高いリスクと高いリスクとを比較してその狭間で悩む、というのが私の理解できる「不安感」です。
例を挙げると、解離性大動脈りゅう(手術しないと時期はわからないが命に関わる)があり、そして手術の成功率が70%(慢性期の手術で、高齢などいろいろなリスクが積み重なってそういう説明になったことがありました)と言われた、というような場合です。これはどちらにせよリスクが高いわけで、それはそれは不安だと思います。
ところがコレステロールが高いことに対してHMG-CoA還元酵素阻害薬を勧められたが、薬で副作用が出たらどうしよう、みたいなことで不安になっている人がおられます。
薬を飲んで年間2000人に1人の心血管イベントを予防できる、というような話です。飲んだって飲まなくたって、1999人にはあまり関係のないような。薬の副作用も同じような確率でしょう、あるいはもっともっと低い。飲まないことのリスクは軽微だし、飲むことのリスクも軽微。これで悩んで不安になってしまう、という例が外来では多い。ローリスクローリターンの事例で悩むのは時間がもったいないと思います。
不安になってしまう人は、おそらく危険の見積もりが正しく出来ていないと思います。危険に関してなのですが、年間で1%以上イベントが生じるだろうと見積もられる場合にはある程度危険はある、と自分は考えております。0.1%くらいで微妙。それ以下だとコスト的には見合わないことが多い。そうした危険性を患者個々に加減して判断することを内科医は自然にやっているわけです。
我々が「心配しないで良い」というのはそういう背景があることを知っていただきたい。アクチュアリーほど頭が良くないので、それをなかなか言葉や数字にして説明できない事をご了承いただきたいと思います。
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