2010/01/10

過去の診断(診療)をナレッジベースとして使うのは簡単

IBMもIntelもGoogleもMicrosoftも医療用のデータベース構築に今後10年注力するでしょう。
というのも、全世界で蓄えられているデータのうち、おそらく半分以上(あるいはもっと圧倒的)が医療データであり、短期的に儲かり、投資を集めることができ、対費用効果が高く、患者さんに貢献し、使いようによっては財政を救い、使いようによっては利権をむさぼることもでき、批判を受けにくく、世界を支配出来る、本当に良いことづくめだからです。

むろん、効率的なデータ運用については彼らにかなうわけはないけれど、臨床家として必然的に生み出されるアイディアに関しては欧米だろうが日本だろうが差があるはずがなく、それを体現しているのがダイナミクスという管理の仕方に他なりません。

カリスマプログラマーがいくら偉そうなことを言おうが、そんなこと、大したことじゃなくて、だって将来コンピューターが進歩しちゃえばプログラミング手法なんて失われたってかまわないわけですからね。そうではなくて、医者のナレッジベースとしてのデータの貯蓄がすでにはじまってるかどうかが重要なわけです。

例えば当院ではもう手術のデータベースが30年も蓄積されているわけです。パラムK2というソフトウェアで最初は管理していて、それから桐というデータベースに移行しました。内視鏡の細かいデータベースももう20年、5万人分蓄積されているわけです。さらに母集団を解析するための背景としてのデータはダイナミクス導入後ですから3年分です。実際に内視鏡を行う際に、確実な癌のリスク予測、あるいは楽な検査を行うための安全な鎮静剤の量はすべてこれらから判断されます。父親が蓄えた名人芸を私がデータとして受け継いているわけです。ずるいといわれればそれまでですが、内視鏡を始めた時からうまいうまいと言われていますが実は父親のデータを使っているのが種明かしです。

今は遺伝子のデータベースが利用可能ですが、将来はこうした医療データがパブリックになって利用可能な時代になるわけです。むろん当面はクレジットカードでの決済システムだとか、保険の決済、在庫管理などが医療データの使い道として牽引役になるわけですが、背景では粛々とデータが収集されるわけです。

それがどう役立つかというと例えばいろいろな電子カルテにこの薬の極量は・・・というデータがあって安全ですというシステムがあったとしましょう。ところがこの極量の入力を会社が間違えたら一貫の終わりですね。しかし、この薬は平均してこのぐらいの量がどういう経路でどのように使われているのかというのはデータベースが計算してくれますから、処方をしたときにパブリックのデータと比較してそれが平均からどのくらいはずれているかはすぐにわかります。これは何千、何万というデータを元にしていますから、ミスが起きる確率が極めて低くなります。

今は例えばセット処方はダイナミクスユーザー同士でやりとり出来るのですが、これも実はミス防止に役立つ。むろんセット処方は単純だからもともとミスが少ないはずだけれど、未然に防いでいる可能性がある。それがダイナミクスが他の電子カルテの追随をゆるさないひとつの理由なわけです。そしてユーザーが限定される理由でもある。各分野のリーダーがダイナミクスを使ってくれればそれでいいのだし、実際何故かそれは上手く行っている。

ダイナミクスはコード体系が違います。これを厚生省コードにまとめろという意見があるわけですが、それではフェイルセーフにならないわけです。厚生労働省がミスしたら大打撃ですからね。ある程度自由な運用を各医院でさせていることが、ダイナミクスでのゆるいフェイルセーフになっている。一部の医院は間違った運用で問題が出ることがありますが、全体がこけるということを未然に防いでいる可能性があるわけです。厚生労働省が2年に一度、ぎりぎりまで新データを出さないわけです。それでも大混乱が起きないのは安全弁が何重にも働いているからでもあります。

例えば病名コードですが、膨大な量があって、まだ問題点がたくさんあると思います。実際まだ時々コードが変わるのです。そんなコード体系を使えるわけがない。ICD-10のほうがまだましです。それをうるさく「あなたは今回8名に関してコードを使わなかったから、全員コード運用せよ」といちいち手紙をよこす時期にはまだ来ていない。今は自由な運用をさせて、自分たちのミスを洗い出す時期です。そういう品質管理を行う発想は彼らにはない。おそらく病名コードは「ご意見」から決まっているんでしょう。しかしデータは意志を持っているわけですから、それを眺めることで見える事があるんじゃないかと思います。

3年もダイナミクスを使うと見えてくることがたくさんあります。
そしてこの3年、私は非常に柔軟なデータ運用をしてきました。セット処方も使わなかった。
このデータは宝物です。今度は過去を振り返り、リアルタイムでデータを解析しながら品質管理をするような、そういう時期に来ている訳です。

ダイナミクス以外の電子カルテを使っている方々は、逆立ちをしてもそれが出来ません。ご愁傷さまとしか言いようがありません。

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