2009/07/22

センチネルループサイン

「お腹が痛い」と来院する場合には、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸と言った消化管が原因であるとは限りません。もちろん病歴が一番重要で、いつから、どこが、どのように、どのくらいの頻度で、どのくらいの時間、どの程度痛くて、便とか尿の性状がどうか、原因として、何を食べたのか、他の疾患はないか、薬を飲んでいないか、過去にどのような病気があったかなどを事細かに聞くわけです。

そして必要だと思えば腹部超音波検査を行うわけですけれど、例えば尿管結石の時には麻痺性イレウスになっていることが多く、尿管結石を念頭に置いていない場合にはついだまされてしまうことがあります。胆石発作の時、膵炎の時、それぞれその周辺の腸管の動きが麻痺して非常にガスが目立つようになってきます。腹部単純X線写真で「センチネルループサイン」と呼ばれるような所見を腹部超音波検査で認めることは本当にしばしばで、毎週のように見ることが出来ます。そしてこの時に痛みの質を聞いていると元の病気で痛いのか、腸管が痛いのか、その痛みが混合されて複雑になっている場合も多いのです。

  • <メモ> センチネルとは歩哨(みはり)の事です。見張りのように腸が痛いところにへばりついてループを描いているのでそう表現されたのでしょう。裂痔を繰り返すとその部分が盛り上がって白いイボになってきます。これを痔だと勘違いする人が多いのですが、違います。これはセンチネル・タグと言って、肛門の見張り番です。タグ=荷札のようなイボの形なのでそう呼ばれるのだと思います。胃酸が多い人には胃の入り口、噴門に過形成性ポリープが出来ます。これはピロリ菌の有無とは関係なく出来るポリープです。これもセンチネル・ポリープと言います。胃の見張り番です。ネーミングにはセンスが必要ですが、これらの命名はなかなかセンスがあると私は思います。

ちなみに腰椎椎間板ヘルニアの時にも腸管が麻痺している例がありますし、帯状疱疹でも同様です。

女性の下腹部痛と聞けばまずは女性器、しかし周期的な強い痛みと聞いて最初は消化管の痛みかと思いました。そしてエコーを行いました。


私はこの所見はフレッシュなチョコレート嚢胞だと思います。なぜフレッシュだと判断したかというと、少し時間が経つと卵巣嚢腫の中で血液が沈殿してくるのですが、ここではそれがないからです。たぶんこれが悪さをしていることは理解できるのですが、周期的にどうして痛いのでしょう。


すぐそばの腸管、S状結腸なのでしょうか、非常にガスがたまっています。周期が少し不定期で痛みがある瞬間を捉えられなかったのが残念ですが、センチネルループとでも言うべき腸管の麻痺、ガスの貯留はこのように腹痛がある場合一般に見ることが出来ます。そして以外と診断には役立ちません。しかしながら、そこが痛いのだなあ、詐病ではないのだろう、よほど痛いのだろうと同情を禁じ得ない所見だという点で重要だと考えています。

先程書いたようにこのような場合のお腹の辛さというのは原疾患の辛さ+腸管の辛さなのかもしれません。周期的に痛いのも、腸が周期的に収縮してこれが嚢腫の頚部を刺激したりするのかもしれませんし、腸自体が痛いのかもしれません。

したがって、ガスコン、整腸剤、消化剤を使用して腸管ストレスを減弱するような処方をしてみることが良くあります。文句を言われたことはないので、多少は役にたつのでしょう。

2 件のコメント:

  1. センチネルループサイン
    の現物の写真を探してますが
    今のところ見いだせません。。
    どんな写真だったかなー
    (健忘の彼方・・・・・

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  2. すみません。単純写真で痛いところに小腸に空気がたまってループになってるような・・・尿管結石の写真でそうなっているのがありません?大腸は普段からガスがあるから単純写真で大腸の一部にガスがたまっていてもその名前はつかないと思います。小腸は普段ガスがないから逆に目立つんだと思います。このエコー写真はしたがって邪道です。でも、そばの小腸もガスこそないけれど目立っていたりします。

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