「血管年齢」(血管年齢101歳、という結果を平気で患者に渡すデリカシーの無さ。100歳まで生きている人は動脈硬化の少ない群だろうに矛盾だらけ)「骨年齢」(骨年齢って本当はこどもの骨をみて成長の指標に使う言葉なので骨粗鬆症に使うのは完全に誤用だと思う)「呼吸年齢」(まさか、と思うだろうが最近こういう言葉を使っている人間ドックを見て呆れた)などの表現があるようです。
その表現が好きな彼らは横軸に年齢をとります。このグラフでは0−100歳としました。
少し濃い赤い線は10歳ごとに0.05ずつ変化する線で、薄い線は0.03ずつ変化します。年齢ごとの測定値がその線の真上にのると言うのです。ポイントはこの直線がかなり寝ている、という事です。実際には微妙な差であっても結構年齢にすると大きな差になる、という部分が重要です。
さて、例えば何かの測定値が平均から0.03ずれています、というと全くインパクトがありません。そこで0.03ずれるってことは(薄い色の線で考えると)…う〜んと10歳ずれてるってことじゃん?と解釈し「〜年齢」と称して、10歳ずれていますと表現するのです。
でも、これはそもそもの検査の誤差が全くないと仮定していまして、ましてや、理論値なる直線の信頼度が1.0(つまり100%)であると決めつけたとんでもない表現です。
0.03を10に出来るんだから、一種の増幅に過ぎません。単なる患者さんを驚かすための誇大表現です。
こうした表現は馬鹿馬鹿しいと思って相手にしていなかったのですが、ショックを受けている患者さんがかわいそうなので、わかるように解説したつもりですが、どうでしょう。
(2012・11・3追記)幾人かの卓越した臨床医の意見を伺うことが出来ました。彼らの「年齢」という言葉の患者さんに対する使い方は実にナイーブで繊細だとわかりました。
会話や説明の中で、気遣いや方便などを内包させる事が出来る大切な表現を無神経に踏みにじられた気がして、私は悔しいのだろうと思います。
2012/10/21
カフェインの話
カフェインの融点は238度ということになっている。(→リンク)昇華がどの程度あるかということについて、詳しいデータは簡単には得られなかったが、昇華点は178度である。
一杯のドリップコーヒーのカフェインの量をインターネットで調べると120mlのドリップコーヒーで100mg程度とする意見が多い。コーヒーの焙煎(180度?こういうのもなかなか調べると出てこないが、この温度での昇華がどのくらいあるのか)の深さや抽出のスピードにより色々なのだろう。それよりカフェインが多いとされている玉露(120mgとか書いてある)がどうして目が覚めないのかというと、ポリフェノールにカフェインが吸着されており身体に吸収される量が少ないからだ、という意見を読んだことがある。言われてみればそうかもしれない。(茶からカフェインを取り除こうとするとポリフェノールも取り除かれてしまうという難しさがあるようだ)
これらの仮説を確かめようにも、いずれも原著論文を見つけるのが相当に難しい、というのが問題だ。あまりにネットに情報が氾濫すると、何が本当の情報なのかを見つけることが極めて難しくなる。素人が書きとめただけのソースの提示もなにもないエントリーだらけで、そのSEOをかいくぐって正しい情報を集めるためには相変わらず、 site:go.jp だの、 site:ac.jp だのを付加せねばならぬ。(それでも不十分だ)Google Scholarで検索するとGoogle Booksもいっしょに検索してくれるのだが主婦の友社などから出ている本の中が垣間見えたりして、それがWeb上での色々な数字と一致していたりするから、例えば茶とかコーヒー関連の財団法人なりが発表したデータを使っているのではないか、と推測できる程度ではある。
たとえばほうじ茶。茶葉を高温で焙じる(ほうじる)という行為や言葉は、「焙煎」(ばいせん)という行為や言葉よりもとてもやわらかくて大好きだ。プロはそういうことはしないだろうけれど、フライパンで焙じる場合に、フライパンの表面温度はちょうど200−250度ぐらいだと思う。その温度ならば昇華しまくり状態になるはずで、うまいことカフェイン抜きのお茶を作ることが出来そうである。
ところがネットで調べるとほうじ茶と緑茶のカフェイン量が同じだったりするものがある。(例の主婦の友つながり)「え〜〜〜それはない」という気持ちである。
そこで、お詳しい方は「日本食品標準成分表2010」を見ろよ、という事になるのであろう。そこで
csvファイル
を探し当ててダウンロードして見たところが、カフェインがないではないか。
食品安全委員会のファクトシートを見ましてもあまり詳しいデータはありません。
HPLCを持っていれば自分で測定ができます。ほしいな。(300万円強でしょうか…)
ところで40過ぎの我々から見れば前時代的な「エナジードリンク」なるものが、結構新たな富を世界中で生産しているようです。また、その富をスポーツ振興に上手に使っておられるようだから、しばらくはブームは去りそうにない気がします。(ドーピングの監視薬物に当たるカフェインを含有するドリンクがそのスポーツの大スポンサーになっていることには世の中の複雑さを感じます)
カナダでの180mg規制は当然の動きのように思います。日本人はADH2欠損の人が多いのでアルコールには弱い人だらけ。でもカフェインで調子が悪くなる人は西洋人ほどは多くはない(西洋人のカフェイン代謝は遅いことが1985年以前から論文で示されている。"caffeine x metabolism"で検索してみてください。この理由がNアセチルトランスフェラーゼの多形性によるものか、CYP1A2の多形性によるものかまではわかりませんでした)から表面化しにくい問題かも知れません。日本ってなんでも10年遅れで(エナジードリンクでは世界に40年先んじたのにね)欧米に追従するのでカフェイン好きの人が増えるかもしれない。「エナジードリンクやべえ」みたいな風潮はかっこ悪いってことは取り敢えずロングテールで伝えていくようにしたいと思います。
結局カフェインに関しては食品ごとの詳細なデータはとうとうまとめて手に入れる事ができませんでした。
人間が大好きな昼の嗜好品が茶・コーヒーに帰結する、というのはカフェインと無縁ではないのでしょう。
煎茶などの原料になる茶の木(Camellia sinensis)はツバキ目ツバキ科の常緑樹。
コーヒーの原料になるコーヒーの木(Coffea属)はアカネ目アカネ科の常緑樹。
クロンキスト体系やAPG植物分類体系を見てもそれほど近くないこのふたつの植物が恐らく偶然同じアルカロイドを作り出して繁栄を誇っているというのは興味深いです。必然であるのならその理由を知りたいです。
喘息に用いる場合の(最近はあまり使いませんが)テオフィリンの一日常用量は300mgです。カフェインの成人での上限400mgとはだいたい一致するところで、妙に腑に落ちる数字ではあります。
一杯のドリップコーヒーのカフェインの量をインターネットで調べると120mlのドリップコーヒーで100mg程度とする意見が多い。コーヒーの焙煎(180度?こういうのもなかなか調べると出てこないが、この温度での昇華がどのくらいあるのか)の深さや抽出のスピードにより色々なのだろう。それよりカフェインが多いとされている玉露(120mgとか書いてある)がどうして目が覚めないのかというと、ポリフェノールにカフェインが吸着されており身体に吸収される量が少ないからだ、という意見を読んだことがある。言われてみればそうかもしれない。(茶からカフェインを取り除こうとするとポリフェノールも取り除かれてしまうという難しさがあるようだ)
これらの仮説を確かめようにも、いずれも原著論文を見つけるのが相当に難しい、というのが問題だ。あまりにネットに情報が氾濫すると、何が本当の情報なのかを見つけることが極めて難しくなる。素人が書きとめただけのソースの提示もなにもないエントリーだらけで、そのSEOをかいくぐって正しい情報を集めるためには相変わらず、 site:go.jp だの、 site:ac.jp だのを付加せねばならぬ。(それでも不十分だ)Google Scholarで検索するとGoogle Booksもいっしょに検索してくれるのだが主婦の友社などから出ている本の中が垣間見えたりして、それがWeb上での色々な数字と一致していたりするから、例えば茶とかコーヒー関連の財団法人なりが発表したデータを使っているのではないか、と推測できる程度ではある。
たとえばほうじ茶。茶葉を高温で焙じる(ほうじる)という行為や言葉は、「焙煎」(ばいせん)という行為や言葉よりもとてもやわらかくて大好きだ。プロはそういうことはしないだろうけれど、フライパンで焙じる場合に、フライパンの表面温度はちょうど200−250度ぐらいだと思う。その温度ならば昇華しまくり状態になるはずで、うまいことカフェイン抜きのお茶を作ることが出来そうである。
ところがネットで調べるとほうじ茶と緑茶のカフェイン量が同じだったりするものがある。(例の主婦の友つながり)「え〜〜〜それはない」という気持ちである。
そこで、お詳しい方は「日本食品標準成分表2010」を見ろよ、という事になるのであろう。そこで
csvファイル
を探し当ててダウンロードして見たところが、カフェインがないではないか。
食品安全委員会のファクトシートを見ましてもあまり詳しいデータはありません。
HPLCを持っていれば自分で測定ができます。ほしいな。(300万円強でしょうか…)
ところで40過ぎの我々から見れば前時代的な「エナジードリンク」なるものが、結構新たな富を世界中で生産しているようです。また、その富をスポーツ振興に上手に使っておられるようだから、しばらくはブームは去りそうにない気がします。(ドーピングの監視薬物に当たるカフェインを含有するドリンクがそのスポーツの大スポンサーになっていることには世の中の複雑さを感じます)
カナダでの180mg規制は当然の動きのように思います。日本人はADH2欠損の人が多いのでアルコールには弱い人だらけ。でもカフェインで調子が悪くなる人は西洋人ほどは多くはない(西洋人のカフェイン代謝は遅いことが1985年以前から論文で示されている。"caffeine x metabolism"で検索してみてください。この理由がNアセチルトランスフェラーゼの多形性によるものか、CYP1A2の多形性によるものかまではわかりませんでした)から表面化しにくい問題かも知れません。日本ってなんでも10年遅れで(エナジードリンクでは世界に40年先んじたのにね)欧米に追従するのでカフェイン好きの人が増えるかもしれない。「エナジードリンクやべえ」みたいな風潮はかっこ悪いってことは取り敢えずロングテールで伝えていくようにしたいと思います。
結局カフェインに関しては食品ごとの詳細なデータはとうとうまとめて手に入れる事ができませんでした。
人間が大好きな昼の嗜好品が茶・コーヒーに帰結する、というのはカフェインと無縁ではないのでしょう。
煎茶などの原料になる茶の木(Camellia sinensis)はツバキ目ツバキ科の常緑樹。
コーヒーの原料になるコーヒーの木(Coffea属)はアカネ目アカネ科の常緑樹。
クロンキスト体系やAPG植物分類体系を見てもそれほど近くないこのふたつの植物が恐らく偶然同じアルカロイドを作り出して繁栄を誇っているというのは興味深いです。必然であるのならその理由を知りたいです。
喘息に用いる場合の(最近はあまり使いませんが)テオフィリンの一日常用量は300mgです。カフェインの成人での上限400mgとはだいたい一致するところで、妙に腑に落ちる数字ではあります。
2012/10/07
スマートフォンで健康管理をする方に
コンピューターやスマートフォンであなたの健康を管理することはあなたに計り知れないメリットをもたらします。
我々医師は、患者さんのプライバシーに深く関わる職業ですけれど、それを別の目的で利用する事は倫理的に制限されていると考えます。他業種から見れば、そこにある宝の山はよだれが出るほど欲しいのではないかと思います。差し上げません。
私は糖尿病なんだよ、とか胃癌なんだよ、と公言することは患者さんにメリットをもたらす場合も多々ありますが、逆にそれが不利に働く場合もあります。従って、そのような情報は可能な限りご自分のコントロール下に置いておいて欲しい。健康保険証やお薬手帳、医療機関の領収証、人間ドックの結果などは大切に扱って欲しいのです。
スマートフォンで健康を管理するひとつめのメリットは、例えばそのスマートフォンを紛失した場合にデータにロックをかけることは可能で、紙データよりも安全になりうるということです。データのロックを解除することは可能かもしれませんが、その時にかかるコストが高すぎるので、犯罪を犯してまで読み取るメリットが少なくなります。
したがって、スマートフォンで医療データを管理する場合には、データの守り方についてしっかりしたリテラシーを持っていただきたいと思います。そうすれば安全なのです。
先ほど書きましたように、保険証、領収証などがすべて電子化されることがみなさんの安全を本当の意味で担保すると考えます。(生体認証がセットになる)それは世界が破滅していなければ10年後の話です。認知症の問題もありますから、医療分野での本人確認は生体認証が必須です。
そういう時代に備えてみなさんは自分の健康管理をコンピューターを使って始めておく必要があるだろうと考えます。今までそうした管理が長続きしなかった理由はその情報があまり価値のないものだったからに相違ありません。
しかしながら、医療データは医師が介在して管理することによって極めて価値の高いものに化けます。
当院ではみなさんの健康に関するデータを電子情報として蓄えていますが、それらをどのように整理してみなさんにお渡しするべきかをこの10年ずっと考えておりました。
が、みなさんにそのスキルがない以上、いくら実現しても絵に描いた餅でしかありませんでした。
しかしようやくスマートフォンというインフラが整いつつありますので、みなさんには心の準備だけははじめておいていただきたいと、思います。
色々な健康管理ソフトがありますが、テキストでデータをエキスポート出来るかを基準にお選びいただければ、あとで統合は可能です。
それが出来ないソフトの提供者があるとすれば、金儲けしか考えていないと断言ができますので近寄らないことが無難です。
我々医師は、患者さんのプライバシーに深く関わる職業ですけれど、それを別の目的で利用する事は倫理的に制限されていると考えます。他業種から見れば、そこにある宝の山はよだれが出るほど欲しいのではないかと思います。差し上げません。
私は糖尿病なんだよ、とか胃癌なんだよ、と公言することは患者さんにメリットをもたらす場合も多々ありますが、逆にそれが不利に働く場合もあります。従って、そのような情報は可能な限りご自分のコントロール下に置いておいて欲しい。健康保険証やお薬手帳、医療機関の領収証、人間ドックの結果などは大切に扱って欲しいのです。
スマートフォンで健康を管理するひとつめのメリットは、例えばそのスマートフォンを紛失した場合にデータにロックをかけることは可能で、紙データよりも安全になりうるということです。データのロックを解除することは可能かもしれませんが、その時にかかるコストが高すぎるので、犯罪を犯してまで読み取るメリットが少なくなります。
したがって、スマートフォンで医療データを管理する場合には、データの守り方についてしっかりしたリテラシーを持っていただきたいと思います。そうすれば安全なのです。
先ほど書きましたように、保険証、領収証などがすべて電子化されることがみなさんの安全を本当の意味で担保すると考えます。(生体認証がセットになる)それは世界が破滅していなければ10年後の話です。認知症の問題もありますから、医療分野での本人確認は生体認証が必須です。
そういう時代に備えてみなさんは自分の健康管理をコンピューターを使って始めておく必要があるだろうと考えます。今までそうした管理が長続きしなかった理由はその情報があまり価値のないものだったからに相違ありません。
しかしながら、医療データは医師が介在して管理することによって極めて価値の高いものに化けます。
当院ではみなさんの健康に関するデータを電子情報として蓄えていますが、それらをどのように整理してみなさんにお渡しするべきかをこの10年ずっと考えておりました。
が、みなさんにそのスキルがない以上、いくら実現しても絵に描いた餅でしかありませんでした。
しかしようやくスマートフォンというインフラが整いつつありますので、みなさんには心の準備だけははじめておいていただきたいと、思います。
色々な健康管理ソフトがありますが、テキストでデータをエキスポート出来るかを基準にお選びいただければ、あとで統合は可能です。
それが出来ないソフトの提供者があるとすれば、金儲けしか考えていないと断言ができますので近寄らないことが無難です。
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