「全部入り」であるからです。したがって私のような考え方ではオーバーフローしてしまう。
メタ知識を積み重ねるというような別の論理が必要になってきます。
それが理解できて時々「なるほどな」と思う場合があります。
証と言う考え方は実に理に適っていると思うのです。混乱を避けるという意味で。
しかし取りあえず「漢方薬のエキス剤」も一種類、として扱っております。
3種類ぐらいまででしたら、他院から「効かない」と受診された時にこう提案します。
薬A、薬B、薬Cがあるとします。
現在はAxBxCという組み合わせで飲んでおられる。
これを
AxB
BxC
AxC
という組み合わせに変更して一週間ずつお試しいただいて、
症状に変化がないかどうかを見てもらう。
そうするとひとつの薬が効果を相殺してしまうために効かない場合に、
薬を減らした方が効く、という事があるのです。
さらにシンプルに
A
B
C
単独でお試しいただくこともあります。
4種類ですとこうなります。
AxBxCxDという組み合わせで飲んでおられると、
AxBxC
AxBxD
AxCxD
BxCxD
となり、さらにもう一つ抜くとすると
AxB
AxC
AxD
BxC
BxD
CxD
という組み合わせでお試しいただくことになります。
お薬を抜いてみる場合には、それほど膨大な組み合わせにはならないのですが、
それでも試すには時間がかかります。
こうした理由で他院でお薬が増えてしまった症例を診るのは苦手です。増やした先生がどうして増やしたのか、お薬手帳で手に取るようにわかる場合があり、この場合には少々楽です。
ですからお薬手帳すらもたない患者さんが受診されると我々から「おうちからとっていらっしゃい」と言われるわけです。
では薬は一種類からだんだん増やした方が良いのでしょうか。
必ずそうすべきなのでしょうか。
そうでないから医学は難しいのです。
漢方薬が一定の効果があることからわかるように、組み合わせには組み合わせの利点もまたあるのです。
経験上、そして生理学や薬理学などから考慮すると5種類の薬が今は必要だ、と思う場合は当然あるのです。
ただ、全然効果がないと患者さんが言う場合に、
「引いてみる」という発想がある医師とない医師がいることに気づいておられる皆さんも多いのではないでしょうか。
その発想がない医師は、生理学だとか薬理学よりもメタ知識を優先して医療をしている、そう思う場合があります。EBMの意外な落とし穴もそこにあるのです。EBMは組み合わせに対応できるほどまだ洗練されてはいないのです。そこをICTで解決しようというのがひとつの夢ではあります。
さらに患者さんのインテリジェンスと気分(ムード)が実際には因子として加わってきます。
周期的にムードが変化する患者さんは一定数おられ、しかも周期が年単位だったりします。
「薬が効く」「効かない」の訴えが安定しないことや、自分での工夫をしない、薬の淘汰のようなことが生活のなかで起きないのが特徴なのである程度「ムードが影響しているな」というのはわかるのですが、そういう方への干渉、介入は大変に難しいのです。
薬が効かない方の中には一定数そういう方々がおられます。
一方で全く誤診であるという場合もあるのです。それは診断がまず間違っている、という意味です。
本来、薬が効かないという場合には、上記のように「投薬があっていない」「患者さんのムード」「診断の間違い」の三点を基本にして考え直すのが基本ですが、そこに時間とコスト、医療リソースの無駄遣いがないかどうかのバランスを加味します。
2013/08/06
残便感、と言う名のゴースト
「残便感」は「テネスムス」とも言います。直腸がんや潰瘍性大腸炎の症状として有名かもしれません。
「のどがつまる感じ」と共に、患者さんが頑固に理解してくれない症状のひとつです。
今日はそれをなんとか説明しようと思って、図を書いてみました。
これは便の入っていない状態での直腸~肛門の断面のつもりで書いています。
肛門にうっ血もない、正常な状態です。
青いボールは大便のつもりです。排便直前の状態だと理解してください。
排便がする、っと行きますと正常な状態にまたもどって終わりです。
しかし排便に苦労するとどうでしょう。
1)便が硬かった。
2)便が少ないのに、もっと出るはずだと思って息んでしまう。
3)便が柔らかすぎて、何度も何度も出そうとしてしまう。
するとだんだんうっ血が起きて浮腫んできます。
赤い部分がそうですけれども、排便直後に子供さんではまずそういう事はありませんが、肛門が逸脱して飛び出たままなかなか戻らない状態に陥ります。ここで「ただしいお尻の拭き方」という記事で書いたように、きちんとケアすればそれ以上は悪化しませんけれどさらに息み続けるとどうなるでしょうか。
直腸の平滑筋は一生懸命収縮しようとした挙句、かなり肥厚ししわもよります。そして粘膜の浮腫も増悪してかなりのボリュームになります。そこにまだ大便があるかのような感覚が生じます。図は強い筋緊張を表現してみました。もちろん肛門の浮腫もまた違和感の原因になるのです。こうなると気持ちが悪くてしょうがない。下剤を増やしてみたり浣腸してみたりいろいろするのですが、状況は悪化するばかりです。
「先生、いつも便が残っています」
「本当に残っているなら浣腸したら出るはずでしょう?」
「あんまり出ません。上の方に残っているんでしょうか?」
「それはまた別の症状が出ますので肛門の違和感の原因は違いますよ。原因は息みすぎによる浮腫みなどですよ。便が残っているように感じてもそれは便ではなくて、幽霊みたいなものです。そこには何もないんです」
「下剤を増やしてみたんですが、出ないんです」
「柔らかくしたり、大腸を刺激すれば、便の量自体はもっと少なくなるし、息む回数がふえるだけだから症状が悪化してしまいますよ」
「レシカルボン坐薬は少し良いみたいです」
「いいところに気づきましたね。二酸化炭素で直腸を膨らますことは症状を改善してくれますね」
「座薬も使っていいんでしょうか」
「むくみを取る目的で使うのは良いでしょうね」
「下剤はどうしましょうか」
「減らすのが良いのではないでしょうか。今便が柔らかいのであれば、腸内で十分に便が発酵している時間もないのでしょう。それでは十分な量の便にはなりません。便を増やすためには不溶性の繊維はだめですよ。ごぼうなんかはだめですね。水溶性の繊維質は大目に。油もある程度とらないとだめですよ」
「便秘するのは怖いです。痛くならないでしょうか」
「実際その恐怖があるからどんどん下剤を増やす方がおられるのですが、どこでバランスをとるかという事が重要なので、1日1回の便に必ずしもこだわらない方が良いです。きめ細かく、先手をとりつつ調節できれば良いのですが、あなたはある程度観察力があるから平気でしょう」
以上はもともと便秘で、便通をやや柔らかくしすぎた方に対する指導の一例でした。
お尻のトラブルは結構多いみたいです。神奈川県内にはその道で超有名な病院があるのですが、その病院の先生方の指導を患者さん経由で拝聴すると「うーんさすが」と思います。
「のどがつまる感じ」と共に、患者さんが頑固に理解してくれない症状のひとつです。
今日はそれをなんとか説明しようと思って、図を書いてみました。
肛門にうっ血もない、正常な状態です。
青いボールは大便のつもりです。排便直前の状態だと理解してください。
排便がする、っと行きますと正常な状態にまたもどって終わりです。
しかし排便に苦労するとどうでしょう。
1)便が硬かった。
2)便が少ないのに、もっと出るはずだと思って息んでしまう。
3)便が柔らかすぎて、何度も何度も出そうとしてしまう。
するとだんだんうっ血が起きて浮腫んできます。
赤い部分がそうですけれども、排便直後に子供さんではまずそういう事はありませんが、肛門が逸脱して飛び出たままなかなか戻らない状態に陥ります。ここで「ただしいお尻の拭き方」という記事で書いたように、きちんとケアすればそれ以上は悪化しませんけれどさらに息み続けるとどうなるでしょうか。
直腸の平滑筋は一生懸命収縮しようとした挙句、かなり肥厚ししわもよります。そして粘膜の浮腫も増悪してかなりのボリュームになります。そこにまだ大便があるかのような感覚が生じます。図は強い筋緊張を表現してみました。もちろん肛門の浮腫もまた違和感の原因になるのです。こうなると気持ちが悪くてしょうがない。下剤を増やしてみたり浣腸してみたりいろいろするのですが、状況は悪化するばかりです。
「先生、いつも便が残っています」
「本当に残っているなら浣腸したら出るはずでしょう?」
「あんまり出ません。上の方に残っているんでしょうか?」
「それはまた別の症状が出ますので肛門の違和感の原因は違いますよ。原因は息みすぎによる浮腫みなどですよ。便が残っているように感じてもそれは便ではなくて、幽霊みたいなものです。そこには何もないんです」
「下剤を増やしてみたんですが、出ないんです」
「柔らかくしたり、大腸を刺激すれば、便の量自体はもっと少なくなるし、息む回数がふえるだけだから症状が悪化してしまいますよ」
「レシカルボン坐薬は少し良いみたいです」
「いいところに気づきましたね。二酸化炭素で直腸を膨らますことは症状を改善してくれますね」
「座薬も使っていいんでしょうか」
「むくみを取る目的で使うのは良いでしょうね」
「下剤はどうしましょうか」
「減らすのが良いのではないでしょうか。今便が柔らかいのであれば、腸内で十分に便が発酵している時間もないのでしょう。それでは十分な量の便にはなりません。便を増やすためには不溶性の繊維はだめですよ。ごぼうなんかはだめですね。水溶性の繊維質は大目に。油もある程度とらないとだめですよ」
「便秘するのは怖いです。痛くならないでしょうか」
「実際その恐怖があるからどんどん下剤を増やす方がおられるのですが、どこでバランスをとるかという事が重要なので、1日1回の便に必ずしもこだわらない方が良いです。きめ細かく、先手をとりつつ調節できれば良いのですが、あなたはある程度観察力があるから平気でしょう」
以上はもともと便秘で、便通をやや柔らかくしすぎた方に対する指導の一例でした。
お尻のトラブルは結構多いみたいです。神奈川県内にはその道で超有名な病院があるのですが、その病院の先生方の指導を患者さん経由で拝聴すると「うーんさすが」と思います。
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